以下の英文を正しい日本語に訳しなさい。
『Die Musik gefallt Leuten und bereichert auch den Verstand.』
美波、飛鳥の答え
『音楽は人々を楽しませる上に、心を豊かにします。
※これは英語ではなくドイツ語だと思います』
雄二の答え
『出題が英語ではなくドイツ語になっている為に解答不可』
蒼介「どうやら違う問題が混入しまったようだな。日本語訳は飛鳥達の解答で正解だ。今回は教師側の手落ちなので無記入の人も含め全員正解にするとのことだったのだが……」
ムッツリーニの答え
『 ←あぶりだし』
明久の答え
『 ←バカには見えない答え』
蒼介「お前達だけは例外として無得点だそうだ」
「……雄二」
「なんだ翔子?」
「……携帯電話を見せて欲しい」
「どうした?なんでいきなりそんなことを言い出すんだ?」
「……昨日、TVで言ってたから」
「TVで?何を?」
「……浮気の痕跡は携帯電話に残っていることが多いって」
「ほほぅ」
「……だから、見せて」
「断る」
「……歯を食い縛って欲しい」
「待て!今途中経過が色々飛んだぞ!?いきなりグーか!?グーで来る気か!?」
「……見せてくれる?」
「あー……。いや、それがだな、今日はたまたま家に忘れて(ドゴォォ!!)ぎゃぁああ腹があああ!?」
「……最初からこうするべきだった」
「結局タイガーショットじゃねぇか!歯を食い縛れってのは何だったんだ!?フェイクだったのか畜生!」
「……残念ながら、ライトニングタイガーは習得できてない」
「習得出来てたら俺の腹に食らわせてたのかお前は!?鉄人さえ負傷させたあの殺人技を!なんだこいつ先日まで病み上がりだったとは思えねぇほどアグレッシブだ!?」
「……雄二。手をどけて。携帯電話が取れない」
「わ、渡さねぇぞ!やっと直って返ってきたばかりだってのに、お前なんかに奪われてたまるか!」
「……抵抗するなら、ズボンとトランクスごと持っていく」
「トラ……っ!?百歩譲ってズボンはまだしも、トランクスは関係ないだろ!?俺に下半身裸の状態で登校しろと言うのか!?」
「……男の子は裸にYシャツ一枚だけの格好が大好きってお義母さんから聞いた」
「違う!好きだからって自分がなりたいワケじゃねぇ!そこはかなり大事なところだから間違えんな!」
「……それに、私も雄二のその姿を見てみたい」
「お前は変態か!?」
「……変態じゃない。幼馴染の私には、雄二の成長を確認する義務があるというだけ」
「ええい、ベルトに手を伸ばすな!ズボンのホックを外そうとするな!わかった!渡す!携帯電話を渡すから!」
「……………そう」
「翔子。なぜそこで露骨にがっかりした顔をするんだ」
「……それじゃあ、携帯電話を見せて」
「やれやれ、あの……。頼むから壊してくれるなよ、機械音痴」
「……努力する」
「そうしてくれ」
「………………」
「しかしあのオッサン半端ねぇな、マジでもう完治してやがる……それでどうだ?何も面白いものはないだろ?わかったらおとなしく携帯を返し……だから待て!なぜ俺のズボンに手をかける!?携帯はもう渡してあるだろ!?」
「……私より、吉井の方がメールも着信も多い」
「あん?それがどうかしたのか?」
「……つまり、雄二の浮気相手は吉井ということになる」
「いや、ならないだろ」
「……だから、お仕置き」
「どうして俺の周りには性別の違いを些細なことと考える連中がこうも多いんだ……?いいか翔子、メールの内容をよく見てみろ、ただの遊びの連絡だろ?」
「……でも」
PiPiPiPi
「っと、メールか。今のは俺の携帯だよな?確認するから携帯を……いや、違うな。携帯よりも先に、スリもビックリの手際で抜き取った俺のベルトを返すんだ」
「……ダメ。返さない」
「は?何で……ってうぉぃっ!?今度は更にズボンを取る気なのか!?ここは天下の往来だと……いやいや、わかった!俺も大人だ。千歩譲ってズボンは渡してやってもいい。だからせめて、トランクスだけは……!」
