魔法少女リリカルなのはStrikerS~道化の嘘~   作:燐禰

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第二十話『欺く幻影』

――新暦75年・ミッドチルダ西部――

 

 

 大通りから道一本離れた路地、賑わう大通りとは対照的にそこは一部を除き静まり返っていた。その一部、時空管理局の部隊らしき人々が居る所では、長い紫髪の女性……ギンガ・ナカジマが指揮を行っていた。指揮を行っているのは当然の如く所属する陸士108部隊で、現在は密輸ロストロギアの回収を行っていた。

 以前部隊長であるゲンヤがはやてから密輸ルートの調査を依頼され、その調査の過程で偶然保管されている違法ロストロギアを発見し検挙と回収を行っていた。作業は順調に進んでおり、そろそろ搬送手配をと考えていたギンガの元に、一人の男性が近付く。

 

「ギンガ」

「え? あ、カルタスさん……あ、いえ、カルタス二尉」

 

 現れたのは同じ部隊に所属しギンガの上司に当たるラッド・カルタス二等陸尉だった。

 

「今日は、別件の調査で来られないのでは無かったんですか?」

「ああ、その予定だったが……ナカジマ部隊長からの指示でな」

「……まさか」

 

 カルタスがこの場に現れた理由にギンガは心当たりがあった。いや、父であり部隊長でもあるゲンヤ・ナカジマ三等陸佐がカルタスをこの場に寄こしたのなら、その理由は一つしかないと確信していた。

 カルタスはギンガを肯定する様に一度頷き、端末を開いて通信を行う。少しして画面にはゲンヤの姿が表示され、カルタスは綺麗な敬礼と共に口を開く。

 

「ラッド・カルタス二等陸尉。現地に到着しました」

『そうか、急にすまねぇな』

「いえ、自分がここに送られたと言う事は……やはり『シャドー』が」

『……ああ』

 

 シャドー……それは108部隊内でもゲンヤ、ギンガ、カルタスの三名しか知らない暗号。彼等にとって最重要警戒をすべき相手を指し示す単語。元々その存在に気付いたのはゲンヤであり、部隊の纏め役として行動することが多いカルタスとギンガだけには打ち明けた存在。痕跡の欠片も残さず、影だけが見え隠れする謎の人物。まだゲンヤ達はその存在が個人か組織かも掴んでいないが、シャドーと言う名で総称していた。

 

「ナカジマ部隊長は、今日シャドーが現れるとお考えで?」

『……証拠はなにもねぇ、言ってみりゃただの勘だが……来る』

「しかし、父さ……部隊長。もしかしたら、もう既に……」

『……ああ、紛れている可能性もある。十分警戒してくれ』

「了解です」

 

 そうギンガだけでなくゲンヤもカルタスもそうだが、シャドーの顔も性別も知らない。自分達の部隊に存在するとは考えたくないが、絶対に居ないとも限らない。そもそも裏の人間なら、変身魔法が使えたとしても不思議ではないし、警戒していなければ用意に裏をかかれる相手だ。

 緊張が見てとれる顔で通信を終え、ギンガとカルタスは全体がよく見渡せる位置まで移動する。

 

「搬送準備は、後どれ位で完了するんだ?」

「もう間もなく……10分位でしょうね。あの、カルタス二尉」

「なんだ?」

「シャドーは、どのタイミングを狙ってくるでしょうか?」

 

 シャドーが108部隊……ゲンヤの前に初めて現れたのは、約6年前だった。いや、その当時は誰もシャドーの仕業だとは思っていなかったので、『初めて現れていたのは』6年前と言う表現が正しい。

 初めはそんな存在など夢にも見ていなかった。密輸ルートを調査していて、違法ロストロギアが保管されている可能性が高い拠点を突きとめ、現地に踏み込んでみたが何も無かった。調査が間違っていたのか、勘付かれて移動されたのかは分からなかったが、ゲンヤも、当時調査にあたっていたカルタスもなにも疑問を抱いてはいなかった。翌日その密輸に関わっているであろう局員が、どこからか情報をリークされ失脚したのも偶然だろうと……そこまでは思っていた。

