バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

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【バカテスト・日本史】
天文・測量術などを学び、田沼意次の蝦夷地調査で派遣された人物は誰か?

柊 和真の答え
『最上 徳内』

蒼介「正解だ。寛政期に幕府の千島列島探査に参加したということも覚えておこう」

吉井 明久の答え
『最上川』

源太「“最上”まで出てきたけど“徳内”がでなかったパターンだな……だけどよ、人物って聞かれたら人物で答えような」

木下 秀吉の答え
『ナイル川』

蒼介「原型が無くなってしまったぞ」

土屋 康太の答え
『エジプト文明』

源太「オイ、マジカルバナナみてぇになってるじゃねぇか?お前らゼッテェ真面目にテスト受けてるふりして遊んでるだろ?」

須川 亮太の答え
『ちょっとなに言ってるかわかんないです』

蒼介「木下~須川の答案は西村教諭に渡しておく。
補習室でその腐った性根を叩き直されてこい馬鹿者どもが」


矛盾

橘 飛鳥という人間を一言で簡潔に説明するならば、『才能に恵まれない人』である。

 

彼女は日本屈指の名家・橘家の長女として生まれ、父親が世界的大企業“橘社”のCEOということもあり、生まれながらの勝者、成功を約束された人間と言っても過言ではない。

 

だが、当の本人は悲しいほど才能に乏しいのだ。

物覚えも頭の回転も運動神経も凡人レベル、どれだけ一生懸命に取り組もうと決してトップに立つことはない。

物心ついたときから血のにじむほど努力を重ねてきた柔道も、鳳 蒼介に手も足も出ず完敗した。

 

そんな彼女が父親の部下達に“劣等”の烙印を押されるのは火を見るより明らかであった。

 

“無能”、“出涸らし”、“橘家の恥さらし”

 

と、噂されていた。

そんな心無い仕打ちに年端もいかぬ少女が耐えられるはずもなく、下手をすれば自殺をしかねないほどまで心を閉ざしてしまった。

 

そんな彼女が、二人の友人のお陰で立ち直ることができたのは、今はまだ語るときではない。

 

 

 

 

 

【大門 徹VS橘 飛鳥】

 

《古典》

『二年Aクラス 大門 徹 246点

VS

二年Aクラス 橘 飛鳥 273点』

 

現段階では意外にも飛鳥が押していた。

飛鳥の戦闘スタイルは攻撃後離脱しダメージを蓄積させていくヒットアンドアウェイ戦法。前回闘った小暮 葵と同じく、スピードを犠牲にした徹にとって相性の良くない相手だ。

 

徹(ったく、連続で相性の良くない相手とはね。ついてない……というか、ここまで僕にとってろくな思い出がないな……)

 

相手に翻弄されるなか、これまでの闘いを思いおこし、少々鬱な気分になる徹。

 

徹(……でもまあ、)

飛鳥「……?」

 

〈徹〉は脱力したような体勢になる。

飛鳥は訝しむも、その隙を突こうと接近する。

が、

 

徹「だからこそ、負けるわけにはいかないんだよねぇ!」

飛鳥「っ!?しまっ―」

 

〈徹〉は敵の攻撃を真っ向から受け止め、その隙に鉄拳を喰らわせた。

 

 

《古典》

『二年Aクラス 大門 徹 229点

VS

二年Aクラス 橘 飛鳥 225点』

 

 

徹「それに、君には小暮先輩には通用しなかった戦法が通用するみたいだからね」

 

飛鳥と小暮の戦闘スタイルは、どちらも徹にとって相性が悪い。だが、飛鳥は小暮ほど操作技術に秀でているわけではなく、甲冑の隙間を縫って攻撃を当てるような芸当は不可能である。よって、相手の攻撃を受け止め、攻撃を正確に当てていけば先に倒れるのはパワー負けしている〈飛鳥〉である。

 

徹「さて、君のスタイルでは勝てないようだけど、どうするんだい?」

飛鳥「…………」

 

徹の挑発に押し黙る飛鳥。

確かにこのままでは負けは確実である。

普通ならば何か別の方法で闘おうとするだろう。

飛鳥もその例に漏れず戦法を変えた。そう……

 

 

 

 

飛鳥「上等!ならこっちはありったけの攻撃を、あなたに喰らわせるのみ!」

 

小細工抜きの真っ向勝負に。

 

飛鳥「はぁあああっ!」

 

先ほどまでの浅い攻撃とは比べ物にならない渾身の一刀で〈徹〉に斬りかかる。

クナイと鉄鎧がぶつかり合い召喚フィールド内に耳障りな金属音が響き渡る。

 

徹「オラァ!」

 

〈飛鳥〉の繰り出した斬撃に一切怯まず、〈徹〉ガントレットで〈飛鳥〉を殴り倒す。防御を重視した〈徹〉とは違い、薄めの装甲である〈飛鳥〉には小さくないダメージが入る。しかし、〈徹〉の渾身の一撃を喰らったのにもかかわらず、〈飛鳥〉は倒れも飛ばされもせずその場に踏みとどまり……