「……ダメ」
「お前は正気か!?自分が何をしているのかわかっているのか!?」
「……浮気は、絶対に、許さない……!」
「畜生!さっきのメールには何が書いてあったんだ!?」
【Message From 吉井明久】
雄二の家に泊めてもらえないかな。今夜はちょっと……帰りたくないんだ。
学期末、そろそろ真面目な生徒達が期末テストの勉強を進め始める頃、成績優秀者で構成されている『アクティブ』は先日ようやくラクロス部へのリベンジを果たしたことで一旦ピリオドを打ち、テスト勉強のため早朝から今学期最後の活動に励んでいる。その内容は……
『くそ、また柊だ!?』
『誰か!誰か奴を止めろォォォ!!!』
和真「無駄無駄ァ!何人たりとも俺のドリブルは止められねぇよ!」
サッカー部に混じっての紅白戦である。ちなみに和真と優子は赤組に、蒼介と徹と源太は白組に所属している。得点は今のところ2-0で赤組がリードしている。というのも、白組側のパスワークが優子と和真の連携にことごとくカットされ終始白組のペースで進んでいるのだ。ちなみに和真にフリーで打たれたシュートは計4本。むしろその状況で2失点に押さえ込んでいるキーパーの蒼介を褒めるべきだろう。
源太「いい加減に止まりやがれ!」
和真「邪魔だぁぁぁ!」
源太「ぐぅぅ……!完全に力負けしてやがる!」
和真「……(チラッ)」
優子「!……(コクン)」
自チームラインまで下がって自慢のガタイを利用したタックルをしかけた源太だったが、体格で勝っているはずの和真に吹き飛ばされてしまう。そのまま和真は優子にアイコンタクトをしつつ切り込み、ペナルティーエリア外からシュート体勢に入る。
和真「走れ稲妻!!」
ズガァァァァァァアアァァァン!!!
ボールを蹴った音とは思えない轟音とともに、和真の放ったライトニングタイガーはゴールに吸い込まれるように飛んでいく。しかしそうはさせまいと蒼介が飛び付く。
蒼介「なめるなァァァァァ!」
バシィィィッ!!!
キャッチしにいくのは成功するか不確定だと判断し全身全霊でのパンチングを行いボールの側面を正確に捉え、何とかボールを弾くことに成功した。
蒼介「っ!?しまった!?」
和真(もう気づいたか、だがそれでも遅ぇ!お前は一か八かだろうが是が非でもキャッチに行くべきだったな、何故なら弾かれたボールの先には……優子がいる!)
優子「和真、パァスッ!」
事前にアイコンタクトを受けていた優子は、白組のDFがボールに向かうよりずっと早くに飛び付きノートラップで和真に返球する。驚くほど正確に出されたパスに、和真は同じくノートラップシュートでゴールを狙う。
和真「轟け雷鳴!!」
ズガァァァァァァアアァァァン!!!
蒼介「ハァアアアアア!!!」
たぐいまれなる洞察力でいち早く和真達の狙いを看破していた蒼介は第二撃目にも何なく追い付きパンチングで防ごうとする。
しかし和真のシュートした場所は既にペナルティーエリア内、エリア外でさえ2回に1回しか止められないのに、エリア内からシュートを打たれればどうなるか。
ズバァァァァン
蒼介「ぐぅ……!」
当然、ボールは蒼介の手を軽々と弾き飛ばしそのままゴールに突き刺さった。そこで試合終了のホイッスルが鳴る。
和真「優子!」
優子「和真!」
「「イェーイ!(パァーン!!)」」
完全勝利を果たし、意気揚々とハイタッチをする『アクティブ』きっての黄金コンビ……兼カップル。そんな二人を遠目から見る白組の凸凹コンビ。
源太「……なぁ、あいつら付き合うことになったんだよな?今までと何も代わってねぇじゃねえか」
徹「まあ和真が自覚してなかっただけで、あの二人が相思相愛なのは僕らの間で周知の事実だったからね。あ、でも二人きりのときはちょっとだけ変化があるよ」
源太「へぇ……面白そうだから詳しく」
徹「優子が母性愛に目覚めたのか、ひたすら和真を猫可愛がりしてるみたい。この前優子が和真の喉元を延々とくすぐっていたよ」
源太「猫可愛がりっつうかもう猫そのものじゃねぇか!?というか和真も何でされるがままなんだよ!?」
