年利20%の金融会社に100万円の融資を受けました。1ヶ月につき1万円ずつ返済していくとすると、返済し終わるのはいつになるでしょうか?
柊和真の答え
『一生終わらない』
綾倉「正解です。引っ掛け問題なのですが、柊君には通用しませんでしたね」
島田美波の答え
『10年』
綾倉「そしてこちらは見事に引っ掛かってくれましたねぇ。120万-12×1万と式で考えたようですが、年利とはその名の通り一年ごとに上乗せされていく金利のことです。1ヶ月で1万円ずつ、1年で12万円返済しても、また新たに20万円の利息が上乗せされ、一年ごとに8万円ずつ増えていく計算になります。あなたが将来どこかからお金を借りることになったときこのような仕組みを正しく理解していなければ、知らない内にとんでもない泥沼へ落ちていくことになりかねませんよ?」
吉井明久の答え
「困ったときのドリームジャンボ」
綾倉「夢にすがるのはやめましょう」
金田一「それで、現在状況はどうなっているんだ?」
蒼介「私はプロテクトを2つ外し、ついさっき飛鳥達がプロテクトを解除したと連絡が入ってきました」
夏川「となると残りは体育館、メインサーバー室、屋上の3つか……加勢してやりてぇのはやまやまだが、俺はもう点数残ってねぇし……」
金田一「俺ももう死にかけだしな。半端な戦力じゃボス格相手には蹴散らされるだけだろうし……となると、校舎内の雑魚掃除に回るのが無難なところだな」
蒼介「それに救援の必要は無いと思いますよ?メインサーバー室には既に宮阪先輩を派遣しました」
金田一「ああ、あのチート能力なら問題ねーな。…しかし残りの二つは?」
蒼介「それこそ大丈夫でしょう、彼女達は二年の女子ツートップですから……それに、発芽する条件も整ってますしね」
「「?」」
【第三部隊】
《総合科目》
『2-F 姫路瑞希 3121点
3-A 小暮葵 3396点
2-D 玉野美紀 戦死
2-C 小山優香 452点
3-F 徳島良太 戦死
3-C 九重伸介 703点
3-A 名波健一 1580点
VS
?-? Quiksilver 3922点』
第三部隊は窮地に立たされていた。突破口は見つかったものの、固体から液体へ、液体から固体へ自由自在に変化するクイックシルバに攻撃を当てるのは至難の技であった。操作技術に精通している小暮がある程度削ってくれているが、逆に言えば小暮以外が戦力になっていない状況である。
『うわっ、またあれが来るぞ!?』
『あんなのどうしろって言うのよ!?』
そしてさらに厄介なことに、クイックシルバは攻撃も厄介極まりないものであった。スライム状の自らの体を切り離し固めて弾丸のように投擲くる。小暮だけは何とか回避できているものの、それ以外の面々は次々と点数を削られていく。
姫路「えいっ!」
キュポッ
戦況を覆すため〈姫路〉は腕輪能力である『熱線』を発動するが、クイックシルバは熱光線が届く前に膨張して目一杯広がる。結果、熱光線はクイックシルバの薄くなった腹を貫通しただけで、大したダメージは与えられなかった。そして返す刀でクイックシルバは弾幕をばらまき、第三部隊は壊滅的な被害を受けた。
《総合科目》
『2-F 姫路瑞希 2013点
3-A 小暮葵 2674点
2-C 小山優香 戦死
3-C 九重伸介 戦死
3-A 名波健一 戦死
VS
?-? Quiksilver 3621点』
とうとう生き残ったのは〈小暮〉と〈姫路〉だけになってしまった。合計点数ではまだ上回っているものの、正直焼け石に水だろう。
そんな状況を目の前にして、姫路は言いようもない無力感に襲われる。蒼介から部隊長を任されたのに小暮に比べてまるで役に立ってないではないか。
姫路(私の限界はこんなものなの……?久保君の言った通り、私ではもう、明久君達の力になれないの……?
そんなの嫌だ……!
そんなの私は認めない……!
Aクラスに勝つと誓ったんです……!
美波ちゃんと、翔子ちゃんと、柊君と、坂本君と、木下君と、土屋君と、そして……明久君と一緒に、Aクラスを倒すんです!
こんなところで負けるわけには行かない……!
こんな得体の知れないものに、私達の学園を傷つけさせはしない!
強くなりたい……!
明久君を……皆を守り通せる強さが欲しい!)