 

飛鳥「負けるかぁっ!」

 

再び〈徹〉を切り裂く。徹も一切気圧されることなく〈飛鳥〉の顔面をぶん殴る。

 

徹「……大企業のお嬢様にしては、随分と荒っぽい戦法じゃないか」

飛鳥「今この召喚に必要なのは、上品に振る舞うことじゃない…………

目の前の敵を倒すことよ!」

徹「違いないね…………では…」

飛鳥「ええ…」

 

 

徹・飛鳥「「うぉおおおおお!!!」」

 

斬る、殴る、斬る、殴る、斬る、殴る

防御も回避お互いの選択肢から既に消え失せている。

1回でも多く相手に攻撃する。

一回斬られたら二回殴る、三回殴られたら四回殴る。

戦術も駆け引きも一切入り込む余地の無い、単純かつ豪快な闘いが繰り広げられる。

 

そして、立っていたのは……

 

 

 

 

 

 

 

《古典》

『二年Aクラス 大門 徹 125点

VS

二年Aクラス 橘 飛鳥 戦死』

 

 

徹「一つ聞くけど、どうして真っ向勝負なんか仕掛けたんだい?こういう展開攻撃と防御両方とも僕より劣っている君が、手数を対等にしてしまったら圧倒的に不利になることぐらいわかっていただろう?」

飛鳥「悲しいことにそれ以外の作戦が思いつくほど、私のオツムは良くないのよ」

 

それにね、と飛鳥は言葉を続ける。

 

飛鳥「不利な条件で闘うことには慣れているのよ」

徹「……君らしいね。じゃあ僕はそろそろ行くよ」

 

そう言って徹は和真の援護に向かっていった。

 

飛鳥「負けちゃったかぁ……まあ悔いはないな。やっぱり私はチマチマ闘うより、真っ直ぐぶつかっていく方が性にあってるな」

 

 

 

 

 

 

 

 

【柊 和真VS佐伯 梓】

 

《古典》

『二年Fクラス 柊 和真 88点

VS

三年Aクラス 佐伯 梓 276点』

 

こちらの闘いは一方的な展開となっていた。

点差は互角、戦術も互角、ならば二人の差は召喚獣の操作技術によって決まってしまうのだ。

和真の操作技術も三年に匹敵するレベルなのだが言ってしまえばその程度、召喚獣を手足のように自在に扱える佐伯には到底及ばないのである。

だが、ここまで一方的な試合となったのにはもうひとつ理由がある。

 

佐伯「随分守りに入るなぁ……あんた、守るのは嫌いやなかったか?」

和真「……確かに嫌いだよ。嫌いも嫌い、大っっっ嫌いさ。

だがな、勝敗に関わるならそれぐらい我慢してやるよ。勝つことを諦めてまで貫き通してぇものじゃねぇんだよ」

 

そう、ここまで和真は守りと回避一辺倒で、一切攻めていないのだ。和真を知る人間ならば目を疑う光景だが、あの和真がそうしなければならないほど、佐伯の実力は圧倒的なのである。

 

佐伯「ふーん、まあええわ……

 

 

 

どうやらあんたが待ってた味方も来たみたいやしな」

 

 

《古典》

『二年Fクラス 柊 和真 88点

二年Aクラス 大門 徹 125点

VS

三年Aクラス 佐伯 梓 276点』

 

 

和真「来ないんじゃねぇかとヒヤヒヤしたぜ、徹」

徹「そいつは取り越し苦労だね。君こそ随分やられているじゃないか」

和真「死んでなきゃ安いだろ?」

徹「それもそうか」

佐伯「で? 二人がかりでウチに挑むのがあんたらの作戦か?」

和真「おお、よく気づいたな」

佐伯「そもそも隠す気無かったやろあんた。

あんな闘い方、時間稼ぎやってまるわかりやわ。まあそれはええけど、」

 

そう言って佐伯は二人を見据える。

 

佐伯「二人がかりやったらウチに勝てると思っとんのか?

随分と甘く見られたもんやなぁ?」

 

そう言って二人に殺気をぶつける佐伯。

高校柔道の頂点に君臨している佐伯の重圧に、しかし二人は一切臆した様子はなかった。

 

和真「勿論思ってるよ!いくぞ徹!」

徹「しくじんなよ和真!」

「「うぉおおおおお!」」

 

咆哮と共に二人の召喚獣は〈佐伯〉に向かって駆け出す。

 

佐伯(甘いなぁ……大勢を同時に相手取ることなんか去年散々やったわ)

 

冷静にカウンターの構えをとる〈佐伯〉。

しかし…

 

和真「おらぁあああああ!」

 

相手に間合いに入る直前、〈和真〉は〈徹〉を片手で掴み、〈佐伯〉に向かってぶん投げた。

 

