バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

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【バカテスト・科学】
以下の文章の( )にはいる正しい物質を答えなさい

ハーバー法と呼ばれる方法にてアンモニアを生成する場合、用いられる材料は塩化アンモニウムと( )である

姫路 瑞希の答え
「水酸化カルシウム」

蒼介「正解だ。アンモニアを生成するハーバー法は工業的にも重要な内容なので、確実に覚えておくように」

土屋 康太の答え
「塩化吸収材」

徹「勝手に便利な物質を作らないように」

吉井明久の答え
「アンモニア」

蒼介「それは反則だ」




赤き世界

明久「うん。いい具合に繁盛してきたね」

和真「それは結構だが、俺の負担大き過ぎね?なんで女性客ほとんど俺担当?」

明久「仕方ないじゃないか、お客さんの要望なんだし」

ムッツリーニ「…………殺したいほど妬ましい……が、それどころではないので今回は不問にする」

和真「お前厨房責任者だろ、サボってんじゃねぇよ」

雄二「お前もだバカ」

 

着替えた後、宣伝の為に和真達は校舎内を歩き回った(途中和真がチャイナドレスを着ていないことにショックを受けている玉野がいたが和真は無視した)。

そうすると徐々にお客さんは増えていき、今のところ順調と言えるだろう。

 

「君。注文をしてもいいかな?」

 

近くにいた明久に声をかけたのは、先程もこの店に着ていた竹原教頭であった。

 

明久「あ。はい、どうぞ」

竹原「本格ウーロン茶と、胡麻団子を」

明久「かしこまりました。本格ウーロン茶と胡麻団子ですね?ありがとうございます。後ほどお待ちしますので、少々お待ちください」

竹原「それと聞きたいことがあるんだが、いいかね?」

 

厨房に向かおうとした明久を教頭が呼び止める。

 

明久「はい。なんでしょうか」

竹原「このクラスに吉井 明久という生徒がいると聞いたのだが、どの子かな?」

明久「え?吉井 明久は僕ですけど……」

竹原「ああ、そうかい。君が

 

吉井君(笑)か」

明久「教頭先生。人の名前に(笑)はおかしいかと思います」

竹原「ああ、それはすまない。だが、私はどうしても教え子である君のことを吉井君(馬)とは呼べなくてね」

明久「あの、僕は職員室でなんて呼ばれてるんですか……?」

 

確実に『馬鹿の吉井』とかであろう。まあ日頃の行いが行いなのでフォローは不可能なのだが。

 

美波「アキ、厨房の土屋からの伝言。茶葉がなくなったから持ってきて欲しい、だって」

明久「ん、わかったよ。先生、ちょっと行ってきてもいいですか?」

竹原「構わんよ。特に用があったわけではないのでね」

明久「? そうだったんですか?」(それなら何で僕のことを尋ねたんだろう?教頭先生とは特になにもつながりがないはずだけどなぁ)

美波「アキ、土屋が急いで欲しいって言ってたわよ?」

明久「はーい」

 

とりあえず用事を済ませるのが先だと思い、明久は教室を出ていった。

 

和真(……さてと)「おーい雄二!」

雄二「どうした和真?」

和真「野暮用ができたんで接客は任せた」

雄二「は!?いやちょ待っ―」

 

近くにいた雄二に仕事を押し付けて和真は一目散に教室を出ていった。

 

 

 

 

 

 

明久は茶葉のストックの置いてある旧校舎の空き教室に来ていた。

 

明久(えっと、いくつぐらい持っていけばいいかな?きちんと数を聞いておけばよかったなぁ)

「おい」

明久「うん?」

 

空き教室の中で明久が熟考していると突然後ろから声をかけられた。

声の主は明久と同年代くらいのいかにもチンピラといった三人組。

 

明久「ああ、ここは部外者立ち入り禁止だから出て行ってもらえます?」

チンピラA「そうはいかねぇ。吉井 明久に用があるんでな」

明久「へ?僕に何か?」

チンピラA「お前に恨みはねぇけど、ちょっとおとなしくしててくれや!」

明久「えぇ!?」

 

そう言うやいなや、チンピラの一人が明久に殴りかかろうとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

和真「はい、ざ~んね~ん♪」

チンピラA「ゴファァッ!」

 

いつの間にかいた和真が殴りかかろうとしたチンピラの足首を掴んだ。

チンピラは全速力で前に行こうとしたエネルギーを処理することができず、顔面から床にダイブした。

 

チンピラB「な、なんだテメェ!」

チンピラC「やんのかコルァ!」

 

残りの二人が和真に殴りかかるも和真は後ろに下がってそれを避ける。

そして二人の頭をそれぞれ片手で掴み―

 

ゴッチィィィン!

