魔法科高校でも俺の青春はまちがっている   作:Lチキ

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入学編19

そんな話をしている中、前方の光井がいきなり足を止め雫は光井の背中に衝突する

鼻を押さえながらどうしたのか確認すると、光井は呆けたように前を見ていた。

 

 

「どうしたの?」

 

 

「あれ」

 

 

「あれは、司波か」

 

 

そこには2人の男子生徒が取っ組み合いをしているのを制止する、司波の姿があった。

風紀委員の仕事のようで、俺も行ったほうがいいかと思ったが司波だし大丈夫だろうとそのまま傍観することにする。

 

 

言っておくが、さぼっているわけではない。取っ組み合いをしてる2人は体格から見てもそれほど強そうではなく、今のところ魔法を使う様子もない。こういった場合素手による鎮圧が最善だろうが俺にそんなことできるわけもなく、逆に司波の専門分野と言っても過言ではない。

 

 

ならば俺が下手に参入するより司波1人に任せた方が安全で効率がいい、何もしていないようだがしていない事をしている。いわばこれも一種のチームプレーというやつなのだ。うん、違うな

 

 

といっても邪魔になるというのは本当なので、とりあえず支給されたレコーダーの電源を入れ、なりゆきを見る。

 

制止を聞かぬ男子生徒の間に入りつかみ合っている手を手刀ににより払いのける。

その時だ、司波の死角から空気の弾丸が襲い掛かる。

 

あれは圧縮した空気を打ち出す魔法エア・ブリット(空気弾)!?

 

咄嗟に魔法を発動させそれを防ごうとしたが、もともと透明な攻撃でスピードもあるので反応が一呼吸遅れてしまう。

 

 

結果エア・ブリットは司波のすぐ後ろまで迫り直撃するかと思われた。が

 

 

「うおっ!あれを躱しやがった」

 

 

紙一重と言うところで体をずらし、攻撃をかわす。

 

 

「雫ッ今の…!」

 

 

「わざとだね」

 

 

雫と光井の2人は表情を曇らせ今の攻撃を分析、その結果あれがわざとであると断言する。

 

 

 

 

 

 

 

「今のは偶然なんかじゃない。どう見てもわざとだった!」

 

 

「私にもそう見えた。でも前の2人に邪魔されて達也さん犯人を追いかけられないでいる」

 

 

「それじゃあ全員グルなの…!そんな、なんで‥‥‥」

 

 

ほのかの顔からは血の気が引いたように、真っ青になりこの状況が理解できないと困惑している。

 

それもそのはずだ、なんせ達也さんは風紀員でそんな彼が狙われたという事は普通なら考えづらい。違反を取り締まる人間に違反をして攻撃を加え、あまつさえ搖動をしていた人間は実行犯を逃がすために時間稼ぎをしている

 

こんなどう見ても計画された犯行が起きるという事は、達也さんに恨みがあるという事だろうけど、彼の人となりをしっている以上それは考えづらい

 

 

しいてそんな人物を上げるならこの学校では八幡くらいなものだ。ただ八幡は私達と一緒にいたのでもちろん犯人ではない。そうなると

 

 

「やっかみかもね…」

 

 

「えっ何が?」

 

 

「達也さんのことはかなり噂になってるから、先輩たちは一年生のくせに生意気だと思ってるかも」

 

 

先日の剣術部での乱闘騒ぎやその他にもいくつもの功績をたった数日であげている。

そのためここ最近では鬼のように強い風紀員がいるとか、人外の力を持った正体不明の風紀委員がちぎってはなげちぎっては投げの大暴れなどという噂話をよく耳にする。

 

ただ、脚色がすごくい上、あながち間違ってはないのでなんとも言えないけどね。

さらに達也さんの容姿もあり女子の間では黄色い声が上がることも少なくない。

 

 

でも、それ以外にも達也さんが二科生という事もあり上級生だけではなく同学年の一科生からもだいぶ僻みを受けているらしい、聞いた話だと特に男子からは多いそうだ。

 

ちなみにそういう僻みの入った話を教室ですると深雪により急激な寒波が発生するのでうちのクラスではそういった話はあまりきかない。

 

そういったことから今回のこれも、そういった類のものだと思われる

 

 

「な!嫉妬して闇討ちなんて卑怯すぎる、許せない!!」

 

 

ほのかの怒りも分かるし、私も同意見だ。こんな理不尽を許してはいけない。

あまつさえこの犯人たちは達也さんの力をしり、正面からいどんでも勝てないと集団での闇討ちと言う卑怯極まりない事をしている

 

そんな臆病者に達也さんが狙われ気づ付けられ貶められようというのなら友人として見過ごすことは絶対にできないだが、

 

 

「でも具体的にどうするの?」

 

 

「うーん…生徒会に届けるとか?」

 

 

問題はその方法だ。犯人たちは相当周到に計画を立てたようで実行犯はもう見当たらない。そうなると証拠不十分という事で生徒会でも取り合ってはもらえないだろうし、言い逃れをされたらそれまでだ

 

それに生徒会に知らせるというのはつまりは深雪の耳にもこのことが伝わるという事で

 

 

「‥‥‥深雪にしらせるのは…ちょっと」

 

 

「うん…こんな事を知らせたら何人の犠牲者がでるか…」

 

 

2人して顔を見合し仮に深雪が知ったあとの行動を予測し、肩が震える。

これは過大解釈ではないく、割と真剣な問題だ。深雪は普段おとなしい優等生だが、達也さんが関わると人が変わる。それも彼女の個性なのだし、しょうがないが流石に友達が人を氷漬けにするところなど見たくはない

 

 

