ブラック・ブレット 双子のイニシエーター   作:ユウジン

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第9話

キーンコーンカーンコーン…今日も勾田高校の一日が終わる。これから部活等に興じる者も多いがこの高校にかよう一人、空前絶後の不幸顔にしてロリコンでホモでゲイバーのストリッパーこと里見 蓮太郎には関係ない。

 

「何か今俺の尊厳が著しく損なわれたような……」

 

蓮太郎は首をかしげつつ校門に向かう。今日は優磨に何か用事に付き合って欲しいとの事で早めに優磨の家に向かおうとしていた…のだが何故か校門に女子の人垣ができていた。

 

「ち…邪魔だな…有名人でも来てんのかよ」

 

蓮太郎は少し背伸びしてみる。すると居た…と言うか頭ひとつ抜け出ている。

 

「優磨さん!?」

「おーう蓮太郎。迎えに来たぜ」

 

優磨は愛車のポンコツ丸【命名者・夏】を軽く叩きながら蓮太郎に手を振る。それを見た蓮太郎は頭を抱えた。優磨は好みはあれど基本的にイケメンだ。しかも服のセンスが良いため自分に似合う服をサラッと嫌みなく着こなしている。しかも身長が高い男性は二、三割かっこよく見えるため優磨くらいの背丈と更に比較的肩幅もあるのでそりゃあ女子達の人混みができるわけなのだが…

 

(お前らより一回りは年上だけどな…)

 

蓮太郎は嘆息しながら人混みを掻き分け優真の所に来る。

 

「態々悪いな」

「良いって良いって。乗んなよ」

 

優磨はドアを開ける。

 

「なあ…これ動くのか?」

「動くんだよこれが」

 

蓮太郎が言うのも無理はない。明らかにこれは元々はこの軽自動車…多分スバルのレックスだと思うが所々塗装が剥げてるし錆び付いてる部分もある。

 

「まあ良いか…」

 

後ろに荷物を放りつつ蓮太郎がドアを閉めるが…

 

「ん?半ドアになったのか?」

 

そう思い何度も力を込めて閉めるが何度やっても半ドアの音…

 

「ああ、それ何か閉めるとちゃんと閉めてるのに半ドアの音するから」

「なんだそれ…」

 

蓮太郎はずっこけながらドアを閉めていると優磨も入ってくる。

 

「さてと…」

 

優磨は鍵を入れて回す。

キュルキュル音が出るがエンジンが掛からない。

 

「あれ?」

「おいおい…」

 

何度か回すが点く気配がない。

 

「ありゃ…機嫌悪いみたいだな」

「人間じゃねぇんだから…」

 

すると優磨はエンジンを蒸かしつつ…

 

「ふん!」

 

ごん!っとハンドルと叩く。するとプスンプフンと情けない音を出しつつエンジンが掛かった。

 

「ようし!だから好きだぞスバックス!」

「なんだその名前…」

「スバルのレックスだからスバックスだ。夏たちはポンコツ丸とか言う名前で呼ぶけどな」

「俺でもポンコツ丸って呼ぶよ…」

 

そして優磨がアクセルを踏むと、パスンピスン音を立てながらポンコツ丸が動き出した。

ちなみに余談だが蓮太郎はそのあと女子たちに優磨の事について質問攻めにあったとか…

 

 

 

 

 

 

そしてそれから一時間走り続け聖居が見えてきたと思った次の瞬間バフン!と言う音ともにエンジンから煙が上がり車が止まった。

 

「あらら!」

「嘘だろ!?」

「大丈夫だ…一時間ほど休憩させればまた動くようになる」

「完全に遅刻だよ!」

「仕方ねぇ…蓮太郎、手伝え」

「は?」

 

 

 

それから更に十分後…

優磨と蓮太郎はフラフラしながら聖居に入り案内されるとそこは記者会見室だった。更にそこでは聖天子と秘書が会見のリハーサルをしていた。

 

「練習とかするんだな…ゼィ…」

「そりゃあの子だって人の子だぜ…ゼハァ…」

 

すると聖天子は優磨の顔を見るとパァッと瞳を輝かせ小走りにやって来る。

 

