ブラック・ブレット 双子のイニシエーター   作:ユウジン

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第10話

千寿 夏世は家で一人だった…夏と春は優磨から電話で頼まれた物を買いに行き、その間に夏世は部屋を片付けていたが終わってしまったので自室でボゥっとしていた…

優磨達が住んでいるマンションは非常に広く夏達三人にそれぞれ自室を与えられる。と言うのもこれは優磨が十歳にも成ったらプライバシーが欲しいだろうと気を使ってくれているためである。確かに十歳にもなれば生理が来る子は来ても可笑しくなくなってくるし下着等にだって気を使いたくなるお年頃だ。そういう意味では優磨はデリカシーがある男だと夏世は感心していた。

比べるわけではないが将監はそう言った気遣いは0である。と言うかあの筋肉脳味噌にはデリカシーと言う言葉は刻まれていない。

だが一番驚いたのは学校に行かされることになったことだ。これには本当に驚いた。最初自分の耳を疑い優磨の正気を疑った。自分みたいな呪われた子供が…だが優磨は平然と「子供は学校行くもんだ」と言ったのだ。

それからは怒濤の毎日だ…幸いにも勉強について行くのは簡単だった。だが質問攻めにされたりしたときは返答に困った…今までずっと戦っていたので好きなものはないし趣味もない…とはいえず困ってると夏と春が来て自分達と一緒に住んでること、そして自分達の親戚だと言うことを話し夏達を通すことでクラスの人たちとも話せるようになった。多分優磨がこっそり言っといたのだと今思えば分かるが嬉しかった…何よりも学校で体験できることは自分の今までの世界観を塗り替えた…給食も美味しかったし…遠足、雑談…授業………だが同時に恐ろしくなる…それらは全て優磨のお陰だ…そして同時にこれからも優磨にたくさん教えてもらえるだろう。だが自分は何か返せるのだろうか…命を助けられ…楽しいことを教えてくれた…その礼を返せるのだろうか…そして何よりも怖いのは……優磨が死んだら自分は耐えられるのだろうか…まだたくさん教えて欲しい…一緒にいて欲しい…だが今のご時世だ…何時死ぬともわからない。恐い…優磨と言う光が居なくなったら自分はその闇の中を歩いていけるのだろうか…?

 

「優磨…さん……」

「ただいま~!」

「夏世ちゃんただいま~」

「っ!」

 

夏世は帰ってきた夏達に驚いて飛び上がる。

 

「あ、そこに居たんだ……ってどうしたの夏世!?」

 

夏は夏世に駆け寄る。

 

「何でもないです」

「あるよ、そんな悲しそうな顔してさ…」

「そうだよ夏世ちゃん…無理にとは言えないけど教えて?私たちは家族なんだからさ…」

「………………お二人は…怖くないんですか?」

『え?』

 

二人は夏世の言葉に首をかしげる。

 

「優磨さんんが居なくなったら…私は恐いです…」

 

あぁ…と二人は合点が行く。そして、

 

「ぼくだって恐いよ…」

「私もです…」

 

それから夏が口を開く。

 

「昔さ…僕と春も同じ気持ちになったことがあるよ。でもね…優兄が言ってくれたんだ」

「え?」

「確かに俺の方が早く死ぬと思う…お前達と別れなきゃいけない時が来ると思う…だけどそれまでは一緒にいてやる…闇の中の歩き方を教えてやる…俺がいるときは幾らだって頼れ…居なけりゃ呼べ…世界の果てにいようが助けに行く…ってね」

「………」

「だから今はたくさん甘えて貯金しとかなきゃ…来ないで欲しいけど…来るかもしれない別れにさ…」

「私も……良いんでしょうか?」

「大丈夫だよ。優兄は優しいから…でもそれ以上はダメだよ」

「はい?」

「優兄を好きになったらダメっていってるの」

「…………ふぇ!なななな何言ってんですか!いったい幾つ年離れてると…」

「でも僕と春は好きだよ?」

「…………え?」

 

夏ははっきりと…春も顔を赤くしながらもはっきりとうなずいた…

 

「まあ優兄が手を出してこないけどね~僕的にはばっちこい何だけど」

「でもあの人他に敵多いよね…」

「ああーあのオッパイの化身と聖天子様っでしょ?寄りによって何だってどっちも美人なの!?しかも美人の前に人並み外れた…がつくらいのさ」

「は、はぃ?」

 