 

「「いだぁぁぁ!?」」

 

―シンバルのように叩きつけた。

 

和真「明久ァ!そこで倒れてる奴にこいつを押し込めぇ!」

 

そう言って明久にオレンジ色のスナック菓子を渡す。

明久は言われた通りチンピラAの口にそれを押し込み、ついでに咀嚼させる。和真も残りのチンピラ共に同じスナックを食わせる。すると…

 

 

「「「$=@%辛&€&$ァァァァァ!!!&^&%=水’&$&=&%ゥゥゥゥゥ!」」」

 

文字にできないような悲鳴を上げて逃げて行った。

 

和真「ヒャハハハハハ!最高のショーじゃねぇか!」

 

そんな哀れな不良達を和真は爆笑しながら見送った。

チンピラとは言え、少し同情を誘う光景である。

 

明久「……ねぇ和真、何食べさせたの?」

和真「激辛スナック『辛世界(シンセカイ)』だけど?」

 

激辛スナック『辛世界』とは、寒いネーミングと桁外れの辛さが一部の辛党に人気のスナック菓子である。

常人が口にすると、あのチンピラ達のように地獄の苦しみを味わうことになる、恐るべき一品だ。

 

明久「なんでそんなもの持ってるの?」

和真「マイブームなんだよ、罰ゲームとかであれを誰かに食わせるの」

 

あまりにもえげつない内容をさらりと言うあたり、どうやら和真は基本的にサディストのようだ。

 

明久「ところで、どうしてここに」

和真「…ん~、お前が危ない気がしてな。まぁいつもの勘だ」

明久(…………あれ?なんだか違和感が…)

和真「とりあえず急いで戻るぞ。雄二に仕事押し付けてるから」

明久「う、うんわかった」

 

そうして和真と明久は教室に戻っていった。

 

明久(和真にしては……歯切れの悪い返事だったなぁ)

 

~そんなこんなで二時間が過ぎ~

 

雄二「明久。そろそろ四回戦だ」

明久「え?もうそんな時間?」

 

時計を確認すると、現在午後二時過ぎである。

 

美波「あれ?アキ達もそろそろなの?」

姫路「そうなんですか?実は私たちもそろそろ出番なんですよ~」

美波「じゃあ瑞希、そろそろ着替えよっか」

雄二「いや、着替えなくていい」

「「え?」」

雄二「一応宣伝の為だ。そのまま召喚大会に出てくれ」

 

四回戦からは一般公開が始まる。折角人が集まるのだから宣伝しておくに越したことはないだろう。

 

美波「こ、これを着たまま出場しろって言うの……?」

姫路「流石に恥ずかしいです……」

 

おそらく一般客だけでなくメディアもいるから、チャイナドレスを着て動き回るのは流石に恥ずかしいだろう。

 

明久「二人とも、お願いだ」

 

姫路の転校がかかっているため、いつになく真剣な表情で頭を下げる明久。

 

雄二「明久……。お前は本当に―チャイナが好きなんだな……」

明久(それも否定しない)

 

そこは形だけでもいいから否定しておけ。

 

姫路「もしかして吉井君、私の事情を知って―」

美波「仕方ないわね。クラスの設備の為だし、協力してあげるわ。ね、瑞希?」

 

美波が姫路の言葉を遮って色よい返事をする。

 

姫路「あ。は、はいっ! これくらいお安い御用です!」

明久(それにしても良いことを聞いた。お安い御用なら、今後もちょくちょくお願いしてみよう)

 

どうやら先ほどまでの真剣な明久は殉職してしまったらしい。

 

葉月「お兄ちゃん、葉月を置いてどこか行っちゃうの?」

 

寂しそうにズボンの裾を握る葉月。

 

雄二「チビッ子。バカなお兄ちゃんは今から大切な用事があるんだ。だからおとなしく待ってないとダメだ」

 

そう言って葉月の頭をグシグシと撫でる雄二。

 

明久(コイツ、子どもの扱いに慣れてるな。ここはうまく説得してくれそうだ)