「お久し振りです。優磨さん、里見さん」

「ああ…」

「?お疲れのようですけど何かあったんですか?」

「あー…そこまで車を押してきてたからな」

「はい?」

「この人の車が聖居が見え始めたところでエンスト起こしたんだよ」

「いや~スバックスの機嫌がな」

「あれまだ有ったんですか?」

「しってんのか?」

 

蓮太郎が聞くと聖天子が笑う。

 

「はい。何時完全に動かなくなっても可笑しくないあの面白い形の車ですよね」

「いやいやかっこいいだろ」

 

そんな話をしつつも優磨たちは謁見室に通される。

それからお茶を貰いながら優磨は本題に入る。

 

「で?何のようだ?」

「今から一週間後…ある人物と秘密裏に会談が行われます。その際の護衛を二人に頼みたいのです」

「ある人物?」

 

優磨が聞くと聖天子は頷き、

 

「大阪エリア大統領…斎武 宗玄」

 

優磨と蓮太郎は眉を寄せる。

 

「恐らく今なのは菊之丞さんが居ないからでしょうね」

 

天童 菊之丞…聖天子の側近にして木更の祖父だ…確か…

 

「ロシアに訪問中だっけか?」

「はい」

「大方です鬼の居ぬ間に洗濯ときたか」

「あのジジイの考えそうなことだぜ」

 

蓮太郎の言葉に優磨と聖天子は驚く。

 

「面識があるのか?」

「昔、天童にまだ居た頃に菊之丞(糞ジジイ)が俺を政治家にしようとしていてそんときにな…」

「そう言えば菊之丞さんに聞いたことがありますね…確か仏師の修業もさせられたとか」

「へぇ~じゃあ蓮太郎。俺の墓はお前に頼むわ」

「絶対嫌だ」

 

一瞬場は和むがすぐに顔を引き締め優磨は聞く。

 

「どんなやつだ?その斎武ってのはよ」

「アドルフ・ヒトラー」

『はい?』

 

優磨と聖天子は唖然とする。

 

「一番しっくり来るんだよ。アドルフ・ヒトラーがな。優磨さんだって知ってるだろ?斎武の独裁政治位なら」

「まあ一般教養程度ならな…そんで暗殺されかけること早20数回…」

「ああ、その逆に相手を暗殺することも厭わねぇけどな」

 

蓮太郎は頭をガリガリ掻くと、

 

「だけどよ…あんたにだって自慢の護衛居るだろ?」

「ええ、今紹介します」

 

そう言って入ってきた6人程の男達は全身が白…上から下まで真っ白な服を着ており何て言うか…変な制服だ。憲兵隊みたいだな…

 

「保脇 卓人三尉です。よろしく、牙城君、里見くん」

 

そう言った保脇は手を出す。

 

「よろしく」

 

優磨は愛想笑いを浮かべながら応じた…とは言え瞳が完全に歓迎してない。何て言うか嫌な目だ。

そうしていると蓮太郎も手を出されたが無視して聖天子に怒られる。

 

「では受けていただけるのならばまた連絡を…」

 

予定が押しているのか聖天子は急いで立ち上がりながら行く…その途中優磨の方を時間がないのが残念そうな目でチラホラ見ていたが優磨の方は全く気付かず手を振っており蓮太郎は聖天子に哀れみを含んだ顔を浮かべ保脇は優磨を呪い殺しそうな目で見ていた…

 

 

 

 

 

 

さて蓮太郎と優磨は謁見室を出る。

 

「出口何処だよ」

「安心しろよ。俺の義眼のナビゲーターシステムで一発だ」

「あんたの義眼何でもありだな…俺のなんて戦闘以外役に立たないぜ?」

「そうか?」

 

優磨は義眼を起動させるとキュインと言う音と共に瞳孔が開き青くなるとナビを表示する。

 

「此方だな…」

 

すると、いきなり横からDANGERと言う文字と共に矢印が現れた。優磨はそのガイドのままに蹴りを出す。

 

「え?」

「ぐぇ!」

 

蓮太郎は驚いたが見てみればさっきの憲兵隊擬きの一人が警棒片手に吹っ飛んで壁に激突していた。

 

「ったくよぉ…」

 

優磨は煙草に火を着けつつ角の方を見る。

 

