ブラック・ブレット 双子のイニシエーター   作:ユウジン

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第20話

「ふぁ~わ」

 

優磨は軽く体を動かしつつマローダーを軽くチェックしていた。予定では明日…モノリスは倒壊する。

流石に少し緊張してきた。

 

「ん?」

 

すると車内に人形が落ちていた。

 

「……ああ、蓮太郎達連れていった時のか……」

 

丁度良いから返しておこう。

そう思い優磨は車を発進させた。

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?」

 

青空教室のと言うよりは青空の下にある広場と言った風情の場所に来た。

だが誰もいない。流石に少し早かったようだ。

仕方ないので人形を手に適当に座って待つ。そう言えば今何時だろう…時計は…しまった忘れた…時計は…こんな所にあるはず無いな。

そう思ったが何処かでチチチと聴こえた…

 

「落とし物かな」

 

それならそれで良いと探す…すると丁度皆が集まる場所に落ちてた。

 

「ん?」

 

確かに秒針があるがこれは時刻じゃなくて…残り時間を表してる。

しかもこれは何かダイナマイトみたいなものにバラニウムの破片がくっ付いてる。まあ相当でかいしこんな破片着けずともここに皆が居る状態で爆発したら皆死ぬ…

 

「なんだ爆弾かよ」

 

優磨は時計かと思って損したと捨てた。

 

「ったくよぉ……紛らわしいんだよ。つうかこんな場所に爆弾置いとくなっつうの……あぶねぇだろうが……って爆弾!?」

 

慌ててもう一度取り出す。残り時間…二分!?

 

「やばばばばばばばばばばば!!!!!!!!」

 

優磨は慌てて駆け出した。

 

 

 

 

その頃丁度蓮太郎と延珠は青空教室の生徒と向かう途中だった。

 

「今日は何をするの?」

「そうだな……ん?」

 

蓮太郎の視線の先にはマローダーがある。

 

「なんでここに優磨さんの車が……?」

「先生誰か来た……」

「え?」

 

砂塵をあげてやって来たのは…

 

「優磨さん!?」

「どけどけどけどけどけどけどけどけどけどけどけどけ!!!!!!!!!!!!」

「どうしたんですか!?」

「爆弾だぁあああああああ!!!!」

『げ!』

 

優磨は持ってるのをつき出すといかにも爆弾と言った感じの物を見た瞬間、漫画であれば目が飛び出していただろう。

ともかくそんなものを見せられては全員が固まった。

 

「蓮太郎退け!」

「はい!」

 

蓮太郎は言われるまま避けると優磨は地面に爆弾を滑らせそのまま車の下に投げ込むと…

 

「全員伏せろぉおおおおお!!!!」

 

優磨は急いで後ろに跳びながら叫ぶ。

 

『っ!』

 

次の瞬間凄まじい爆音が響いた…

 

 

 

 

 

 

 

「くそ!何処のどいつだよ!」

「さあな。それ考え出したら東京エリアの住人全員疑わなきゃなんねぇ」

 

優磨達は爆弾の至近距離爆破にもビクともしなかったマローダーにいた。恐らくあの爆弾は反呪われた子供の連中の…しかもとびきり過激な連中の仕業だ。因みに子供達は由実に電話して北美重工の社員が一時的に引き取っていった。基本的に北美重工はそう言うのには寛容と言うか差別はしない人たちばかりだ。何せ社長が民警やってるくらいだし……

会社の社宅に一時的に匿ってくれるらしいが蓮太郎は酷く気が立っていた。

 

「カッカしても犯人は捕まらん。今はとにかく明日の事を考えようぜ」

「そう言えば昨日木更さんと話したんだけど…」

「ん?」

「いや、何であのモノリスだったのかなって」

「と言うと?」

「いや、もっと街に近い場所もあるだろ?アレだけ統制が取れてるんだしもっと穴を開けるなら良い場所を見つけたと思うんだ」

「まあ考えられるのはあのモノリスだけ磁場が弱かったということだが……しかしとなるとアレを製造する段階で問題でもあったのか?」

「ええ、だから木更さんに調べてもらって……」

 

すると蓮太郎の携帯が鳴った。

 

「もしもし木更さんか?」

【里見くん!?急いで戻ってきて!】

「どうしたんだよ!」

【モノリスが……倒壊するわ!】

『っ!』

 

電話越しに聴こえた優磨と延珠も驚愕する。

そして視界の端には崩れ行くモノリスが見えていた…

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウゥウウウウウラアアアア!!!!」

 

夏の右ストレートがガストレアステージⅡを吹き飛ばす。

 

「流石ですね」

 

榧は夏の戦闘能力を誉めつつガストレアステージⅠ二体を片手で一体ずつ頭を握りつぶした。

 

「ちっ!思ったより早かったな」

【まあこれくらいのは誤差の範囲やろ】

 

玉樹と新一は背中合わせになるとボヤく。

 

