バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

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ようやく綾倉先生のハッカー設定が生きてきます。


管理権を取り戻せ!

学園長の指示で、1~3年生までの全ての生徒及び全教師がグラウンドに集まっていた。軽傷を負った生徒は養護教諭達ががあくせく手当てをしている。召喚フィールドは未だ消えず、いつ再び召喚獣モドキ達が襲ってきてもおかしくないので、生徒達はおろか教師陣もどことなく不安そうな表情をしている中、綾倉先生はいつになく真剣な表情でノートパソコンに向き合っている。学園長は教師を引き連れて生徒達の前に立ち、現在学園がどうなっているか説明し始めた。

 

学園長「ついさっき学園で起きている召喚獣モドキによる襲撃事件についてだけど……情けないことに原因はまだわかっていない。メインサーバーにアクセスしてフィールドを消そうにも、かなり厳重なロックがかかっていてね……綾倉先生がハッキングでこじ開けるまでじっとしといとくれ」

 

半ば仕方がないとはいえ、少々無責任な学園長の指示に何人かの生徒が不安にかられ大騒ぎするが、鉄人の一睨みで一瞬で収束する。鉄人とて不安になる気持ちは理解できるしそんな生徒達を無理矢理黙らせることには抵抗があるのだが、ここで集団が冷静さを失えば取り返しのつかない事態になりかねないのも事実だ。

 

綾倉「(カタカタカタカタ)………………っ!………………学園長、少々困った事態になりました」

学園長「なっ……アンタが侵入できないほど厳重なセキュリティなのかい!?」

 

あまりに予想外の事態にひどく狼狽する学園長。

綾倉先生のハッキング技術は、ノートパソコン数台で国の管理するサーバーを乗っ取れるほど卓越している。それでも突破できないロックなど、もはや四大企業のメインサーバークラスである。

 

綾倉「いえ、メインサーバーへは容易く進入することができました。しかし残念ながら、召喚フィールドを消すことは今のままでは不可能です」

学園長「ど、どういうことだい?」

綾倉「単純ですが効果的な手を使われました。試験召喚システムへの干渉に対するプロテクトが6つほど、電脳内ではなく現実、具体的には校舎の中に存在しています」

 

ネット上では無敵に近い綾倉先生のハッキング技術も、流石に現実に設置されたプロテクトはパソコンを介して除去することはできない。

 

学園長「……つまり校舎内に隠されたプロテクトを除去しなければ、フィールドを消すことができないってわけかい?」

綾倉「そういうことです」

学園長「場所は特定できるかい?」

綾倉「もうやっておきました。二階の運動部予備倉庫、三階の文化部室、四階の生徒会室、地下のメインサーバー室、体育館、そして屋上です。さて、鳳君」

蒼介「はい」

 

綾倉の呼び掛けを聞き、蒼介は召喚獣(なぜか消せもしない)を連れて学園長達のもとへ移動する。

 

綾倉「あなたに指揮権を一任します。不甲斐ないことに我々教師陣は召喚獣を喚びだすことができないので、申し訳ありませんが後方支援に回ることになります」

蒼介「心得ました」

鉄人「綾倉先生!私も戦場に…」

綾倉「却下します。いくらあなたでも、複数の召喚獣相手では危険です。ましてや、腰がまだ完治していないのでしょう?」

鉄人「うぐっ……しかし!」

 

綾倉先生の言ってることは正しいと理性では理解しているものの、鉄人はどうしても引き下がるわけにはいかなかった。生徒を危険に晒して自分は安全圏でじっとしているなど、先生としての矜持が許さなかった。

 

蒼介「西村先生、ご心配なく。あなたの教え子達は、この程度の危機に屈するほど軟弱ではない」

鉄人「鳳……」

蒼介「お言葉ですが、生徒達を信じて送り出すことも教師の大切な務めですよ」

鉄人「………………わかった。健闘を祈る」

蒼介「了解。さて諸君、今から私の指揮に従って動いてもらう。まずは大まかな戦力の詳細を把握しておきたい。二、三年生は1000点以下、1000点以上2000点以下、2000点以上3000点以下、3000点以上の四つに別れてくれ」

 

蒼介の指示に従って生徒達は四つのグループに別れる。そして蒼介はできるだけ戦力が均等になるように、6つのプロテクトを解除しに行く六部隊、及び一年生の護衛部隊を作った。

 

第一部隊……生徒会室

隊長……鳳蒼介

副隊長……なし

 

