一年に一回開かれ、主に新年度の予算関連法案などを議論する国会をなんというか。
霧島 翔子の答え
『通常国会』
蒼介「正解だ。日本国民として国会の種類は区別できるようにしておこう」
吉井 明久
『井戸端会議』
和真「そんなんに任せていいのかお前は」
明久「えぇぇぇぇ!?僕達が負けても校舎の改修やってくれたの!?」
あの後目を冷まし、学園長から賞品を受け取り、腕輪のデモンストレーションも済ませた後、教室に戻る途中雄二から信じられないことを聞いた明久は思わず絶叫する。
雄二「当たり前だろうが。もともとあの交換条件をだされた理由は欠陥のある腕輪があったからだろ? その欠陥が無くなった以上、渋る理由はどこにも無いだろう。そもそも教育方針なんてものの前に、まず生徒の健康状態が重要なはずだ」
明久「じゃあなんでもっと早く教えてくれなかったんだよ!? フィードバックのせいで頬がまだ痛いんだけど!」
恐竜を撲殺できるのではないかと思うほどの和真の召喚獣の渾身のパンチを喰らった明久としては、今になるまで説明してくれなかったことにものすごく不満があるようだ。
雄二「和真に口止めされてたんだよ。バラせば腕輪使って問答無用でまとめて爆殺するっていう脅し付きでな」
そうなっていたら明久達に勝ち目は無い。どれだけ操作技術が優れてようが、逃げ場の無い弾幕攻撃は避けようが無いのだ。
また、そんな爆撃を喰らえばただのパンチとは比較にならないほどのフィードバックが明久を襲っていただろう。その光景を想像すると、明久は頭から氷水をぶっかけられたような感覚にうち震える。
明久「……じゃあ、なんで和真はそんなことを」
雄二「さぁな。大方、点数が上がったお前とガチでやり合いたいってとこじゃねぇの?」
明久「…………あの戦闘狂がぁあああ……」
そんな理由でボコられまくったことにまるで納得がいかない明久は今ここにいない友人に対して怒りを募らせる。
葉月「お兄ちゃん! すっっごい格好よかったよ!」
明久「ぐふっ! は、葉月ちゃん……。今日も来てくれたんだ。どうもありがとう」
突然凄い勢いで葉月が明久に飛びついた。どうやら明久を迎えに来たらしい。身長差のせいで頭が明久の鳩尾にクリーンヒットしたが、明久のプライドにかけてなんとか持ちこたえる。
美波「二人とも、お疲れ様。まさか柊に勝っちゃうなんてね」
明久「……やっぱり皆闘うことになるって知ってたの?」
美波「……ごめん。でも柊に口止めされてて。バラしたらスポーツ刈りの刑って脅し付きで」
明久「どんな脅迫!?」
女子にとって自分の髪の毛がスポーツ刈りにされるなんて発狂ものである。流石和真、発想が恐ろし過ぎる。
ちなみに和真はバリカンなど持っていない。
葉月「お兄ちゃん、凄いです~っ!」
美波「葉月ってば、アキが困ってるわよ?」
明久にグリグリと頭を押し付けている葉月ちゃんを見て美波が苦笑している。
これ以上鳩尾を圧迫されると致命傷になりかねないので、やんわりと葉月の身体を遠ざける。
姫路「あの、吉井君」
明久「あ、姫路さん。僕の活躍見てくれた?」
もちろん姫路も和真からしっかり口止めされていた。
脅し文句は「明久に体重をばらす」だ。
ちなみに和真は姫路の体重など知らない。
姫路「はいっ!とっても素敵でした! 今度土屋君にビデオをコピーしてもらおうと思うくらい!」
明久「……ビデオ、ねぇ……。ムッツリーニ、撮影なんかしていたの?」
姫路「はい。ずっと熱心に撮っていましたよ。ね?」
ムッツリーニ「…………(プイッ)」
この男、十中八九試合そっちのけでミニスカートの観客とかを撮影していたのだろう。
案の定ムッツリーニも口止めされていた。
脅し文句は「玉野に女装が似合いそうな男子として紹介する」
ちなみに和真は真っ先に標的にされること間違いなしなので、そういう内容では決して玉野に近づこうとしない。
美波「坂本。よくアキがあんな点数取れたわね」
雄二「Aクラスとの試召戦争の後、俺や和真は何度か日本史の勉強に付き合わされたりしたからな。あいつの点数が上がると俺にもメリットがあるから引き受けたが」
美波「ふぅん、あの勉強嫌いなアキがなんでまた?」
雄二「なんでも、河原にいたおっちゃんにアドバイスもらったからだそうだ」
美波「…………その人ってもしかして……」
雄二「さぁな。……そういえば結局お前らを助けたおっちゃんはわからずじまいだな。綾倉先生に聞きそびれちまったが……」
雄二と美波が姫路さんに向けてそんな会話をしている。
姫路に明久を達が転校の話を知っていることがバレないように配慮したのだろう。
姫路「そ、それで、ですね……」
明久「ん? ああ、なにかな?」
姫路「後夜祭の時、お話があるので駐輪場まで来てください!」
トマトのように顔を真っ赤にしてそう告げると、姫路はダッシュでウェイトレス業務に戻っていった。
明久(おおっ告白前の前フリみたいだ。これは良いものを見た。
あれ? 何か違和感があるな。えーっと、さっきの台詞って姫路さんは誰に言ったんだっけ)
悪魔『お前だ。吉井明久』
明久(やぁ久しぶり僕の中の悪魔。相変わらずそうやって僕に甘言を吹き込もうとするんだね。
キミは本当に悪魔だよ)
悪魔『いや、そうじゃなくて真実だ。一連の会話を思い出してみたらわかるだろう?』
明久(一連の会話? そういえば……)
