夏目と一応の初対面を終えた次の日。
さやかが教室に入ると、夏目と最初に目が合った。
「おはよう、夏目君」
「あ、ああ、おはよう」
さやかは笑みを浮かべて挨拶をし、返ってきた挨拶を聞くと席に着いた。
そして、夏目はというと、
「夏目‼︎お前、三日月さんと何時仲良くなったんだ⁉︎」
「いや、何時って……昨日だが?」
と、こんな感じの会話をしていた。
そして、その日のお昼。
「……と、まあそんな事が昨日あったのよ」
さやかは昨日の事を何時もの四人に説明すると、魔理沙は目を輝かせながら言った。
「やっぱり其奴も妖怪が視えるんだな⁉︎あ〜、私も見たいぜ‼︎」
「その好奇心で視えたら、きっと後悔するわよ」
「あれ?アリスは視えないんじゃ……」
「ええ、視えないわよ?視えないけど、どんな気持ちかを想像は出来るでしょ?」
アリスはそう言うと、食べ物を口に入れ、食べ始めた。
「そうですね。私は視える人ですけど、小さな頃は余り良い想いは持っていませんでしたね……」
妖夢はそう言うと、過去を振り返る様に明後日の方向に顔を向けた。
「私は別にどうとも感じて無かったけどね。まあ、強いて言えば……」
霊夢がその先を言おうとすると、何かの羽音が聞こえてきた。
「こんにちはーー‼︎情報屋の『射命丸 文』です‼︎」
「……こんな風に上位の妖怪が好き勝手に神社とかにやって来ることを遺憾に思うぐらいかしら‼︎」
霊夢はそう言うと、ポケットの中に隠し持っていたお札を投げ付けた。
しかし、文はそれを羽を羽ばたかせ、風を起こす事によって当たる事を防いだ。
「あやや〜、怖い事はやめて下さいよ〜、霊夢さん」
「うっさい、嘘情報売りつけてくるぼったくり鴉天狗が」
「嘘情報なんて売ったことが無いですね。何せ、情報はとても曖昧なもの。嘘か本当かは私でも分かりませんよ」
「ふん」
霊夢は文のその回答が不満だったのか座り直し、弁当を食べ始めた。
因みに、視えてない組からしたら、霊夢の行動は奇行に見えたのだった。
しかし、お札を構えた時点で妖怪がその場にいると分かったので良かったとしよう。
「それで、文はどうして此処に?」
「いえ実はですね、此処にあの『夏目 レイコ』の孫がいると言う情報を掴んだので取材に……」
「人間の迷惑だし、その孫にとっても迷惑だから今すぐ帰れ」
「あやや!私の扱いが酷いですね〜。まあ、今日の所は引き下がるとしましょう。それでは!」
文はそう言うと、自身の黒い羽を羽ばたかせ、また飛んで行ったのだった。
「……さて、お昼の時間が押してるから、此処は食べる事に集中しようか」
さやかのその言葉を聞くと、全員食べる事に集中するのだった。
***
時間が過ぎ、既に放課後。
さやかも霊夢達と一緒に帰る為に準備をしていると、夏目から話し掛けてきた。
「なあ?今日、家に寄ってかないか?」
「?夏目君の家に?良いの?」
「塔子さん達にもちゃんと説明するから大丈夫だ」
さやかはそれに対してどうしようか?と悩んでいると、教室の扉が開いた。
「は〜、本当にあの先生の頭突きは痛いよな〜」
「寝てる魔理沙が悪いのよ」
「さやかさん、遅れて申し訳ありません」
「ほら、帰るわよ……って、あら?」
霊夢はそこでさやかの近くに居た夏目を発見し、何かに勘付いた。
「あ、やっぱ良いや。ほら、全員帰るわよ」
「はあ?おい、さやかは……」
「さやかは別の用事が出来たみたいよ」
「あら?それなら仕方がないわね。さやか、また今度一緒に帰りましょう?バイバイ」
「それでは、失礼しました」
妖夢が最後に礼儀正しくすると、教室の扉を閉めた。
「えっと、ごめんな?」
