相談屋の少女   作:ルミナス

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第三話(上)

朝の学校、さやかは自身の教室近くまでやって来ると、そこに珍しい客人がいる事に気付いた。

 

(?誰だろ……?)

 

さやかはその男を見ていると、男はそのまま教室から離れ、さやかがいる方に歩き始めた。

 

そこで男は突っ立った状態のさやかに気付き、ぺこりと頭を下げて挨拶をしてきた。

 

それに習い、さやかも挨拶を交わすと、首を傾げて教室の中へと入ろうとすると、西村と夏目が出てきた。

 

「うわっ⁉︎」

 

「え⁉︎ご、ごめん三日月さん‼︎」

 

「あ、いや、気にしてないから大丈夫だよ……だけど、どうしたの?」

 

西村は三日月の問いに「いや〜」と言いながら廊下を見渡すと、首を傾げた。

 

「今、お前の事を聞かれたんだけどなぁ」

 

「?西村君の知ってる人?」

 

「ん〜、あまり見ない顔だったな……」

 

そう言ってもう一度廊下を見渡してから夏目に顔を向けた。

 

「悪かったな、起こして」

 

「いや」

 

「あ、寝てたのね、夏目君」

 

「まあな」

 

「しかしよく寝てるな、夜眠れないのか?何か悩みでも?」

 

それに対して、夏目は柔らかい笑みを浮かべて否定するのだった。

 

***

 

その日から少し経った日、さやかはいつも通り登校していると、霊夢と鉢合わせした。

 

「あ、霊夢!おはよう〜!」

 

「あら、おはよう」

 

「こんな風に会うのは珍しいね〜」

 

「そうね。でも、もっと珍しいものが前にあるわよ?」

 

その言葉に首を傾げながら前を見ると、夏目が妖怪と共に登校している姿があった。

 

「……何あれ」

 

「さあ?少なくとも、襲われてないから何もしないでいいと思うわよ」

 

「明日から夏目君は奇妙な人に見られるかも……」

 

「もう既に見られてるわよ。噂だって流れてるんだから」

 

そんな霊夢の言葉にさやかが溜息を吐くと同時に、夏目の『迷惑だ!』と叫ぶ声が聞こえてきたのだった。

 

***

 

その日の授業の間、夏目に纏わりつく一ツ目と牛の妖怪は、とても目立つ行動(視える人には)を夏目の周りでしていた。

 

(彼奴ら……授業に集中出来ないじゃん‼︎)

 

さやかはその所為でイライラし始め、心を落ち着けるために、休みの時間中は本を読む事にして気を紛らわせていた。

 

そして、お昼休み、さやかと妖夢は溜息を吐いた。

 

「どうしたんだ?二人して珍しい溜息を吐くなんて」

 

魔理沙はお弁当を食べる手を止めて聞くと、妖夢が疲れた顔をして答えた。

 

「今日の間、ずっと学校の外に二匹の妖怪がいるのですが、その妖怪達に集中を欠かれて……」

 

「同じく……」

 

そう言葉にして、再度溜息を吐く二人に、哀れみの気持ちを持ったアリス。

 

「本当に『視える』というのは良いことばかりじゃないわね」

 

「で?『視える』組の霊夢はどうだったんだ?」

 

魔理沙はニヤニヤした顔で弁当を食べ続けている霊夢に聞くと、不機嫌そうな顔で答えた。

 

「隙を見て札で攻撃したわ」

 

「だから途中で静かだったのか……」

 

「おかげで気持ちよく授業中に寝れたわ」

 

「いや、授業は寝る時間じゃないから‼︎」

 

「これで良く赤点を取らないわよね……素直に感心するわ」

 

アリスのその言葉に、霊夢は答える。

 

「そんなもの、勘で何とかなるものよ」

 

「勘でなんとかはならないけどね普通」

 

「本当、どうして此奴はこんなに勘が良いんだか」

 

さやか達はその後、昼休みの後の煩さを想像し、また溜息を吐くのだった。

 

***

 

その日の放課後、学校から出て歩いていると、途中で夏目があの二匹の妖怪の前で溜息を吐いてる姿があった。

 

「……ごめん、私は此処で」

 

「待ちなさい」

 

さやかは夏目の方に行こうとすると、それを霊夢が止めた。

 

「?どうしたの?」

 

「何でもかんでも突っ込むのは頂けないわ。あっちはあっちの問題。さやかは突っ込まなくても良い問題よ」

 

その言葉を聞いて、さやかは一度逡巡すると、首を横に振った。

 

「ううん、首を突っ込むよ」

 

「どうして?」

 

「だって、夏目君の手助けをしたいと私が思ってるから」

 

「……はぁ」

 

霊夢はそれに溜息を吐くと、さやか手を離した。

 

「なら、手助けしてくるといいわ」

 

「‼︎有難う‼︎行ってきます‼︎」

 

そう言ってさやかは夏目の元に走って行った。

 

「……あ〜あ、こりゃ、彼奴は食べ損ねだな」

 

「それよりも大事ってことでしょ」

 

「でも、彼処のケーキ屋さんのケーキ、美味しいと評判だからと全員分揃えて買ってきたのに……」

 

アリスはそう言って、買って来た意味が一つなくなったと溜息を吐きながら思うと、霊夢は輝く目をアリスに向けた。

 

「なら、私が余ったものを食べるわ‼︎」

 

「うわ、食い意地が凄いな……だが渡さん‼︎余ったケーキは私の物だ‼︎」

 

「いえ私のです‼︎」

 

「残念だけど、お母さんに渡すわ」

 

「「「え〜⁉︎」」」

 

それを聞くと、霊夢達は肩を落としたのだった。


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