葉月「う~。でも……」

雄二「その代わり、良い子にしていたら―」

 

不満げに頬を膨らます葉月を元気付けるように、雄二は小さく微笑んで、

 

雄二「バカなお兄ちゃんが大人のデートを教えてくれるからな」

 

核弾頭クラスの爆弾を投下した。

 

葉月「葉月お手伝いしてくるですっ!」

明久「ち、違うんだよ葉月ちゃん!僕には君が期待するような財力はないんだ!ねぇ、聞いてる!?」

 

しかし既に葉月の姿は厨房に消えてしまった。

そして明久が危機感を抱くべき物は経済などというチャチなものではなく―

 

美波「アキ、ちょっと校舎裏まで来て?」

 

―自分の命そのものである。

 

姫路「美波ちゃん、ちょっと待ってください」 

 

しかしそこに姫路が仲裁に入る。

 

姫路「次の対戦相手は吉井君たちのようですから。召喚獣でお仕置きした方が遠慮なくできますよ?」 

 

そしてより合理的な殺戮方法を提案した。

もしかしたら姫路の父親が彼女を転校させても、もう手遅れかもしれない。

 

明久「ちょっと待って!僕の召喚獣はダメージのフィードバックつきなんだよ!?姫路さんの召喚獣に攻撃されたら僕自身も酷い目に―」

雄二「フン、望むところだ」

明久「僕は全然望んでいない!」

美波「上等よ。早く会場に向かいましょうか。アキがどんな声で啼くのか楽しみだわ」

雄二「いいだろう。そこまで言うなら、明久にどこまで大きな悲鳴をあげさせられるのか、じっくりと見せてもらおうか」

 

勝手に明久の命を生け贄にして、バチバチと火花を散らす雄二、美波、姫路。痛めつけられる予定の本人だけが茅の外である。

 

明久「和真ぁぁぁ!助けてぇぇぇ!」

和真「痛いのが嫌なら、殺られる前に殺っちまえばいいじゃねぇか」

明久「それができれば苦労はしないよ!」

 

『降りかかる火の粉は薙ぎ払う』のが和真のスタンスであるのだが、明久の点数にそれを求めるのは酷だろう。

 

和真「さて、じゃあ俺も行くか」

雄二「? お前はまだ次の試合までまだ時間があるだろう?」

和真「次の対戦相手は別格なんでね、試合前に作戦を立てておきてぇんだよ」

そう聞くと雄二はトーナメント表を取り出して和真の対戦相手を探す。

雄二「……なるほどな、」

 

 

『二年Fクラス 柊 和真

二年Aクラス 大門 徹

VS

三年Aクラス 佐伯 梓

二年Aクラス 橘 飛鳥』

 

 

雄二「よりによって前回王者かよ……災難だな」

和真「災難?バカ言え。むしろこの大会で一番闘いたかった相手だぜ、この最強の女子コンビとはよぉ」

 

そう言って和真は心底楽しそうに笑う。

 

雄二「なら絶対に勝ってくれよ。こいつらに決勝まで勝ち進まれたら、はっきり言って俺達の点数じゃどうあがいても勝ち目は無いからな」

和真「言われるまでもねぇ。俺は、俺達『アクティブ』は負け戦はしねぇからな」

 

 

 

 

 

竹原「チッ……失敗したか。やはりクズはクズだな、三人程度じゃあてにならん」

?「……では、待機させている彼らを動かすのですか?」

竹原「いや、それはあのバカどもが決勝まで勝ち残り、常村と夏川が途中で敗退したときの最終手段だ。あれだけの人数を動かせば足がつく可能性があるのでな、私もできれば使いたくない手段だ」

?「……そうですね」

 




『赤き世界』なんて大層なサブタイトルつけておいて、蓋明けたら激辛スナック菓子でした。
恐れ入ったかコラ。

次回はようやく闘う機会が回ってきた飛鳥さんと。昨年の召喚大会のチャンピオンの佐伯さんが相手です(昨年も行われていたというのは勿論オリ設定です。ちなみにタッグ戦ではありません)
四回戦を加えると闘った敵が70%以上Aクラストップクラスの成績と、和真君以外からすると絶望的なまでにくじ運が悪い……

既に投稿してある話の大規模な修正を行います。
時間が有り余っている時間セレブの方はチェックしてみてください。

では。

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