バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

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文章量が一気に4倍近くになってしまった…
この小説バランス悪っ!



それぞれの自己紹介

和真「あーそうだそうだ。お前がいなきゃ学力最底辺クラスは完成しねぇもんな。一番重要なバカのこと忘れるなんざ俺としたことが、うっかりしてたぜ」

明久「いきなり失礼すぎない!?…ってなんで和真がFクラスに?」

 

和真のあんまりな物言い(明久からすればだが)に憤慨した後、明久は雄二と同じ疑問を抱く。

 

和真「雄二がなにか面白いことをしようとしてる気がしてな、Aクラスへ行く資格を夕日の向こうに投げ捨てて来てやったぜあっはっはっは!」

明久「あはは、なんかすごく和真らしいねその理由……あ、じゃあ霧島さんは……………………雄二か……

畜生!何故あんなゴリラがモテるんだ!」

 

明久は和真がFクラスである理由に納得した後、翔子がここにいる理由を訪ねようとするが、訪ねる前に理由を察する。バカの彼にしては珍しく察しが良いが、明久でも簡単に察せる程翔子が一途であるということである(雄二の努力と和真の協力の甲斐あってか、翔子が雄二に一途であることは一部の人間しか知らないが)。

明久はこの世の不公平さに血の涙を流しながら悔しがる。彼に好意を寄せている女子も少なからずいるのだが、それを伝えると色々と面倒事が起きそうな気がするので和真はスルーした。

 

「えーと、ちょっと通してもらえますかね?」

 

ドアの外から覇気のない声が聞こえてきた。その声の主は寝癖のついた髪にヨレヨレのシャツを着た冴えないおっさんだった。おそらくFクラスの担任だろう。

 

福原「えー、おはようございます。このクラスの担任の福原 慎です。よろしくお願いします」

 

福原教諭はそう言うと黒板に名前を書こうとしたが、チョークが支給されていなかった。

 

和真(それは教育機関としてどうなんだ?)

福原「皆さん全員に卓袱台と座布団は支給されていますか?不備があれば申し出て下さい」

 

そもそも支給されているものが既におかしい。流石はFクラス、設備がまさかの昭和スタイルだ。

 

和真(まあ別にいいだろ。勉強なんざ教科書と紙とペンがあればどうとでもなる)

 

もともと天才肌の和真は設備がどうであろうと大して興味を持っていないものの、一般的な生徒のモチベーションは大いに下落するだろう。Fクラスの生徒が一般的生徒かどうかは首を捻らざるを得ないが。

 

Fクラス生徒「先生、俺の座布団に綿がほとんど入ってないです!」

福原「あー、はい。我慢してください」

 

不備を申し出ても受理されないらしい。

 

Fクラス生徒「先生、俺の卓袱台の足が折れています」

福原「木工用ボンドが支給されていますので、後で自分で直してください」 

 

新品と取り替えるという発想はないらしい。

 

Fクラス生徒「先生、窓が割れていて風が寒いんですけど」

福原「わかりました。ビニール袋とセロハンテープの支給を申請しておきましょう」

 

ガラスで補強などする気ないらしい。

 

明久(改めてこの教室を見渡すと……教室の隅には蜘蛛の巣が張られ、壁はひび割れや落書きだらけ。さらに部屋全体がホコリっぽい……ここは本当に学校なのか!?)

 

その問いに首を縦にふるものなどそういないだろう。

 

福原「では、自己紹介でも始めましょうか。そうですね。廊下側の人からお願いします」

 

福原先生がそう言った後に立ち上がったのは、肩にかかる程度の長さの髪の女子生徒……と思ったらその生徒は男子制服を着ていた。

 

「木下 秀吉じゃ。演劇部に所属しておる。今年一年よろしく頼むぞい」

 

軽やかに微笑みを作って自己紹介を終える秀吉。

 

和真(いつ見ても優子にそっくりだな。優子の弟なのにあいつはスポーツが苦手だったっけ……)

 

木下 優子は和真や翔子の元クラスメイトであり、社交性の乏しい翔子の数少ない友人の一人である。

余談だが、和真は仲良くなった人は誰であろうとアウトドアスポーツ巡りに巻き込む。そのハードさは肉体よりメンタルの是非を問われ、最後までついていける人はほんの一握りという過酷さであるが、木下 優子は持ち前の負けず嫌い精神によりそれをやり遂げた一人である。このことから、和真の優子に対する評価はかなり高い。

