()内の英単語の正しいアクセントを答えなさい。
『Don`t mind.It`s your (imagination).He had stayed on business in New yesterday.』
姫路の答え
『It`your imagina(,)tion.』
蒼介「正解だ。お前には言うまでもないだろうが、一般的に”-tion"という単語は”tion”の前に母音にアクセントがつく」
ムッツリーニの答え
『It`s your i(,)m(,)a(,)g(,)i(,)n(,)a(,)t(,)i(,)o(,)n(,).』
蒼介「数を打てば当たるというものではない……」
吉井明久の答え
『It`s your imagination !』
蒼介「ある意味稀有な才能だなお前は……」
翌日の放課後。明久は素早く帰り支度を整えて、近くにある雄二の席に駆け寄った。
明久「雄二、今日も楽しく勉強会をしよう」
雄二「……明久。似合わない台詞が気持ち悪いぞ」
明久「なんとでも言ってよ。体裁を気にしてる余裕なんかないし」
雄二「また減点でも食らったのか?」
明久「うん……」
雄二の言う減点とは玲が明久に出した課題である。試験当日までに積み重ねた点数分振り分け試験の時よりも成績が上がらなければ、自活能力なしと判断されそのまま玲が明久の家に居座ることになっている。
雄二「それで、今はどのくらいの減点なんだ?」
明久「確か、合計で390点。もうかなり厳しいんだよね……」
雄二「そうなると、期末の総合目標は1190くらいだな」
明久「そうなんだよ。今までは絶好調でも1100ちょっとだから、さらに50点以上アップさせないと……」
あの明久が既にEクラス中堅レベルの学力を有していることに驚くかもしれないが、絶対的な得意科目である日本史を中心に全ての科目が多少(本当に多少だが)向上している明久は、Fクラスの中では既にベスト5の学力がある(まあトップ4とは天と地ほどの差があるが、それは流石に仕方ないだろう)。
雄二「まあ、どうとでもなるレベルだな」
明久「え?そうなの?」
雄二「暗記科目を中心に今から死ぬ気で根性入れたら、それなりに上がるはずだからな。お前の場合70点程度で伸び代が残っている世界史が狙い目だ」
流石はクラス代表、試召戦争の為にクラスメイトの点数はおおよそ全て把握しているようだ。
それに加えて雄二は和真の並外れた人脈によるアシストを受け、同学年の全ての生徒の学力、誰がどの教科を得意、苦手としているかまでを大まかに把握している。このことはAクラスに対してのアドバンテージになり得るかもしれない。
明久達の話をしている最中、鞄を抱えた和真が雄二の席にやってきた。
和真「おい明久、朗報だ」
明久「どうしたの和真?…あ、もしかしてやっぱり手伝ってくれるの?」
雄二「明久、せっかく木下姉との勉強会を邪魔してやるなよ、馬に蹴られるぞ(ニヤニヤ)」
和真「鬱陶しいニヤケ面浮かべてるとこ悪いが……俺達『アクティブ』の勉強会に遊びは一切無ぇぞ。源太に言わせれば、『テスト当日までただひたすらに延々と問題を解き続ける、夢も希望も存在しない恐怖の無限地獄』だからな」
雄二「お、おう……」
明久「想像するだけで恐ろしい……」
奇しくも成績優秀者のみで構成された『アクティブ』のメンバーは、テスト期間に入る頃には知識を蓄えるインプットの段階はもう終えてしまっている。テスト期間中に彼らがすることは学んだ知識教養を活かして問題をひたすら解くアウトプットの作業となる。しかも今回の期末は和真が枷を外すことに決めたため、おそらく用意されている問題の難易度及びシゴキのキツさ、ともに以前までと比べてレベルが跳ね上がっているだろう。質、量ともに明久が立ち入って良い領域ではない。
明久「じゃあ朗報って何?」
和真「ソウスケにお前らの勉強見てやってくれって頼んどいた。勉強教えてもらうならまさに適任だろ」
雄二「ソウスケって……鳳か」
和真がピンチヒッターとして選んだのは、和真の無二の親友にして好敵手、Aクラス代表にして生徒会長のの鳳蒼介。なるほど、確かに勉強会を開くとなれば講師としてこの上なく適任な人材である。
