魔法科高校でも俺の青春はまちがっている   作:Lチキ

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入学編31

世の中には定番だのフラグだのという言葉がある。何かをすれば高確率で何かが起こり、ある特徴を持つ見た目のやつは特定の性格や特性を持つという物で例えば、金髪ツインテールはツンデレとか金髪長髪先っぽカールはお嬢様とか貴族とかで、高飛車な性格とか

 

モヒカンの擬音がヒャッハーだの、冒頭でどこにでもいる普通の~のやつは大抵どこにもいないような奴だったりする。これらが定番というやつだ

 

だが俺はふと思う、定番とは名ばかりにこれはただの強制だ。金髪だって好きでその色になったわけじゃないだろう、だって人種だし。髪型だって女の子なんだから好きなようしたいはずだ、それなのに世の中の連中は彼女らの意思を無視して自分の好きなように性格を捏造し、それが意に沿わぬものなら否定する

 

 

人を見た目で判断するな、恰好なんて好きにさせてやれ、どんな個性でも否定するな、それすらできなくて何が自由だ人権だ

 

定番なんぞ朽ちてしまえ。

 

 

 

 

 

「やあ、初めまして。曳田 八兵衛君、話は壬生から聞いているよ、なかなか面白い考え方をもっているそうだね。おっと、自己紹介がまだったこれは失礼、僕の名は司 一だ」

 

 

壬生先輩の案内によりやってきたのは郊外にある今は使われていない、まさに悪党やテロリストなんかがアジトに使っていそうな廃墟で、そこにいたのは件の真面目に働いていない、いい年した大人こと、司 甲の兄貴の司 一だ

 

 

見た目は、ひょっろとした中肉中背のメガネをかけた青年で、髪の色は本人はカッコいいと思ってるかは知らんが、大阪のおばちゃんがしてそうな紫色で、なぜか片目を隠すような髪型をしている。

 

 

あと、メガネをしたうえであんな髪型だと下を見る時、髪が邪魔してたまに目の中に髪が入ったり、メガネ越しに変な汚れとかがついて無性にイライラする。ソースは俺、変装のため今の髪型にしてるがすぐにやめたいマジで邪魔

 

 

率直な疑問だがなんであんな髪型なんだよこいつ?

しかも何あの、膝のところまである変な宗教団体の教祖が着てそうな真っ白い服にオシャレに失敗した中学生が持ってそうなやたら長い真っ赤な首掛けは?

 

 

見た目からしてぜってーやばい人だよ。おかしな恰好しやがってもっと普通の恰好しやがれよ

あと名前も間違ってる。誰だよ八兵衛って?俺と契約して俺をヒモにしてよ!みたいな事言えばいいのかよ

 

 

 

「どもっす」

 

 

色々思うところはあるが、それをこの場で言えるわけもなくとりあえず、適当に挨拶をしておく

 

 

「そう固くならずにいいのだよ、我らは同じ意思を共有するいわば同士だ」

 

 

壬生先輩からどんな話を聞いてるか知らんが、いつの間に俺はあんたらの同士になったんだよ?それとこいつ、笑顔をしているけどすんげー嘘くさい

 

心の底から笑ってるのでも、作り笑いをしてるのでもない。これは心底相手を小馬鹿にするそんな、嘲笑う笑顔だ

しかもそれをほとんど隠そうとしていない。

 

 

「えっと…一応俺は、話だけって聞いてたんですけど。その同士とか言われても…」

 

 

「おお!そうだったね。ついつい気が急いでしまってねすまない。でも、君も僕の話を聞けばきっと同士となると信じているのだよ」

 

 

そういい、右手を挙げると先ほどまで一緒にいた壬生先輩と司 一の隣にいた男が部屋を出ていき、この部屋とも呼べない廃墟の一室に残ったのは、俺とこいつの2人だけとなりおもむろに話を始める。

 

 

話はやたら長かったので要点をまとめるとだ、まず壬生先輩らの所属している組織の名前はエガリテといい、組織は反魔法国際政治団体ブランシュの下部組織に当たるらしい

 

で、その反魔法国際政治団体が生徒を使ってデモまがいの事を仕向ける理由は魔法による社会的差別の撤廃という組織の方針の足掛かりとするためだとか

 

 

本格的な活動の前にまだ幼く、差別意識の少ない子供から攻めるという方針は戦略としてはまあ、いい方法だろう

いくら正しい事を言っても国という圧倒的な敵を前にして、下手にちょっかいを出せば即刻に潰されるのがオチである

 

 

その分、育成機関であり国立の魔法科高校は練習台としては最適といえる。なんせ生徒の自主性やらを鍛えるために学校の方針なんかは生徒会が仕切ってるし、大人から見れば高々子供、されど将来はこの国の中枢に行く人間も出るだろう。