夏世は声が上擦る。

 

「ま、待ってください!今聖天子様って…」

『うん』

 

夏世はクラっと来た…国家元首までタラシこむとか何者なのだあの人は…

 

「まあ、優磨兄様は優しいからね」

 

多分…全部そこに帰結するのだろう…優しくて大人で…めんどく下がり屋なのにトラブルに何時も首を突っ込むことになる…

 

「そう…ですね」

「って好きになったらダメだからね!?」

「何でそうなるんですか!?」

 

すると…

 

「ただいま~」

「お邪魔します」

「夏!春!今日のゲームは妾が1人勝ちだぞ!」

 

優磨達が帰ってきた。

 

「お帰りなさい。優磨……その…」

「ん?」

「兄……さん…?」

「……ただいま、夏世」

 

優磨はグシグシと頭を少し乱暴な手つきで撫でてやる。

 

「やっば!敵増やした!!!!」

「夏世ちゃんダメ~!」

「ですから違いますって!」

「とりあえず玄関で暴れるな!」

 

優磨の声でスゴスゴと三人はリビングに行った。

 

 

 

 

 

 

「よし、準備はこんなもんかな」

「さすが蓮太郎。家事スキル高いな。家のハウスキーパーになってくれよ」

「いやいや…」

「給料これくらい出るけど?」

 

優磨が指で数字を作ると蓮太郎の目がチャリーンと言う効果音と共に¥に変わった。

思わず即決しかけたところにチャイムが鳴る。

 

「ん?」

 

優磨と蓮太郎が出ると…

 

「やっぱ此処やったんね」

「未織!?」

「ヤッホー里見くん。あとお久しゅう牙城さん。」

「おう未織ちゃん。どうしたんだ?」

「里見くんにご飯もろおう思たんやけど居なかったんで多分こっちかなと」

「成程ね、上がんなよ。材料はタップリ買ってある」

「え?」

「あんがとな~牙城さん。あんたのそういうとこ好きやわ。ちゅうわけで里見くん行こか~」

「うわ!馬鹿腕に絡み付くな!歩かない難いんだよ」

「ええやんええやん」

「青春だねぇ」

 

優磨は笑いながらキッチンに戻ろうとした瞬間またチャイムが鳴る。

 

「はいはい」

 

そしてドアを開けるが人が居ない。

 

「あれ?」

「ゆ…ま…さん……」

「ん?」

 

足元から何か呻く声が聞こえたため見てみれば黒髪のスタイルがいい美少女…と言うか木更が倒れていた。

 

「木更ちゃん!?」

『え!?』

奥からも優磨の声を聞いて皆が出てくる。

 

「木更さん!ええと、110だ!」

「駄目だよ蓮太郎!そっちは警察だよ!119しなきゃ!」

「駄目ですよ夏さん。死体は救急車は乗せてくれません」

「死んでないよ!」

 

すると次の瞬間グーっと言う音が響く。

 

『へ?』

「お腹…空いた…」

 

全員がずっこけたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

「つまり最初蓮太郎の所に行ったら居なくて俺のところに行ったと思い此処まで歩いてきたのか?結構距離あるだろ」

「でも私が調理するわけにいきませんし…」

「だけど違ってたらどうする気だったんだよ」

「そのときは優磨さんに作って貰う気だったわ」

「でも態々肉買ってこなくったてよかったのに…しかもタクシー使えば良かっただろ」

「お金が…」

「タクシー代位立て替えてやるっつぅの。少なくともお前らガキに懐心配されるような自堕落な生活してないから

な」

 

木更は優磨をマジマジ見たあと…

 

「里見くん。少しこの人の甲斐性貰いなさい」

「はぁ?」

「大丈夫だって木更ちゃん。こいつはこれから沢山のことを経験して俺何かよりいい男になるさ」

「……里見くん。爪の垢煎じて飲ませて貰いなさい」

「そうした方がいいかもな…」

「えー別に今のままでもええと思うで~」

「未織は黙ってなさい」

「べー」

「こんのぉ…」

 

不仲の二人を蓮太郎が止めつつ肉等々をテーブルに持っていく。

 

「さて、いただきま【ピンポーン】って今日はよく来るな~」

 