明久「それはありがたいんだけど……よく引き受けてくれたね?僕、鳳君とは全く面識ないのに」
和真「お前の減点云々の事情話したら、快く引き受けてくれたぞ。『動機はやや不純だが、生徒会長として向上心のある生徒には背を後押ししてやらないとな』っつって」
雄二「けっ。そりゃまた、いかにもエリート様らしい言い分だな」
四月の試召戦争で完全な敗北を喫したことを少し根にもっているのか、やや刺のある態度の雄二。いや、そもそも人種的に合わないだけかもしれない。
和真「あいつはあいつで苦労してるんだぞ?例えば俺らの起こした覗き騒動のもみ消しをスポンサー方に頭下げてお願いしに奔走したりとかな」
「「…………」」
雄二だけでなく、明久も申し訳なさそうな表情で目をそらす。この二人にも罪悪感らしきものはあるらしい。
和真「蒼介は校門で待機しているそうだからさっさと行ってやれよ、じゃあな………あ、そうそう翔子」
伝達事項を伝えてそのまま教室を出て行こうとする和真だが、ドアを開けながら翔子に伝えたいことがあったと思い出し、翔子の方に顔を向ける。
翔子「……何?」
和真「今回の期末……お前にも負けるつもりねぇから」
急に挑戦状を叩きつけられた翔子は一瞬目を丸くするも、すぐに楽しげに微笑む。
翔子「……望むところ。返り討ちにしてあげる」
和真「ハッ、それでこそ俺の親友だぜ」
このとき明久達の目には、二人の背後に竜と虎のイメージが映っていたとか、いないとか。
雄二「んじゃ、入ってくれ」
あの後話し合いの結果、雄二の家で勉強会を開くことになった。いつものメンバーに和真と交代で加入した蒼介を加え、一同は住宅街の一角にある雄二の家に到着した。
「「「お邪魔します」」」
玄関で靴を脱いで中に入る。雄二の家は二階建ての一軒家で明久の家より広いため、この人数でも窮屈に感じることは無いだろう。
蒼介「坂本、ご両親は留守なのか?」
雄二「ああ。親父は仕事で、おふくろは高校の同級生達と温泉旅行らしい。だから何も気兼ねせずゆっくりとしてくれ」明久「そうなんだ。そう言えば、前に来た時も雄二の家族は留守だったよね」
雄二「ああ。その方が都合がいいからな。色々と」
何故か晴れやかな表情を浮かべている雄二に蒼介は疑問を持つも、自分の父が脳裏にちらついたため詮索しないことにする。親に頭を悩ませることなど珍しくはないだろう。
そのまま雄二がドアを開けると……
『…………………!!(ぷちぷちぷちぷち)』
……パタン
居間には一心不乱にプチプチを潰している女性がいた。それを確認すると雄二は無表情でドアを閉めた。
明久「ゆ、雄二……?今の、山ほどあるプチプチを潰していた人って……」
翔子「……雄二のお義母さ-」
雄二「違う。あれは赤の他人だ」
美波「さ、坂本の母親なの……?なんだか、随分とすごい量を潰していたわよね……」
秀吉「う、うむ。あれほどの量。費やした時間はおそらく一時間や二時間ではきくまい」
ムッツリーニ「……凄い集中力」
姫路「坂本君のお母さんはそういうお仕事をされているのでしょうか?」
雄二「おそらく精神に疾患のある患者がなんらかの手段でこの家に侵入したに違いない。なにせ、俺のおふくろは温泉旅行に行っているはずだからな」
翔子「……雄二、お義母さんにそんな言い方しちゃダメ」
蒼介「苦し紛れな嘘をつくな、往生際が悪い」
雄二が戸を閉めてしまったので部屋に入れずにいると、雄二いわく赤の他人さんの声が中から聞こえてきた。
『あら……?もうこんな時間。さっき雄二を送り出したと思ったのに』
それが事実なら八時間近くあの作業を続けていたことになる。すごい集中力だと蒼介はややズレた感想を抱いた。
『続きはお昼を食べてからにしましょう』
雄二「(ガチャッ!)おふくろっ!何やってんだ!?」
とうとう耐えきれなくなった雄二が勢いよくドアを開けて部屋の中に踏み込んだ。やはり雄二の母親であっていたらしい。
坂本母「あら、雄二。おかえりなさい」
雄二「おかえりじゃねぇ!なんで家にいるんだ!?今日は泊まりで温泉旅行じゃなかったのかよ!?」