 しかしそれが二度、三度と繰り返されると疑問を抱き始める。何者かが自分達の調査を先回りしているのではないかと……そして丁度そのタイミングで、ゲンヤは何者かの視線を時折感じた。神経質になり過ぎているのかもしれない、結んで考えるのは早計かもしれないと何度も思ったが、陸士として叩き上げた彼の鋭敏な直感がそれを許さなかった。

 しかし局に進言する事は出来ない、何故なら証拠は何もない。その状態で管理局の調査を先回りしている者が居る等と伝えても、妄言だと一蹴されるのがオチだろう。そもそも何が目的で、どのタイミングで現れるのかも分からない。周到で慎重で、痕跡の欠片も残さない怪物。だからこそ信頼できる自分の娘と10年来の部下であるカルタスにしか話はしていない。

 

「今、この現場に踏み込む様な奴では無い。潜んでいたとしても、このタイミングで動く事はないだろう。となれば、地上本部への搬送時を狙う可能性が高い。どうしても警備は手薄になる」

「私も賛成です。やはり狙ってくるならそこでしょうね」

「ああ、だから輸送時には俺かギンガ、状況次第だがどちらかが同行しよう」

「了解です」

 

 二人がシャドーに対しての対策を話していると、足音が聞こえ陸士の制服を着た複数人の男女が歩いてくる。小隊か何かかと思える局員達は、ギンガとカルタスの姿を見つけて歩いてくる。そして二人の前に立って敬礼を行い、代表らしき男性が口を開く。

 

「地上本部首都輸送部・第三輸送隊です! ゲンヤ・ナカジマ三佐の依頼により、違法ロストロギアの搬送に参りました。私は今回の輸送隊の代表を務めてます――と申します」

「御苦労様です。自分はラッド・カルタス二等陸尉。そしてこちらが本件の責任者の……」

「キンガ・ナカジマ陸曹です。今回はよろしくお願いします」

「こちらこそよろしくお願いいたします」

 

 どうやら現れたのはゲンヤが手配した輸送隊らしく、二人は簡単な挨拶を交わしてから、今回の輸送対象ロストロギアについて説明をしていく。

 打ち合わせは数分で終わり、輸送隊の面々は視線を動かして搬送用トラックを確認する。

 

「積み込みは、どれぐらいで完了しますか?」

「もう間もなく、後数分で完了します。なので少し待機でお願いします」

「了解しました」

 

 綺麗な敬礼をして少し離れた場所に移動していく面々を見送りながら、カルタスは何かを考える様な表情で沈黙する。そして少し間を開けた後、ギンガに対して念話を送る。

 

(……ギンガ)

(カルタスさん? どうして念話を?)

(妙だと思わないか?)

(なにが、ですか?)

 

 カルタスは何か思う所があるらしく、他に聞こえない念話で会話を行う。それは即ち非常に重要な内容であると理解でき、ギンガも緊迫した声で応える。

 

(いくら何でも到着が早すぎる。ここは中央区画からかなり距離がある。むしろ俺の予想としては、搬送準備完了後に輸送隊を待つと思っていた)

(確かに……私が確保完了報告をした時に手配したとしても、いつも通りならまだ20分位は……カルタスさん)

(ああ、シャドーである可能性が高い)

 

 そう今ギンガ達が居るのはミッドチルダ西部。今回は輸送ヘリが着陸できる場所が無い為、輸送用トラックでの搬送になる。トラックはこちらの部隊が用意する旨を事前に伝達しているので、輸送隊は護衛用車でこの場まで来る筈。そして今回は搬送先が地上本部である為、輸送隊もそちらに所属している者達が来るのが通例である。中央区画ここまで最短距離で来るにはいくつかの大通りを通る必要がある事を考えても、この到着は早すぎる。

 

(……仕掛けますか?)

