朝の学校、さやかは自身の教室近くまでやって来ると、そこに珍しい客人がいる事に気付いた。
(?誰だろ……?)
さやかはその男を見ていると、男はそのまま教室から離れ、さやかがいる方に歩き始めた。
そこで男は突っ立った状態のさやかに気付き、ぺこりと頭を下げて挨拶をしてきた。
それに習い、さやかも挨拶を交わすと、首を傾げて教室の中へと入ろうとすると、西村と夏目が出てきた。
「うわっ⁉︎」
「え⁉︎ご、ごめん三日月さん‼︎」
「あ、いや、気にしてないから大丈夫だよ……だけど、どうしたの?」
西村は三日月の問いに「いや〜」と言いながら廊下を見渡すと、首を傾げた。
「今、お前の事を聞かれたんだけどなぁ」
「?西村君の知ってる人?」
「ん〜、あまり見ない顔だったな……」
そう言ってもう一度廊下を見渡してから夏目に顔を向けた。
「悪かったな、起こして」
「いや」
「あ、寝てたのね、夏目君」
「まあな」
「しかしよく寝てるな、夜眠れないのか?何か悩みでも?」
それに対して、夏目は柔らかい笑みを浮かべて否定するのだった。
***
その日から少し経った日、さやかはいつも通り登校していると、霊夢と鉢合わせした。
「あ、霊夢!おはよう〜!」
「あら、おはよう」
「こんな風に会うのは珍しいね〜」
「そうね。でも、もっと珍しいものが前にあるわよ?」
その言葉に首を傾げながら前を見ると、夏目が妖怪と共に登校している姿があった。
「……何あれ」
「さあ?少なくとも、襲われてないから何もしないでいいと思うわよ」
「明日から夏目君は奇妙な人に見られるかも……」
「もう既に見られてるわよ。噂だって流れてるんだから」
そんな霊夢の言葉にさやかが溜息を吐くと同時に、夏目の『迷惑だ!』と叫ぶ声が聞こえてきたのだった。
***
その日の授業の間、夏目に纏わりつく一ツ目と牛の妖怪は、とても目立つ行動(視える人には)を夏目の周りでしていた。
(彼奴ら……授業に集中出来ないじゃん‼︎)
さやかはその所為でイライラし始め、心を落ち着けるために、休みの時間中は本を読む事にして気を紛らわせていた。
そして、お昼休み、さやかと妖夢は溜息を吐いた。
「どうしたんだ?二人して珍しい溜息を吐くなんて」
魔理沙はお弁当を食べる手を止めて聞くと、妖夢が疲れた顔をして答えた。
「今日の間、ずっと学校の外に二匹の妖怪がいるのですが、その妖怪達に集中を欠かれて……」
「同じく……」
そう言葉にして、再度溜息を吐く二人に、哀れみの気持ちを持ったアリス。
「本当に『視える』というのは良いことばかりじゃないわね」
「で?『視える』組の霊夢はどうだったんだ?」
魔理沙はニヤニヤした顔で弁当を食べ続けている霊夢に聞くと、不機嫌そうな顔で答えた。
「隙を見て札で攻撃したわ」
「だから途中で静かだったのか……」
「おかげで気持ちよく授業中に寝れたわ」
「いや、授業は寝る時間じゃないから‼︎」
「これで良く赤点を取らないわよね……素直に感心するわ」
アリスのその言葉に、霊夢は答える。
「そんなもの、勘で何とかなるものよ」
「勘でなんとかはならないけどね普通」
「本当、どうして此奴はこんなに勘が良いんだか」
さやか達はその後、昼休みの後の煩さを想像し、また溜息を吐くのだった。
***
その日の放課後、学校から出て歩いていると、途中で夏目があの二匹の妖怪の前で溜息を吐いてる姿があった。
「……ごめん、私は此処で」
「待ちなさい」
さやかは夏目の方に行こうとすると、それを霊夢が止めた。
「?どうしたの?」
「何でもかんでも突っ込むのは頂けないわ。あっちはあっちの問題。さやかは突っ込まなくても良い問題よ」
その言葉を聞いて、さやかは一度逡巡すると、首を横に振った。
「ううん、首を突っ込むよ」
「どうして?」
「だって、夏目君の手助けをしたいと私が思ってるから」
「……はぁ」
霊夢はそれに溜息を吐くと、さやか手を離した。
「なら、手助けしてくるといいわ」
「‼︎有難う‼︎行ってきます‼︎」
そう言ってさやかは夏目の元に走って行った。
「……あ〜あ、こりゃ、彼奴は食べ損ねだな」
「それよりも大事ってことでしょ」
「でも、彼処のケーキ屋さんのケーキ、美味しいと評判だからと全員分揃えて買ってきたのに……」
アリスはそう言って、買って来た意味が一つなくなったと溜息を吐きながら思うと、霊夢は輝く目をアリスに向けた。
「なら、私が余ったものを食べるわ‼︎」
「うわ、食い意地が凄いな……だが渡さん‼︎余ったケーキは私の物だ‼︎」
「いえ私のです‼︎」
「残念だけど、お母さんに渡すわ」
「「「え〜⁉︎」」」
それを聞くと、霊夢達は肩を落としたのだった。