なんだかすごく久しぶりな投稿ですね。
結構昔の作品で正直どうするのか若干忘れかけていたのですがどうにか更新できました!
お忘れの方も多いと思いますがよければ感想お待ちして下ります!
廃墟の中には数十人の武装したテロリストたちが配置される。
恐らく一番戦力が注がれるであろう正面には通常武器を持った者を配置した。迎え撃つのは廃墟の中でも一番広い空間。
裏口にも同等の武装をした者達を配置するが、こちらは壁や部屋を利用し死角からの奇襲を狙う布陣を敷く。
そして、裏と表両方の入り口からちょうど中心になる地点には武装とアンチナイトを持った部隊を配置。
限られた人材と武器で今できる最善の布陣と、司一は自信を持ち部下達に指示を送る。
「いいか、目標はあくまで司波達也1人だ!他の連中の生死は問わない!」
今はとにかく自身の保身が第一だ。報告では司波達也以外にもその妹、入試主席合格の司波深雪や十士族の十文字がいるという情報がある。
この2人を仲間に引き込む、そうでなくとも身柄を確保すれば使いようは多くある。
司波深雪はその才能を、十文字の次期頭首は身代金や様々な取引に使えよう。
しかし、今この状況においてそんな余裕は彼にはない。
襲撃に使用したメンバーはこの組織の中でも腕よりの猛者達。
それが今では多くの者が捕まっている。
魔法と言う面で多少の力があった一校生も全員捕縛された義理の弟も一緒に。
今いる兵も所詮は襲撃部隊に選ばれなかった者か、敗走してきた者達だ。この戦力で正体不明の魔法無効か能力を持つ司波達也、十士族の十文字、入試主席の司波深雪の3人を同時に捕えるほど余力はない。
作戦は簡単だ。
正面の大部屋で司波達也を迎え撃ち自身の持つ魔法『イビルアイ』で洗脳。
その後、司波達也の身柄を捕獲し別組織のアジトに逃げ込む。
司波達也と引き換えに保護を申し出る。
晴れて司一の失態は帳消し、司波達也の持つ技術の変容が成功すれば逆に自分の地位はうなぎ上りで上がる。
それが土壇場で追いつめられた司一が導き出した作戦の全容。
穴が多いざるのような作戦だ。
客観的に見てもこの作戦がどれほどずさんな物なのか伺える。だが、そんな作戦でもまさにこれが最良だとばかりに司一は笑う。
その笑みは狂気じみており、その瞳は何かを妄信するかの如く揺らいでいる。
追いつめられた人間は理性を失い、普段ではありえないミス、失態を犯す。それが突然の災害や火事で人が死ぬ理由の多くをしめるだろう。
今の彼はそれと同じだ。
仮にもこれだけの人員をまとめ1テロ組織のリーダーを務めた男の作戦とは思えない。
本来ならここで誰かの制止が入ったりするのが本来ある組織と言うものなのだろう。
だが、不幸にも・・・むしろ、自業自得であるが司一が率いるこの組織は彼の独断的な決定に皆が従う独裁体制を敷いている。トップの誤りを正す副官的な立場の人間もいない。
考える事を放棄し・・・いや、考え方を洗脳し従わせる。それがこれまで司一が作りだした『ブランシュ』という組織なのだ。
非人道的な行為により拡大してきた組織としてはある意味このずさんな作戦も因果応報の結果、自業自得である事は否めないのかもしれない。
「さあ、それでは宴を始めよう!」
笑う。
自身の立てた完璧と思える布陣の中心で彼は笑う。
これから待つ自分の勝利を疑う事もなく孤独な独裁者は1人笑う。
始まる宴の『主賓』と『ただの料理』がどちらなのかも分からず彼は笑う。
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時間はどれほど立っただろうか。
一校生を向かいうとうと配備された兵たちは、緊張感を高めながらその時を待っている。
正面の大部屋に配置されたこの男もそれは同様だ。