「………土屋 康太」

 

次の生徒は小柄な男子だ。土屋は名前だけ言うと自己紹介を終わらせた。個性もへったくれもない。

 

和真(あんな愛想ない奴が今後Fクラスの切り札的存在になるなんだよなぁ。雄二がソウスケにぶつけるとしたら、多分あいつかな。本当は俺が闘りてぇところだが、いくらなんでもこんな早い時期からワガママ言うのもなぁ……)

 

一見殊勝な心掛けだが、後々ワガママを押し通そうとしていることに一切疑問を持っていない時点で突っ込みどころ満載だ。和真がそんなことを考えている間も自己紹介は続く。黄色いリボンで髪をポニーテールにまとめた女子生徒が立ち上がる。

 

「島田 美波です。海外育ちで日本語はできるけど読み書きが苦手です。あ、でも英語も苦手です。育ちはドイツだったので。趣味は…吉井 明久を殴ることです☆」

明久(誰だっ!?恐ろしくピンポイントかつ危険な趣味を持つ奴は……島田さんしかいないよなぁ)

島田「はろはろー」

 

笑顔で明久に手を振る島田。明久も引き気味に返事をする。自分を殴ることが趣味の人間に友好的に接することなどできない。それでも普段からつるんでいるのは、明久のお人好しな性格を差し引いても、なんだかんだで仲は良いのだろう。

 

和真(島田も相変わらずだなー。好意を寄せている相手を殴るのが趣味ってもうそれただの危ない人だぞオイ。ったく、雄二といいこいつといい…)

 

本人が良く告白されるからか、和真は以外とそういうことに目ざとい。まあ察したところでなにかしてやる訳でもないが。過去にキューピッド的役割をしたことがないこともないが、基本的に興味が無いのでノータッチである。

その後は淡々と自分の名前を告げるだけの作業が進み、明久の番になる。

 

明久(さて、自己紹介だ。こういったものは出だしが肝心。沢山の仲間を作るためにも、僕が気さくで明るい好青年ということをアピールしないと)

「ーーコホン。えーっと、吉井 明久です。気軽に『ダーリン』って呼んで下さいね♪」

 

『ダァァァァァァァァリィィィィィィィン!!!』

 

野太い声の大合唱。非常に不愉快であり、流石の和真も顔をしかめる。

明久「ーー失礼。忘れて下さい。とにかくよろしくお願い致します」

 

作り笑いで誤魔化しているつもりらしいが、今の明久はどう見ても気分が悪そうだ。

 

和真(予想以上にバカばっかりだなここ……大丈夫かなこれ……さて、次は俺か)

 

勘に従ってFクラスに来たことを若干後悔し始めつつ、和真は立ち上がる。

 

和真「知った顔も知らない顔もこんにちは。アウトドア派娯楽主義者こと柊 和真だ」

 

ちなみに同じ学年で和真と面識が無い生徒などいないので、この自己紹介の意味はあんまり無い。

 

和真「趣味はスポーツ全般と、そうだな……吉井 明久を殴ることです☆」

 

明久「おかしいでしょ!?」

 

後ろの席で和真の自己紹介を聞いていた明久は、突然のデジャブに我慢できずシャウトする。

 

明久「いつから僕の周りは僕を殴ることが趣味の人間だらけになったのさ!?」

和真「明久、天丼って知ってるか」

明久「それを自己紹介でやる意味は!?」

和真「特に無い」

明久「じゃあすんなよ!」

和真「ま、そんな訳でこれから一年よろしくな」

 

明久の抗議を華麗にスルーし、和真は前にいる翔子にバトンタッチした。

 

翔子「…霧島翔子。この一年間よろしく」

 

翔子は艶やかな黒髪の美少女で、凛とした雰囲気も加わって、男女ともに人気がある。

因みに雄二と付き合っているが生徒には知られていない。

 

「はいっ!質問です!」

 

既に自己紹介を終えた男子生徒が高々と手を挙げる。

翔子「……何?」

 

「なんでここにいるんですか?」

 

聞きようによっては失礼な質問だがその疑問は無理もないだろう。去年翔子は首席の蒼介には及ばないまでも、学年二位の成績をキープし続けている。多少調子が悪かったぐらいで最下層に位置するFクラスまで落ちるはずがない。ちなみに和真も学年六位の成績を残しているが誰にも突っ込まれなかったのは、彼の行動をいちいち疑問に感じていたらキリがないからである。この学年の生徒は彼のする謎の行動の大概は「柊だから」で納得するレベルまでに至っている。