(いや、流石に現時点で確保するのは不味いだろう。可能性が高いとは言え確実ではない)

(ですが、もしシャドーなら見過ごせばロストロギアを……)

(……そうだな。よし、なら俺が搬送しよう。現場責任者であるギンガが離れるのは不味いが、俺なら大丈夫だ)

(……成程)

 

 カルタスの提案を聞き、ギンガは少し考える。輸送隊の中にシャドーが紛れ込んでいる可能性を考えると、ここは信頼できる相手に任せるのが最善の手だ。

 しかし心配なのがここに居るのが全てでは無く、輸送時に強襲を仕掛けてこないかと言う事。カルタスは優秀な魔導師であり、そう簡単に後れを取る事はないだろうが……相手は犯罪者。どんな手を使ってくるか分からない。

 

(考えている事は分かる。襲撃があれば短縮で通信コールを一度鳴らす、そうしたらすぐ応援を手配してくれ)

(分かりました。それでは私は、適当な理由を付けて輸送隊をここに留まらせます)

(頼む、まだ内部に魔力反応が有るとでも言って、時間を作ってくれ)

(了解です。お気をつけて)

 

 ギンガと念話を終えた後、カルタスは素早くトラックの運転席に乗り込み、周囲の声を無視して発進させる。その急な状況に戸惑う者達へは、ギンガが順に適当な理由を付けて説明をしていく。

 部隊員と輸送隊員全てに十数分かけて説明を終え、何とかこの場に留まることを了承してもらう。後はいつでも応援に駆け付ける様に警戒をと考えていたギンガの元に、通信を知らせる音が鳴る。一瞬険しい顔になったギンガだが、ワンコールではなく鳴っており、画面にはゲンヤの名前が表示されていた。一先ずホッと胸を撫で下ろし通信を繋ぐと、すぐにゲンヤの姿が表示される。

 

『どうだ、そっちの様子は?』

「ッ!?」

『……ギンガ?』

 

 通信を開いたギンガの目は一瞬で大きく開かれ、どんどん顔が青くなっていく。その視線はゲンヤに向いておらず、ゲンヤの後ろへと向いていた。

 

「……なん……で……」

『ギンガ? どうした?』

「なんで! カルタスさんがそこに!?」

『お、俺かい? いや、俺は任務を終えて今戻ってきた所だけど……』

「!?!?」

 

 そうギンガの前に表示されたモニターには、居る筈の無い人物……ほんの20分前まで自分と話をしていたカルタスの姿があった。そして戸惑うゲンヤとカルタスの言葉を聞き、ギンガの頭には先程の会話が蘇る。

 何故あのカルタスは輸送隊の到着時間に疑問を持った? あの時ギンガはまだ、確保完了報告をいつ行ったか伝えていなかった筈なのに……何故あのカルタスは自分が搬送すると言った? ゲンヤに通信で確認を取る等の手段もあった筈なのに……

 

「やら……れた!!」

 

 顔面蒼白になったギンガだが、すぐに顔を上げトラックが向かった路地へと全力疾走で向かう。分かっていない訳では無かった。でも確かめずにはいられなかった……当然、20分も前に出たトラックの姿は、どこにもなかった……

 

「……わ、私のせいで……」

 

 ギンガの膝は力を失い地面につき、悔しそうに唇を噛みながら、素手で地面を叩く。彼女は完全にシャドーの思惑通り動かされ、相手がロストロギアを手に入れる助けまでしてしまった。

 それは……完全な敗北だった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――陸士108部隊・部隊長室――

 

 陸士108部隊の部隊長室に設けられた応接用のソファーには、肩と頭を垂れ目に涙を浮かべているギンガの姿があった。

 

「……ごめんなさい……私のせいで……」

「いや、お前のせいじゃねぇ。ヤツが完全に上手だった。俺達が警戒している事を逆手にとってカルタスに化けやがるとは……」

「しかも、長い付き合いのギンガが気付かない程完璧に……ですね」

 

 彼等は今回シャドーに完全に出し抜かれた。ゲンヤ達がシャドーを警戒している事、それをシャドーは知っており逆に利用してきた。だからこそギンガはシャドーの対策の為に来たカルタスを疑わなかった。その上、態々通信を開いてゲンヤまで見せて来るとは全く予想できていなかった。

