ブラック・ブレット 双子のイニシエーター   作:ユウジン

2 / 42
一章 牙城民間警備会社
第1話


私達はずっと二人だった…ずっと二人で生きてきて…二人だけで死んでいくと思っていた…

【ガストレア戦争】…十年前に突如現れたガストレアと呼ばれる生物…人間はもちろん対抗したが見たことのない驚異に人は驚愕し…敗北した…

だがその直後からそのガストレアの因子をもつ子供たち…通称(呪われた子供)が現れる。瞳が赤く輝き…人間離れした能力で動く…

それ故に…迫害された…

人からは嫌われ生きられず…ガストレアとしても生きられない…どちらとしても生きられない…そう思っていたある日のこと…

 

 

「おい見ろよこいつら二人揃って呪われてやがるぞ」

 

男たちは少女たちを見ると腫れ物を触るかのような顔をする。

 

「じゃあ殺っちまっても問題ねぇよな?」

「ごみ掃除だごみ掃除」

 

男たちはナイフを出す。

 

「い…や…」

 

少女の片割れが呻く…

 

「くんな!」

 

もう一人が叫ぶが男たちには関係ない。

 

「死ねよ化けもぶが!」

 

すると最後まで言う前に男の一人が吹っ飛んだ。

 

「だ、誰だてめぇ!」

「なぁに…通りすがりのお節介だ~よ!っと」

 

突然現れた男に更に一人が吹っ飛ばされた。

 

「こんの!」

 

残った男はナイフを向ける。

 

「しね!」

 

ナイフが突き刺さる…が、その刀身は体に入ることはなかった…むしろ逆にナイフの刃が折れている…

 

「は?はあ?お前人間じゃ…」

「ちょいと事情があってね…つうわけで終わり」

 

混乱していた男は男の拳で意識を刈り取られぶっ倒れた。

 

「よう、怪我は…まあ直ぐ治る程度か…」

「だれ?」

「俺は牙城(がじょう) 優磨(ゆうま)…ついさっき民警ライセンスを受け取ってきたばかりの新米民警だ…見たとこ…お前らガストレア因子持ちか…モデルは?」

「…蝦蛄」

「蝙蝠…」

 

優磨と名乗った男は少女たちを見る。

 

「よぅっし!お前ら、俺のイニシエーターにならないか?まだ決まってねぇんだよ」

「ボク達は登録していない」

「別に今からでも…」

「僕たちはずっと一緒に居るんだ…」

 

少女は優磨を睨み付ける。確かにイニシエーターになったら一緒には居れないだろう…ならば、

 

「なら一緒に来いよ、そう言う時に上に顔が利く知り合いが居るんだ。取り合ってもらって特例をつくってもらう」

「え?」

「少なくとも衣食住に困らせねぇぜ?まあ来るかどうかは勝手にしな」

 

それだけいうと優磨は背を向けて歩き出した。

 

「どうするの?夏…」

「…いこう…変な行動に出たら殴ってやる…」

 

二人は優磨の後を追い掛けた…

その後優磨の知り合いがどうやったのかは知らないが特例が認められ優磨とそのイニシエーターコンビは民警唯一の三人一組のチームとなった。

 

 

 

 

 

「起きてください優磨兄様!」

「んあ!?」

 

優磨はベット代わりのソファーから跳ね起きる。

 

「もう朝ですよ!お腹空きました」

「ん?ああ~もう日が出てたか…」

 

優磨はよっこらしょと体を起こす。

今起こしてきたのは二人いるイニシエーターのうちの一人…(ひいらぎ) (はる)

しっかりした性格で頭がいい。将来絶対美人になる感じの女の子。とは言え10才児に変な気は起きないが…

 

「あれぇ?やっと優兄起きたんだ」

 

こいつは(ひいらぎ) (なつ)…春の双子の姉で似ても似つかん…

性格は正に好奇心の塊でしかもそれを満たすために動くことを全く躊躇わない無駄な行動力…そして自分も気に入らないことがあると優磨を平気で殴り飛ばす。

 

「さて…米は…炊けてる…じゃあ味噌汁つくって…目玉焼きか…」

 

優磨は眠い目を擦りながら作り始める。それにしても久しぶりにあのときの夢を見た…初めてあった時の事とは我ながら乙女じみたことだ。相手は幼女だが…

 

「まだー?」

「もうちょい…」

 

三十分ほどで作り終えるとテーブルの上に並べる。

 

「出来たぞ」

『いただきます!』

 

二人は食べ始める。もう組んでから四年経つが変わらない。

 

「でも優兄料理上手になったよね~」

「本当だね、優磨兄様と初めて会った頃はご飯は重湯、味噌汁は味がないし具が生…目玉焼きは炭…だった」

「……………」

 

前言撤回、こいつら生意気になった。確かにこいつらに会うまでは毎日カップラーメンで料理なんか碌にしてこなかった。お陰で初めて作ったときは前述通り。とは言えこの双子も料理の腕は壊滅的だったりする。