徹「もう慣れたんじゃない?散々僕達に弄り倒されたことで和真も耐性がついたとか」
源太「まじか、もうちょっと弄りたかったのに……」
徹「あ、それとくだらない口喧嘩をめっきりしなくなったね」
源太「あん?そういやそうだな。以前は呼吸をするかのように痴話喧嘩してたのによ」
徹「以前までの痴話喧嘩もほとんど和真から仕掛けてただろう?和真が控えるようになったから減ったのさ」
源太「へぇ……。でもなんで控えるようになったんだ?人を弄るのが大好きなアイツが」
徹「まあ、惚れた弱みって奴だろうね」
源太「どういうことだよ?」
徹「口喧嘩を吹っ掛けても言い負かされるとわかってるんだと思うよ。今は何とか平然と取り繕えてはいるけど、内心では優子にデレッデレだろうし」
源太「あいつツン成分0だもんな。……それにしてもあの和真が……プククッ……駄目だ笑いが止まらねぇや……ふふははは!」
徹「ククッ……やめろよ源太っ……!僕まで釣られて……はっははは!」
「「あっはっはっはっは!」」
和真「いいとこなしで惨敗したのに元気が有り余っているようで関心関心。さ、恒例の罰ゲームの時間だぜ?」
「「げっ!?」」
いつの間にか近くに来ていた和真は満面の笑みを浮かべて源太と徹の間に肩を組んで入ってきた。
手には不自然なほど真っ赤な液体の入ったコップが2つ。優子は同情するような目で見つめており、蒼介は既に飲み干して洗面所に向かっていった後である。
和真「綾倉先生特性ドリンクver.2ペナル茶(ティー)だ。死ぬほど辛いからよーっく味わって飲めよ?」
『アクティブ追加ルール』……何らかの理由でチーム分けして闘うとき、敗者は罰ゲームとして綾倉ドリンクを飲まなくてはならない。
ピッチ全体に男子二人の絶叫が響き渡ったことは言うまでもない。サッカー部キャプテン金田一はその光景を見届けて一言。
金田一「マジで容赦ねーな……」
負け犬どもを葬って気分爽快のまま教室を目指す途中、和真は自分のパートナーと瓜二つのクラスメイトを見かけたので声をかける。
和真「よ、秀吉」
秀吉「誰かと思えば義兄上ではないか、おはようなのじゃ(ニヤニヤ)」
和真「そのニヤケ面と減らず口を今すぐやめねぇと、俺の持ちうる人脈をフルに使って『高橋殺しの戦乙女』という通り名を広めることになるが?」
秀吉「じょ、冗談じゃ!?謝るから、謝るからどうかそれはやめて欲しいのじゃ!」
『高橋殺し』も『戦“乙女”』も、秀吉にとっては是非とも頂戴したくない二つ名である。
和真「ったく、いい加減しつけーんだよ。さっさと教室に行くぞ」
秀吉(多分将来的にそうなるのだろうから別にいいじゃろうに……)
和真「なんか思ったか?」
秀吉「何でもないのじゃ」(思ったか……ってなんじゃ!?こやつ、どれだけ勘が鋭いのじゃ!?)
ここ最近の様式美と化していたやり取りを一通り消化しつつ、二人は旧校舎を歩く。ようやくFクラス教室が見えてきたところで、
美波「ウチにはアキの本心がわからないっ!」
大声とともに美波が教室から飛び出していった。それを訝しみつつも可笑しな出来事はFクラスでは日常茶飯事なので、そのまま気にせず教室に入っていった。
蒼介「和真のあわてふためく様子をもっと見ていたかった読者の諸君には申し訳ないが、もうある程度なれてしまったようだ」
和真「人間は適応するもんだからな、あんだけ弄りまくられたらそりゃ慣れるわ。いちいちアイツらに腹を立ててたらキリねぇしな」
蒼介「それにしては報復とばかりに大門達を粛清したようだが?」
和真「別に怒ってあんなことやったわけじゃねぇよ。ただ、そうだな……純粋に、もがき苦しむのを眺めるのが好きなだけだ」
蒼介「清々しいほど外道なセリフを吐いたぞこいつ……」
和真「ただまぁ、もしどこかの誰かが『和真はネコ』とか言ってあのボケ(玉野美紀)に嗅ぎ付けられでもしたら、俺はそいつを地獄に叩き落とさなくちゃ気がすまねぇ……!」
蒼介「落ち着けカズマ、今のお前の形相、子どもが泣くレベルだ」