「あ、気にしなくて良いよ。それじゃあ、行こうか」
それを聞くと、夏目はさやかと共に帰って行った。
***
そして今現在、夏目が居候している家、『藤原家』へとやって来て、夏目の部屋に上がっている。
「……それで、何か聞きたい事があるから連れてきたんでしょ?」
「あ、ああ……」
夏目は何か緊張した様子でそう零すと、小さく深呼吸してから質問した。
「君は、『視える』のか?」
「ええ、ハッキリ、くっきりとね。というか、それは昨日、分かってたと思ってたけど……」
「いや、招き猫の状態の先生は見えて当然みたいだから……」
「?じゃあ、何でこんな危ない橋を渡るような真似を?」
さやかからの質問に、夏目は視線だけニャンコ先生に向けた。
「それは私が教えたからだ」
「貴方が?というか、貴方はどんな妖怪?」
「なんだ?三日月家の者なのに分からぬのか?」
ニャンコ先生からのその言葉にムッときたようで、頭の中に入っている妖怪辞典を開き、探した。
そして、そっくりな姿の妖怪を見つける事が出来た。
「……『斑』?」
「正解だ」
ニャンコ先生改め、斑からのその言葉を聞くと、胸を撫で下ろしたさやか。
そして夏目の方に視線を向けると、何かに驚いた様な顔をしていた。
「?どうしたの?」
「いや、凄いなと思って……」
「そう?これぐらいなら普通に出来るけど……」
その後も少し話した後、さやかは藤原家を後にした。
そして、その日からさやかは度々、藤原家で夕食を食べる様になっていったのだった。
***
その数日後の夜。
「いや、それにしても……帰ってる途中に襲われるなんて災難だね」
さやかは苦笑い気味にそう言った。
それに対して夏目は本当にぐったりした様子で小さく頷いた。
そして、ニャンコ先生で遊んでいると、
「二人とも、ご飯よ〜!」
下から塔子の声が聞こえてきたため、二人とニャンコ先生は下へと降りていった。
「うわ〜!このトンカツ、美味しそうですね‼︎」
「ふふ、有難うね」
さやかは塔子とそんな話をしていると、右隣に座っていた夏目がイキナリ吹き出した為、それに驚いたのだった。
***
「えっと、『露神』様……ですね?」
「おお、流石は三日月家の者じゃな。当たりじゃ」
「『露神』様?」
夏目はさやかからの言葉に疑問符を付けて返してきた。
「うん、この妖怪は神様なんだよ」
「妖怪なのに神様ね〜」
「それにしても、お前さん、本当にあのツユカミのじじいか?」
「そうじゃ。それにしてもその声……お前、斑か?ははっ、何だお前さん、そのふざけた態は」
「うるさいぞ爺さん」
そんなちょっとしたコントを見て軽く笑っていたさやかだった。
しかし、事態は急変する。
夏目がツユカミに名前を返そうとしたが、何故かもう一枚の紙と引っ付いていて無理だった。
引っ付いている理由は米粒が付いていたようで、斑曰く、『レイコはずぼらだったから、飯を食いながら弄ったんだろう』との事。
当然、剥がそうと試みるが、その所為でツユカミが痛がりだし、結局、一緒に返すしかないと判断されたのだった。
それをさやかは帰ってから鈴に話した。
「ふ〜ん、まあ、確かにそれしか方法は無いわね」
「でしょ?まあ、これで夏目君の疲労困憊は確実になったね」
「そう言えば、ツユカミは知らないの?」
「いや、知ってるみたいだから明日聞きに行くんだよ」
「あら?そうなの。なら、私も明日行ってみようかしら?」
「あれ?珍しいね。鈴がそう言うなんて」
「ふふ、久方振りの友人に会うだけよ」
鈴はそう言って笑うのだった。
まだ長くなりそうでしたから此処で切ります
後半の話は次回です。
お楽しみに〜‼︎
それでは!さようなら〜!