 

 

そこを落とせれば組織として実績をつめ、失敗したとしても被害は最小限で済む

 

 

一応筋はとうっている。それを話した時のこいつの目が全くそんな事考えてませんよ?みたいな胡散臭さを醸し出してさえいなければ、納得していたところだろう

つーか、絶対ウソだろそれ?少しは作れよ顔

 

 

あまりのずさんさについついため息が出そうになるが、ここでそんなことしては色々台無しなのでぐっとこらえる

 

 

しかし、よくこんな奴に壬生先輩は従っていられるな。こいつの指導者っぷりを見たわけではないが、少し話しただけでも相当な小者であるという事が伺える

 

それは、一校が誇る三大組織の3巨頭、七草生徒会長、十文字会頭、渡辺風紀員長と比べるとその差は歴然だろう。

 

会長のようなカリスマも会頭のような柔軟な理解力も委員長のような熱意も、この男からは感じられない

 

 

精々、森よりやや上といったところか

補足しておくが、森の統率っぷりは結構凄い。初日の事件でもあいつが皆を先導していたし、一組の男子の中でもトップクラスである。

さらに、実技や筆記でも男子のなかでは上位に位置しており、授業でも積極的に発言をしていて教師からの評価も高い

 

なにが一番凄いって、そんなトップカースト並みの実力を持っているにも関わらずその性格で全てを台無しにしているところがマジで凄い

 

 

俺だったらこんなのをリーダーにするくらいなら、組織を捨てて実家で親のすね齧って悠々自適に生きていくね

んで、最終的には誰かのヒモ兼専業主夫として生きていこう

 

 

 

 

「曳田 八兵衛君、我々の仲間になりたまえ、君の独創的な発想は非常に興味深い」

 

 

「はあ、そうっすか」

 

 

なにやらまとめに入ってるようだが、いい加減に誰だよそれ?変な恰好しやがって名前ぐらい覚えろよ!

 

といっても、その名前その物が俺のじゃないし別に気にしないんだけどな。

しかし、本当に謎だ。人に感じる魅力なんか人それぞれだし、こんなのでも先輩方にとっては、立派な指導者なのかもしれんが、こいつのこの妙な自信はなんだ?

 

ただの自信過剰のナルシストならうちのクラスにもいるが、こいつのこの自信はまるで俺が必ず仲間になるとでも言いたげな感じだ

 

 

一応話は聞いたが、もちろん仲間になるつもりはない。ぶっちゃけこんなマジな感じのテロリストとかあいえない。

そりゃあ、嫌な予感はしてたし冗談半分で、「こいつらテロリストじゃね(笑)」みたいな事も思ってたけど、いざまじ物のマジに遭遇すると冗談とか言ってられない

 

潜入してちょっと情報をくすねていこうかとも思ったが、もうそんな気もない。俺があとやることはこのまま丁重にお断りして、学校に相談しよう

 

 

流石に今の状況じゃあ警察は無理だろうけど、委員長とかに言えばどうにかなるだろう。んで、俺はそのまま静観していよう。

 

 

ホント誰だよ、テロリストは廃墟をアジトにしてるとか言ったやつ、そのまんまじゃねーかよ!

 

 

「えーと、でも今すぐにはちょっと決めかねるんで少し時間をもらっていいですか」

 

 

そうと決まれば早いとこおさらばしようと思い、提案する。司 一は、なぜかある上等なソファーに腰を掛け、両足を組みメガネをくいっと上げる

 

 

メガネに光が反射しその目がどうなってるのか分からんが、雰囲気的に笑っていない事が伺える

 

 

まさかと思うが、秘密を知られたからにはただでは帰さんとかいう流れになったりしないよね?まさかね‥‥‥‥‥なんかスゲー怖いんだけど、背中に変な汗かいてきたんだけど大丈夫だよね?

 

 

神様仏様小町大明神様、どうか無事で帰れますように!!

 

 

「ふぅー‥‥分かった。いい返事を期待してるよ」

 

 

「はい、それじゃあすいません」

 

 

そういい、一度お辞儀をし入口に向かい歩き出す。心の中ではセ―フッッ!!と思いっきりガッツポーズを取っている。

 

 

いや、本当に何事もなくて良かった。流石は小町大明神様だ、今度お礼に菓子でもお供えしてやろう

 

 

そんな事を考えて歩いていくと、ふと後ろから声が掛かりその方向を向く

そこにはメガネを真上に放り投げる司 一の姿があった

 

 

「曳田 八兵衛!我が同士になるがいい!」

 

 

 

 

 


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