 

翔子「…ここが私のいるべきクラスだから」

 

質問の応答としては微妙にずれた答えだが、それで皆は「なるほどー」と納得する。バカは扱いやすい。

 

和真(釘をさしといて良かったぜ。これから戦争を仕掛けるクラスの大将が女にうつつを抜かしてると知られちゃあ勝てるもんも勝てなくなるしな)

雄二(助かったぜ…まさか和真の奴まさかそこまで考えて……るわけねぇよな、どうせいつものムカつく程当たる勘だろう)

 

その後も名前を告げるだけの単調な作業が続き、和真が飽き始めた頃に不意に教室のドアが開き、息を切らせて胸に手をあてている女子生徒が現れた。

 

「あの、遅れて、すいま、せん……」

 

教室全体から驚いたような声が上がる。騒がしくなるクラスの中で福原先生がその姿を見て話しかけた。

 

福原「丁度よかったです。今自己紹介をしているところなので姫路さんもお願いします」

姫路「は、はい!あの、姫路 瑞希といいます。よろしくお願いします……」

 

文月学園の女子生徒はなぜか全体的に強気な生徒がかなり多い中、保護欲をかきたてるような可憐な容姿は非常に人目を引く。

 

「はいっ!質問です!」

 

先ほどの男子生徒がまた手を挙げる。

 

姫路「あ、は、はい。なんですか?」

「なんでここにいるんですか?」

 

一字一句違わない全く同じ質問。彼に学習能力及びデリカシーというものはないらしい。しかし姫路も去年学年3位の成績を残しているため、その疑問もまた仕方ない。

 

姫路「その、振り分け試験の最中、高熱をだしてしまいまして……」

その言葉を聴きクラスの人々は納得した。

試験途中での退席は0点扱いとなる。姫路は振り分け試験を最後まで受けることができずFクラスに振り分けられてしまったというわけだ。

そんな姫路の言い分を聞き、クラス内でもちらほらと言い訳の声が上がる。

 

「そう言えば俺も熱(の問題)が出たせいでFクラスに」

「ああ。科学だろ?アレは難しかったな」

「俺は弟が事故に遭ったと聞いて実力を出し切れなくて」

「黙れ一人っ子」

「前の晩、彼女が寝かせてくれなくて」

「今年一番の大嘘をありがとう」

和真(せめてもっとましな言い訳考えろよ……)

 

言ってることは正論だが、娯楽を求めてFクラスに来た和真に言う資格はない。

 

姫路「で、では、一年間よろしくお願いしますっ!」

 

そんな中、姫路は逃げるように明久の隣の空いている卓袱台に座り、安堵の息を吐いて卓袱台に突っ伏す。よほど緊張したのだろう。

 

明久「あのさ、姫―」

雄二「姫路」

 

明久の台詞にかぶせて声をかける雄二。

ナイスインターセプト、完全にわざとだろう。

 

姫路「は、はいっ。何ですか?えーっと……」

雄二「坂本 雄二だ。体調はもう大丈夫なのか?」

明久「あ、それは僕も気になる」

 

試験で倒れた光景を目の前で目の当たりにしていた明久はその話題になったので思わず口を挟む。

 

姫路「よ、吉井君!?」

 

なぜか明久の顔を見て姫路は必要以上に驚く。和真はもしやと思ったが確定するには情報が少なすぎるため脳内で保留にした。

 

姫路「姫路。明久がブサイクですまん」

 

雄二が全くありがたくない悪意あるフォローをする。というかフォローするつもりなどハナから無いのだろう。

姫路が過剰に驚いたのにはちゃんとした理由があるのだが、間違ってもそんなあんまりな理由ではないだろう、。

 

姫路「そ、そんな!目もパッチリしてるし、顔のラインも細くて綺麗だし、全然ブサイクなんかじゃないですよ!その、むしろ……」

雄二「そう言われると、確かに見てくれは悪くない顔をしているかもしれないな。俺の知人にも明久に興味を持っている奴がいたような気もするし」

和真(お、島田が露骨にビクッてなった。安心しろお前じゃねーよ。絶対になんらかのオチがある)

明久「え?それは誰―」

姫路「そ、それって誰ですかっ!?」

 

