その後、俺達は自己紹介する流れになったのだが…
省かせてもらう。え…なんでかって?そりゃあ読者も何回も同じ失敗をするとこなんて、見ても楽しくねーからだ。
・・・読者って誰だよ?それと、また自己紹介で失敗したのかよ、俺
八幡が落ち込み、エリカが盛大に吹き出し足をばたつかせ、それを見ていたレオが呆れて、光井と柴田がオロオロとしながら慰め、司波妹は静観し、兄の方は無表情でトレーに残ってる食事を食べ続け、最後に雫が
「これは八幡のアイデンティティーだから」
と、占めた。
そんな個性持った覚えはないぞ。それとエリカ、お前は俺の絶対に許さない奴ノートに書いとくからな…
なんだかんだと和んでいた彼らのもとに思わぬ乱入者がやってきた。
「司波さん」
そこには男子と女子が数人おり司波のことを呼んだ。というか、こいつらうちのクラスの連中じゃん。
たしか名前は、も 森‥‥‥‥‥森本君?だっけか
「もっと広いところに行こうよ」
「邪魔しちゃ悪いよ」
どうやら森本達は司波妹と一緒に昼食をとるために彼女を呼びに来たようだ
流石は学年主席。引く手数多ということか、でも…
「いえ…私はこちらで」
司波妹の様子から、森本達は事前に了解などを取らずにやってきたようだ。
こいつらは、分かっとらんな。
普通昼食なんかは仲のいい奴らで囲んで食べればいい。だが相手がカースト最上位の人気者だと訳が違う
人気者であるが故、そいつと一緒にいたい同性。そいつに好意を寄せる異性の数は多く、そんな奴と一緒に食べたいのなら2限目か3限目くらいにはすでに予約を入れておかなければならない。
いくらクラスが同じでも、一緒に食べられるとは限らないのだ。
そして、あくまで決定権は人気者にゆだねられ
人気者(司波妹)が選んだのはこっちということだ。こっちというかこっち(司波兄)なんだろうがな、これはあらかじめ約束してない森本達が悪い
ちなみに予約は、当日するのが基本だ。前日や数日前にすると周りの奴らから叩かれる恐れがありさらに、いきなり先生に呼び出されるなどして一緒に食べれない場合になると、グループ内での自分の立場が悪くなる、要注意だ。ただ、一緒に食べていて流れで「じゃあ、明日も一緒に食べよ!」というのは例外としてOKだ。
だいたい一人の俺にはあまり関係ない事だがな…
「司波さん…ウィードと相席なんてやめるべきだ」
「はぁ…」
ウィードという言葉にその場にいた全員が反応する。その中でもエリカは明らかに不機嫌になり顔をしかめる。
ウィードというのは二科生の俗名というか、差別用語だ
一科の事をブルームと呼ぶ者もいる。
それは、一科の制服にのみ、花のエンブレムが施されているためであり、それがない二科生をウィードつまりは雑草と差別している。
もちろんこの呼び方は、生徒会並びに学校自体も推奨したわけではなく、あくまで一部の生徒間のみで呼ばれてる隠語だ。
しかし、その呼び方は入学したての俺達でさえ知っているほどであり、それだけ一科生と二科生の差別意識が強い証拠でもある
俺(一般人)にしてみれば司波妹みたいな例外的に強力な奴以外、大した差なんてわからんがな
「一科と二科のけじめは、つけたほうがいい」
「なんだと」
さらに森本の後ろの奴が油を注ぎ、今度はレオに引火する
立ち上がり、臨戦態勢を整えるエリカとレオ。
まさに一触即発というところだ
しかしこいつらは馬鹿かなんかなのか…?
レオとエリカがわかりやすすぎる挑発に乗るっていうのは今回目をつぶるとして、この森本達
普通に考えて、後からきた自分たちが明らかに邪魔だっていう認識がないのか
それにわざわざこんな喧嘩を売るような真似して、これでもし司波妹と一緒にいれても絶対空気悪いだろ
「あ あの…」
それにほら、等の司波妹は明らかに困ってるし。
本当のリア充だったら、ここでしつこく誘わず「じゃあ 明日は一緒に食べようよ」とでも言っとけば明日もそれ以降も、司波妹といられる時間も好感度も確実に上なのに
と、冷静に分析してる場合じゃないな。このままでは少しやばい
何がやばいって目の前にいる雫の表情だ。めちゃくちゃ怒ってんじゃん・・・
あっちの2人が怒ってるのは、要は自分たちが馬鹿にされたことに対しての怒りだ。
別にそれが悪いというわけではない、馬鹿にされたら怒るのは当然だ。俺だって許せない奴のことは事細かにメモってるしな・・・
そういう怒りはその場がどうにかなれば、何とかなるタイプの根に持ちにくい怒りだ
それはこの2人が直情型っていうのもあると思うが
だが、雫のこのあえて無表情を作り、怒りを抑え込む怒り方は後々になっても尾を引くことが多々ある。
そもそも怒ってる理由が、自分のためではなく他人のために怒ってる。
それが困ってる司波妹のためか、今まで楽しく話していた相手を馬鹿にされたためか、せっかく憧れの人と話せて喜んでる親友の邪魔をしたからかは知らんがな
雫や光井はこいつらとクラスも一緒で否が応でも関わり合いになる可能性が高い
それをここで敵に回すのは良くない。雫の性格ならそんなのへでもないだろうが、多勢に無勢だしな
なにより、知り合いの女の子がそんな目に合うとか目覚めがわりーしな
そこで俺は残りの飯を一気に食べきった
「深雪、俺はもう済ませたから先に行くよ」
おっと、どうやら司波兄も俺と同じ結論を出したようだ。ならここは、
「俺もごっそさん」
そういい席を立つ司波と俺。それに続くように残りのメンバーも席を立ちあがり後を追う。
「おい、達也待てよ」
「達也君!」
「ほのか、私達もいこ」
「え・・・う、うん」
光井はチラチラと後ろを振り向きながら、雫に手を引かれその場を後にする
まあ、また今度一緒に食べれるだろ。ドンマイ
俺は心の中で光井に合掌を捧げる