おかしな文章が出来上がってるかもしれませんが、久し振りなので出来れば広い御心で許容していただければ嬉しいです。
それでは!どうぞ!
さやかは夏目の元へと走り、手伝いを申し出た。勿論、夏目も最初こそはその申し出を断ったのだが、さやかは「断られても行くからね!」と断言すれば、夏目も断りきれずに申し訳なさそうな顔をしながら八ツ原の森へと入っていった。
「それで?誰を探してるの?」
「ああ……こいつらを祓ってる人がいるらしくて、その人を探してるんだ」
それを聞くと、さやかはあからさまに顔をしかめた。
(退治屋が来てるってこと?……それともただの祓人か。どちらにしろ、妖怪たちに危害を加えるなんて)
さやかはそこまで考え、ふと、周りに多数の妖怪の気配があることに気づいた。それとほぼ同時に妖怪の手が夏目とさやかの足首を捕まえ、転がし、隠れていた妖怪たちが一斉に夏目とさやかを襲い出した。
『人間だ』
『人間がいるぞ』
『おのれ人間め』
『我らを追い出しに来たか』
「ちょっ!?違うから!私達は貴方達を追い出しに来た人間じゃーーー」
「わ……違……っーーニャ、ニャンコ先生っ」
さやかはなんとか誤解を解こうと言葉を投げかけ、夏目はニャンコ先生へと助けを求める。しかし、妖怪達はその言葉を聞かず、ニャンコ先生もまた助けるそぶりはない。
「こら、違うぞ。そのお方はなぁ」
そう言って一つ目の妖怪もまた止めようとするが、しかし妖怪達の猛攻は止まらない。
「小物ばかりだ。そろそろ自分で払えるようになれ。それくらいなら吹き飛ばせる。それかさやかにやってもらえ。そいつも祓えるぞ。でも早くしないと鼻の穴や耳から脳を吸われるぞ」
「ヒッ……わっ……わーーー!やめろ、セクハラ妖怪共〜〜っ!」
「ちょっ!?夏目君!ボケてる場合じゃないから!?」
さやかは妖怪達の猛攻の中、なんとか自身のポケットに入ってる紙を取り出し、使おうとするが、夏目のボケのような言葉についツッコミを入れてしまった。
そんな会話の間、一つ目とニャンコ先生はというと……。
「せくはら?」
「知らんのか。セクシャルハラスメントの略だ」
こんな会話をしていた。夏目達を助ける様子はない。
「やめ……やっ……」
夏目はそこでなんとか妖怪達の猛攻を振り切ることができると同時に拳を握り、振り下ろす。ニャンコ先生の頭へと。
「やめさせろってんだ!このエセニャンコ!!」
その拳は、見た目はひょろい男で重いものが持てそうにもない姿をしている夏目からは想像も出来ない力でニャンコ先生へと振り下ろされ、ニャンコ先生はそこで沈む。そして夏目は夏目で息を整えずに拳を握ったまま妖怪達へと言葉を投げかける。
「はぁ、はぁ……次は、どいつだ」
妖怪達はそんな夏目の姿に怯え、距離をとった。
「はぁ、はぁ……というか、三日月、なんで、祓ってくれなかったんだ!」
「いや、お札使おうとしたら全てが終わってたから」
夏目の抗議の声に三日月は少し引き気味に答える。三日月も三日月で、今の夏目の姿は少し怖かったようだ。
と、そこでその場にいた全員が気づく。
離れたところから聞こえる音を。そして、何かの気配を。
「夏目君!」
「夏目、つかまれ!」
夏目が何かの気配の方へと向こうとした瞬間、本来の姿である斑らの姿へと戻ったニャンコ先生の声と、そのニャンコ先生に既に捕まっていた三日月の手に引かれ、夏目は斑に乗ったまま高い木の上へと避難することができた。
「一体、何が……」
「高い霊力の者は清めの一波を放つことが出来るという。どっからか我々に向けて霊波が放たれたんだ。見ろ、下等な連中は見事に払われてる」
「……」
斑の言葉に三日月も下を見れば、確かに先ほどまで三日月達を攻撃して来た妖怪達は跡形もなくいなくなっていた。
そのまま斑らは下の清められた原っぱに降り立ち、夏目とさやかも降りてその場に立った。
「清めの一波……皆、消されてしまったのか?」
「いいえ。怖がって逃げただけだよ。だから、安心して」
「そ、そうか……」
夏目はさやかの言葉に安心したのか体から力が抜け、四つん這いになって息を長く吐いた。
「しかしここは清められ、下等連中はしばらく帰って来れんのさ」
「居場所をおわれたってことか……」
「そうね。それも、随分一方的な……」
そこでさやかは言葉を止め、力が飛んで来た方へと顔を向ける。その先に見えたのは、人の影。それも、見覚えのあるーー。
(……まさか)
さやかはそこである一人の和尚を思い浮かべ、考え込む。その後ろで、夏目が一つ目と牛、二匹の中級妖怪に胴上げされていることも知らずに。
***
その次の日の放課後。さやかは一人、八ツ原の寺に鈴も連れてやって来ていた。
「鈴は普通の人には見えないのが良いよね〜」
「そうね。それで?どうしてこの寺にやって来たのかしら?昨日の話に関係が?」
鈴は昨夜、さやかから昼の話を聞いていた為、昨日の放課後の出来事は全て知っている。
さやかは鈴の言葉に一つ頷き、声を掛けた。
「ごめんくださーい。どなたか、いらっしゃいませんか?」
さやかのその声はその場に響き、少しすると中から人が歩いてくる音が聞こえ、引き戸が横にスライドされる。現れたのは、眼鏡を掛けた和尚だった。
「はいはい。……おや、お若い方が何か御用でしょうか?」
「いえ。少し、お話を聞きに……昨日のお昼頃、もしかして八ツ原の野原でお祓いをしていましたか?」
「ええ。私の息子が少し敏感な子で、気休めですがこまめに清めて回っている次第です」
「なるほど……」
それにさやかは悪気はないのだろうと判断した。そう、悪気はないのだ。
「しかし、彼らも困っていて……」
「おや、どなたか困っているのですか?」
「……え?」
和尚の言葉に、さやかは固まった。
(……この人は、今、なんて……)
さやかは悟られないようにそっと横目で鈴を見る。その鈴はそれに気付くと、横に首を振った。その行動で理解する。
この和尚は、妖怪達が見えていない、と。
「……いえ、すみません。忘れてください」
さやかはそこで微笑みを向ける。その顔を和尚がジッと見ると、言葉を返す。
「……君は、見えるのかい?」
その和尚の言葉に、さやかは答えず、その場でお辞儀をして帰っていった。
同じ、八ヶ原の森にある、自身の屋敷へと。
***
その日の夜。
「……夏目レイコの孫に、伝えなくてよかったの?」
鈴が食事を机に置きながら、外を静かに眺めているさやかに問いかける。そのさやかは鈴に顔を向けず、答えた。
「夏目君なら問題ないと思う。それに、斑も姿を見ていたし、伝えないってことはまあ、問題ないんだと思う」
「……そう」
鈴はそれ以上何も言わず、食事を机に置く作業を終わらせると、猫の姿に戻った。
「さ、ご飯も用意できたから食べましょう」
「……そうだね!」
さやかは鈴の言葉に笑顔を浮かべると、机に這いずるような形で向かいだす。
その翌日に三篠と出会い、和尚と出会うことをさやかが知ったのは、そのまた次の日であった。