「天童式抜刀術 一の型の一番!滴水成氷!!!!」

 

爆音と共に木更の刃がガストレアを吹っ飛ばす。

 

「社長ってあんなに強かったんだ……」

「私も驚いたよ……」

「私も……」

 

ティナ、由実、春は後ろから狙撃で援護しつつ驚いていた。

 

「三人とも!次は四時の方角です!」

 

夏世が指示を飛ばすと三人は慌てて銃を向けた。

 

 

「ぎゃああう!」

 

風深はガストレアを噛み千切り更にそこに翠の爪と…

 

「天童式戦闘術 一の型八番!焔火扇!!!!」

 

彰磨の拳がガストレアの息の根を止める。

 

「数が多いな……」

「このままじゃ押しきられるかも……」

「本当にここぞとばかりに来るんだから……」

 

あまりの多さに彰磨は良いが翠と風深は息が上がり始めていた。

 

「あ……」

「翠!」

 

その隙を突きステージⅢが翠に飛び掛かる。

 

「え?」

 

だがそこに巨大な車がステージⅢを跳ね飛ばし更にそのまま周りのガストレアを潰し、吹っ飛ばしていく。

更に……

 

「ん?」

 

プチっと玉樹を吹き飛ばして止まるとドアが開き、

 

「すまん!遅れた!」

『そこじゃない!』

 

優磨が総突っ込みを受けた中蓮太郎も降りる。

 

「おいこた牙城 優磨!お前殺す気か!」

「ちょうど良いから一度死んで真っ白な兄貴になれば良いのに」

「おい弓月……それは酷くねぇか!?」

 

すると、

 

「ふん……重役出勤とは恐れ入るな」

「?」

 

そこに鎧を着た年齢から考えれば体格も良く鋭い眼光を持つ男……知勇兼備の英雄と呼ばれし者。だが片足がない……確か……

 

「我堂 長政だったか?」

「そうだ……本来であれば今夜のミーティングで話す筈が早まった」

「で?大将が何でこんな所に居るんだよ」

「突然車が飛び込んでくれば様子を見に来るのは普通だろう?」

 

そこにガストレアステージⅠが三体来るが、

 

「よ!っと」

「ちぃ!」

「ふん!」

 

優磨の拳と蓮太郎の銃に我堂の刀がガストレアの命を刈り取る。

 

「敵が多いな……」

 

優磨は義眼を起動させると片目がキュイン!っと音を立て更に瞳孔が開く。

 

(ギリギリ解放無しでもいけるか?……っ!)

 

突然義眼がDANGERと言う文字と共に矢印を表示し優磨は伏せる。

 

すると頭の上を何かが通過していき…

 

「ギャアアア!」

 

近くの名も知らぬ民警の腕を吹き飛ばす。

 

「なんだ今の……」

 

蓮太郎達もなにが起きたのか分かっていない。優磨ですら義眼がなければ避けるのは無理だし少なくとも吹き飛ばされたのは自分だろう。

 

「あの方角か?」

 

優磨がスコープで探すと見えた…恐らくステージⅢのガストレア。するとまた発射してきた。

 

「よけ……」

 

ろと言う前に光みたいなものが優磨の横を通過していき背後の民警の上半身を吹き飛ばした。それをみたイニシエーターが悲鳴をあげて膝をつく。

 

「くそ!」

 

速すぎる…あの破壊力にこの速度…

 

「優磨兄さん……あれは?」

「恐らく……遠距離狙撃型のガストレアだ……」

「そんなのが居るのかよ」

「今までは居なかった……少なくとも今回が初めてだ…」

「そう言えば……」

 

我堂が顎に手を添える。

 

「ここ最近突然戦闘機などが落ちると言う事故が多発していたらしい。まさか……」

「めんどくさぇのが出やがった……」

 

優磨は舌打ちする。

義眼で見ることはできるが距離がありすぎるため攻撃はこちらからはできない。

 

「ん?」

 

すると急に影が射した…

 

『な……』

 

全員が絶句する……間違いない……あれが……

 

『アルデバラン……』

「馬鹿な……首を撥ね飛ばしたはずだ……」

 

我堂も信じられないといった雰囲気だ…だが首を撥ね飛ばした?いくらガストレアでも首を撥ね飛ばされたら死ぬ筈だ……少なくとも今までのガストレアはそうだった。

 

「グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!」

 

大気が震え……更に地面まで震える。

 

優磨達は耳を押さえてはいるが犬の因子を持つため聴覚が優れている風深や、フクロウの因子を持つティナ、蝙蝠の春、他にも耳が良いイニシエーターは引き付けを起こしている。

下手したら鼓膜にも危険だ。

だがアルデバランの咆哮が収まるとガストレアが撤退していく。さっきまで死体を喰っていたものですら引き上げていく……ものの一分で戦場だった場所は戦場跡に変わった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シィット!なんだありゃあ!」

 