 

『ご馳走さま』

 

双子はそう言うとランドセルを持つ。

 

「忘れ物はないか?」

「ないよー!」

「大丈夫です」

「じゃあ行ってこい!」

 

優磨が言うと夏が口を突きだしてくる。

 

「ん?ひょっとこの真似か?」

「行ってきますのチュウ!」

 

次の瞬間拳骨が飛んだのは言うまでもない。

 

 

「アッハッハッハッハ!」

「………………」

 

今笑っている女性は室戸 菫…優磨とは大学時代からの付き合いで数少ない友人である。彼女はボサボサの髪を揺らしてまだ笑う。よく見ればとんでもない美女なのだがリンスなどとは無縁の髪を伸ばし放題にしてよれよれの白衣を着ているため女としての魅力は感じない。しかもこの女は死体しか愛せず研究室の横に勝手に死体安置所をつくっている。

さて紹介はこの辺りにしてあの後拳骨を落とした優磨だがお陰で夏からの手痛い反撃にあい玄関からリビングの端まで殴り飛ばされた。自分でなければ死んでるがその辺も分かって向こうもやっている。とは言え痛いものは痛いので帰ってきたらお仕置きの予定である。

 

「ひひアハハハハ!」

 

しかしこの女…何時まで友人のぶっとばされた話を笑っているのだろうか…

 

「あ~あ、こんなに笑ったのは久し振りだ。いやはやあの子達は本当に面白いね」

「勘弁してくれよ」

優磨は懐からタバコを出すと火を点ける。

 

「ここ一応禁煙だよ」

「そんなのを気にする玉かよお前は」

「まあそれもそうだね」

 

たっぷりと紫煙を肺にいれてゆっくりと吐いていく。

 

「家では吸わないのかい?」

「あいつらがいるからな」

 

優磨がそう言うとまた菫は笑った。

 

「子煩悩だね~」

「アホか」

 

また煙を吸っていく。

 

「今日は仕事ないのかい?」

「毎日出てる訳じゃねぇよ」

「残念だ。出てくれればマイケルの代わりも見つかるかもしれないのに」

「ん?リーガルって名前じゃなかったか?」

「それは2つ前のだよ、流石に腐ってきてね」

 

流石に慣れたとは言え普通なら吐き気の一つも催すだろう。

 

「ん?」

 

するとそこに電話はいった。この着信音は…

 

「はいもしもし?」

「警察だ。ガストレアが出現、急ぎ応援を求む」

「了解っと」

 

電話を切ると立つ。

 

「んじゃ、また来る」

「ああ」

 

優磨はタバコの火を携帯灰皿で消すと外に出た。

 

 

 

車で現場である団地まで行くと既に警察が封鎖を終えていた。

 

「やあ、牙城」

「相変わらず現場主義か?如月警部」

 

彼は如月(きさらぎ) 彪馬(ひゅうま)。見た目は穏やかなお日様みたいな見た目で性格その顔に準じている。同期の多田島という警部もいるが雲泥の差である。

更に彼は民警に対し非常に友好的だ。基本的に警察の武装ではガストレアには対抗できない。その理由は後で詳しく記すがとにかく彼はこう言うときは優磨に良く仕事を回してくれる。お陰で比較的仕事がなくて暇という状況に陥らない。

 

「何とか抑えたけどね…一瞬だけ見えたんだけど蜘蛛かなあれは…糸吐いてたし」

「怪我人は?」

「一人糸に縛られたのが居たけど怪我と言うほどのものはないよ。一応検査受けさせてるけどまあ大丈夫さ。部下は行きたいみたいだけどね」

「あんたが担当だと楽でいいぜ」

「夏ちゃんと春ちゃんは?」

「学校だ」

 

そこまで言うと優磨は腰から持ち銃であるデザートイーグルを抜く。

 

「行ってくる」

 

優磨はデザートイーグルをスライドさせながら入っていった。

 

 

ガストレアとはガストレアウィルスにより形質変化した人非ざる者である。その姿は正に千差万別。何故ならガストレアウィルスにより形質変化した場合は地球上の生物を真似している。そのお陰で攻撃方法も多種多様、更にステージと呼ばれるそのガストレアの強さとランクを表すものがありⅠ~Ⅳに格付けされる。Ⅳに近ければ近いほど強く、大きく…そして摩訶不思議な姿になる。理由は単純、ガストレアは進化する毎に他の生物の姿も取り込んでいくのだ。前にステージⅢと相対した際にはバッタと蝶と最後のはようわからん奴と融合した良くわからんものになっていた。さて簡単なガストレア講座はここまでにして…

 

「来たか…」

 

階段の途中でガストレアステージⅠと遭遇した。確かに蜘蛛だ。Ⅰ~Ⅱまでくらいなら何のガストレアか分かりやすい。

 

「ショータイムだ」

 

優磨は銃を撃とうと構える。

だがその前にガストレアが飛びかかってくる。

 

