()に入る言葉を答えなさい。
・()は、凡人の一生に勝る
和真の答え
『天才の一瞬の閃き』
蒼介「流石だな、正解だ。これは悪名高きドイツの総統アドルフ・ヒトラーの残した言葉だ。人の一生を軽んじているようで、私は賛同できないがな」
木下秀吉の答え
『心を許せる仲間達とのひととき』
蒼介「もう正解で良いような気もするが残念ながら不正解だ。お前が友達を大切に思っていることは伝わった」
土屋康太
『スカートの中身を確認する瞬間』
蒼介「後で木下に土下座してこい馬鹿者」
霧島翔子の答え
『雄二との甘い蜜月』
蒼介「霧島、お前もか」
坂本雄二
『学生の内は我慢するって言っただろお前!?』
蒼介「お前が苦労していることは伝わったが真面目に答えろ」
姫路瑞希の答え
『明久君との学園生活』
島田美波の答え
『停学明けにはアキと……』
蒼介「いい加減にしろお前達、打ち合わせでもしたかのように揃いも揃って恋バナに花を咲かせるな」
吉井明久の答え
『一等の宝くじ』
蒼介「誰が生涯年収の話をしろと言った……」
停学期間5日目、金曜日の昼休み。
学園長の藤堂カヲルは学園長室にて、昼食のざるそばをすすりながら新技術の開発のためコンピューターに向き合っていた。行儀の悪いこと山の如しだが、研究者には食事を栄養補給ゼリーのみで済ませてしまうような不摂生な輩も少なくないため、まともな料理を口にしている分いくらかましなのだろうか。
学園長(……このアイデアは発想は悪くないが、システムに組み込むには障害が多すぎるさね……。ここは綾倉にでも頼むか……いやいやいや!アタシは研究者、いつまでもあんな若造にデカイ顔させておくわけにはいかないね!)
学園長の脳裏に浮かぶのは、腹黒教師筆頭の何か裏がありそうなニコニコ顔。試験召喚システムを発見したのは自分だが、あの糸目教師の技術がなければ実用化まではあと数年ほど遅れていただろうし、奴のプレゼン力がなくては日本最大の四企業の協力は得られなかっただろう。
そんな風に文月学園の進歩に大きく貢献してきたため、こころなしか学園長は綾倉先生に舐められてるんじゃないかと思っている。この間も定期的に提出させている報告書が『全略』の一言のみだったことから、その疑惑は確信に近くなっている。
明久達にババァ呼ばわりされるとムカつくものの、自分が半世紀以上生きてきたことは事実だ。あんな30年も生きてないような青二才にデカイ顔されているのは我慢がならない。だからここらで奴の助けを借りずに革新的な技術を開発して、奴の鼻を明かしてやろうじゃないか……と、学園長は年の割に子供じみたことを企んでいた。
するとパソコンに一通のメールが。
差出人の名前は『ファントム』。
学園長(何さねこのアホらしい名前は……もしかして、たちの悪い悪戯かい?)
そのようなことを思いつつ、研究者らしく好奇心旺盛学園長は欲望に抗いきれずメールを開封する。それが騒動の引き金とは知らずに。
『パンドラの箱は開けられた。
文月学園は数多の厄災に沈められるであろう』
本文には少し……いやかなり痛々しい文章が。読むだけで全身が痒くなってくるほど痛々しい。やはりただの悪戯だったかと学園長が思ったそのとき、
学校中に突然召喚フィールドが展開された。
学園長「なっ!?…………このっ!」
一瞬呆気にとられた学園長だが、すぐさまパソコンから召喚システムを管理するメインサーバーにアクセスし、召喚フィールドを消そうとする。しかし、
error!
学園長「どういうことだい!?メインサーバーにアクセスできない!?」
原因不明の事態に学園長は混乱するが、学園中でそれ以上に大変な事件が起き始めていた。
美波「どうなってるのよこれは!?」
姫路「ど、どうして先生もいないのに召喚フィールドが……?」
翔子「……学園全体を覆うように展開されている。不測の事態なのは確か」
Fクラスの教室にて、三人は困惑しつつも冷静に状況を把握しようとする。二年のなかでは試召戦争の経験が豊富でかつ雄二のねじ曲がった作戦で動いていたため、三人はこのような不測の事態でもそこまで慌てていなかった。逆に言えばその他のクラスでは阿鼻叫喚の可能性が高いのだが。
突然教室内に見知った幾何学模様が展開され、おそらくは召喚獣のようなものが出現した。従来の召喚獣とは違いまさしく獣のような顔つきで、色は全体的に灰色っぽく、武器を所持していなかった。
姫路「ひっ……な、なんですか!?」
翔子「……瑞希、下がって」
美波「なによアンタ!やるつもり!?」
明らかに友好的でない召喚獣モドキに萎縮してしまう姫路を庇うように、翔子と美波は前に出る。召喚獣モドキは三人に視線を向けると、ゆっくりとした足取りで近づいてくる。流石の二人も少し怖くなったのか、姫路を連れて教室を脱出しようとしたとき、
ガシャァァアアアン!