優磨が出ると…

 

「ゆゆゆ優磨ひゃんこんにちわ!」

「由実ちゃん!?」

『ええ!?』

 

夏と春が顔を出す。

「あ、夏ちゃんと春ちゃん」

「オッパイの化身…もとい、由実さん」

「こんにちわ」

 

基本的に双子はライバルで胸がでかいことを除けば由実にたいして好意的である。

 

「どうしたの?」

「お食事でも一緒にどうかと思いまして」

 

後ろに居たメイド服10歳児こと藤島 榧は肉を片手に言った。

 

 

 

 

 

「北美 由実です…は、初めまして!」

 

そこから勢いよく頭を下げて額を強打した由実はフグッと言って抑える。

 

「お、おう」

 

だが蓮太郎としては健全な男子なので動く度に揺れる胸にどうしても目が行く…

その大きさ足るや自分が恋い焦がれている木更より大きく動いたときに延珠や未織ならばシーン…木更ならタユン…由実ならばタ…ユン!、もしくはブォン!と言う効果音がつきそうである。しかし胸はでかいと慣性の法則に乗っ取って揺れる揺れる。と言うか千切れそうだ。

すると延珠が由実後ろに回り込み…

 

「久し振りだね未織ちゃん」

「ほんまやなぁ」

 

会社繋がりで知り合いの由実と未織が話している次の瞬間、

 

「とぉ!」

「キャア!」

 

胸を揉んだ…

 

「な、なんと…」

 

延珠は手をブルブル震わせ離れる。

 

「聞け蓮太郎!触り心地といい温度、感触…あらゆる方面から考えたがこれは本物だぞ!」

「そうに決まってんだろ!態々触って調べんな!」

「いやだが蓮太郎!妾は最初何か詰めてると思ったのだ!なのに…なのに本物なのだぞ!しかも木更よりでかい!どうやたらこんなになるのだぁああああああああああああ!!!!」

「ご、ごめんね?」

「あやまるなぁああああああ余計惨めになるのだああああああああ!」

 

ムニュンムニュンと延珠は由実の胸を揉み初め「よこせー!」とか叫びだし由実は涙目で

 

「あのなぁ…」

 

だが内心では、本物なのか…と思ってしまったのは墓場まで持っていこうと蓮太郎は心に決めたのであった…

 

 

 

 

 

それから一週間後…遂に来た…

 

「で、でかいぞ蓮太郎!」

「優兄!この車変な音を出さないよ!」

 

延珠と夏は大興奮し、春と夏世は最近のアニメの話しをしており蓮太郎は少し緊張した面持ちだ。

 

「つうか優磨さんスーツ着てきたんだな」

「一応礼式の場だからな。お前みたいな学生は制服で良いだろうけど俺は一応スーツでな」

「でも夏達は良いのか?」

「会議中は車に置いとくだろ」

『えー!』

 

優磨にブーイングが起きた。

 

「じゃあお前らずっと静かに立ち続け得る自信あるか?」

『…………』

 

全員黙ってそっぽ向いた。

 

「よし行くぞ」

 

優磨は先に出るとドアを支えながら聖天子の手を取る。聖天子は頬を少し赤くしながらその手を取って出てくるとその後ろをカバーするように蓮太郎が出る。それを見た保脇は優磨に殺人視線を送るが優磨は気にも止めずにホテルにエスコートする。

 

(優磨さんだと様になるな…少なくともああいうのは保脇じゃ無理だな)

 

と言うか聖天子レベルの美貌の持ち主ではエスコートする方も整っていないと不釣り合いと言うか似合わないと言うかはっきり言って滑稽になる。

自分で蓮太郎は想像してみるが木更だと間違いなく石を投げられそうだ…延珠なら…多分後ろに手が回る。

だが優磨はエスコートしながらも蓮太郎が出るまで待ちドアを閉める。こういう風に男女関係なくやれる辺りが優磨らしいと言うかカッコいいところだ。

 

「さ、行きますかお嬢様」

「は、はい…」

 

聖天子はブシュウ…と言う音と共に湯気が出そうだ。それを見た保脇は歯をギリギリ言わせながら見てる。

やはり優磨の方が男としても人としても上である。と言うかこいつなんか臭い…

それからホテルに入るとガチガチに固まった支配人から鍵を貰い最上階に向かう。

 