姫路が心の底の底から強くなりたいと願ったとき、突如〈姫路〉の腕輪が輝く。姫路は一瞬面食らうも、ある知識が召喚システムを通して頭の中に流れ込んでくる。
姫路瑞希の『オーバークロック』。
その能力の名は……
【第二部隊】
翔子「……アイスブロック!」
生み出された巨大な氷塊がグラトニーに向かって投擲される。その場から動くことができないグラトニーは避けることができず直撃し、大ダメージを与えることに成功した。
『2-F 霧島翔子 2419点
2-A 工藤愛子 842点
VS
?-? Gluttony 9821点』
しかしそれでもグラトニーを戦死させるには至らない。第二部隊は既に壊滅一歩手前、さらに増援に来た元第一部隊の召喚獣もことごとく食い散らかされ、グラトニーの点数の肥やしになってしまった。
愛子「こんなの……いったいどうすれば……」
翔子「ッ!?愛子!?」
いつも元気に満ち溢れている愛子がどうしようもない状況に思わず弱音を漏らすが、弱気になって隙が生じたのか〈愛子〉がグラトニーの触手に捕らえられてしまった。
愛子「あっ……」
そのままグラトニーの腹まで引き寄せられ、〈愛子〉は何の抵抗もできないまま捕食された。
『2-F 霧島翔子 2419点
2-A 工藤愛子 戦死
VS
?-? Gluttony 10663点』
愛子「ボクの召喚獣が……」
とうとう第二部隊は翔子一人になってしまった。呆然とする愛子を余所に、奇しくも同時刻に翔子は姫路と同じような無力感に襲われることになる。
翔子(私の限界はこんなものなの……?私の力では、学園はおろか、友達一人守ることすらできないの……?
そんなの嫌だ……!
そんなの私は認めない……!
Aクラスに勝つと誓った……!
美波と、瑞希と、和真と、吉井と、木下と、土屋と、そして……雄二と一緒に、Aクラスを倒すのが目標なんだ!
こんなところで負けるわけには行かない……!
こんな醜い化け物に、私達の学園を傷つけさせはしない!
強くなりたい……!
雄二を……皆を守り通せる強さが欲しい!)
翔子が心の底の底から強くなりたいと願ったとき、〈姫路〉と同様〈翔子〉の腕輪が輝きだす。翔子は一瞬面食らうも、同様にオーバークロックの知識が召喚システムを通して頭の中に流れ込んでくる。
霧島翔子の『オーバークロック』。
その能力の名は……
姫路「プロミネンス!」
翔子「アブソリュートゼロ!」
【姫路瑞希】
キーワードを口にした瞬間、突然〈姫路〉が燃えさかる炎に包まれる。
姫路のオーバークロック能力は、あらゆるものを焼き付くす灼熱の衣。……もちろん、自らの肉体でさえ例外ではない。〈姫路〉は距離をつめ、クイックシルバに抱きついた。液体化しているため掴むことは出来なかったものの、クイックシルバの体には炎が燃え移った。その後も炎に身を焦がしながらも〈姫路〉はクイックシルバに抱きつきにかかる。そして〈姫路〉が燃え尽きる頃にはクイックシルバももう手遅れの状態になっており、打つ手のなくなったクイックシルバはしばらくもがき苦しんだのちそのまま焼け死んだ。
《総合科目》
『2-F 姫路瑞希 戦死
3-A 小暮葵 2674点
VS
?-? Quiksilver 戦死』
設置されたプロテクトの電源を落としつつ、姫路は満足そうに呟いた。
姫路「私の、勝ちですっ」
【霧島翔子】
キーワードを口にした瞬間〈翔子〉を中心に氷結が広がり続け、最終的に屋上全体が氷に覆われた。グラトニーはもちろん中心の〈翔子〉まで氷漬けになって指先の一本すら動かせない。
翔子のオーバークロックの能力は、召喚フィールド全体に逃げ場の無い絶対零度の世界を展開すること。敵も味方も自分自身も、世界を埋め尽くす永久氷壁に為す術もなく閉じ込められてしまう。
『2-F 霧島翔子 419点
VS
?-? Gluttony 10663点』
一万点オーバーの点数を有していようが、身動きの取れない敵など怖くもなんともない。そのまま動けないグラトニーを無視して、悠々とプロテクトを解除した翔子は満足そうに呟いた。
翔子「……私の、勝ち」
【第四部隊】
常村「相変わらず全然攻撃が届かねぇな……」
高橋「この様子だと、どうやらガス欠も期待できそうにありませんね……」
《総合科目》
『3-A 高城雅春 4284点
3-A 常村勇作 3206点
VS
?-? Guardian 3000点
?-? Invader 3000点』
他の部隊と違って第四部隊は、メインサーバー室に侵入しようとする召喚獣モドキ達との闘いで多少消耗したことを除けば完全に無傷であった、が次々と産み出される壁に阻まれてまるで攻められない歯痒い状態がずっと続いていた。
常村「かといってこいつらをフリーにするわけにはいかねぇしなぁ……」
高城「そうですね。Invaderの能力が未だ不明な以上、野放しにするわけにはいきません。せめて宮阪嬢が来るまでここに押し留めておかねば……」
