バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

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【ある日の出来事】

優子「和真~♪よしよし、ホント可愛いわね♪」ナデナデ

和真「だから可愛いとかはやめてくれ、結構気にしてるんだぞ童顔なの……」

優子「ごめんごめん。じゃあちょっと趣向を変えて……こんなのはどう?」←和真の顎を撫でる

和真「猫か俺は。ちょっとくすぐってぇよ」

優子「………………ダメ?」

和真「………………ダメじゃない」

優子「~♪」ナデナデ

和真「……………………♪」










徹(あいつらもしかして、二人きりだといつもああなのか?甘党の僕でも砂糖吐きそうだよ)




不自然な明久

秀吉「相変わらず朝から賑やかじゃな……先程明久が走り去って行ったと思ったら、今度は島田が教室から飛び出して行くとは。何があったのじゃ?」

和真「くくっ……雄二が笑えるほどダセェ格好してることも、ぐふっ、関係あんのか?くふふっ、腸がよじれそうなんだが……っ……ヒャハハハハハハハハハハ!」

雄二「テメェ笑いすぎだ和真!おいやめろコラ、その笑い方滅茶苦茶腹立つんだよ!」

 

今の雄二は上半身が制服で下半身がハーフパンツ姿という、人類には早すぎるファッションをしていた。

単刀直入に言ってダサすぎる。

 

明久「いや、別に何もないけど」

秀吉「なんじゃ。先ほどのことと言い、ワシに秘密かの?それはちと、寂しいのう……」

明久(なんだかすごく罪悪感を感じる)

雄二「聞いてくれ秀吉に和真。実はこのバカがこんな時間から公序良俗に反するような発言をしたんだ」

秀吉「明久……。お主、朝っぱらから助平なことを言っておったのか?」

明久「ち、違うよ!僕はそんなムッツリーニみたいな真似はしないよ!」

和真(覗きの濡れ衣を晴らすために行動してたのに、最終的に覗きがメインになってたような男がそう言ってもねぇ……)

ムッツリーニ「……失礼な」

 

和真が明久を冷めた目で見ていると、後ろからムッツリーニの心外だとでも言わんばかりのムッとした呟き声が聞こえてきた。

 

明久「おはようムッツリーニ。どうしたの?随分と荷物が多いみたいだけど」

 

ムッツリーニの両手には学校の鞄の他に大きな包みやら袋やらがあった。今日は体育がないのでジャージではないだろうし、いったい何が入っているのか、明久にはまるで見当もつかない。

 

ムッツリーニ「……ただの枕カバー」

明久「枕カバー?その割には包みが大き過ぎない?」

ムッツリーニ「……そんなことはない」

明久「……………………ごめんムッツリーニ。ちょっと中身を見せてね」

ムッツリーニ「……あ」

 

荷物のせいで動きの鈍いムッツリーニから明久が包みを一つ奪い取る。すると、中から出てきたのは等身大の明久がプリントされた白い布(セーラー服着用)。

 

ムッツリーニ「……ただの抱き枕カバー」

明久「ただのじゃないっ!枕カバーと抱き枕カバーには大きな隔たりがあるということをよく覚えておくんだ!っていうかどうして僕の写真なの!?」

和真(誰のリクエストだ?本命は久保か姫路、次点で島田、大穴でどこからか嗅ぎ付けた美紀ってところかな……)

ムッツリーニ「……世の中には、マニアというものがいる」

明久「何を言っているのさ!僕の抱き枕カバーなんかを欲しがる人なんてどこにも……」

久保「(コンコン)……失礼。土屋君はいるかな?前に頼んでいた枕カバーを……」

 

突然、ノックとともにAクラス次席にして代表代理の久保利光が教室に入ってきた。

 

明久「あれ?珍しいね久保君。ムッツリーニに何か用?」

久保「……なんでもない。少々用事を思い出したのでこれで失礼するよ」

 

明久の顔を見るなり久保はややばつが悪そうな表情を浮かべてそそくさと去っていった。和真と雄二はムッツリーニに、明久の耳に入らないように事情を聞く。

 

雄二「久保とも取引していたのか?」

ムッツリーニ「(こくり)………強化合宿以来、お得意様」

和真「予想してはいたが完全に吹っ切れたか。アイツもう戻ってこれねーな……」

 