「何か用かよ」

 

すると保脇を筆頭とした数名の護衛隊の人間が出てきた。

 

「確か…保脇だったか?」

「単刀直入に言う…護衛の任務を降りろ…聖天子様の隣に居るのは俺だ」

『はぁ?』

 

優磨と蓮太郎は唖然とする。

 

「何が救国の英雄だ…俺があの場にいれば俺がステージⅤを倒していた!」

「べつに隣にだったら何時もいるだろう」

 

蓮太郎の言葉に保脇は目尻を上げる。

 

「ふざけるな!会談の場の隣と車中を一緒にするな!」

「別に護衛するだけだしそんなに差がないだろう?」

 

優磨が言うと保脇はイヤらしいと言うか本能的に男女問わず嫌悪感を催す笑みを浮かべる。

 

「聖天子様は美しくなられたと思わないか?」

「どういう意味だ?」

「そろそろ跡継ぎが必要だと言うことだよ」

「うわぁ…」

 

優磨は大袈裟に気持ち悪い物を見る目をした。

 

「お前自分の年考えろよ…見た感じ俺とそんな年の差感じないぞ…普通にキモいわ」

「貴様…」

 

保脇は睨んでくる。

オーコワイコワイ…

 

「そうか…貴様があの牙城 優磨だな」

「どれかは知らんが確かに俺は牙城 優磨だが?」

「ふん!どんな色目を使ったのかは知らんが大したものだな」

「は?」

「聖天子様は貴様の写真を常に机の上において毎夜悩ましげな息を疲れている。全く…貴様のような野獣のどこが良いのやら」

「???」

 

優磨には全く意味がわからない。

 

「貴様に抱か…」

「何で知ってんだそんなこと…」

『………………』

 

優磨の一言でその場の時が止まる。

 

「お前まさか部屋に入ってんのか…?うわ…無い…マジでない!つうかそれ犯罪じゃね?うわー、十も過ぎれば女は人に見せたくないものも出るというのにマジでキモいわ!」

 

女は色々十も過ぎれば出てくる…16の女の子にもなれば尚更だ…それを…

 

「マジでキモいな…同じ男として恥ずかしいぜ…」

蓮太郎もドン引きしてる。

 

「う、うるさーい!とにかく貴様らは断れば…」

『断る!』

「なっ!」

 

保脇は驚愕するが、

 

「なら手足を折れ!」

 

保脇の命令で他の面々も動き出す。

蓮太郎もとっさに構えるが、

 

「蓮太郎、こんなところで暴れるのは不味いぜ」

「じゃあ…どうすんだよ…」

「こうすんだよ」

 

優磨は煙草を口から抜くとピン!と指で弾く。

 

『え?』

 

優磨以外が全員視線でそれを追う…そしてその先には…

 

『火災報知器!?』

 

優磨以外が驚いて声を出す中煙草の火が着いた方がぶつかる…そして次の瞬間耳を劈くような警報と共に消火剤と水が降る。

 

「うわぁああ!」

「さ、蓮太郎帰るぞ~。あ、足滑るから気を付けろよ」

「あ、はい」

「貴様!待つんぎゃ!」

 

保脇は思い切り消火剤に足を滑らせ転び…

 

「ぐぇ!」

 

優磨に踏まれて潰れた蛙のような声を出した。

 

「そうだ蓮太郎。今日は家で飯食っていけよ」

「え?いいんですか?」

「最近仕事無いだろ?すき焼き食おうぜ!」

「よぅっし!延珠呼びます」

「貴様等まぅわ!」

更に滑りまくって全身消火剤だらけになった保脇は射殺せそうな目でにらみ続けた。




書き上げてから思った…犯罪だこれ…
と言うわけで9話です。

裏設定ですが聖天子の写真はフレームに入れてありますが一番上に風景写真を入れてあります。そして下に優磨の写真があり聖天子様は完全に隠してるつもりです。とは言え中学生のエロ本の隠し方みたいな奴では結構普通に皆にバレています。
そのため女中の皆が聖天子に女性的な服を着せる際は「優磨さんが見てくれますよ」と言う必殺の言葉があります。

まあどうでもいい舞台裏でした。

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