ブラック・ブレット 双子のイニシエーター   作:ユウジン

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第15話

聖天子暗殺事件から早くも一週間…

皆はそれぞれの生活に戻っている。

まずは入院してた二人だが事件の二日後に目を覚まし次の日にはバタバタ病室で暴れられるようになった。

次に蓮太郎だが肉体的には大きな怪我はなかったが如何せん精神的な疲労が大きかったようで不幸面に更なる磨きをかけている。

春と夏世は保脇に撃たれた傷があったがそれは一時間ほどで跡形もなく消えた。まあ弾丸はすぐさま抜き取っておいたが…

優磨は20%の解放が響いたらしく四日ほどぶっ通しで寝てしまいその間春と夏世が揺すろうが叩こうが絶対起きず、死んだのではないかと二人が菫のところに駆け込んだのは秘密だ。

そして聖天子はいつも通り公務に戻っているが最近音楽を聴きながらやっているらしくイヤホンと携帯音楽プレイヤーを持ち歩き頬を赤く染めながら顔が緩みそうになったり、それを慌てて引き締めたりしている。それを見た側近の菊之丞がヤバイ物なのかとこっそり聞くと一定のリズムで愛してると言う音しか流れない。最近はプロの声優がこう言う萌え声?と言う物を出してるし、これもそういった物か…等と思ってそのままにしたが後になってみればどこかで聞いたことがある声だと首をかしげていたらしい。

さて…一応今回の首謀者たちだが殺された鴻上を除き厳罰に処された…いや、一人別に処置を受けた者がいた…保脇である。

こいつは優磨がしこたま殴った挙げ句壁に突き刺されたせいか顔が2、3倍に膨れ上がり、更に優磨の最後の渾身パンチが当たった部分だけグーの形に顔が凹んだらしい。お陰で飯もろくに食べられず外にも出てない。しかもずっと布団の中で、

【ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい】

と呟き続け今や頬は痩せこけ心身共にボロボロになったらしい。まあこれに同情するものは居ないし聖居の職員は皆口を揃えて保脇ザマァ…と言ったらしい。あくまで噂だが説得力がある。

最後だがティナの処遇…蓮太郎の嘆願があってか寛大な処置だと思いきやなんと天童民間警備会社の社員になった…懐広い社長だと優磨は寝起きの顔で呟いたらしい。

 

 

 

 

 

「今回はありがとうございました」

 

後日改めて全員聖居に呼ばれた皆は聖天子に礼を言われた。

 

「いえこちらこそ」

「ティナさん。会社は楽しいですか?」

「はい」

 

ティナの返答を聞いて聖天子は微笑む。

 

「そして優磨さんと里見さんは序列昇格もお目でとうございます。後日改めてお知らせしますが、98位を撃破した里見さんは300位…更に優磨さんは今回の活躍とイニシエーターが里見さんと共に98位を撃破したので500位に昇格です」

 

すると優磨が口を開く。

 

「それよりわかったか?」

「はい」

「もしかして鴻上ってやつを殺した二人か?」

 

蓮太郎の言葉に優磨はうなずく。既にあの二人のことは話してある。

 

「聖夜 秋菜…聖夜 冬華…この二人は双子です」

「珍しいな…」

 

夏と春のように双子であっても基本的にガストレアウィルスに感染するのは片方だけのことが多い。二人揃ってと言うのは実は結構稀なのだ。

 

「ええ、ですが驚くのはまだ先です」

 

そう言って聖天子は書類をめくる。

 

「聖夜 秋菜のモデルはイーグル…」

「鷲か…じゃあ眼が良いんだな」

「ええ」

「どれくらい良いんだ?」

「種類によっては五キロ先も見えるらしいし相当じゃないか?」

「ご、五キロ…」

 

とんでもない距離だ…

しかも鷹は動体視力も並外れていて恐らく銃弾くらいなら止まって見えるんじゃないだろうか…

 