清水「お姉様!ご無事ですか!?」
美波「美春!?」
Dクラスの清水が窓ガラスを突き破って参上した。ハリウッドスター顔負けの登場シーンである。
美春「この犬畜生!お前みたいな奴がお姉さまに危害を加えるなど一億光年早いです!」
姫路(清水さん……
光年は長さではなく距離ですよ……)
盛大に間違った知識を披露しつつ、清水はエセ召喚獣に勇ましく特攻する。先日盗撮をやらかした奴とは思えないほど堂々とした作戦である。エセ召喚獣は清水がある程度近づくまで制止していたが、清水の拳が届く寸前に……
バキィッ
清水「ぶげらっ!?」
突然清水の腹にカウンターブローを叩き込んだ。哀れ清水は教室の奥まで吹き飛び、壁に激突して動かなくなった。
美波「美春ぅぅぅ!?」
姫路「清水さんに触れられた……ということは、」
翔子「……教師の召喚獣と同様、物理干渉能力がある」
新たに発覚した情報により危険度が数段アップした。召喚獣は見た目とは裏腹に常人を張るかに越える身体能力を有している。そんなもので殴られたらか弱い乙女の体などひと溜まりもない。
清水をKOした召喚獣モドキは、再び三人にゆっくりと近づいてくる。姫路は勿論美波でさえ気圧される中、打開策を思い付いた翔子は二人を庇うように前に出る。
翔子「……試獣召喚(サモン)!」
同じく幾何学模様から出現した〈翔子〉が、近づいてくる召喚獣モドキに飛びかかった。
《総合科目》
『Fクラス 霧島翔子 4759点
VS
?クラス ???? 952点』
どうやら展開されているフィールドは総合科目のようだ。二人の点数の差は歴然で、召喚獣モドキは〈翔子〉に呆気なく切り裂かれ消滅した。
美波「き、消えた……」
姫路「成る程……私達の召喚獣と同じく、点数が0になれば消失するんですね」
翔子「……感心している暇は無い。美波は清水の介抱をしてあげて。姫路は召喚獣を喚んで私と一緒に他のクラスを回る。多分この教室だけではないから」
姫路「は、はい!サモン!」
美波「わかったわ!」
清水と親しくかつ点数的に頼りない美波に手当てを任せ、翔子は姫路を連れて廊下に出た。
そこには地獄画図が広がっていた。
『きゃあああ!?』
『来ないでぇぇぇ!』
『痛いよぉ……』
Fクラス教室に現れたのと全く同じ姿をした召喚獣モドキが、暴徒と化して女子生徒を手当たり次第襲っていた。召喚獣で対抗すれば良いと思うかもしれないが、不測の事態による混乱と恐怖で誰も彼もそれどころではない。
布施「サモン!……っ!?どうして!?」
布施先生が召喚獣を喚び出そうとするものの、何故か幾何学模様すら出てこない。原理は不明だが、教師の召喚獣は喚び出せないようになっているらしい。またその光景を見て、召喚獣に頼るという発想からはさらに遠ざかってしまう。
翔子と姫路が場を収めるため召喚獣とともに戦場に突入しようとしたそのとき、突然校内放送が聞こえてきた。
『生徒会長の鳳だ!緊急事態につき私の指示に従って行動して欲しい!まず二、三年の諸君は召喚獣を喚び出すように!どうやら教師は不可能だが生徒ならば召喚できるようだ!』
蒼介の指示を聞いた二年の女子生徒は、一斉に召喚獣を喚び出す。上の階からも例の掛け声が聞こえてくるため、三年生も蒼介の指示に従ってくれているようだ。
『後は落ち着いて対処すれば恐るるに足らん!質、量ともにこちらが上、一対一でも問題なく倒せるはずだ!そしてフリーになった人及び教師達は急いで二階に移動して、召喚獣を持っていない一年生の警護にあたるように!』
蒼介の的確な指示により、その後は苦もなく鎮圧することができた。召喚獣モドキの点数は軒並みFクラスかつ動きも遅いため、次々と生徒の召喚獣に討ち取られていく。
運良く一年生の階にはまだ召喚獣モドキは出ていなかったため、手の空いた生徒達が襲ってくる前に防御網を完成させ、現れると同時に全て倒すことができた。
結局、30分も過ぎる頃には、全ての召喚獣モドキが根絶やしにされた。
軽傷を負った者が数名と、建物へのある程度の損壊はあったものの、深刻な事態にはならなかったと言える。
しかし事件はまだ終わってはいない。
なぜなら……
翔子「……召喚フィールドが、まだ消えない……!?」
ファントム『ククク……これで終わったと思ったら大間違い、ショータイムはまだまだこれからです故』
源太「思ったより本格的に襲撃してきやがったな」
和真「つーかもう軽いテロだろこれ」
徹「霧島さんの冷静な対処が際立っていたね。流石原作Aクラス代表」
源太「そして鳳も流石の指揮だな」
和真「ソウスケは奇抜な作戦は用いないものの、対応力に関しては雄二をも凌駕するぜ」
徹「しかしまだまだ序の口のようだよ?」
和真「ああ、まだ導入の導入だ。落ち着いて闘えばFクラスでもどうにかなるレベルだしな」
源太「つうことはこの後出てくんのは……」
徹「大体予想がつくね」