バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

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【バカテスト・英語】
「①」と「②」に当てはまる語を答えてください。
マザー(母)から「①」を取ったら「②」(他人)です

姫路瑞希の答え
『マザー(母)から「M」を取ったら「Other」(他人)です』

蒼介「正解だ。Motherから「M」が無くなると他人という単語になる。このような関連付けによる覚え方も知っておくと便利だ」

土屋 康太の答え
『マザー(母)から「M」を取ったら「S」(他人)です』

飛鳥「土屋君のお母さんが『MS』でも『SM』でもリアクションに困わるわね……」

吉井明久の答え
『マザー(母)から「お金」を取ったら「親子の縁を切られるの」(他人)です』

蒼介「英語はどこにいった」



賑やかな打ち上げ

和真「クッ……フフ…………ヒャハハハハハハハハハハハハハハ!!!なんだよその面ァ!? もはや別人じゃねぇかお前ら!」

雄二「和真テメェ笑い過ぎなんだよ!」

明久「うんわかってた。和真がどういう反応するか手に取るようにわかってたよ僕」

 

チンピラ共を一蹴してからFクラスの皆と合流(蒼介と飛鳥はAクラスの皆との打ち上げがあるので別れた)し、公園で打ち上げの準備をしていると、顔の面積が倍になるほど腫れ上がった明久と雄二がやって来た。

明久達が学園中の注意を惹き付けるためにやった行動は、屋上に保管されていた打ち上げ花火用の火薬を召喚獣でぶん投げてあちこち爆破するという物だった。

ただ最後の一発で投球ミスをして、(元)教頭室を瓦礫の山にしてしまったので、鉄人から厳重注意(物理)をされてしまったらしい。

 

和真「ク……ぐふ、ククククク……」

明久「いくらなんでもツボに入り過ぎでしょ!?」

雄二「痛ぇ……くそ、鉄人め。あの野郎は加減を知らないのか」

 

まあ校舎を爆破しておいてその程度の処分で済んだのは、事情を理解している学園長が裏から手を回したからであろう。校舎の爆破など、普通は下手したら退学ものである。

 

秀吉「む。やっと来たようじゃな。遅かったのう」

ムッツリーニ「…………先に始めておいた」

明久「ああ、ゴメンゴメン。ちょっと鉄人がしつこくてさ」

翔子「……雄二、その怪我大丈夫?」

雄二「あん? ああ、別に大したことはねぇ。というかお前今までどこにいたんだ?」

翔子「市役所に婚姻届けを出しに行ってた」

雄二「待て。俺はそんな物に判を押した覚えはないぞ」

翔子「……受理されなかった」

雄二「当たり前だ!」

 

二人の夫婦漫才はいつものことなのでこの際捨て置こう。

集合場所の公園は既にFクラスのメンバーで一杯になっている。特に店も取らずに、菓子とジュースを用意しての公園での打ち上げである。

 

秀吉「お主ら、もはや学園中で知らぬ者はおらんほどの有名人になってしまったのう」

翔子「……知名度だけなら和真や鳳に匹敵する」

 

決して良い意味では100パーセントないがな。

 

雄二「……コイツと同じ扱いだとは不本意だ」

明久「それは僕の台詞だよ」

美波「あれだけのことをやっておいて、退学になるどころか停学にすらならないんだもの。妙な噂が流れて当然でしょ?ウチだって気になるし。はい」

明久「ん、ありがとう」

 

美波が雄二と明久にオレンジジュース(?)の入ったコップを渡し、明久が礼を言って受けとる。

明久(む……ちょっと苦いな…さては安物を買ってきたな?)

 

余談だがオレンジジュース一杯の原価は20~30円程度である。

 

明久「そういや、店の売り上げはどうだったの?」

 

ふと気になって明久は飲み物を持ってきたままその場に溜まっている美波に聞いてみる。

一応実行委員だから一番わかっているだろう。

 

美波「そうね。たった二日間の稼ぎにしてはかなり額になったんじゃないかしら」

 

美波が収支の書かれたノートを見せてくれる。二日間の額としてはなかなかのものだ。

 

雄二「ふむ、どれどれ」

 

それを後ろから雄二が覗き込んできた。

 