杏里「高城君、常村君、遅くなってごめん……」
常村「おっ、来てくれたか宮阪。これでもう安心だな」
待ちに待った救援の到着で常村は勝利を確信する。なぜなら宮阪の腕輪能力は、この手の相手には打ってつけなのだ。
《総合科目》
『3-A 宮阪杏里 3762点
VS
?-? Guardian 3000点
?-? Invader 3000点』
杏里「支援《アシスト》……」
キーワードとともに、杏里の召喚獣に腕輪が出現する。本来ならば、総合科目では4000点以上とらなければ能力を使うことはできない。しかし杏里の青銅の腕輪ならばその常識が覆る。この腕輪の能力は『一教科でも400点以上とっているなら、1日に1回だけどの教科でも腕輪能力を発動できる』というものである。
そして杏里は化学で400点を上回っているので青銅の腕輪の条件を満たしている。
杏里「ダークマター……」
黒より黒く闇より深き物体が、〈杏里〉の掌からガーディアン達に向けて発射される。ガーディアンは当然のごとく壁を展開して守りに入る。何重にも重ね掛けされた防壁はこれまで幾多の攻撃を封じてきた実績がある故当然の選択であった。
しかし、
暗黒物質はそれらの壁を平然と粉砕しながら直進し、二体の召喚獣モドキを無慈悲に飲み込んみながらフィールドに着弾した。
《総合科目》
『3-A 宮阪杏里 762点
VS
?-? Guardian 戦死
?-? Invader 戦死』
これが杏里の腕輪能力『ダークマター』。消費コストは莫大で、殲滅範囲もさほど広くない。しかし圧倒的な破壊力を持ち、直撃すればいかなる召喚獣も戦死は免れない。
高城「相も変わらず凄まじい破壊力ですね」
常村「まさに一撃必殺だな。まぁ何にせよ、ここの拠点はクリアしたぜ」
高城「私達は何の成果もあげてませんがね」
常村「言うな、涙が出てくる」
心に多少のダメージを負いつつも、高城達は最後のプロテクトを解除した。
綾倉「………………全プロテクトの解除確認。(カタカタカタカタカタ……ターン!)召喚フィールド、停止!」
場所はグラウンド、全てのプロテクトが解除されたことを確認した綾倉先生はすぐさま試験召喚システムを停止させ、学園全体を覆っていた召喚フィールドを消すことに成功する。
学園長「やれやれ……一件落着だね。被害も最小限に抑えられたし、何とか揉み消しはできそうさね」
綾倉「しかし学園長、見過ごすわけにはいかない問題も多々あります。その最たるものが……」
学園長「……わかってるよ。試験召喚システムが外部に流出した、もしくは……襲撃者のバックに四大企業のどこかがいるってことさね」
現時点で襲撃者が誰なのかは不明だが、明らかに試験召喚システムに精通しているしていることは確かだ。門外不出であるはずのシステムが文月学園に牙を向いたのは何故か。考えられる原因は2つ。一つは何者かが綾倉先生の敷いたセキュリティを掻い潜って情報を掠め取ったか……スポンサー契約の条件としてシステムの一部を提供した四大企業のいずれかが黒幕であるかだ。
綾倉「……ん?……!?……学園長、屋上に…」
学園長「あん?……!?!?!?……どういうことさね!?召喚フィールドは停止したはず……!?」
綾倉「ええ……。それにあの幾何学模様のサイズは、明らかに異常です……」
二人が驚愕したのも無理も無い。
召喚フィールドは確かに消滅した筈なのに、どういうわけか校舎の屋上には通常の数十倍の、遠目から見てもはっきりと視認できるほどのサイズの幾何学模様が展開され、空を覆い隠していたのだから。
ファントム『フフフ……素晴らしい!文月学園の諸君よ、実に、実に見事な闘いであった!認めよう……お前達が織り成す物語には、この私でさえ激しく胸を打つものがあったと認めようじゃないか!
…………しかし慌てるな、大団円はもう少しだけ待つといい。諸君らにとっては歓迎すべきことでは無いかもしれんがね、私の興が乗ってしまったのだよ。まだ未完成と聞いてはいるが、是が非でもとっておきのものを試してみたくなった故』
和真「次回でいよいよクライマックスだ。ファントムの持ち出したとっておきとは……果たして?」
【オーバークロック紹介】
姫路……プロミネンス
発動条件……元々の点数が400点以上あれば発動することができる
消費……20
デメリット……久保と同じく点数が減り続ける上、消す方法が存在しない
効果……久保の能力をハイリスクハイリターンにしたもの。どうやっても炎は消せず召喚し直しても炎は残ったままの、一度発動すれば戦死一直線のある意味自爆技。
翔子……アブソリュートゼロ
発動条件……元々の点数が400点以上あれば発動することができる
消費……200
デメリット……威力はゼロ。ずっと氷漬け状態
効果……自分を含めたその場の召喚獣を全て凍らせる。自力で脱出するのは不可能に近い。また、召喚し直しても凍ったまはまで出現する。