体格的には大柄で筋肉もそれなりについている。彼はこの部隊の現場指揮を任された今の組織の中ではそれなりの実力がある男だ。
と言っても見た目通りの脳筋タイプでリーダー指示に黙って従うしか能がない下っ端といって差し支えのない男でもある。
自分に割り当てられた任務はリーダーが魔法を使用している間に、他の学生たちが邪魔をしないようにするための牽制だ。
そして、洗脳が終われば
子供を殺すことに全くの罪悪感がないと言えば嘘になるが、この身はもはやその程度の罪以上の悪行を積んでいる。今更何も感じる事もない。
自分のすることはただリーダーの意向に従うのみ。
そんな事を思いながら男は銃の最終確認をする。その時だ、ゴトリと後ろの方から妙な音が鳴った。
「?」
狭い空間に密集している部隊の面々は全員その音を聞き後ろを振り返る。
そこには拳程度の大きさの瓦礫が落ちていた。
それを確認すると後ろを向いていたメンバーは興味を失ったようにまた自分が直前までやっていた行動に戻る。
廃墟に瓦礫の1つや2つあったところで何もおかしい事はないだろう。
今は有事で色々とバタバタとしているからその振動で落ちたのだろう。そう思い自分も銃の確認へと戻った。
でも、そこでふと思う。
(あの瓦礫は一体どこから落ちたんだ?)
この大部屋は元は何かの製造工場か倉庫だったんだろう。今は機械も全て撤去されただただ広いだけの空間だ。
そのためか天井も高いし、鉄骨なども必要な場所にしかない。
瓦礫が乗るスペースなんて見た限りではないし、天井はそもそも落ちていた瓦礫とは材質が違う。
そもそも瓦礫が落ちていたのは部屋の中央に集まっている自分たちのすぐ真後ろだ。その直線状に瓦礫が崩れる物も、瓦礫が乗るものもない。
(ならなんであんなところに・・・?)
ふとした疑問に駆られ興味本位で再度後ろを振り向く。
「がっ!?」
その時、頭に強い衝撃を受け無意識に自分の口からは叫び声が漏れる。
体はよろけ冷たいコンクリートに顔から倒れる。
(何があった?まだ一校生が来たと連絡は受けていない・・・一体何が・・・)
薄れゆく意識の中で必死に頭をあげようともがく。そこで目に入ったのはさっきまで誰もいなかった空間に現れる一人の男の姿があった、男はその相手の顔を確認しようとさらに頭をあげようとするがそこで男の意識は完全に闇の中に消えるのだった。
その後、他の男達も1人、また1人と頭に衝撃を受け倒れ伏す。一体何が起きたのか男達は終始それが分かることはなかった。
なんせ、さっきまで何もいないと思った空間から突然衝撃が走り、意識を刈り取られる。
ふと気が付けば何もなかった空間に男が1人バールのような物を片手に立っている、が、すぐにその姿は消え代わりに誰かが倒れる。
それの繰り返し。
中にはこれが襲撃であると判断し、何らかのアクションを起こそうとする者もいたが、消えては現れる敵に見えない攻撃。
そんなものにすぐ適応できる者などそうはいない。敵の場所が分からなければ銃も使いようがないし仮に出鱈目に連射しようものなら味方の多くに被弾するだろう。
ナイフで迎撃するにも、やはり相手の位置が分からなければどうしようもない。そんなこんなで手間取っている間に1人、また1人と地面に伏していく。
気が付けば隣にいた仲間がよろよろと倒れ、それに近づいた自分も倒れた。
人数が減り最後まで残った方の奴らにしてみればこれはとんだ悪夢であろう。何も変わらぬまま誰が何をしたのかも理解できないまま、自分達は敗北するのだから…
そして、数分もしないうちに部隊は正体不明の侵入者に迎撃されたのであった。
「ふぅ・・・とりあえず一段落か・・・」
男達が倒れる中心で、これを仕出かしたであろう目の濁った侵入者は1人ごちる。