 あの輸送隊も、シャドーがゲンヤの名前で事前に手配したものだろう。そう考えると、部隊が現場に着いた時にはもう、見られていたのかもしれない。シャドーは最低でも二人以上で、変身魔法を心得ている……今回得られた収穫はそれだけ、密輸ロストロギアと交換ではあまりに釣り合わない内容だった。

 

「……カルタス」

「はい」

「今日中にこの部屋引っくり返せ。確実に一つか二つ盗聴器がある筈だ」

「……了解」

 

 今回シャドーがあれだけ情報を得ていたのは、ゲンヤ達の会話や部隊の動きを知る術があったと言う事。ならば一番可能性の高いのは、全ての報告が集まりシャドーの対策を話し合っていたこの場所だろう。管理局の部隊……しかも部隊長室に盗聴器を仕掛けるなど信じられない事ではあるが、それをやってのけるだけの力を持った相手である事は間違いない。

 

「……ギンガ、あんまり落ち込むな。今回の責任は俺に――うん? 通信か……」

 

 落ち込むギンガに慰めの言葉をかけようとしたタイミングで、ゲンヤの端末に通信が入り、ゲンヤはタイミングが悪いと思いながら通信を開く。

 

『お疲れ様です。ナカジマ三佐。こちらは地上本部首都輸送部です』

「ああ……今回の件だろ?」

『ええ……申し上げにくいのですが……』

 

 通信はどうやら違法ロストロギアを届ける予定だった部署からの連絡らしく、それはどう考えても今回の失態の件についてだった。ゲンヤは申し訳なさそうな顔で見つめてくるギンガに軽く手を振り、髪を数度かきながら口を開く。

 

「今回の件の責任は全て俺にある。処分でもなんでも……」

『処分? そんな、輸送手配書のサインがもれていたぐらいで大袈裟な。そちらの部隊では初めてですが、ままありますのでお気になさらず』

「……は? ちょ、ちょっと待て、今なんて言った?」

『え? ですから今回搬送された違法ロストロギア輸送手配書に、部隊長のサインがもれていたので、後日こちらに出向いてご署名を頂きたいんですが……』

 

 ゲンヤだけでなく、ギンガもカルタスも通信士が何を言っているかすぐには理解出来なかった。今回ゲンヤ達は完全にシャドーに出し抜かれ、違法ロストロギアを奪われた筈だった……そう、奪われたのだ。なのに今の通信士の言葉をそのまま受け取るなら、搬送は完了したがサインがもれていたという内容。それではまるで、違法ロストロギアがちゃんと届いた様な……

 

「……違法ロストロギアが搬送されているのか? 全部?」

『ええ、リストと照合しましたので間違いありません。必要であれば送信しますが?』

「頼む」

 

 通信士からはすぐに今回の搬送完了リストが送られてきて、ゲンヤはそれを頭から一つ一つ確認していく。魔力チェック等も完全に行われている様で、それらが本物であるのは間違いが無い。

 

「……確かに、全部ある……」

『よろしいでしょうか? では再度のご署名の件なのですが……』

「ああ、明日にでも行く」

『了解しました。お待ちしております』

 

 通信士との話を終え、ゲンヤは端末を閉じてギンガとカルタスの方に向き直る。二人もまるで意味が分からないと言いたげな顔をしており、現状が把握できてないとも言えた。それも当然だろう。何故ならシャドーは一度ゲンヤ達から確かにロストロギアを奪ったのだ。しかし、それは現在予定通り地上本部に送られており、つまる所態々苦労して盗んだものを、返してきたという事になる。しかも、わざわざゲンヤのサインが抜けている輸送手配書を作成して……

 

「……どうなってやがんだ? 何で一度盗ったものを返しやがった……」

「目当ての物が無かった……とかでしょうか?」

 

