いったい、いつまで入学編やっているのだろうか?
司波のいなくなった喫茶店の中で俺は人知れず後悔していた。去り際のあいつの目、アレは確実に俺の事を敵視している目だった。まあ、前々からあいつとは仲がいい訳でもなく、むしろ苦手の部類だけれど、それでもお互いがお互いに関わり合いにならないようにしていた。
それもこれも全ては俺の平穏のためだ
あいつが俺の事をどう思ってるかは知らんが俺的には、イケメン、リア充、暴君と3拍子揃った関わり合いになりたくない分類の人種なのに、今日の事で確実に敵対してしまった…これは終わってね?俺のライフがもうゼロだよこれ
不覚にも深くため息が出てしまう。
「えっと…ありがとう?だよね八君」
ここでふと、顔を上げると壬生先輩が若干の苦笑いをしながら声をかけてくる。司波に意識が行っていて忘れていたがまだ壬生先輩がいたな。
ぶっちゃけ今回は、早く帰りたいから口を挟まず空気に徹する予定だったが、思いのほか司波の言い分が一方的すぎてついつい口を挟んでしまった。というか、挟みすぎてしまった。
その結果壬生先輩に助け船を出したような感じになっている。今のお礼はそのことに対する物だろう。
しかし、俺的にはただ思うとこがあって言っただけだし、壬生先輩に感謝される覚えはないのだが、つーか面と向かって女子に感謝されるなんて慣れてないのですんごいキョドってしまうのでやめてほしい
‥‥‥べ、別に赤くなんてなってねーし。……ホントウダゾ?
「い、いえ、すいません。出過ぎた事を言ってしまって…」
「そんなことなよ。正直私じゃ一方的に言われるだけだったし…八君のおかげで助かった。本当にありがとう。これは私の素直な気持ち、だからそんなにかしこまらなくてもいいよ」
最後の言葉は俺が先ほどから下を向いてるので、俺が落ち込んでいるものと思っての言葉だろう。実際は顔が赤いので‥ゲッフゲッフ!!
実際はちょっと考え事をしていただけなのだが
「それに司波君や八君の考えを聞いて改めて考えられた事もあったし…そこで、なんだけど八君さえよかったら一度会ってみてほしい人がいるんだけど」
「あってほしい人?誰ですか」
「うん、えっとね剣道部の司主将の事は知ってるよね?その人は主将のお兄さんで、私達のリーダーみたいな人なんだ」
これは2重の意味で予想外だ。まさか、こうも早く尻尾がつかめる機会があるとは思っていなかったし、何よりリーダーの存在だ。
司先輩達の会話を盗聴してみて、すでに司先輩のほかに組織をまとめ、指示を出している人物がいるのは予想ができていたが、てっきりこの学校の人間だとばかり思っていた。
まあ、目的も構成員も判明しているものは全部一校関係や生徒なのでそう予想するのは至極真っ当だろう
しかし、彼らのリーダーという司 甲の兄、本名司 一
先輩の身辺調査をしてるうちにこの人物の事も知っていたが、まさに予想外の人物だ
というかこの司 一は確か20代後半とのことだが、そんな奴が学生を使って学校側にデモを仕掛けるとか‥‥‥真っ当に働いているのだろうか?
社会人としてそんな事を率先するとか真面な人間ではないだろうと予想できる。というか、大人で兄貴ならこんな馬鹿な真似をする前に止めるのが普通である。それをしないという事は、相当の変人、狂人、異常者かその他に何らかの目的があるのは間違いないだろう
前者なら速攻でしかるべき所に相談するが、後者なら厄介だな。その目的が何なのか知らんが2科生の待遇改善じゃない事は明らかだ。
そして、うちの魔法科高校は国立であることから、貴重な資料やデータ、備品、装置などが保管されている。閲覧するだけでも結構手間であり、それらは情報保護のため学校外に持ち出すことは禁止されている。いくつかのプロテクトもされてるらしい。
いい大人それも、到底真面ではない大人が狙うとすればここあたりだろう。
だが、これはあくまで推測であり普通ならそんなテレビみたいな事は起きないだろう。仮にこれが的中したら最悪だがな
そこでふと、俺の頭をよぎるのは魔法科高校に入学してからの記憶だ
貴様とか言っちゃう自意識過剰の同級生
あまりに空気が読めない副会長を噛ませ犬の如く忍術で倒した男
同級生のそれも同性に並々ならぬ執着心を持つストーカーの彼女
度を越したブラコンの才色兼備
やたらラスボス臭を漂わす角刈りメガネ
デモを起こそうとする劣等生たち
その他にも様々な意味でキャラがこい愉快な連中
「・・・・・・・」
そこで俺は理解した
あ、これ駄目なパターンだと