「ちっ!」

 

優磨は後ろに飛んでから撃つ。

ドゴン!っと派手な音を起てガストレアに銃弾がめり込む

 

「らぁ!」

 

更に2、3と立て続けに撃ち込む。

 

「ギャ!」

 

ガストレアはたまらんとばかりに糸を吐く。

ガストレアは通常の弾丸では効きが悪い。何故なら再生能力が非常に高く当てた傍から再生して完治してしまう。そのため警察では手に追えないと言うのだ。だが優磨が使ってる銃の弾丸は特別製…特殊金属バラニウムだ。

色は黒く、これにはガストレアの再生能力を阻害する力があり他にも剣や槍などに加工したりされている。

 

「ふっ!」

 

ジャキン!と言う音と共に左手首の甲の方からブレードが出てくる。そしてそれで糸を簡単に切断すると更に銃を撃つ。

優磨は見た目は人間だ。だが優磨は殆ど人間の肉体を持っていない。

十年前のガストレア出現時に命を落とし掛けるほどの大怪我を負いその際に菫から後に【新世界創造計画】と呼ばれる手術を受けることで生き長らえた。費用的な問題からそれを構想のみで頓挫したが内容はもう一つの計画【新人類創造計画】と言う計画が存在し一部を機械化させるに留めると言う方法が立案された。

そのため【新世界創造計画】被験者は表向きはいないと言われている。だが現実は存在する。脳と生殖器とごく一部の内蔵を除きほぼ全てをバラニウム金属を越えた超バラニウム金属を代替した肉体を優磨は持っている…更に他にも室戸 菫の手によって様々な特殊能力を使えるようになっている。そして今出しているブレードは基本装備で手首や肘、他にも足首などから出すことができる超バラニウム金属性の高周波ブレード。

優磨は民警の他にもう一つの名を持つ。陸上自衛隊東部方面隊第七八七機械化特殊部隊【新世界創造計画】被験者番号0番…牙城 優磨

 

「さて…ん?」

 

優磨はあらぬ方向を見ると…

 

「ったく…そういやもう放課後か」

 

銃をしまった。

 

「ま、これで終わりだ」

 

次の瞬間蜘蛛のガストレアの体が横に倒れる。長距離の狙撃だ。銃の名前はバレットM82…対物狙撃ライフルで良い子は人間に向けるのは辞めましょうタイプの銃…そしてモデルは蝙蝠だ。そして…

 

「ウリャアアアアアア!!!!!!!!!」

 

優磨の横を小さな物体…と言うか柊 夏が通りすぎガストレアをぶん殴る。夏より数倍は大きいガストレアはあちこちにバウンドしながら吹っ飛びそのまま動かなくなった。

 

「寄り道は辞めましょうじゃなかったか?」

「へへ…」

 

瞳を赤くさせた夏はイタズラっぽく笑った。

 

 

 

「流石に強烈だね、夏ちゃん」

「こんなパンチを日常的に食らわせられてる俺って何だろうな」

「優兄が悪いんでしょ」

 

下に降りてくると彪馬に出迎えられる。

 

「お疲れさまです」

 

そこに背中にバレットM82を背負った春が来た。

 

「でもイニシエーターの力は凄いね。僕達警察の面目がないよ、牙城も頑張んないとね?プロモーター君」

 

プロモーターとは優磨たち民警の方を良い、その相棒をイニシエーターと呼ぶ。

そしてイニシエーターはガストレア因子を持つ者…しかも十年前のガストレア出現時にその因子を持つものが現れたため最大で十歳の女の子しかいない。だがその因子をもつ少女は力を使う際には赤く目が光り、ガストレアと同じように何かしらの生物の力を使う。例えば夏は蝦蛄…しかもモンハナシャコと呼ばれる種で異常にパンチ力が高く武器はバラニウム性のグローブ…その気になれば鉄筋コンクリートもパンチでぶっ壊す驚異の力と赤外線やエックス線等々も見える目を持つ。そして春のモデルは蝙蝠…超音波での敵の探索や夜間の夜目は夜での戦闘に非常に役立つ。

因みに普通イニシエーターはプロモーター1人につき1人しかつかないが菫の色々な裏での操作により特例で優磨には夏と春の二人もイニシエーターがいる。

 

「じゃあはい、報酬」

「ごっつぁんです」

 

中には結構な量が入っている。

 

「後、夏ちゃんと春ちゃんチョコレートいる?」

「いる!」

「いただきます」

 

彪馬から受けとると二人はご機嫌だ。

 

「じゃあまた」

「ああ、また仕事入ったら呼ぶよ」

「ばいばーい」

「ありがとうございました」

 

優磨と二人は歩いていった。

 

「警部」

「ん?」

 

そこに部下の一人が来た。

 

「あれが呪われた子供なのですか?」

「うん」

「自分にはただの子供としか…」

「そんなもんだよ。確かにすごい力は持っているけど…ただの子供さ」

 

彪馬は笑いながら言った。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。