「あ!それじゃあ比企谷さんにお願いするのは…」

 

 

ほのかの考えでは同じ風紀委員である八幡なら、こういう場合でも犯人たちを捕まえる事ができるというものだ。

 

 

権限的にはもちろん可能だが、八幡はこういう感じの事が嫌いだと思う。そもそもめんどくさい事を嫌う彼の性格なら見て見ぬふりはしないだろうけど、関わるなら最低限にとどめるはずだ

 

 

まあ、レコーダーの電源を入れていたので証拠はとれていはずだし、そのまま八幡が風紀員に報告すれば生徒会に連絡がいかずに事態を鎮静できるだろう。

 

だが、今それを頼むのは難しい

 

 

「また明日なら頼めるけど今日は無理だと思うよ」

 

 

「え?」

 

 

「八幡さっきからいないし」

 

 

「ええ!?」

 

 

ほのかはあたりを見わたすが、八幡の姿を確認することができない。私もついさっき気が付いたがいつのまにか八幡の姿は消えており、さっきの事を頼むことができない

 

 

私が最後に八幡を見たのは、エア・ブリットが放たれる少し前までで

その時に達也さんの方に注意がむき数秒意識をそらしたらその時にはもういなかった。

恐らくだけど、魔法を放った実行犯の後を追いかけているんだと思う

 

 

八幡も達也さんとの間に色々あったようだけど、こういう理不尽な事が好きなタイプではないと思うから八幡なりにどうにかしようとしているのだと私は考えている

 

 

なので、私達がお願いする必要もなく彼は動いてくれると思うのでこの件に関しては心配はいらないだろう。なにより彼は普段の性格がだいぶ捻くれてるが頭の回転は私達より早いのだと思う。そのため彼の事を分かることができずに歯がゆさを感じてしまう

 

 

私達に黙って姿を消したという事は、つまりは私達をあてにしていないか、巻き込みたくないという考えなのだろう。

 

 

その考えは多分彼の優しさからくるものだと思うがそれでも、頼ってもらえないという事はいささか不愉快だ

 

 

別に慢心してるわけではないけど、それでも私の魔法実技の成績は1年の中でも上位に位置しており深雪にだって負けないという気概を持っている

 

 

入試の成績だけでも八幡より上の順位で、少しは私の力を信じてほしい物なのだが…もしこのような事を言ってしまえば彼は私から距離を取るだろう。私の彼との距離と言うのは所詮その程度のものだ

 

 

ついさっき彼と話しており知っているのは八幡のことだけなどという事をいったが実際に理解できるのは彼の人となり行動、思考の一部程度しかない

 

 

別に八幡に対して恋愛感情を持っているわけではない。持っているのは好奇心や興味それから、親近感という感情だろうか‥‥‥

 

そんな不思議な感情の正体を見極めるため彼と行動を共にしていて、その親近感の正体は彼も私と同様に自分と周りに線引きをしていることだと分かった。

 

 

他人と自分の間に確固たる線が引かれており、家族や幼馴染のほのかはその線の内側にいて大切な存在として認識している。

 

逆に線の外側にいる人に対してはあまり興味はない。それはクラスの友達だとしても私によくしてくれる近所の人にしても変わらない

 

 

ただそれだと日常生活に支障もきたすので最低限のお付き合いはしているし、よくしてくれたら感謝するし何かされたら怒りもする。それと内側の人の友人とも仲良くすることにしている。

 

 

それは大切な人の大切な存在ということで、今回の達也さんにしてもほのかの憧れである深雪のお兄さんという事でどうにかしたいと思う

 

 

八幡は私と違い線引きがあまりにも極端で人を拒絶している。そのためか彼は友達作りなんかが苦手なようだ

 

 

だが、そんな彼はあの日の放課後に思いもよらない行動に出た。一科生の人が深雪と達也さんの邪魔をし森崎君が魔法を使おうとした。私はその時一科生の横暴な態度に腹を立てていたがそれ以上の興味はなかった。なので、森崎君の奇行にも対応できず傍観していた

 

 

そんな中、八幡は誰よりも早くそれを止めた。

誰よりも人との距離を作り、友人一人満足に作れない彼が咄嗟の判断で人助けを選択したのだ。そんな彼の姿はやり方も言い方も方向も全く違うが、いつも一人でいた私に声をかけてくれたほのかの姿とダブり

 

 

その時理解した、彼はとても優しい人なのだと。

 

私と同じなのに私と全く違う彼に一種の憧れを抱き、彼の近くで誰よりも彼を見ていたい思った。そのためいつの間にか彼の思考を一部だけだが理解できた

 

 

だが、まだこれだけでは足りないのだろう。八幡の事をもっともっと知る必要がある。それと、彼の引く線の内側にも入りたい。彼の大切な存在になりたい

 

 

憧れの人を理解し近くにいたいというこの感情は恋愛感情ではないと思う。そもそもこれまで恋愛をしたことがないのでそれがどういう物かは分からないけどね

 

 

「てうわ!いつの間にか魔法が解けてるっ」

 

 

気が付くと後ろにはクラブの勧誘の人たちが押し寄せていた。

ようこそと書かれた看板をもった数十人を前に反射的に私達の足が動く

 

 

「とにかく今は逃げないと…」

 

 

「きゃああああっ」

 

 

逃げる私達に向かい後方ではテニス部に興味はないですか、射的やってみないとか色々な声をかけながらすごい勢いで追いかけてくる。

 

 

「ま、まにあってますーッ!」

 

 

ほのかは目をまわしながら叫ぶが残念なことに彼らの耳には届かずその後、校門まで壮絶な追いかけっこが続いたのだった


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