バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

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ベールに包まれていた綾倉先生の実力が、とうとう明かされます。正直自分でもやり過ぎたかと少し思っています。


文月学園最高戦力

時は一旦昼休みまで戻る。

補習担当教師の西村宗一、通称鉄人は二年学年主任の高橋洋子先生と共に生徒会室に呼び出されていた。呼び出した人物は生徒会役員ではなく、三年学年主任の綾倉慶。

この時点で鉄人は既に嫌な予感しかしなかったが、上司の命令を無視するわけにもいかないので、高橋先生と共に重い足取りを引きずって生徒会室までやって来た。

 

コンコンッ

 

綾倉「どうぞ」

 

許可を得たので二人はドアを開け入室する。部屋の奥には綾倉先生がいつものニコニコ笑顔を浮かべながら、何故か碇ゲンドウポーズで会長机に座っていた。さらにもう一つ不可解なことにその他の役人の机は折り畳んで壁に立て掛けられており、部屋内に不自然なほどの自由空間が形成されている。

 

綾倉「さて、単刀直入に言いますが……どうして私があなた方を呼び出したのかわかりますか?」

鉄人「……先日の、覗き騒動の件でしょうか」

綾倉「ご理解がお早いようで何よりです。正直、貴殿方には失望させられました」

 

笑顔のまま投擲された鋭すぎる言葉のナイフに、鉄人と高橋先生は顔を強ばらせる。

 

綾倉「確かに停学処分になるまで騒ぎを大きくした彼らの行動は度しがたいものでしょう。しかし、みすみす覗きを成功させてしまった貴殿方も同罪だと私は考えています。なぜなら、その気になれば事前に止められたはずでしょう?……ですよね、高橋先生?」

高橋「……仰る通りです。主犯格の吉井君達を入浴時間前に拘束しておけば、事前に止められていました」

綾倉「そうでしょうねぇ。……それと西村先生、いくら体力に自信があるからといって、わざわざ相手の土俵で闘う必要はあったのですか?」

鉄人「……生徒指導を担当する私が召喚獣に頼れば、一部のバカな生徒を増長させてしまうと判断しました」

綾倉「なるほど、それは立派な心掛けですね。

しかしどんな志も成功してこそ、失敗した時点でそれはただのわがままです。貴殿方二人だけでなく合宿に参加した教師一同は、どうやら自らの教師としてのプライドに拘り過ぎたようですね」

 

その後も心を抉るような嫌みがネチネチと繰り出されていく。綾倉先生の底意地の悪さが透けて見えるようだったが言っていることは正論なので、鉄人と高橋先生の二人は甘んじてその批難を黙って聞いていた。

そして昼休みも残り五分という時間帯で、綾倉先生の言葉のナイフの雨がようやく終了した。

 

綾倉「さて小言はこの辺にして、そろそろ本題に入りましょう。お二方、事前に通達した通り点数補充は済ませてますよね?」

高橋「はい」

鉄人「休日中に済ませています」

綾倉「ではここであなた方にちょっと試練を課しましょう。今ここで私と総合科目で勝負して、あなた方が勝てば無罪放免、私が勝てばそれ相応の罰を受けていただきます」

二人((わざわざ点数を補充するよう通達してきたのはこのためか……))

 

どうやら綾倉先生はこの場で二人の召喚獣を虐殺し、休日を返上した二人の努力をパァにするつもりのようだ。わざわざ事前に点数を補給させられたことや、机を事前に折り畳んでスペースを空けていた時点で気づくべきだったと鉄人は後悔する。さらに鉄人は自分達を負かした後に何を要求するか、もっと具体的に言えば何を飲ませようとしているかを今までの苦い経験を頼りに全て理解してしまった。

 

綾倉「では行きますよ……試獣召喚(サモン)」

高橋「西村先生、今度こそ綾倉先生に勝利しましょう!サモン!」

鉄人「…………わかりました。サモン!」

 

二人がかりでも綾倉先生には今まで勝った試しが無いので既に結末を理解しつつも、やる気満々の高橋先生の士気を削ぐわけにはいかないので鉄人も泣く泣く勝負に応じる。お馴染みの幾何学模様から三人の召喚獣が出現する。

高橋先生の召喚獣の武器は鞭、鉄人の召喚獣の武器はボクシンググローブ、そして綾倉先生の召喚獣の武器は十手。

遅れて三人の点数が表示される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《総合科目》

『学年主任 高橋洋子 7792点

 補習教師 西村宗一 7048点

VS

 学年主任 綾倉慶 15245点』

 

 

そこに映し出された点数は、まさに次元の違う化け物じみたものであった。

 

鉄人「…………相変わらず……文字通り桁違いの点数ですな、綾倉先生……」

高橋「私と西村先生の点数を合計しても届かないなんて……」

綾倉「おやおや、お褒めに与り恐縮ですが……感心してる暇があるんですか?これはスポーツではなく戦争ですよ?」

二人「「ッ……!?」」

 