知らないうちに友人が随分道を踏み外してしまったことに和真は遠い目になる。一方明久は未だに気づいてないが、本能は察知しているのか若干体が若干震えている。

 

明久「はぁ……とにかくムッツリーニ。とりあえずその抱き枕カバーは後で没収するからね……作った分を全部回収して、写真を秀吉に換えて持ってきてよ……」

秀吉「どさくさに紛れてワシの抱き枕を作るでない」

姫路「そうですよ明久君。人の物を勝手に取って、しかも改造するなんてダメです。(ボソッ)一枚は私の分なんですし……」

和真(やっぱこいつもか……) 

秀吉「ところで先程のお主らの話は何じゃったのかの?」

明久「あ。えっと、何の話をしてたっけ?」

 

無駄にインパクトのある話が連続したせいか、明久と秀吉は最初の話題を忘れてしまったようだ。

 

雄二「俺が明久にトランクス姿での登校を強要された、という話だ」

秀吉「明久、お主……」

明久「雄二っ!わざと誤解を招くような言い方をしないように!」

和真(つーかいったいどんな権限があればクラスメイトをトランクス姿で登校させられるんだよ……)

雄二「まぁ、それは冗談だが……。要するに、明久が送ってきたメールのせいで翔子が何かを勘ぐって、それが原因で俺が酷い目に遭ったって話だ」

秀吉「メール?それは今朝の明久の様子がおかしいことと何か関係があるのかの?」

 

何気なく言った秀吉の一言に、明久に心臓を握られているような緊張感が走る。和真はそれにいち早く気づくも、大して興味が湧かなかったのでそのまま流す。直感に引っ掛からない以上、大して面白いことではないだろうから。

 

姫路「明久君の様子、ですか……?そう言われてみれば、今朝はいつもより顔色がいいですね。制服も糊まで利いてパリッとしていますし、寝癖もないですし……」

雄二「確かにおかしいな。顔色がいいのはまだわからんでもないが、制服がきちんとしているのは妙だ」

ムッツリーニ「……明久らしくない」

明久「た、たまにはそういう気分の日もあるんだよ!それよりチャイムが鳴るよ!鉄人が来る前に席につかないと!それじゃ、そういうことでっ!」

 

旗色がどんどん悪くなるのを危惧した明久は強引に話を打ちきりその場を離れるも、和真以外の残ったメンバーは猜疑心に満ちた目を明久に向けたままである。

 

「「「怪しい……」」」

和真(本人が言いたくねぇなら放っといてやりゃ良いものを……こいつら野次馬になるタイプだな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『吉井。保健室に行ってきなさい』

 

真剣にノートをとっていただけの明久はこの台詞を午前中の四つの授業で七回も聞いた。四月の試召戦争以降多少真面目に授業を受けるようにはなってはいるものの、ここまで熱心に取り組んでいるのは流石に異常だ。日本史ならともかく明久がその他の教科でこれほど真剣にノートを取っていたら、この学園の教師は怪しむを通り越して体調が心配になってくるようだ。

 

美波「アキ、何かあったの?朝から様子が変みたいだけど」

明久「別になんでもないよ。ちょっと真面目に勉強に取り組んでみようと思っただけで」

美波「アキ。おでこ出しなさい。今熱を測るから」

明久「だからどうして皆似たようなリアクションを取るんだろう…………ってこれはダメだっ!」

美波「きゃっ!?」

 

大袈裟に心配する美波を呆れたように見ていた明久であったが、突如弾かれたように飛び退いて美波から距離を取った。

 

美波「こらっ!何よそのリアクションは!人が折角心配して熱を測ってあげてようとしたのに!」

明久「ご、ごめん!色々と事情があるんだ!」

美波「事情?何よそれ?」

明久「う……。えっと……。そ、それより、まずはお昼にしようよ!昼休みなんて短いんだからさ!」

 

朝と同じように無理矢理話題を逸らそうと昼食を取り出すする明久だが、昼食を取り出すという行為そのものがもう違和感でしかない。

 

美波「え!?アキ、お弁当を持っているなんて、一体どうしたの!?」

姫路「えぇっ!?明久君がお弁当を!?」

明久「姫路さんいつの間に!?……いや、そこまで驚かなくても……僕だって人間なんだがら、たまには栄養を取らないと死んじゃうし」

姫路「それはそうでしょうけど……でも、今日はいつもと違いませんか?」

美波「そうね。アキが食べるとしたら大抵は買ってきたお弁当なのに、今日は手作りみたいに見えるわね」

 