坂本母「それがね、お母さん日付を間違えちゃったみたいなの。7月と10月って、パッと見ると数字が似ているから困るわね」
雄二「どこが似てるんだ!?数字の形どころか文字数すら合ってないだろ!?」
坂本母「こら雄二。またそうやってお母さんを天然ボケ女子大生扱いしてっ」
雄二「サラッと図々しい台詞をぬかすな!あんたの黄金期は十年以上前に終わっているはずだ!」
坂本母「あら、雄二のお友達かしら?」
雄二「だから人の話を聞けぇ!」
怒濤の応酬に呆気にとられる一同。秀介といい守那といい大悟といい玲といい、文月学園の生徒の親族は奇人変人の見本誌なのだろうか。
坂本母「皆さんいらっしゃい。うちの雄二がいつもお世話になっています。私はこの子の母親の雪乃と言います」
柔らかい物腰と微笑で挨拶をする雄二の母、雪乃。その優しげな雰囲気は雄二のとの血の繋がりを疑うレベルである。
まあそれよりも、一同には気になることが一つ。
美波「さ、坂本の母親って………若すぎない!?」
秀吉「むぅ……。とても子を産んでおるとは思えん……」
ムッツリーニ「……美人」
姫路「まるでお姉さんみたいですね~」
それぞれの感想通り母親というよりは年の離れた姉と見間違うほどの若々しさであるが、自分の両親も年齢相応の容姿とは言いがたいので蒼介は特に何も言及しなかった。
雄二「み、皆、とりあえずおふくろは見なかったことにして、俺の部屋に来てくれ……」
明久「う、うん。それじゃ、お邪魔します」
雪乃「後でお茶を持っていきますね」
蒼介「ご厚意感謝します」
一通り挨拶を済ませてから雄二達は階段を上がってすぐのところにある雄二の部屋に向かう。中に入ると一人用にしては結構な広さがあり、意外なことに綺麗に整頓されていた。
明久「そういや、久しぶりに雄二の部屋に来たよ」
秀吉「ワシもじゃな」
ムッツリーニ「……同じく」
美波「え?アンタたちはよく来てるんじゃないの?」
明久「大抵は僕の家に集まっていたからね。雄二の家だけじゃなくて秀吉やムッツリーニの家でもあんまり遊んだことはないんだよ」
雄二「場所といい、広さといい、明久の家は都合がいいからな」
姫路「家族用のマンションに一人暮らしですもんね。贅沢です」
美波「食生活を除けばね」
蒼介「……?吉井の食生活に何か問題でもあるのか?」
雄二「ああ、そういや鳳は知らなかったな」
蒼介は雄二から明久の一人暮らしの現状(食費の大半をゲームや漫画につぎ込み、水と塩が主食であること)を聞くと、二つ返事で引き受けたことを早くも後悔し始める。
蒼介(カズマの奴、そのことを話せば断られると私に黙っていたな……吉井のためを思えば一人暮らしをやめさせるべきだろう……かといって引き受けたからには今更反故にするわけにもいかないし……クソッ、してやられた……)
雄二「それはそうと……。やっぱりこの人数で俺の部屋は狭すぎるか。参ったな……」
蒼介が内心で葛藤しているなか、雄二は困ったように言う。全員で8人ともなると、座って話をするだけならまだしも道具を広げて勉強をするには少々広さが足りない。
明久「居間じゃダメかな?」
雄二「ダメじゃないが、おふくろがいるからな。勉強にならない可能性が高い」
翔子「……雄二、お義母さんを邪魔物扱いしちゃダメ」
雄二「翔子、お前はいい加減おふくろのツッコミどころの多さに気づくべきだ。……そうだ鳳、お前の家は行けるか?絶対にこの人数でも余裕だろ」
蒼介「それは構わんが……赤羽家の人間は例え客人であろうとも、作法を弁えていない者に容赦するほど寛容では無いぞ」
雄二「…………無理だな(チラッ)」
姫路「あ、あはは……(チラッ)」
明久「ねぇ二人とも、なんで僕をチラ見したの?」
蒼介が現在住んでいる母親の実家の人々は伝統と格式、そして礼節を重んじる頭のお堅い集団である。そんな場所に作法の「さ」の字も知らない者が大半を占めるこの面子(特に明久)が向かえばどうなるか、雄二にはある程度想像がつく。週一で料理修行のため訪れている姫路も思わずひきつった笑みを浮かべる。
Prrr!Prrr!