第二部隊……屋上

隊長……霧島翔子

副隊長……工藤愛子

 

第三部隊……体育館

隊長……姫路瑞希

副隊長……小暮葵

 

第四部隊……メインサーバー室

隊長……高城雅春

副隊長……常村勇作

 

第五部隊……文化部室

隊長……金田一慎之介

副隊長……夏川俊平

 

第六部隊……運動部予備倉庫

隊長……木下優子

副隊長……橘飛鳥

 

護衛部隊……非戦闘員の護衛

隊長……佐伯梓

副隊長……宮阪杏里、佐藤美穂

 

夏川「随分と大それた編成だな」

常村「あと、やけに護衛部隊の人数が多いな」

 

夏川の指摘した通り、かなり本気の部隊構成である。そして常村の指摘した通り、他の六部隊が総計30人程度に対し、護衛部隊の人数は300人近くいる。

 

蒼介「私がこの襲撃事件の主犯なら、試験召喚システムのプロテクトは破られてはならないと思い、当然近くにトラップや強力な駒を設置します。各部隊の隊長達は、プロテクトの側で待ち受けている敵はさっきのような雑魚ではないと念頭に置いておくように」

 

釘を刺すように蒼介が通達すると、隊長達は気を引き締めるように神妙な顔つきで頷いた。

 

蒼介「次に護衛部隊についてですが、我々が第一に優先すべきなのはプロテクトを外すことではなく、これ以上人的被害を出さないことです」

 

この理由は、人の命は替えの利かない大切なものである……といったもっともらしい理由の他にも、文月学園の存続を揺るがす事態になりかねないからだ。『試験召喚システム暴走!生徒が大怪我を!』……なんともマスコミが喜びそうな文面だが、大バッシングは避けられないだろう。

 

蒼介「最悪校舎を見捨てて避難することになりますが……よろしいですね学園長?」

学園長「ああ……流石に人命を優先すべきさね。……しかしどっちにしろそうなったら文月学園は終わりだね」

蒼介「いえ、そっちの対策は考えています。“鳳”から圧力をかけて、ちょっとした情報操作を行います」

学園長「どうするつもりだい?」

蒼介「『文月学園を逆恨みする者からのサイバーテロ!教師達は生徒達の安全を優先してすぐさま生徒を安全な場所へ避難させる!』という風に報道させれば、バッシングは最小限に抑えられるでしょう」

学園長「……やれやれ、恐ろしいガキさね」

 

その場の生徒及び教師一同全員が戦慄する。流石は“鳳”の次期後継者と言うべきか。退くべきと思えば慣れ親しんだ校舎をあっさりと見捨てる、自らの打てる手やコネクションで可能な範囲を正確に把握している、いざとなればジャーナリズムをねじ曲げることさえ躊躇しない。

雄二とはややベクトルが違うものの、蒼介も並外れた指揮官の資質を備えている。もしかするとAクラス打倒の最大の障害はテストの点数差ではないかもしれない。

 

蒼介「そして隊長、副隊長は一度集まってくれ。連絡先を交換する。プロテクトを外せた、もしくは何か危機に陥ったときに連絡してくれ」

 

蒼介の提案により、指揮官及び副官達は連絡交換を行った(機械音痴の翔子は優子に手伝ってもらった)。

 

連絡先を交換し終わったところで、突然グラウンド内に多数の幾何学模様が出現した。召喚獣モドキ達の第二次侵攻の狼煙が上がったようだ。

 

蒼介「さて、各部隊は割り当てられたノルマを達成すべく最善を尽くせ!諸君らの働きに文月学園の未来がかかっていることを忘れるな!それでは……作戦開始!」

『おおっ!』

 

蒼介の呼び掛けとともに、召喚獣モドキが出現する前に1~6の部隊は校舎に突入し、護衛部隊は教師達と一年生を囲うようにフォーメーションを組んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ファントム『さて、二回目の召喚獣は先ほどのように甘くはないよ、くれぐれも気をつけると良い。そして三回目、四回目と繰り返していくうちに……フフフ。一刻も早くパンドラの箱に残された希望を見つけないと、大変なことになってしまうぞ』

 




宮阪杏里は三年生ナンバー4の実力者で、去年佐伯梓とともに召喚大会で優勝した実績と、梓とは違う能力の青銅の腕輪を持つ、という設定のキャラです。
今回の章で活躍する予定です。

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