ナイスインターセプトpart2。明久は言葉を遮られ続ける星の下にでも生まれてきたのだろうか。ちなみに和真はここまでの流れで先程保留したばかりの推測を確定する。なんてことない、彼女も翔子や島田と同類であっただけである。

 

雄二「確か、久保………………

 

 

利光だったかな」

和真「……マジでっ!?」

 

よほど信じられない情報だったのか、不干渉に徹していた和真が思わず口を挟む。

 

姫路「ひ、柊君!?」

雄二「なんだ和真、盗み聞きしてたのか? 行儀悪いな」

和真「そんなでけぇ声で談笑してたら嫌でも耳に入って来るわ。それよりさっきのマジか!? あの堅物によりによってそんな趣味が!?」

雄二「半分冗談だ」

明久「え?残り半分は?」

雄二「ところで姫路。体は大丈夫なのか?」

姫路「あ、はい。もうすっかり元気です」

明久「ねぇ雄二!残りの半分は!?」

福原「はいはい。そこの人達、静かにしてくださいね」

 

教卓を軽く叩いて福原先生が警告を発すると。

 

バキィッ バラバラバラ・・・・・・

 

突如、教卓はゴミ屑と化した。

 

福原「えー……替えを用意してきます。少し待っていてください。」

 

気まずそうにそう告げると、先生は教室から出て行った。

姫路が苦笑いをしている。

 

明久「……雄二、ちょっといい?ここじゃ話しにくいから、廊下で」

雄二「!……別に構わんが」

 

そう言って明久は真剣な表情でそそくさと廊下に出ていき、何かを察した雄二も教室を出た。

 

姫路「あの、柊君。お二人、どうしたんでしょうか?」

和真「……さぁね」

 

和真(久保の件は聞かなかったことにしよう。それにしても……なるほど、相変わらず雄二は面倒な性格してんなぁ)「ククク……」

姫路「?」

 

和真は何かが府に落ちたように頷く。姫路はそれを不思議そうに見ていた。

 

 

 

 

 

 

その頃Aクラスでは、

「では最後に鳳 蒼介君、前に来て挨拶して下さい」

 

蒼介以外の自己紹介を済ませた後、高橋先生がそう告げる。呼ばれた蒼介は紺色の髪をかき上げ、前に出る。

芸術と言っても過言ではない容姿とカリスマ性のようなオーラを兼ね備えた彼は、無条件に人を惹き付ける。

 

蒼介「Aクラス代表の鳳 蒼介だ。これから一年よろしく頼む。まず早急に、男女一人ずつ代表代理を決めなければならない。とても責任が伴う重要な役職だ。この役目を背負う覚悟がある者は立候補してくれ」

 

代表代理とは学年主席が生徒会長に着任したとき、不在のときの代役として行事の指揮や宣戦布告の対応にあたる役職だ。「生徒の見本となるべき生徒会長は学年で最も優秀な生徒が望ましい」という学園の方針から、毎年二年の主席に声がかかる。しかしクラス代表の責務と生徒会長の責務を同時に背負うため大抵の生徒は拒否し、代わりに学年次席が生徒会長に就くことがほとんどだ。そのためこの役職は設置されることはまずない。

ちなみに代理が活動中そのクラスは試験召喚戦争に参加できない。

 

「女子はアタシがやるよ」

「では男子は僕が引き受けよう」

 

二人の生徒が立候補した。

女子生徒が木下優子、男子生徒が久保利光だ。

二人とも蒼介に次ぐ成績を誇る上リーダーシップも申し分ないので周りから特に異議はない。

 

蒼介「では二人に任せよう。感謝する」

優子「どういたしまして♪ ところでなんで早急に決めなければならないの?」

久保「それは僕も気になるな。新学期早々試召戦争が起きるわけがないし特別な行事も今月は特にないだろう?」

 

二人はそう訪ねると、蒼介は真剣な顔つきになる。

 

蒼介「理由は新学期早々試召戦争を起こすクラスがいるからだ。学年でも指折りの学力を持つ生徒数名を中心にな」




というわけでFクラスの自己紹介+@でした。
この小説の優子さんは休日主人公にあっちこっち振り回されるも持ち前のガッツで食らい付いていき、気がつけば作中でも上位の武闘派になりました。学力と腕力が両方備わり最強に見えます。
ちなみにBL趣味は休日をスポーツで潰しているうちに興味を失って行きました。

では。

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