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及ばざるは( )
柊 和真・霧島翔子の答え
(過ぎたるに勝れり)
蒼介「正解だ。これは徳川家康の遺訓で、物事はやりすぎたものを元に戻して修復するのは困難であり、まだ不十分であった方がこれから努力するなど手を施すことができるので始末が良い、という意味だ」
木下 秀吉の答え
(過ぎたるが如し)
源太「問題作成者の期待通りの引っ掛かりだな。それは『過ぎたるは及ばざるが如し』の間違いだろ(まあ俺様も同じ間違いだったんだが……)」
吉井 明久の答え
(カロリー)
蒼介「一応言っておくがテストは食生活の愚痴を書くことでは無いぞ」
島田 美波の答え
(……ウチの胸)
源太「だからってコンプレックスをカミングアウトすることでもねぇよ」
大門 徹の答え
(……僕の身長)
蒼介「大門、お前もか」
金田一「よぉ柊、この間の練習試合以来だな」
和真「あれからサッカー部の調子はどうすか?金田一先輩」
金田一「そりゃ毎日くたばるまで猛練習だよ。近々リターンマッチ申し込むから首洗って待ってろよ」
和真「望むところっす」
金田一 真之介。
サッカー部主将かつ第三学年三位の優等生。
黒髪のスポーツ刈りといった、いかにもさわやか系スポーツマン風の青年である。
以前『アクティブ』に歴史的大敗を喫するという屈辱を味あわされているが、どうやら本人は『アクティブ』を疎んでいるわけではないようだ。
常夏コンビに彼の爪の垢を煎じて飲ましてやりたい。
金田一「ま、サッカーの前に召喚獣で勝たせてもらうがな」
和真「……そいつはできねぇ相談ですなぁ」
金田一が挑発的に笑い、和真も笑みを浮かべている。闘いは勝負の前に既に始まっているようだ。
小暮「大門君が相手ですか、これは気を引き締めなければなりませんわ」
大門「できれば舐めきってくれているほうがいいんですけどね、足を掬い易いんで」
小暮 葵。茶道部及び新体操部に所属しており、三年学年五位のこれまた優等生。
黒髪を結い上げた切れ長の目の美女であり、第三学年のマドンナ的存在だ。
この女子生徒が金田一と組んで召喚大会に出場していることをFクラス生徒が知れば、確実に暴動が起きるだろう。
ちなみにこの二人の仲は悪くないが、付き合っているわけではない。お互い受験前の記念に召喚大会にでも出ようと考えていたところ、利害が一致しただけである。
「では、召喚して下さい」
立会人を務める福原先生が召喚を促す。
『試獣召喚(サモン)!』
お馴染みの魔方陣からそれぞれの召喚獣が出現する。
金田一の召喚獣は騎士鎧にツヴァイハンダー(両手剣)、小暮の召喚獣は着物に鉄扇だ。
《現代社会》
『Fクラス 柊 和真 400点
Aクラス 大門 徹 308点
VS
Aクラス 小暮 葵 336点
Aクラス 金田一 真之介 389点』
お互いの点数はほぼ互角である。
和真「三年生は俺達よりテストムズいのに、流石ですね、二人とも」
金田一「これでも学年三位と五位だぜ?」
和真「三年生にもピンキリあるんすね」
常夏コンビを脳裏に浮かべながら和真は呟く。
和真「それじゃあ……始めましょうか!」
そう言った直後、和真と徹はそれぞれの召喚獣と共に左右に移動した。
金田一「むっ!……小暮、大門を頼んだ!」
小暮「承知しましたわ」
それを追うように二人も左右に離れる。
【大門 徹VS小暮 葵】
小暮「まだまだですわね」
徹「くっ……!やはり操作にも慣れているか」
〈徹〉はガントレットで果敢に攻めるも、〈小暮〉は素早い動きでそれをかわし、隙を突いては反撃をしてダメージを重ねていく。
〈小暮〉の装備は装甲が薄い分機動力に優れているので、ガッチガチの重戦車型である〈徹〉では相性はあまり良くないのだ。
小暮「隙あり!」
大振りの隙を突いて〈小暮〉は鉄扇を浴びせる。甲冑ごしなのでダメージは大きくないが、両者の点数差はどんどん開いていく。
《現代社会》
『Aクラス 大門 徹 173点
VS
Aクラス 小暮 葵 336点』
徹(このままじゃジリ貧になるな…………それなら!)