二人がじろじろと明久の弁当を見ている。確かに明久は弁当を持ってきたときでも大抵コンビニやスーパーの惣菜弁当である。本人曰く、一人前だとその方が安いらしい。

 

姫路「明久君、どうして今日は手作りのお弁当なんですか?」

美波「まさか、誰かに作ってもらったのかしら?」

明久(あ、攻撃色……)「一応、自分で作ったんだけど」

美波「嘘ね」

姫路「嘘ですね」

 

美波が攻撃体勢に入っていたので明久は正直に答えたが、当の二人はばっさりと一蹴した。

 

美波「だって、アキに料理なんてできるわけがないもの。正直に言いなさい。誰かに作ってもらったんでしょう?」

姫路「随分と上手なお弁当ですね……。明久君の周りでこんなに上手にお弁当を作れる人っていうと」

美波「坂本と土屋のどちらかね。柊はできないことはないけどやる気は無いって前言ってたし」

 

この手の話題で出てくる候補が何故か皆男子なあたり、文月学園の業の深さが伺える。ちなみに全校生徒の中で最も料理ができるのも男子(蒼介)である。

 

明久「やれやれ……。二人の想像に任せるよ」

美波「想像通りって…そんな!?アキはもうそんなに汚れちゃってるの!?」

姫路「はぅぅ……」

明久「え!?待って!美波は僕で一体何を想像したの!?あと、どうして姫路さんは一瞬で顔が真っ赤になっているの!?」

 

めんどくさくなったのか明久は適当に対応するも、勘違いはさらに加速した。汚れているのはこの二人の心の方である気がするが、きっと気のせいではないのだろう。

 

姫路「そうですね。そうなると、やっぱり明久君と坂本君は……」

翔子「……やっぱり、雄二の浮気相手は吉井だった」

 

そんな姫路の発言を翔子が聴き漏らすはずもなく、熟練の暗殺者よろしく気配を消して音も立てずに雄二へと近づいていく。

 

翔子「……雄二」

雄二「ん?翔子か?やっと制服を返す気になったか?」

翔子「……私は雄二に酷いことをしたくない」

雄二「?よくわからんが、それは良い心がけだな」

翔子「……だから、先に警告する」

雄二「何を?」

翔子「……おとなしく、私にトランクスを頂戴」

 

ダッ(雄二、猛ダッシュ)

ダッ(翔子、猛追撃)

 

明久「あはは。雄二ってばバカだなぁ」

 

ようやくテスト期間中のスケジュールを組み終えた和真は、呑気そうに笑っている明久を見かけたので、一つ悪戯心が湧いたのかいつもの不敵な笑みを浮かべて姫路達に爆弾を投げかける。

 

和真「二人とも、ただの勘だが……明久の家に年上の女性が住み着いてそうな気がするな」

美波「アキ……?」

姫路「明久君……?」

 

ダッ(明久、猛ダッシュ)

 

美波「ああっ!こら、待ちなさい!」

姫路「明久君、どういうことかきちんと説明してくださね?」

 

殺気をともなって明久を追いかけていく二人を見届けて、和真は次の授業の準備をする。実を言うと明久に姫路達をけしかけたのは悪戯心などではない。ご存じの通り意外と根に持つタイプの和真は、ここ数日優子のことで弄られまくったことへの報復の機会を伺っていたらしい。

 

和真(しかし出ていく直前の明久の表情……もしかして図星だったか?適当に言っても当たるもんだな、俺の勘)

 

 

 

 




【ミニコント】
テーマ:達成感

明久「小さな目標をいっぱい作ると達成感を得られやすいんだって」

和真「へぇ、面白いな。やってみろよ」

明久「それじゃあまず最初の目標は、『教室ののドアを開ける』だよ!」

和真(いや小さすぎねぇか!?)

ガチャ

明久「よーし!僕はドアを見事に開けてやったぞ!次は『鞄から筆記用具を取り出す』だ!」

和真「…………」

明久「どうだ~~!またもっ!またもやっ!達成してやったぞイェーイ!」

和真「お前はホント幸せな奴だな……」


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