以下の問いに答えなさい
『西暦1492年、アメリカ大陸を発見した人物の名前をフルネームで答えなさい』
姫路瑞希の答え
『クリストファー・コロンブス』
蒼介「正解だ。卵の逸話で有名な偉人だな。コロンブスという名前は有名だが、意外とファーストネームが知られていない。意地悪問題に当たるのだが、姫路には関係なかったようだな」
五十嵐源太の答え
『Christopher Columbus』
蒼介「ここぞとばかりに帰国子女アピールするんじゃない」
清水美春の答え
『コロン・ブス』
蒼介「フルネームはわからなかったか。コロンブスは一語でファミリーネームであって、コロン・ブスでフルネームというわけではないので次からは気を付けるように」
島田美波の答え
『ブス』
蒼介「お前達Fクラスは定期的に過去の偉人を冒涜するよな……」
『では須川君。この場合3molのアンモニアを得る為に必要な薬品はなんですか?』
『塩酸を吉井の目に流し込みます』
『違います。それでは朝倉君』
『塩酸を吉井の鼻に流し込みます』
『流し込む場所が違うという意味ではありません。それでは、有働君』
『濃硫酸を吉井の目と鼻に流し込みます』
『『それだっ!!』』
『それだ、ではありません。それと答えるときは吉井君の方ではなく先生の方を見るように』
一時間目の授業は化学。布施先生は用事があるらしく別の先生が教壇に立って授業をしているが、嫉妬に狂ったFFF団の一同は授業そっちのけで明久の処刑方法を模索していた。
キーンコーンカーンコーン…
「えー……、今日はここまでにします」
そんなこんなであっという間に一時間目の終了を告げるチャイムが鳴り響き、教師が大きな溜息をついて教室から出て行った。須川達の殺意も先程までの数十倍に膨れ上がる。
『吉井のヤツ、島田と目と目で通じ合っていやがったぞ……!』
『島田は狙い目だと思ったのに、あのクソ野郎……!』
『畜生……!霧島は坂本にご執心だし……姫路、木下に続いて島田までヤツに持っていかれたら、このクラスの希望はアキちゃんしかいねえじゃねぇか……!』
和真(いやそれ明久じゃねぇか、見境ねぇなオイ……ふわぁあああ)
教室に殺意の視線が飛び交っているものの、そんなことがまるで気にならないほど和真は眠気に襲われている。授業中は寝ないと去年優子に約束させられているため、和真は少しでも眠気を和らげようと目を瞑り机に突っ伏す。しばらくすると、和真の耳にこのクラスの生徒ではない女子の甲高い声が響いてきた。
『お姉さまっ!何をしてるんですか!?そんなに豚野郎に密着して!?』
和真(この声は清水か……まあ来るとは思っていたが)
『み、美春!?ウチの邪魔をしにきたの!?』
『当然ですっ!そこの豚野郎がお姉さまに密着している姿を見て黙っていられるはずがありませんっ!』
『み、密着って、仕方ないでしょう!?代わりの卓袱台なんてないし、狭いんだからくっつかないとダメだし……』
和真(あ、駄目だこいつ。肝心なところでヘタレな部分はしっかりと残ってやがる)
その後も騒ぎは収まらず、それどころかFFF団も乱入してさらに大きくなっていったが、既に興味を無くした和真はお構い無しに半睡眠状態を続行した。
『さぁ授業を始めるぞ。今日は遠藤先生が別件で外しているので俺がビシビシ……ん?やれやれ……またか清水……授業が始まるから自分の席に戻るように』
和真「やれやれ、もう休憩タイムは終わりか……」
鉄人の声が聞こえるや否や姿勢を正し英語の教材と筆記用具を準備し終える和真。オンオフの切り替えが実にスムーズだ。
清水「きょ、今日は先週までと違って特に大事な用なんです!西村先生、今だけは美春を見逃して下さい!」
鉄人「特に大事な用事?それはどんな用だ?まさかまた先週みたいに『邪魔者のいない教室でお姉さまと一緒に授業を受けたいんです』とかじゃないだろうな」
清水「いいえっ!今日は『この教室の男子を全て殲滅する』という特に大事な……」
鉄人「今後この教室への立ち入りを禁じる」
ピシャン
情状酌量の余地無しと判断した鉄人は清水を教室の外に追い出して扉を閉めた。
『お、お姉さまっ!まだお話が!せめてその豚野郎から席を離して貞操を……』
ドンドンドンと粘り強く清水が扉を叩く音が聞こえてきたので、鉄人は扉に近づいてドスの聞いた声で語りかける。
