相談屋の少女   作:ルミナス

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第一話

さやかはいつも通りに学校に行き、いつも通りの日常を送る。

 

しかし、少し違うのは、其処に『夏目貴志』の観察が入った事だろう。

 

(というか、これって私がまるで『ストーカー』してるみたいじゃない‼︎)

 

そう考え、気持ちが萎えそうになるのを必死に耐えたさやかはお昼の時間となると決まってある場所に行く。

 

それはこの学校の屋上である。

 

そして、屋上への扉を開けば、そこには四人の女の子が居た。

 

一人は黒髪の長髪で紅い大きなリボンを着けた女の子。

 

一人は少しこの地域では珍しい金髪の長髪の女の子。

 

一人は同じく金髪で、此方は短く、カチューシャを着けた人形の様な女の子。

 

そして、最後の一人は金髪よりも珍しい、白髪の短髪で黒のリボンを着けた女の子。

 

この四人とさやかは友人の関係に当たる。

 

「やっほ〜!」

 

「あら?やっと来たわね。さやか」

 

「遅いぜ‼︎さやか‼︎」

 

「また『妖怪』にでも襲われたのかしら?」

 

「さやかさんなら妖怪に襲われても、お札なり殴るなり蹴るなりで退治出来るでしょうがね」

 

「私そんな暴力的な女子じゃないよ⁉︎」

 

そんな会話をしながらもの四人に混ざるさやか。

 

「それで?結局遅れた理由は何よ?」

 

「ほら、霊夢と妖夢には連絡入れたでしょ?『夏目貴志』って男子のこと」

 

「あ〜、さやかが一目惚れして、挙句ストーキングしてる相手ね」

 

「凄く語弊があるけどやってる事がそれっぽいから言い返せない」

 

「た、確か、その人も『妖』が視えてるんでしたね」

 

白髪の少女、妖夢が会話を軌道修正するためにそう言うと、さやかは頷いた。

 

「へ〜!其奴も視えるのか‼︎ちょっと話を聞いてみたいぜ‼︎」

 

「止めときなさい、魔理沙。さやかはそんな子じゃなかったけど、だからって視える人全員が話してくれることでもないわよ」

 

「アリスの言う通りだよ。それに見た限りだけど、多分、妖怪に対して良い印象を抱いてないよ」

 

「まあ、でしょうね。普通の人にとって『視える人』は異物の対象でしかないもの」

 

「アリス、それは言い方が酷すぎるぜ?」

 

「けど、本当の事でしょう?」

 

金髪の髪の子達、アリスと魔理沙が口論じみた事をしていると、それをさやかが止めた。

 

「まあまあ、兎も角さ、食べながら話さない?今の時間はお昼だし、霊夢なんて黙々と食べてるし」

 

そう言いながらさやかは紅リボンの女の子、霊夢を見た。

 

全員も其方に目を向けると、確かに霊夢は黙々とお弁当を食べていた。

 

「はぁ〜、この中で視える奴である霊夢は何でそんな興味無しで食べてられるんだよ」

 

「正直、私には関係無いもの。あと、そういうタイプは面倒臭い事を持ってる奴だからよ。しかも、今回は絶対持ってるでしょうし」

 

「何でそう思うんだよ?」

 

「いつも言ってるじゃない。ただの『勘』よ」

 

霊夢がそう言うと、四人は「当たるな」と考えた。

 

この四人だけでなく、彼女と関わったことがある者は知っている事実だが、彼女の勘は100%の確率で当たるのだ。

 

それで一度会話を切り上げ、お弁当を食べる事に集中し、食べ終えた頃にはチャイムがなってしまった。

 

その為、彼女達は其処で別れる事になった。

 

そして放課後。また霊夢達と集まり、少し話していると突然、彼女が放った式神からの連絡が来た。

 

「‼︎」

 

「?さやか?」

 

一早く様子が違う事に気付いたアリスはさやかに何があったのかと聞こうとしたが、本人から「また明日‼︎」と言われた挙句に走って何処かへと行ってしまった為、聞こうにも聞けなくなってしまったのだった。

 

「はぁ、夏目関係ね。絶対」

 

一人霊夢は勘付いていたが。

 

***

 

式神がいる場所へと来てみれば、夏目が丁度、白い獣の妖怪に襲われている所だった。

 

さやかは素早くポーチの中からお札を出し、投げ付けようと構えるが、彼女にとっての予想外が起こった。

 

夏目がその獣を殴りつけたのだ。

 

足で丁度体を抑えられていた状態のままで。

 

(え⁉︎い、いや、まあ、力が強い人は普通に殴れるけども⁉︎私も霊夢も妖夢も出来るけども‼︎あんなひょろい体型で⁉︎)

 

さやかがそう頭の中で思っていると、夏目と白い獣が一言二言話したかと思えば、白い獣は白饅頭に変わり、そのまま夏目と移動していった。

 

(あの招き猫はきっと『依り代』なんでしょうね。でも、依り代なんている程に力が弱い妖怪にも見えなかった……なんで?)

 

さやかが一抹の疑問を覚えながらも後をつけてみると、なんか女っぽい妖怪に黒い蛇の様なものが帰っていく瞬間を見た。

 

(夏目君が持ってるあの帳面がきっと鈴が言っていた『友人帳』。なら、あの黒い蛇の様なものが『名前』?)

 

さやかが思考をしていると、また移動し始めた夏目と妖怪。

 

さやかはそれに気付き、またもや後をつけてみると、こんどは一つ目のお婆さんのような妖と対面していた。

 

「我を護りし者よ。その名を示せ」

 

(……)

 

さやかは成り行きを見守っていると、帳面が一枚の紙を示した。

 

それを夏目は躊躇なく千切り、そのまま口に咥え、ふっと息を吐くと、またあの黒い蛇の様なものが妖怪へと帰っていった。

 

それから少しすると、惚けていた夏目と招き猫が一言二言話し始めた。

 

(……これは、私の出番はないかな?あ〜あ、折角視える者同士、仲良くなれると思ったんだけど、後回しだね)

 

そう思いその場を去ろうとしたが……、

 

「所で……さっきから其処の茂みに居る奴。さっさと出て来い」

 

(⁉︎)

 

招き猫からの言葉が耳に入ってきた為に、動けなくなってしまった。

 

「え?そ、其処に誰か居るのか⁉︎」

 

夏目は何処か焦った声を上げた。

 

きっと、視えない者に見られたと思ったのだろう。

 

さやかは小さく溜息を吐くと、茂みから出て行った。

 

「こんにちは、夏目君。一応は初対面だね」

 

「き、君は……?」

 

「私は三日月さやか。貴方と同じクラスメイトだよ。よろしくね?」

 

そう言って手を出すと、夏目は戸惑った様子を見せた。

 

「?どうしたの?」

 

「い、いや……怖く、ないのか?」

 

「は?」

 

「いや、だから……」

 

「ああ、もしかして貴方の行動?なら安心して良いよ。私も貴方と同じで『視える』からさ」

 

「え?」

 

夏目は今度は驚いた様な表情を見せた。

 

「おい小娘。今、お前『三日月』と言ったか?」

 

「ん?言ったよ?」

 

さやかがそう言うと、招き猫は「ほう……」と言っただけで先を言わなかった。

 

「?まあいいや。まあ、そういう事だから、今後ともよろしくね、夏目君?」

 

さやかはそう言うと、お茶目にウインクするのだった。


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