「そして聖夜 冬華のモデルはベアです」

「熊…」

 

あの異常なパワーはそれでか…

熊は握力…腕力…そして脚力の3つ全てが非常に高スペックで人間くらいなら一捻り…と言うかワンパンチで死亡だ。

 

「更に調べてみたところ彼女たちの序列は14位…」

「じゅ、14位!?」

 

その場の全員が唖然とした…少なくとも自分達の遥か上の存在だ…

 

「そして彼女たちのプロモーターですが名前は…ああ、ありました。爪樹 楓…」

「っ!」

 

その名を聞いた瞬間優磨は自分の耳を疑った…

 

「優磨さん?」

 

全員が優磨の顔を見る。

 

「ん?あ、ああ…知り合いでさ…」

『ええ!?』

 

全員が優磨を見る…

 

「死んだと…思っていたんだけどな…」

 

優磨はどこか複雑そうな顔で出されたお茶をすすった。

 

 

 

 

 

 

 

その後聖居から退出したが優磨はずっと心此処に在らずといった風情で、蓮太郎たちの後ろを着いていっていた。

 

「か、楓って何者なのかしら…」

「まさか…彼女?」

「も、元カノの影が…」

「お前ら丸聞こえだぞ」

 

優磨が言うと全員驚きで飛び上がった。

 

「言っとくがお前らが想像してるような間柄じゃない。なんなら菫にも聞いてみろよ」

「あ、そういう知り合いですか…」

 

となると…

 

「絶対変人だ…」

 

全員うなずいた…

 

「おい。俺も変人扱いか?しかも(アレ)と同レベルかよ」

「だって…」

「うん…」

「はい…」

 

イニシエーター三人に言われた優磨は深く傷つく。

 

「しっかし昔から何考えてるか分からねぇ奴だったけど今度は何やる気だ…?」

 

優磨は頭を掻きながら呟いた…

 

 

 

 

 

 

 

その頃…

 

モノリスの外にある廃工場では三人の人間がいた…その内二人は十歳ほど…

一人は茶色掛かった髪を背中まで流しクリっとした目とか表情豊かな雰囲気…もう一人は片割れと同じ髪を後ろで束ねてポニーテールにした髪を揺らしながらつり目の黒い双眼を一人に注いでいた。だがそれからは表情はおろか性格や感情を読み取ることはできない…

そしてその二人の視線を一身に受ける女性…どこか浮世離れしたような美貌と雰囲気…手を伸ばしても届くことはないようなオーラ…その女性は肩までにした漆黒の髪を軽く揺らし薄く笑う。

 

「へぇ…どうだった?」

「楓が言うような感じはなかったよ?ほんとに強いの?牙城 優磨ってさ~私と冬華だけでもやれそうだよ」

 

ゆっくりと冬華も頷く。

 

「まあ彼は昔から昼行灯だからね…でも駄目よ?彼も旧式とはいえ私と同じ穴の狢…まあ弄ったのは別の人間だけどね」

楓と呼ばれた女性は美しくもどこか恐ろしい笑みを浮かべた。

 

「さ、そろそろいきましょうか…」

 

すると外から何かが鳴く声が聞こえる。

 

「あら?」

 

外に出てみればステージⅠ~Ⅳまでのガストレアに囲まれていた。その数はおおよそ300…

 

「二人は中にいなさい」

「は~い」

「…………」

 

楓の命令で二人は工場の中に入っていく。

 

「ふふ…全くステージⅠもⅣ大きさ以外対した差はないものね」

 

次の瞬間楓の右目はキュインと言う音と共に蒼くなり…左目が幾何学的な紋章を浮かび上がらせる。

 

「いくらでも来なさい…何体だろうが私には物の数じゃないわ…」

 

ニヤリと頬尻をあげた楓は疾走した…

 

 

それから十分後…その場にはステージⅠ~Ⅳの遺体以外残っていなかった…


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