雄二「この額だと、机と椅子は苦しいな。畳と卓袱台+αってとこだ」

明久「う~ん……。やっぱり出だしの妨害が痛かったよね」

 

喫茶店ともなると、どんなに人気が出ようとも客の回転に限界がある。短時間ではこれが限界だろう。

 

和真「じゃあ遮光カーテンでも買おうぜ。俺達夏休みの最初らへんに補習あるし」

雄二「……そうだな。それでいいだろ」

 

日差しがきつすぎて姫路が倒れでもしたらまた振り出しに戻ってしまう。そうならないように和真は先手を打っておく。

 

和真「さぁて、適当に何人か捕まえて缶蹴りでもしてくるかぁ!」

 

とても100近くもの不良を退けた後とは思えないほど活力に満ち溢れた様子で、和真は空き缶を片手に人員を確保しに行った。

 

姫路「すいません。遅くなりました~」

 

そこに後ろから姫路の声が聞こえてきた。

 

美波「あ、瑞希。どうだった?」

姫路「はいっ!お父さんもわかってくれました!美波ちゃんの協力のおかげです!」

 

どうやら転校は阻止できたらしい。

明久はやった、と声に出しそうになるが姫路に悟られないようにグッと堪える。

 

明久「姫路さん、お疲れ様」

姫路「あ、吉井君……」

 

明久の顔をみて、なぜか一瞬姫路は微妙な表情になる。

 

姫路「……すいません。私も飲み物を貰っていいですか? 沢山お話したのでのどが渇いちゃって」

明久「あ、うん。どうぞ」

姫路「ありがとうございます」

 

明久から手渡されたオレンジジュースを姫路は一息に飲み干した。

 

美波「あ……っ!」

 

その様子を見た美波が急に声をあげる。

 

明久「ん? 美波、どうかした?」

姫路「あれ? もしかして、美波ちゃんのだったんですか」

美波「そ、そういうわけじゃないけど、その……」

明久「美波も飲みたかったとか?」

美波「飲みたかった……? そ、そうね! 瑞希、悪いけどウチも一口貰っていい?」

姫路「あ、ごめんなさい。全部呑んじゃったんです。新しいの貰ってきますから、ちょっと待っててくださいね」

 

そう言って姫路はジュースのまとめられているあたりに駆け寄っていった。

 

美波(……新しいのじゃ意味がないじゃない……)

明久(? 随分と不満そうだね?)

 

美波にどうして不満そうなのか明久が聞こうとしたそのとき、

 

 

ゴッチィイイイイイン!

 

美波「いだぁあああっ!?」

 

かなりのスピードで飛んできた空き缶が、美波の側頭部におもっくそぶち当たった。怪我は無いようだがあまりの痛みに美波は思わずその場にうずくまる。

 

須川「くっそぉまた俺が鬼……か……」

 

缶を回収に来た須川が目の前の光景を察してフリーズする。

 

美波「………………覚悟は良いかしら?」

 

どす黒いオーラをバックから放出しながら美波は須川ににじり寄る。目だけが全く笑ってない笑顔に須川は萎縮し思わずその場から後ずさる。

 

美波「よくもやったわねぇえええええ!」

須川「島田違うから!? 缶蹴ったの柊だから!」

美波「安心しなさい! 全員仲良く葬ってあげるから!」

須川「どこに安心できる要素がぐぼぇぇぇ!? 」

 

その地獄絵図を明久が顔をひきつらせながら見ていると、遠くから姫路の小さな悲鳴が聞こえてきた。

そちらに目をやると、姫路さんが缶ジュースを持って転んでいる姿が見えた。

 

明久「姫路さん、大丈夫?

すぐさま明久は駆け寄って手を差し出す。

 

姫路「あ、はい。大丈夫れす……」

明久「そっか。それじゃ掴まって……

 

 

 

 

(大丈夫-れす?)」

姫路「はい。それじゃ、ぎゅ~……」

明久「ひひひ、姫路さんっ!?」

 

差し出した手をスルーして姫路は明久の腰に巻きついた。

 

姫路「明久君は、いい匂いです~」

 

そのまま明久の胸に顔を埋めてゴロゴロする。

 

明久「(このままじゃマズい! 何がマズいって僕の心拍数とか理性とかが!)姫路さん、どうしちゃったの!?」

 

今の姫路は明らかに正気ではない。

顔が紅潮し目はトロンとしていて、まるで酔っ払いのようである。

 

明久(ん? 酔っ払い? ……さっきのジュースの苦味……もしや―酒か! クラスの誰かが配ってるジュースに酒を混ぜたな!)

