試召戦争メインなんてタグ付けたのにこれじゃ、下手すれば詐欺で訴えられかねないな……
※人と召喚獣は〈〉で区別します。
FクラスとDクラスの試召戦争が始まった。
試召戦争中に教師は戦争に総動員されるため、関係のないクラスは自習となる。自習と言っても、他クラスの試召戦争が原因で授業範囲が終わりきらず長期休暇に補修が追加、ではあまりにもあんまりなので学校側は授業でする予定だったプリントを配るという措置をとっている。
優子「代表の言った通り初日から仕掛けてきたわね」
Aクラスで自習中の木下 優子は近くにいるメンバーに小声で話しかける。
「まあ和真達の情報が知られていないうちに攻めた方が合理的だからね」
前の席の銀髪ストレートの男子生徒、大門 徹(ダイモン トオル)は抑揚なく答える。
身長154㎝と男子にしてはかなり小柄で和真以上に童顔だが、本人はかなり気にしているので触れてはいけない。命が惜しいのならば間違っても「“大”門なのに大きくないね?」などと言ってはいけない。
「それに和真の性格からしてすぐにでもしたがるだろうしね。人を乗せるのもうまいからこうなるのは概ね予想通りね」
徹の席の隣に座る金髪セミショートの女子生徒、橘 飛鳥(タチバナ アスカ)が徹に続く。
伸長168㎝と徹とは対照的に女子にしてはかなり高く、制服の上からではわかりにくいが、余分な脂肪や贅肉といったものを全て削ぎ落とした、美術作品ような体つきをしている。物心ついたときから柔道の稽古を欠かさずしている内にこのような洗練された肉体になったらしい。
愛子「ところで、いったいどっちが勝つと思う?」
優子の隣の席の工藤 愛子の質問に、三人は即座に返答する。
三人「100%Fクラス」
愛子「だろうね♪」
三人は迷うことなく即答し、愛子もそう返してくると思っていたようだ。
優子「あのクラスには和真、翔子、姫路さんといったそうそうたるメンバーがいるもの」
徹「明らかに過剰戦力だね」
飛鳥「Dクラスが可哀想になるくらいの、ね…」
たった三人いるだけでクラス間のパワーバランスが逆転する、それほどまでにあの三人は規格外なのだ。
蒼介「大門、飛鳥、そろそろ時間だ。生徒会室に行くぞ」
生徒会顧問の一人である高橋先生に、午後生徒会室に集まるよう言われている蒼介は生徒会役員である二人に言い、教室を出る。もっともその高橋先生は試召戦争のため欠席するのだが。
徹「ああわかった」
飛鳥「今行くよ」
二人は蒼介に続いて教室を出る。そして優子達はそれを見届けた後それぞれの自習に没頭し始めた。
姫路、翔子、和真の三人は戦線に出ないで回復試験を受けていた。振り分け試験の点数が全科目0点扱いで、回復試験を受けてから出ないと戦力にならないからだ。
雄二「頼むぞお前ら。この闘いはあいつらが時間を稼いでいる間にお前達の点数補充が済むかどうかにかかっているんだ」
姫路「は、はい!頑張りますっ!」
翔子「……任せて」
和真「はいよ。……まぁ俺の役割はお前の護衛だけだろうがな、やれやれつまらん」
他の二人がやる気十分に返事をする中、和真はぼやき気味にそんなことを言う。姫路と翔子は驚いたように和真を見るが、事情を理解している雄二はため息をはいている。
姫路「え?」
雄二「それほとんど自業自得じゃねぇか」
和真「はは、否定できねー」
姫路「あの、柊君は前線に参加しないんですか?」
翔子「……真っ先にクラス代表に突撃すると思ったのに、意外」
和真「そうしてぇのは山々だけどよ、残念なことに今回の作戦的にそれは無理なんだわ」
翔子「……なるほど」
雄二「ああ。今回の作戦はシンプルで、お前らがDクラス代表平賀 源二を速攻で討ち取るだけだ」
姫路「え? でも多分平賀君は護衛の人を沢山連れてると思うので、私達二人でも護衛の人たちを全員と戦ってたら時間がかかってしまいますよ?」
和真達の意図が理解できていない姫路がおずおずと質問する。確かに普通に考えれば、敵対しているクラスの人間を代表のもとに素通りさせてくれるわけがない。
翔子「……瑞希、Dクラスの人達は私達を見てどこのクラスに所属していると思う?」
姫路「え? それは……あっ」
ようやく姫路は把握したようだ。
そう、普通に考えれば、だ。
雄二「そうだ、新学期初日に他クラスの生徒まで把握してるはずがねぇ。だったら平賀含めDクラスの連中はお前達をAクラスだと判断して、ごく自然に警戒を解いて素通りさせるだろう。注意を引き付けるために代表である俺もついていく。そうして注意が俺に向いているところを一気に叩く。だが、和真はバッチリ警戒されるだろう」
姫路「…あれ? でも柊君もAクラス並の点数じゃ…」
翔子「……成績よりむしろ和真の性格に問題がある」
雄二「ああ、こいつの性格は学年の誰もが知っている。わざとFクラスに行く程度のことはこいつならやりかねない、とほとんどが考えるだろうな」
柊「実際にそうなんだから正しい反応だな」
姫路「な、なるほど…あはは」
苦笑しながら姫路はようやく納得する。
その後は淡々とテストをこなす作業が続く。