天使『嘘だっ! バカでブサイクで解消なしの明久にそんなことあるわけないじゃないか! 悪魔の言葉に惑わされちゃダメだよ!』
明久「テメェ初登場の第一声がそれかクソ天使!」
またもや明久の脳内にファンタジーな存在が生まれたようだ。天使なのに神々しさの欠片も感じられないような発言をしているところが実に明久の脳内生物らしい特徴だ。
悪魔『それなら確認してみたらいいだろう。もし俺が間違ってたら和真に殴りかかってやるよ』
天使『上等だよ! それならもし俺が間違っていたら鉄人に殴りかかってやるよ!』
明久(ごめん。本体を無視して勝手に話を進めないで。そもそも、どっちに転んでも実行するのは僕なんだけど)
文月の二大怪物に喧嘩を売るのだ、どう転んでもただでは済まないだろう。
秀吉「雄二に明久。話し込んでいるところ悪いのじゃが、喫茶店を手伝ってくれんかの?」
翔子「……雄二達が勝った後、お客さんが大幅に増えて混雑している」
明久が脳内の生物と喧嘩していると、教室の方から秀吉と翔子がチャイナドレスの裾を際どく翻しながら駆けてきた。ちなみにこの二人は特に脅されることなく和真の頼みを二つ返事で引き受けた。
美波「あ、そういえばそうだったわね。ほらアキ! もう大会もないんだから、きっちり手伝ってもらうからね!」
明久「うん。今まであまり手伝えなかった分頑張るよ!」
雄二「やれやれかったるいな。というか和真はどうしたんだ?」
翔子「……和真なら、女性客の2/3を一人で捌いている」
雄二「……ということは、またあの見てるこっちが心臓に悪いトレイの運び方してんのか」
秀吉「いや、今はトレイの量が三枚から七枚に増えておる」
明久「どうやってるのそれ!? 気になるけど見たくない気もする!」
『ただいまの時刻をもって、清涼祭の一般公開を終了しました。各生徒は速やかに撤収の作業を行ってください』
明久「お、終わった……」「秀吉「さすがに疲れたのう……」
ムッツリーニ「…………(コクコク)」
放送を聞いた途端、ほとんどのFクラス生徒はグロッキー状態となった。召喚大会の宣伝効果は少々強すぎたらしい。
明久達の五倍くらい働いていた和真は何故か全く疲れた様子が無く、余ったゴマ団子を胃の中に処分しているのだが。
明久「そう言えば、姫路さんのお父さんはどうしたんだろう?」
雄二「ん? お義父さんが気になるのか?」
明久「なっ!? べ、べつにそういうわけじゃなくて!」
秀吉「後夜祭の後で話しに行くと言っておったのう。結論はその時じゃな」
秀吉がそう返事をする。多分大丈夫だが、明久はまだ不安そうであった。
美波「じゃ、ウチらは着替えてくるわ」
明久「えぇ!? どうして!?」
美波「どうして、って言われても……恥ずかしいからに決まってるでしょ?」
姫路「すいません。すぐ戻りますので」
明久「待って! 二人とも考え直すんだ!カムバァーック!」
明久の説得も虚しく、二人は無情にも着替えの為に去っていった。ちなみに葉月はそのままの格好で帰った。思春期真っ盛りの女子高生には到底出来ない芸当である。
明久「……あれ? 霧島さんは?」
雄二「そう言えば見当たらないな…………なんだか物凄く嫌な予感がするんだが……」
和真(多分気のせいじゃねぇなソレ。営業中に雄二がプレミアムチケット明久に預けたっつうことムッツリーニから聞いてたし。たった今婚姻届け持って教室から出ていったしな)
そこまで知っておいて黙秘を貫くのが和真である。
秀吉「ふむ。ならばワシも―」
明久「させるかっ! せめて秀吉だけは着替えさせない!」
満身創痍の明久が秀吉の足にタックルした。
秀吉「なっ!?何をするのじゃ明久!」
ムッツリーニ「………(フルフル)」
和真「お前等、さっきまでくたばってたのに元気だな……」
おそらく別腹というやつだろう。いや違うか。
雄二「おい明久、和真。遊んでないで学園長室に行くぞ」
和真「ん、あいよ」
秀吉「学園長室じゃと?二人とも学園長室に何か用でもあるのか?」
雄二「ちょっとした確認作業だ。喫茶店が忙しくて行けなかったからな。遅くなったが今から行こうと思う」
秀吉「そうか。ならばその間にワシは着替えを」
明久「そうはいかない! 秀吉も一緒に連れていく!」
ムッツリーニ「…………(クイクイ)」
明久「あ、ムッツリーニも来る?」
ムッツリーニ「…………(コクコク)」
秀吉「困ったのう。雄二、なんとかやってくれんか?」
雄二「ん~……。ま、いいだろ。秀吉とムッツリーニも行こうぜ。明久を説得するのも面倒だし」
秀吉「やれやれ。雄二まで……。仕方ないのう。着替えは後回しじゃ」
綾倉「……! ほほう…… 鳳君、橘さん、ようやく動き出したようですよ」
パソコンのモニター画面の“何か”を確認し、綾倉先生は二人に合図を送る。
蒼介「そうですか。では和真に連絡を入れます」
飛鳥「暴力は好きじゃないけど、そうも言ってられないものね……」
蒼介「……来るなら来い。迎え撃ってやるまでだ、閏年高校」
ここに来て明久にネタバラシ。
まあ、作中人物だけではなく読者の皆様もわかりきっていたことですが。
どうやらクライマックスにはまだ早いようですよ?
ちなみに姫路さん達は教頭の思惑や綾倉先生の罠のことは全く知りませんが、和真君がこの手の勝負事でわざと負けるはずがないと今までの経験から察知しました。