佐伯「なっ!? ……せやけど甘いわ!」

 

一瞬虚を突かれるも、飛んできた〈徹〉にトンファーでカウンターを入れる。

だが……

 

ガキィィィンッ

 

佐伯「硬っ!?……しもたぁ!!」

 

〈徹〉あらかじめ防御体勢に入っており、〈佐伯〉のトンファーは弾かれてしまう。そしてバランスを崩した〈佐伯〉の目の前には、

 

 

 

槍を構え、攻撃体勢の〈和真〉が鎮座していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

~試合前~

 

和真「今の俺じゃあ、佐伯先輩に勝つのはおそらく無理だ。だから勝つためには二人がかりで挑むしかねぇ」

徹「なら、橘はどうするんだい?」

和真「何言ってるんだ? お前は飛鳥を撃破してから俺と合流するんだよ」

徹「あぁ……やっぱりそうか……まあいい。それで、具体的な作戦は」

和真「作戦はいたってシンプルだ。二人で同時に特攻して、相手の間合いに入る前にお前の召喚獣を投げ飛ばすから、お前は全力でガードしてろ」

徹「なるほど……僕の召喚獣の防御体勢なら、佐伯先輩の攻撃だろうと弾き返せるだろうからね」

和真「そうだ。そうして攻撃を弾かれバランスを崩している先輩の召喚獣に、全身全霊フルパワーの突きを喰らわせる。それでフィニッシュだ」

 

 

 

 

 

 

 

和真「これで……終わりだぁぁぁぁぁ!!!」

 

〈和真〉の全力の突きが〈佐伯〉に襲いかかる。いかに佐伯が操作技術に秀でていても、バランスを崩している状態では回避することはできない。 かといってトンファーで防御したところで焼け石に水、和真の槍はそのチャチかガードもろとも敵を貫くだろう。

 

佐伯(…盾(徹)でウチの攻撃を防御し、その隙に矛(和真)がウチを貫く。見事なコンビネーションや……完敗やな、くやしいけど………

 

 

……せやけどなぁ…………ウチはただでは負けへん! 三年の先輩として、悪あがきぐらいはさせてもらうで!) 「おりゃぁあああ!!」

和真「……マジかよ」

 

最後の足掻きとして、〈佐伯〉ら弾かれていないトンファーを〈和真〉に投げつける。〈和真〉は現在進行形で攻撃中なので、その攻撃をかわせるはずもなく……

 

 

《古典》

『二年Fクラス 柊 和真 戦死

二年Aクラス 大門 徹 75点

VS

三年Aクラス 佐伯 梓 戦死』

 

 

両者の召喚獣はお互いの攻撃をまともに喰らい、共に力尽きるように倒れた。

 

『見事なコンビネーションで強敵を打ち倒した柊・大門ペアの勝利!』

 

ワァアアアアアアアアアアアアアアアア!

 

審判の先生が勝利チームの勝鬨を上げると、特設ステージを観客席からの拍手喝采が包み込んだ。

 

 

 

佐伯「ふぅ……まさかウチが負けるとはなぁ、大したもんやであんたら」

和真「試合に勝って勝負に負けた感じだけどな。あそこからイーブンに持っていくか? 普通」

佐伯「ま、ただでは負けんのは癪やからな。というかあんた、ウチに対する話し方、以前までと大分変わったな」

和真「前みてぇに敬語に戻そうか?」

佐伯「いや、そのままでええわ。ついでに名前呼びでええよ、ウチもこれから和真って呼ぶし」

和真「そっか。それじゃ改めてよろしくな、梓先輩」

佐伯「こっちこそよろしゅうな、和真。あ、そっちの二人もタメ口でええで?」

徹「僕は遠慮します」

飛鳥「部の皆に示しがつきませんので辞退させてもらいます」

佐伯「さよか………まあええわ。あんたらこの先もがんばりや」

 

そう言って佐伯は一足先に特設ステージを後にした。

 

飛鳥「それじゃあ私達もいきましょうか」

和真「クラスの宣伝には十分なったな」

徹「ということは……この先もあんな目にあうのか……」

 

そして三人も校舎の方に歩いていった。




VS佐伯・橘戦、決着!
まさかここまで長くなるとは……
佐伯先輩改め梓先輩はこの先も和真の前に立ちふさがる予定です。現状ではタイマンじゃどうあがいても勝てなさそうですが……

-佐伯 梓
・性質……機動重視型
・総合科目……4300点前後 (学年2位)
・400点以上……現代文・数学・英語
・ステータス
(総合科目)
攻撃力……B+
機動力……A+
防御力……B+
・腕輪……まだ不明、青銅の腕輪『妨害』

召喚獣のスペック、戦術、操作技術全てが一級品である。
和真を真っ向から打ち倒せるごく少数の生徒の一人。
また、能力を封じる効果のある特殊な腕輪を所持している為、下手したら蒼介すら倒しかねない。
まさに生徒最強候補。







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