途中雄二が各部隊長に脅迫文を送ったり、消耗した生徒が点数を補充しに来たり、なぜか怒り狂った島田が須川に引きずられてやって来たり、雄二が須川に『明久の船越先生(婚期を過ぎて単位を盾に生徒に迫るおばさん教師)への意味深な誘い』を放送室で流させたり、姫路はその放送で明久の好みを勘違いして勝手に落ち込んでたり、明久がその報復を雄二にしようとして軽くあしらわれたりしたが、特に問題はない。
和真「おーい、終わったぞ」
姫路「私も終わりました!」
翔子「……私も」
三人の回復試験がようやく終わったようだ。
雄二「よしお前ら、明久達に加勢するぞ!翔子と姫路はFクラスだとバレないように平賀に勝負を申し込んで来てくれ。それから和真、俺はDクラス連中を引き付けるから、お前は死ぬ気で俺を守れ。お前は別に死んでもいいから」
和真「もっとましな頼み方できねーのかよ、ったく……まあやっと暴れられるんだ、文句はねーよ。あと雄二、死にたくなかったら俺の近くで召喚獣は絶対だすなよ?」
『あ、あれはFクラス代表の坂本と…ひ、柊だぁ!』
布施先生を連れた雄二と和真を見つけたDクラス生徒が叫ぶ。やはり和真はしっかり警戒されたらしく、Dクラス生徒達は呂布に遭遇した雑魚兵士のような反応をする。
「本隊の半分は坂本達を獲りに行け! さすがの和真でも複数で囲めば勝ち目はあるはずだ! 他のメンバーは囲まれている奴を助けるんだ! 」
『お…おおー!』
Dクラス代表平賀 源二の号令の下、あっという間に雄二達の周りがDクラスメンバーで囲まれる。
和真「なるほど、気合い十分だな。布施センセ、Fクラス柊 和真がDクラス8人に化学勝負を申し込むぜ、試獣召喚(サモン)!」
Dクラス生徒『さ、試獣召喚!』
叫んだ直後、足元に顕れる魔方陣。
そして現れる、和真の分身。
『Fクラス 柊 和真 328点
VS
Dクラス 生徒×8 平均115点』
黒いジャケットを身に纏い.その下に赤いシャツを着た和真の召喚獣。
まともな防具は一切身につけておらず、彼の点数にしては異常なほど軽装備だ。しかし、Dクラス生徒達の注目を集めたのは、手に持っている巨大な槍だ。
長さが背丈より3倍以上あるゴツい槍を軽々とかついでる召喚獣は、一目で強敵だと判断できる。
『ひっ、怯むなぁ! 全員で襲いかかれぇ!』
一人がそう叫ぶと、Dクラスの召喚獣達は一斉に飛びかかる。
周りを囲んで同時攻撃、多対一の定石に沿ったお手本のような攻め方だろう。
だが、今回ばかりは完全に悪手だ。
和真「だりゃぁああああああっ!!」
〈和真〉が槍の端を持って軽々と振り回し、Dクラス生徒を一人残らず薙ぎ払う。
『Fクラス 柊 和真 328点
VS
Dクラス 生徒×8 戦死』
宙を舞う8体の召喚獣。まさに一撃必殺だ。
『ば、馬鹿な!? 一瞬で全滅だとぉ!?』
『だから俺は嫌だったんだ! なんかやられ役押し付けられた感じだったしよぉ!』
『そもそも私達死亡フラグ建てすぎでしょ!?』
混乱のあまり、意味不明なことを叫び出す始末。
鉄人「0点になった戦死者は補習ぅぅぅ!」
『ぎゃぁああああああああ!』
無惨にも和真のデビュー戦の噛ませに成り下がったやられ役達はどこからともなく現れた鉄人にまとめて連行されていった。
雄二「相変わらず滅茶苦茶だな……そんなバカでかい槍をなんであんなに速くぶん回せるんだよ?」
和真「そりゃ防御を極限まで削って腕力と機動力を上げているからな。おかげでAクラス上位レベルとは思えねぇほど紙装甲だぜ!」フンス
雄二「なんでそこでどや顔だよ…」
『勝者、Fクラス!』
雄二「お、翔子達が平賀を殺ったみたいだな」
和真「それじゃあ行くか、お楽しみの戦後対談に」
二人はDクラスにむかって凱旋とばかりに肩で風を切って歩き出す。
和真君無双! さんざんぼやいておきながら美味しいところは持っていくちゃっかりものです。
バトルシーンすらなく殺られた平賀君、ごめん、悪気はなかったんだ……
ここに書くことも無くなってきたので召喚獣のデータでも載せていきます。まずはこの作品の主人公その1。
柊 和真
・性質……攻撃特化&防御度外視型
・総合科目……3800点前後 (学年6位)
・400点以上……現代文・古典・歴史・現社・英語・地理
・ステータス(F・E・D・C・B・A・S・SSで表す)
(総合科目)
攻撃力……SS
機動力……A+
防御力……F+
・腕輪……まだ不明
『攻撃は最大の防御』を体現したかのようなステータス。「やられる前にやる・当たらなければどうということはない」がモットーである。攻撃力は高橋女史さえも凌駕し文句無しに学園最強だが、防御力はFクラス上位程度でしかなく、Aクラスレベルが相手だとまともに食らえば一撃で半分ほど持っていかれる。これほど偏ったステータスは和真以外にいない。そもそも上位成績者は弱点を突かれることを好まないので偏りが小さくなっていく。槍も全武器中最大。積極的にトップを狙いにいく姿勢はある意味立派である。また、腕輪の能力も攻撃に特化した能力らしい。
モチーフはデオキシスアタックフォルムです。
では。