姫路「明久君、私は怒っているんですよ?」

 

突然頬を膨らませる姫路。といっても明久には心当たりが無いようだ。

 

姫路「むぅ~っ! 私が怒っている理由すらわからないんですねっ!」

明久「いひゃいれふ! くひがのびそうれふ!」

 

業を煮やした姫路に頬を思い切り左右に引っ張られる明久。

 

姫路「……約束」

明久「約束?」

姫路「召喚大会から戻って来た時にした約束ですっ」

明久「(はて、約束。そういえば何かあったような……

 

 

 

 

 

……っあ)

 

ああっ! 校舎裏!」

姫路「私ずっと待っていたのに、忘れるなんて酷いです!

 

閏年高校とのトラブルがあってすっかり頭から抜けていたようである。最初の微妙な表情はこれが原因だろう。

 

明久「心の底からごめんなさい。その、話せないけど、色々と事情があって……」

 

くっつかれていなかったら土下座しかねないほど低姿勢で謝る明久。

 

姫路「む~……っ! 許しませんっ!」

明久「そこをなんとか!」

姫路「絶対ダメですっ!

 

 

―なんて冗談です」

明久「はぇ?」

 

思いもよらない台詞に明久は思わず間抜けな声を上げていまう。

 

姫路「実は、明久君がどうして約束を守れなかったのか、教えてもらっちゃいました」

明久「へ? 誰に?」

 

果たして一体どこの誰が事情を話したのだろうか。

 

姫路「だから、私が怒っているのは―私自信です」

 

そう言って姫路は目を伏せる。

 

姫路「私、明久君が私の為に頑張ってくれているのに、約束の場所に来てくれなかったことに怒っていました」

明久「あ、いや。それはその、姫路さんは事情を……」

姫路「事情を知らなかったなんて関係ないんです。私は私の為に頑張ってくれている人に対して怒っていた自分が許せないんです。だって―」

 

一息入れて、姫路は顔を上げて明久に目線を合わせてくる。

 

姫路「だって、明久君は優しい人だって、前から知っていたんですから」

明久「そ、そんなことを気にしなくても」

 

まっすぐに目を見られて、明久は思わず目を逸らしてしまう。

 

姫路「前の試召戦争の時も、今回も、私は助けられてばかりで、それなのに私は自分の想いを伝えることばかり考えていて……」

 

姫路は落としてしまった缶を拾い上げている。

その缶の表記には『大人のオレンジジュース』。早い話それも酒だった。

 

明久「姫路さん、その飲み物はやめておいた方が―」

制止するも姫路は耳を傾けず、そのまま勢いよくプルタブを引き上げる。

姫路「だから、明久君に何かお礼をしたいんですっ」

 

そして缶に口をつけて勢いよく一気飲みした。

 

※お酒の一気飲みは急性アルコール中毒を引き起こす恐れがあるので、家族や友人が大切であるならば絶対に真似しないでください。

 

姫路「……そういうわけですから、明久君」

明久「は、はい」

 

心なしか、姫路の目が据わっているような気がする。

 

姫路「服をぬいでください」

明久「なにゆえっ!?」

 

言動にまるで脈絡が無い。物凄い勢いで酔っているらしい。

 

姫路「今からお礼をする為ですっ! 抵抗しないで下さい!」

明久「ちょ、ちょっと待ってよ! それ明らかにおかしいから!」

姫路「おかしくありません! 皆していることです!」

 

何処の世界の人々だ、その「皆」は。

 

零距離で掴まられていたせいで明久の制服のボタンが次々と外されていく。この距離ではうまく引き剥がせないため、まさに絶体絶命である。

 

雄二「お~、明久。楽しそうじゃないか」

 

そこにタイミン良く瓶を片手にしま雄二が通りかかる。

 

明久「ゆ、雄二っ! 丁度良かった! 姫路さんをなんとかして!」

雄二「ん? そうだな……。だが、邪魔するのも悪いし……」

 

ニヤニヤと明らかに悪ノリしている雄二。散々翔子にやきもきさせられた八つ当たりであろうか。

 