「さて現代のちょび髭首相の所に行きますか」

 

プッと聖天子と蓮太郎が吹いたところでドアを開けた…そこには天を衝く様な髪に年齢を感じさせない精気に満ちた顔…

 

「初めまして聖天子殿…斎武 宗玄だ」

「初めまして…」

 

すると斎武 宗玄は蓮太郎を見る。

 

「貴様…天童の貰われっ子か」

「あんだよ爺…まだ生きてたのか?とっとと謀殺されろよ」

「口を慎め民警風情が!!!!!!!!」

 

斎武 宗玄の空気が震えそうな怒号に聖天子は身を竦ませる。

そこから二人は言い合いに発展するが優磨は壁に凭れながらそれが終わるのを待つ。

 

「優磨さん?」

「大丈夫だよ。あの爺さんは蓮太郎を試してるだけだ」

「え?」

 

その証拠にすぐに口論は終わる…合格と言うところだろう。

 

「む…貴様はあの時天の梯子を使って飛んでいった…」

「どうも斎武 宗玄殿…お初にお目にかかります牙城 優磨です」

 

斎武は目を見開く。

 

「牙…城…?そうか…貴様あのNo.0か…」

 

斎武は笑い出す。

 

「なんと素晴らしい日だ。天童の貰われっ子だけではなくNo.0もいる…素晴らしい日だ!あっはっはっはっは!!!!!」

 

そして斎武は優磨と蓮太郎を見る。

 

「どうだ二人とも…俺の下に来ないか?女だろうが金だろうが好きなものをやろう。共に俺のものとなる世界を上から見ようではないか!」

「俺の物?」

 

優磨は斎武の言葉に首をかしげる。

 

「いずれ世界は俺の物になる…いや、するのだよ。邪魔なやつは消す、敵も消す、味方は残してやろう」

「寝言は寝てから言えよくそ爺」 「女も金もいらねぇよ。態々大阪まで引っ越せるかめんどくせぇ…それに俺は爺さんより嬢ちゃんの方が良いね」

「ふん…まあ良いさ。いずれ貴様らの方から頭を垂れることになる」

「斎武大頭領…」

 

聖天子が割って入る。

 

「本題に入りましょう」

「…ふん」

 

だがこの会議の成果は聖天子と斎武 宗玄は水と油のように決して交わることがないと言うことだけだった…

 

 

 

 

 

 

 

 

『………………』

 

車内は静かだった…夏達はちびっこ組は既に眠気に耐えられず寝てしまっている。

蓮太郎は延珠に膝を貸してやりつつ考え事だ。

そして聖天子もどこか悲しげな目でいる。

 

「お前のせいじゃない」

「え?」

「全員話せば分かる奴等ばかりじゃない。それが分かっただけでも今回は上々だ」

 

優磨の言葉に聖天子は視線を落とす。

 

「頭では分かっているんです。でも…」

 

そこまで言った聖天子の頭を優磨は優しく撫でる。

 

「お前はよく頑張ったよ…嬢ちゃん」

「…はい…」

 

涙声になりつつ聖天子は答えた。

 

「しかし強烈な爺さんだったな」

「そりゃ一代でエリア纏めあげて長になったやつだぜ優磨さん」

 

然もありなんと言ったところだろう。

 

「どちらにしても斎武には気を付けろよ…お前は味方も多いけど敵も多いんだからな」

 

優磨の言葉に聖天子は頷く。

聖天子の公約には呪われた子供の差別廃止がありそのため味方も多いが敵も多いのが現状だ。

 

「思い描くのはいいが思いだけが先走りすぎると周りが見えなくなる。その結果殺されたら嫌だぞ」

「覚悟の上ですよ」

「周りはどうする?少なくとも俺はお前が死んだら悲しい」

 

優磨の言葉に聖天子はミルミル顔を赤くする。

 

(俺邪魔なんじゃねぇか?)