鉄人「清水。最近のお前の行動は目に余るものがある。……そんなに俺の生活指導を受けたいのか?」
途端に扉を叩くを音が静かになった。
鉄人の生活指導は幾度も受けている明久や雄二でも未だに慣れない地獄だそうで、耐性の低いヤツならこの上ない恐怖そのものである。ちなみに和真は二人と違って無駄に要領が良いため一度も受けたことが無い。
『お姉さま……!卓袱台だから豚野郎の近くにいるというのなら、美春にも考えがありますからね……!』
覗き窓越しに明久を睨みつけながら不穏当な言葉の残すと、それ以上は抗うこともなく清水は教室を後にした。
鉄人「さあ全員席に着け。教科書86ページから始めるぞ。今日の内容は……」
あとは何事もなかったように授業が始まる。遠藤先生が所用で来れないため鉄人が代理で授業を行うとなると、流石の清水もこの教室にやって来ることはできないし、嫉妬に狂ったクラスメイト達も幾分か大人しくなる……はずだ。
『ひあっ!』
鉄人が黒板に書いた仮定法過去に関する内容を和真が黙々とノートにまとめていると、突然明久の小さい悲鳴が聞こえてきた。
『ひあっ!』
一回目は特に気にも止めなかったが連続して悲鳴が出れば流石の和真も多少は気になる。何事かと明久と美波の方に目を向けていると、何やら二人が小声で話し合っている。
『ひあっ』
和真(青春しているのは結構だけどよ、そろそろこいつらも限界だと思うぞ明久)
三度目の明久の悲鳴を聞き流し、和真は興味を無くしたのか黒板に視線を戻す。その後クラスメイト達の殺気がさらに膨れ上がっていくのを感じたが、正直他人事なので和真は無視して授業に集中する。
『『『もう我慢ならねぇーーっっ!!』』』
和真(こいつらにしてはよく耐えた方だな……)
『さっきから見てりゃあ、これ見よがしにイチャイチャしやがって!』
『殺す。マジ殺す。絶対に殺す。魂まで殺す』
『……お姉さまの髪に触るなんて……八つ裂きにしても尚、赦されません……!』
『出入り口を固めろ!ここで確実に殺るぞ!』
『全員カッターの投擲終了後、間髪入れずに卓袱台を叩きつけるのですっ!お姉さまに当たらないように注意するのですよっ!』
『『『了解っ!』』』
その後、いつの間にか司令塔ポジションに収まっていた清水による無駄に卓越した指揮の下、明久は見る見るうちに追い詰められていく。
清水「お姉さま!早くこちらに避難して下さい!そんな豚野郎と一緒にいると危険です!」
明久「清水さんいつの間に!?しかも皆どうして清水さんの言うことを聞いて卓袱台まで構えてるの!?クラスメイトを大事にしようよ!」
美波「美春、まだウチのことを諦めてくれないの?こんなこと続けても、お互い辛いだけなのに……」
美春「お姉さまはそこの豚野郎に騙されているだけなんです!お姉さまのことを本当に想っているのはこの美春以外……」
鉄人「お前ら!今は授業中だぞ!!」
好き放題暴れ回る生徒達に、とうとう鉄人の一喝が入り、阿鼻叫喚であったFクラスはあっという間に落ち着きを取り戻した。
鉄人「清水。授業はどうした?」
清水「そ、それどころではありません……お姉さまが」
鉄人「清水」
鉄人の、もしここが大海賊時代の世界観なら覇王色の覇気が出ているであろう威圧感に、清水も押し黙る。
鉄人「二度目の警告だ。おとなしく自分の教室に戻れ。それと、もう一度言うがこの教室への出入りを禁止する。わかったな?」
清水「……わかりました」
不承不承といった体で清水が教室から出て行く。そのとき明久を親の敵のように睨みつけることは忘れない。
鉄人「お前らも授業中に遊ぶんじゃない。そういったことは休み時間にやれ」
和真(いや、平然と刃物を人に向けてること注意しろよ教師ならよ……)
この先生もFクラスに染まってきたなと和真がしみじみ思う中、言われた通りに卓袱台を元の位置に戻しカッターをしまうクラスの連中。こうして、この場は鉄人のおかげで事なきを得た……ように思えたのだが、後にこの事がきっかけでまたも大きな騒動になるとは、流石の和真も予想外であった。
【ミニコント】
テーマ:しりとり
佐藤「パンダ」
徹「脱腸」
佐藤「……う、ウサギ」
徹「ぎゃーてーぎゃーてーはーらーぎゃーてーはーらーそーぎゃーてーぼーじーそわか」
佐藤「般若心経!?もっと可愛いしりとりしようよ大門君!!」