明久「それなら、せめて白金の腕輪を起動してよ! 自分でなんとかするから!」

雄二「ん? そうか? それなら……科目は数学でいいか……

―起動(アウェイクン)」

 

雄二が白金の腕輪で召喚フィールドを作り出した。

ただ、科目のチョイスに雄二の悪意が見え隠れしているような……

 

明久「ふぅ。僕の召喚獣が人に触れることができるやつで良かった。行くぞ―試獣召喚(サモン)っ!」

 

呼び出された小さな明久が姫路に触れようと近づいてくる。明久の点数程度でも力が人の何倍ある召喚獣なら、用意に姫路を引き剥がせるだろう。

 

姫路「むぅ~……! 邪魔ですっ! 試獣召喚っ!」

 

―キュポッ

 

一瞬で消し炭にされた明久の召喚獣。

召喚大会で和真をも退けた明久でも、腕輪の前では無力であった。南無。

 

明久「熱ぅああああああっ!? 身体が焼けるように熱いぃぃぃぃぃぃぃ!?」

姫路「それは服を着ているからですっ!」

 

明らかにお前の召喚獣が原因です、本当にありがとうございました。

あまりのフィールドバックの強烈さに明久は気絶することすら許されない。

ちなみに雄二はこの光景を見て腹を抱えて爆笑している。どうやらこうなることを予測できていたらしい。

 

姫路「とにかく、私は美波ちゃんには負けられないんですっ! だから名前だって『明久君』って呼んじゃいます! そして――いつかきっと――明久君と――」

 

と、突然姫路の声が尻すぼみになっていった。

 

明久「もしもし、姫路さん?」

姫路「……ずっと……一緒に……」

 

明久の耳にすぅすぅと規則正しい呼吸音が聞こえてくる。どうやら眠ったみたいだ。

 

明久(ここまでお酒に弱いとなると、今後は飲ませないように気をつけておかないといけないな。男の前で眠っちゃうなんて危ないし)

 

案の定姫路の想いは何一つ伝わっていないようだ。仕方がないか、バカだし。

 

美波「……ウチが少し目を離したら、その隙に一体何をしてたのかしらねぇ……!」

明久「え!? み、美波! 違うんだ! これは…………ゴファァッ!…………み、美波……ッ…どうしたのその顔……」

 

怒気を滲ませた美波の声が耳に入り、慌てて弁解しようと明久は美波の方を向くが、変わり果てた美波の顔に思わず盛大に吹き出してしまう。

額に“肉”の一文字、両頬に渦巻き、顎に髭、某警察官よろしくつなげられた眉毛、そして鼻の下に「50%OFF」……とどのつまり顔全体がマジックで落書きされていた。

 

美波「…………へぇえええええ…………そんなにウチの顔が滑稽しらぁあああ……」

明久「ち……違うんだ美波……これには深い訳が……」

 

笑いを堪えながらした明久の弁明虚しく、公園には悲鳴が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

和真「……わりぃ明久、ちとやり過ぎちまった」

 

片手で油性マジックを弄びながら和真はあまり心のこもってない謝罪をする。

和真の周囲には美波にボコられた缶蹴りに参加したFクラス生徒が数名横たわっていたが、この事態を引き起こした和真は無傷であった。

 

和真「……ククククク……我ながら良い仕上がりだったぜ……」

 

どうやら彼の辞書に“反省”の文字は無いようだ。

 

 

 

Fクラスはこれから先も賑やかな日々が続いていくのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

清涼祭の翌日、生徒会室には学園長・藤堂 カヲル、三年学年代表・綾倉 慶、そして四大企業の代表者達、計6名が円卓のようなテーブルに腰かけていた。

円卓の真ん中にはとても一般流通しているとは思えないスーパーコンピュータが設置されている。

 

綾倉「……18時になりました。では、文月学園経営会議を始めます」

 

 

 

 

 

 




美波さん缶をぶち当てられてバイオレンスモードに入るも、和真君には返り討ち(落書き)に遭いました。
和真君にギャグ補正による強化は通用しない!

とうとう次回で二巻終了です。
もう五十話も過ぎて、ようやく四大企業重役の顔見せになります。
な……長かった……ここまで本当に長かった……


では。

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