どうしようか一同は迷っていると、突然部屋の中に携帯の着信音と思わしき電子音が鳴り響いた。
美波「あ、ウチの携帯ね。ちょっとゴメン」
スカートのポケットから携帯電話を取り出して耳に当てる美波。メールではなくて電話ということは何か急用である可能性がある。
美波「もしもし?あ Mut……お母さん。どうしたの?……うん。……うん。そう。わかった」
一分もしないで通話を終え、美波は携帯をポケットにしまった。
明久「美波、何かあったの?」
美波「うん……。今週は仕事が休みだからって母親が家にいるはずだったんだけど……ちょっと急な仕事が入って家にいられなくなったみたい」
明久「あ、そうなの?それじゃ、葉月ちゃんが家に一人ってこと?」
蒼介(葉月……おそらく妹か)
美波「そうね。だから、悪いけど今日はウチは帰るわ。勉強はまた今度ね」
雄二「待て島田。それなら、場所をお前の家に変更しないか?」
美波「え?ウチの家?」
秀吉「それは良いのう。丁度雄二の部屋は手狭だったところじゃしの」
姫路「葉月ちゃんとも会えますしね」
ムッツリーニ「……なんなら、夕飯を作る」
蒼介「料理か。差し支えなければ私が引き受けよう」
翔子「……鳳の腕が気になるから私も手伝う」
どうやら反対意見は無いようだ。特に提案者の雄二が会場を変えたくて仕方がないらしい。
明久「美波さえ良かったら、どうかな?」
美波「う……。そ、そうね……じゃ、じゃあ、ウチの家にしましょうか……ただし!絶対にウチの部屋に入っちゃダメだからね!」
少し考えてから美波は提案を承諾するも、明久の目を見て美波はそう釘を刺した。おそらく美波の部屋には明久だけには見られたくないようなものでもあるのだろう。
雄二「よしっ!そうと決まれば早速移動だ!チビッ子も一人じゃ寂しいだろうからな!」
蒼介(そこまで嫌だったか……)
背中を押さんばかりの勢いで雄二は全員を玄関に追いやる。
それぞれが靴を履いている間、蒼介と雄二は居間に入って雪乃に声をかける。蒼介は一同を代表して別れの挨拶のため、雄二は出掛けることを報告するためだろう。
雄二「おふくろ。ちょっと出掛けてくる。夕飯は昨日の残りが冷蔵庫にあるから、それを温めて食べて……」
蒼介「わざわざお邪魔しておいて申し訳ありません。それでは失礼しま……」
雪乃「あら、もう行っちゃうの?お茶を用意しているところなのに」
蒼介(どう見ても麺つゆだ……)
雄二「……その麺つゆのボトルは何に使うんだ?」
雪乃「麺つゆ?あらら……。てっきり、アイスコーヒーだとばかり……」
雄二「おふくろ……。色や匂いで気付いてくれとは言わないから、せめてラベルで気づいていくれ……」
蒼介「……お前も苦労しているな」
和真「……っつうわけで、しばらくは俺のいた主人公ポジションに蒼介がつくことになった。ボケ:ツッコミ=5:5の俺と違って多分10割ツッコミになると思う」
蒼介「出番はありがたいが、はやくも苦労人ポジションに落ち着きそうで先行き不安だな……」
【ミニコント】
テーマ:演劇2
秀吉「今日も演劇の練習に付き合ってもらうぞい義兄上」
和真「義兄上言うな。……で、今回のテーマは?」
秀吉「そうじゃのう……今日は『神に反逆した勇者』にしようかの」
和真「じゃあ俺は神で。……コホン……
人の子よ……お前達はこの星を汚しすぎた
その身をもって裁きの雷(ライトニングタイガー)を受けるがよい」
秀吉「へっ!神サマだかなんだか知らねーがよ、ゴチャゴチャうるせーんだよ!俺達ははテメェの操り人形なんかじゃねぇんだよ!」
優子「運命を決めるのは神でも勇者でもない……アタシの人生(ものがたり)はいつだってアタシが主役よ!」
「「第三勢力!?」」