 或いはシャドーには何か狙っているロストロギアがあり、今回はたまたまそれが無かったので返してきたと考えることもできるが……やはり態々シャドーにリスクを冒してまで盗品を返す理由は無い。その事で得をするのは、何故か予定通り任務を完了しているゲンヤ達であり、これではまるでシャドーが自分達の責任問題を態々問われない様にしてくれとの見方もできる。

 頭を抱える三人の元、再びゲンヤに通信が入り、どうやら部隊の受付からの様だ。

 

「どうした?」

『部隊宛で小包が届いているのですが……差出人の所にはシャドーとしか書かれてないんです』

「なんだと!? す、すぐ持ってきてくれ」

『分かりました』

 

 もう本当に三人には何が起こっているのか分からなかった。何でシャドーが自分達に小包を届けるのか、まったく意図が読めなかった。

 しばらくして小包は部隊室に届き、三人はそれをジッと見つめる。

 

「金属反応等はありませんが……」

「……開けてみろ、警戒は怠るな」

 

 一見普通の小包に見える箱を、カルタスが警戒しながら開くと……そこには高級そうな菓子折りが入っていて、一通の手紙が貼り付けてあった。

 ゲンヤが再び首を傾げながら手紙を開き、机の上に置くとそこには機械で印刷したと思われる文字が並んでいた。

 

『親愛なる陸士108部隊の方々へ、今回はこちらの都合で大変なご迷惑をおかけしました。特にギンガ・ナカジマ陸曹には、騙す様な真似をしてしまい精神的に傷つけてしまった事を深くお詫び申し上げます。心ばかりの品であり恐縮ですが、よろしければ皆様で召し上がってください。今後のご活躍を心から応援しております……シャドーより』

 

 手紙を読んだ三人の元には、重い……それは凄まじく重い沈黙がのしかかる。

 

「……コイツは、本当になんなんだ……」

「……分かりません」

「……同じく」

 

 まったく意図も目的も読めないシャドー……と言うか態々詫びる位なら初めからするなと、叫びたい気持ちを必死に押し込めながら、三人はしばらくその菓子折りと手紙を見つめていた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 薄暗い路地裏で二つの影が向い合う。クラウンとドゥーエ、互いに敵と見定めながらも共闘するいびつな関係の二人。

 

「……ちゃんと仕掛けてくれた? バレてないでしょうね」

「そんなヘマはしないよ。バッチリ仕掛けてきたよ」

 

 二人は今回の件に置いてクラウンがカルタスに、ドゥーエがゲンヤに化け、見事目的を達成していた。ゲンヤ達にしてみれば何もしていない様にも感じるが、クラウン達の最大の目的は『一度奪ったロストロギアを上手く返却すること』であり、ゲンヤ達が理解出来なかった行動は正に筋書き通りに進んでいた。

 

「……じゃあ、アレが然るべき場所に移ったら……行動開始ね」

「うん。やっと掴んだ尻尾なんだから、確実に捕まえたいね」

「……貴方は今部隊所属だっけ? 抜け出すの大変なんじゃないの?」

「ホントにね……出来れば夜に動きたいね。今回の手は二度も使えないしね」

 

 今回クラウンが部隊を抜け出してこの場に来ているのは、協力者となったレゾンのおかげでもあった。クラウンは片腕でありリンカーコアを大きく破損している。その為定期的に診断が必要だとして、それを口実に抜け出しており、レゾンが偽の診断書を作成済みだ。

 

 しかしこれは何度も使える手では無い。特に近く動く事があれば、その時は別の手段を考えなければならないが、あまり頻繁に出ていては怪しまれてしまう。なので都合が良いのは夜であり、寝たことにしてベットに幻影を置いて抜け出すのが一番だった。

 

「……まぁ、ヘマはしないで頂戴ねクラウン」

「そっちこそ、油断はしない様にね」

「……じゃあ、連絡は例の方法で」

「了解」

 

 暗闇の中二つの影は背を向けて歩き去る。クラウン、ドゥーエどちらも潜入や変装に長ける工作員であり、利害の一致している協力者同士。二人が大きく動く時は、もうすぐそこまで迫っていた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




という訳で、クラウンはゲンヤ達からはシャドーという名で呼ばれています。


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