 

蓮太郎が顔を引き攣らせるが聖天子は顔を火照りを抑えるため備え付けの冷蔵庫からジュースを出す。それを優磨と蓮太郎にも渡し一口飲むと一息吐く。

 

「本当は…側近の女中の方にも言われているのです…跡継ぎをと…でも私は本当は愛する方と結婚し…子を成したいと思うのです」

「良いんじゃないか?その方が祝福されるだろう。周りがなんと言うかわからないが少なくとも両親に愛される子供は生まれる。その方が良いさ…だけどよ、お前好きな人とかいるのか?」

 

ブッと聖天子と序でに蓮太郎が吹いた。

 

「いや…あの…」

「まあ居るにせよ居ないにせよ俺の写真飾っていたらそういう相手が現れたとき気まずいぜ?」

「な!何故それを!?」

 

聖天子は驚愕した。二枚重ねにした写真をフレームに入れると言う完全な隠蔽(と本人は思っている)を何故当の優磨が知っているのだろうか…

 

「あ、いや…」

 

保脇の情報だが態々いって怖がらせたくはない。

 

「ある情報筋の情報だ。だけど気になる相手くらい居ないのか?ほら…警備隊の隊長とか」

 

すごくアプローチをかけまくっていたため優磨が聞いてみると、

 

「や、保脇さんですか?あの人は…何て言うか…怖いと言うかゾワッとすると言うか…」

 

端的に言って気持ち悪いと思われてると言うわけだな…

 

(保脇…)

(ざまぁ…)

 

優磨と蓮太郎は笑いそうになったがそれを耐える。

 

「でも気になる相手くらい居ないのか?」

「居ないわけではないんですけど…」

(気になるどころかガッツリ惚れてるだろあんた…)

 

蓮太郎の内心の突っ込みは聞こえるはずもない。

 

「へぇ?どんなやつ?」

「や、優しくて…気遣いができて…渡しにたいして謙ったり敬ったりせずに普通に接してくれて…ちょっと昼行灯で…でも私をちゃんと女の子扱いもしてくれるかたで…かっこよくて…強くて…そして面倒見もよくて…大人の男性です」

「何かギャルゲーの主人公みたいなやつだな。すげぇモテ要素の塊みたいなやつじゃん」

「…………………」

 

あんただよ!っとすごく突っ込みたかったが蓮太郎はゴクンと飲み込み黙っておく。

 

「じゃあ自分の気持ち言ったら?大方そういうやつって言うのは鈍感だと相場が決まってる」

(自分のことだからよく分かってんな…)

 

と蓮太郎は口に出掛けたが我慢して…

 

「ただその人は体が少し特殊で…」

「ん?」

「や、やはり立場上子を成せる方と言うのは絶対条件なのはわかっていて…」

 

蓮太郎はそう言うことかと頷く。優磨の体は特殊だ…云わば性交が出来るのか…さらに子を産ませることが出来るのか気になっているのだろう。

 

「おいおい…まさかそいつ不能なのか?」

「不能…?」

 

聖天子は一度止まりそれからまた赤面する。

 

「なな何言ってるんですか!そういう話ではありません!」

「ええ!?じゃあ他に何があるんだよ」

「……なあ、そういえば優磨さんってどうなんだ?」

「あ?」

「ほら、優磨さんって体の殆ど機械じゃん。そう言うのって出来るのか?」

「ああ、相手居ないから無いけど出来るぞ。生殖器は生身のままだし」

 

聖天子は驚いた顔で蓮太郎を見る。

だが蓮太郎はそのときには既に寝たフリに入っていた。

 

「ありがとうございます…里見さん」

「え?」

「あ、何でもありません…あのですね優磨さん…少しお話が…」

「ん?おう…」

 

少し真面目な聖天子の目に優磨も真剣な表情で見る。

 

「私は…」

「私は?」

「私はあなたをお慕………」

『だめぇええええええ!!!!』

『っ!』

 

あともう少しと言うところで夏と春が飛び起きた。

 

「ど、どうした?」

「今僕のレーダーが警告音を響かせたんだ…」

「同じく…」

 

凄まじいシンクロ率である…さすが双子。

 

「抜け駆けしようとしたでしょ…」

「な、なんのことでしょう…」

「その胸で優磨兄様を誘惑しようと…」

「してません!」

「???」

 

優磨が疑問符を浮かべていると夏と春が突然喋るのを辞めた。それと同時に夏世と延珠を起きてキョロキョロしだす。

 

「延珠?」

 

蓮太郎も寝たフリをやめる。

 

「何か嫌な予感がする」

『え?』

 

延珠の言葉に疑問符を浮かべた瞬間車が大きく横に揺れた。


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