その言葉を聞き鉄人と高橋先生が警戒を強めると同時に、〈綾倉〉がムッツリーニの『加速』に匹敵するスピードで突っ込んできた。二人もそれぞれ迎撃したものの俊敏かつ流麗な動きでことごとく避けられ、二人の召喚獣は十手で一方的に撲殺された。どうやら点数だけでなく、操作技術もレベルが違うらしい。

 

 

《総合科目》

『学年主任 高橋洋子 戦死

 補習教師 西村宗一 戦死

VS

 学年主任 綾倉慶 15245点』

 

 

綾倉「これで87勝0敗……ですねお二方」

高橋「参りました……ですがいずれ、いずれ必ず一矢報いて見せます!」

綾倉「ええ、楽しみにしていますよ」

鉄人(高橋先生、表面上は平然としているが……空元気だな。無理もない、俺とて全く勝てるビジョンが浮かばない。

 

 

これが若冠14歳でハーバード大学を首席卒業した天才にして、元数学オリンピック絶対王者、綾倉慶の実力か……)

 

ちなみに余談だが、綾倉先生の物理及び数学の点数は約1800点と、単科目だけでBクラスの総合点並の成績を誇る。もはや強いとか弱いとかそういう次元ではない。

 

綾倉「さて、それでは罰として、私が最近製作した特性ドリンク、『綾倉特性ドリンクver.3青酢』の試飲をしてもらいましょうか♪」

鉄人(そんなことだろうと思った……)

高橋「まあ、最新作ですか(キラキラ)」

 

どこからともなく取り出されたコップを見た鉄人はゲンナリし、一方高橋先生は興味深そうにその液体を眺めている。『青酢』というだけあってその飲み物の色は瑞々しいブルー。黒酢ならともかく青。こんな色の飲み物は自然界にあるはずもない。

 

高橋「では、いただきましょう(ゴクゴク)」

鉄人(上司に不平不満は極力言いたくないが、これは明らかにアンフェアではないか?)

 

ご存知の通り、数多の教師にとって天敵になりつつある綾倉特性ドリンクは、何故か高橋先生にはまるで通用しない。これでは自分だけダメージを受けて終わりではないかと、鉄人が珍しく腑に落ちない思いに囚われていると……

 

 

ガタンッ!

 

 

鉄人「………………………………ゑ?」

綾倉「フフフ……」 

高橋「」ピクピク

 

突然高橋先生がその場に倒れ伏した。突然のことに呆気にとられる鉄人だが、すぐさま駆け寄って安否を確かめる。脈拍は正常に作動しているものの、高橋先生は白目を向いたままピクリとも動かない。

 

綾倉「いつまでも平然としていられると思ったら大間違いですよ高橋先生。綾倉ドリンクは日々進化を遂げていますからね」

鉄人(………………………………青酢恐るべしッ!)

 

今まで数多くの綾倉ドリンクを鎧袖一触に飲み干してきた高橋先生のまさかの惨敗に、さしもの鉄人も背筋を凍らせて戦慄する。高橋先生が飲んだ以上、自分が飲まないという選択肢は存在しない。しかし高橋先生ですらこのザマだ、もし自分がこれを飲めば間違いなく………………。

 

このときの鉄人の心境は、処刑台への階段を上る死刑囚のようだったと後に語っている。

 

鉄人(………………………………………………………………………………………………………………………………………………いい人生だったな)

 

今までの人生を振り返り、死ぬ覚悟を決めた鉄人は、目の前の飲み物を漢らしく一気に飲み干した。

 

 

 

 

 

 

 

その後の顛末は語るまでもないだろう。

 

 

 




綾倉先生無双回。
長いこと引っ張っただけあって、一切自重しないとんでもなさ。
せっかくなんで三人の召喚獣のスペックを公開します。
教師の召喚獣は物理干渉能力を持つため、事故の被害を抑えるべく攻撃力が制限されています。


西村宗一
・総合科目……7000点前後
・400点以上……全科目
・ステータス(F・E・D・C・B・A・S・SS・で表す)
(総合科目)
攻撃力……B+
機動力……S+
防御力……S+

並の教師とは一線を画す点数を保持しているものの、運搬などに召喚獣をあまり頼らないため操作技術は教師の中で1番下手。チートな身体能力を持った弊害か。

高橋洋子
・総合科目……7800点前後
・400点以上……全科目
・ステータス
(総合科目)
攻撃力……B+
機動力……SS
防御力……SS

点数、操作技術ともに隙はない。和真も一対一では勝ち目がないとわかっていたのか、最初から伏兵を用いるつもりだったようだ。


綾倉慶
・総合科目……15000点前後
・400点以上……全科目
・ステータス(F・E・D・C・B・A・S・SSで表す)
(総合科目)
攻撃力……B+
機動力……MAX
防御力……MAX

高橋先生の倍近くと、チートを通り越してもはやはバグの域。機動力、防御力がカンストしてしまっている。その上、その圧倒的な速度で動く召喚獣を完璧に動かせる操作技術も持ち合わせているまさに規格外の化物。腕輪だろうがオーバークロックだろうがランクアップだろうが、現時点で彼を倒す手段はない。




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