玉樹が箱を蹴っ飛ばすが誰も責めない。寧ろそうなるのも仕方ないといった雰囲気がある。

遠距離狙撃型の新種ガストレア……更に圧倒的なまでのアルデバラン……しかも今回の襲撃で後ろに行かされていた民警はまだしも前線の自衛隊は殆んど壊滅的な打撃を受けたらしい。少なくとも今回の戦いでは自衛隊は戦うことはないだろう。

 

「遠距離狙撃型のガストレアに関しては心当たりがある」

「なに?」

「多分鉄砲魚だ」

 

蓮太郎の言葉に全員が納得する。確かに水を高速で吐いて獲物をとる魚の鉄砲魚の因子なら出来るかもしれない。

 

「詳しいな」

「まあファーブル昆虫記が好きだったからその延長でな」

「成程……そして蟻の巣とかに水流して神の怒りだぁ!とか言って遊んでいたと……」

『うわぁ……暗い……』

「誰もそんなこと言ってないだろ!」

 

優磨がからかい全員が蓮太郎から距離を取り蓮太郎が叫んだ。

 

「でも……やっていたんだろ?」

「何で決めつけてんだよ!」

「違うのか?言っちまえよ……田舎のおっかさんが泣いてるぜ?」

「そうです!やってました!……ってなに言わすんだ!ああそうですよ!やってましたけど何ですか!?って言うか俺を苛めて楽しいのか!?優磨さん!」

「スッゴク楽しい」

「この外道!」

「菫の唯一の友人だぜ?性格良いわけないだろ」

『……ああ~』

 

それを聞いた玉樹ペアと新一ペア二組以外は菫を知ってるため納得した。

 

「誰だそいつ」

「ああ、玉樹と新一達は知らないんだったな…そうだな。年中白衣着ていて……あ、最近仕事以外は着てないか?まああと髪伸ばし放題でだけど顔事態は美人で……」

「これか?」

 

玉樹が小指を立ててくるが優磨は首を振る。

 

「天地がひっくり返ってもあり得ない。そうだな……後は……」

『空前絶後の大変態……』

 

全員口がハモった。

 

「呼んだかい?」

「…………」

 

優磨は声がしたため後ろを振り替えると菫が居た。

 

「そうそうお前おま……でぇええええ!」

「人をお化けみたいに言わないでくれよ」

「あんたが……」

【空前絶後の大変態……】

 

玉樹と新一は息を呑む。

 

「はっはっは!解剖されたいのかい?」

「すいませんでした!」

 

玉樹と新一は同時に土下座した。

 

「て言うかなにしに来たんだよ」

「治療だよ、一応私も医者だしねぇ」

「そう言えばそんな設定もあったな」

「設定言わないでもらえるかい?」

 

そんなやり取りでテントの中は明るくなった。

 

「飯にするか?」

 

優磨の言葉に全員が頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すげぇな……」

 

テーブルの上にはスープと缶詰め……更にお握りだ。簡素だがこんな状況では上々だろう。

 

「意外と料理うまいんだな」

「一応うちのシェフだから」

 

玉樹が作ったスープは味が濃いめだが疲れた体に染みた。

 

「そう言えばこの三角形と言うよりは三角錐みたいな形のおにぎりの制作者は……」

「俺だよ」

 

夏世の言葉にムスっとしながら優磨は答えた。

 

【相変わらず不器用でんなぁ】

「うるせぇ」

「そんなことないですよ?すごく美味しいです」

「お前ら由実見習え」

 

すると、

 

「さあデザートだよ」

 

菫が何か持ってきた……刺激臭!?

 

『うぐぉ!』

 

全員が椅子から落ちかけた。

 

「さぁ……デザートだ」

 

菫は鍋からなんと言うか紫色のデロッとした何かを出してくる。

 

「いや……その……」

「お残しは許さないよ?残した者は……解剖だ」

『…………南無三!』

 

全員が口にそれを入れる。

あれ?意外とうまい……何てことはなく……

 

『がっはぁ!』

 

全員吹いた……それを見て菫は腹を抱えて笑う。だがそれだけに悲劇はとどまらず、

 

「我堂様からの伝れ【ベチャ】ウギャアアアアアアアアア目が……目がああああああああああああああ!!!!」

 

伝令に着た男の誰かが吐いた紫色の物体が顔に直撃し目に入ったらしく転げ回る。

 

「菫!何んだこれは!」

「ん?この間解剖した死体の腹の中に入っていたホットケーキだ」

『………………』

 

ダッとテントの全員が外に向かって走り出す。

 

「目がああああああががががががががががががが!!!!」

 

無論入り口で転がっていた男は全員に遠慮なくドカドカ踏まれ伝令が伝わったのは皆が胃の中を強制的にスッキリさせられ更に口を百回ほどすすいできた後だった……




今回一番ひどい目に遭った男の人には合掌…
そしてマローダーに轢かれても普通に復活する玉樹…お前が一番化け物だ!

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