先ほどまでがむしゃらに攻撃していた〈徹〉が、突然動きの一切を放棄した。
小暮(ふむ、なるほど……私の攻撃を誘い、カウンターで反撃しようとしているのですね。大門君の召喚獣は防御に秀でているので、確かにそれは良い手段ですわ………………しかし残念ながら、)
おもむろに〈小暮〉は鉄扇を折り畳み、
高速で〈徹〉の、唯一鉄鎧に覆われていない顔を正確に突き刺した。
徹「……なっ!?」
小暮(そう闘ってくる相手の対処法は心得てますわ)
三年生が二年生より上回っていることはなにも召喚獣の操作技術だけではない。
一年長くこの学園にいる彼等は、二年生に比べてより多くの試召戦争を経験している。
その中で様々な装備、あらゆる武器、多種多様の戦術を駆使する敵と闘って来たのだ。その戦闘経験は二年生に対して大きなアドバンテージとなる。
つまり、キャリアが違うのだ。徹の策は小暮にとっては飽きるほど見てきたものであり、それの対策は既に体に染み付いている。
生身の部分に直撃を喰らい、のたうち回る〈徹〉。そんな隙を小暮が見逃す筈もなく、追撃を加えて止めを差した。
《現代社会》
『Aクラス 大門 徹 戦死
VS
Aクラス 小暮 葵 336点 』
小暮「それでは、失礼いたしますわ」
呆然と立ち尽くす徹に優雅に一礼した後、小暮は金田一を援護しに行った。
徹(1点も削れなかった……惨敗だ、チクショウ……)
【柊 和真VS金田一 真之介 】
小暮が徹を手玉にとっている頃、こちらの二人はお互い様子見と言わんばかりに鍔迫り合いをしていた。
金田一「オメーら開始早々二手に分かれやがって。これじゃタッグマッチの意味ないだろうが」
和真「そっちは三年ですからねぇ、コンビネーションじゃ勝ち目ないで……しょっ!」
〈和真〉は槍を構え直し、すぐさま横に薙ぐ。〈金田一〉はバックステップでそれをあっさりとかわし、すぐさま唐竹割りで反撃する。しかし〈和真〉は一瞬で体勢を直しそれを交わす。
和真「それにな、基本的に俺ぁ一人で闘う方が得意でねぇ!」
金田一「まぁそんなごっつい武器でそんな闘い方ならそうだろうな」
召喚獣の操作技術はほぼ互角、一進一退の攻防である。
《現代社会》
『Fクラス 柊 和真 326点
VS
Aクラス 金田一 真之介 303点』
金田一「ところで、なんでお前は腕輪能力使わないんだ?」
その科目で400点以上(総合科目で4000点以上)の点数の召喚獣には特殊能力を持った『金の腕輪』が装備される。
その力はどれも極めて強力であり、400点と399点の間には絶対的な壁が存在する。
和真の腕輪能力は点数消費の激しさと引き換えに数ある腕輪の中でも最上級の殲滅力を備えている。もし開戦と同時にそれを使っていればその時点で勝負が決まっていたかもしれない。
それに対する和真の返答はこうだ。
和真「せっかくの召喚大会だ、こんなつまらねぇもん使ったらもったいないじゃないっすか」
金田一「それはそれは…いかにも、オメーらしい理由だな」
クラスの命運がかかった試召戦争とは違って、この召喚大会は趣味で参加したものである。
当然優勝商品などに興味は無く、クラスの宣伝も投書は姫路の事情を知らなかったので後付けである。
和真の目的は、ただ闘うことだけ。
大会に参加した強者達と闘い、ねじ伏せる。
そうすることによって和真の心は満たされる。
腕輪など使ってしまったら、和真がこの大会に参加した意味が無いのである。
和真「じゃあそろそろ……攻めるかぁ!」
和真の召喚獣は槍を構え、高速でダッシュしながら槍を右から左に薙ぐ。
金田一(またそれか……無駄だ!)
先程と同じように〈金田一〉はバックステップでそれをかわす……が、
和真「オラァァァァァァ!」
〈和真〉はさらにもう一歩踏み込み、今度は左から右に槍を薙ぎはらった。
金田一「なにィっ!?」
回避中だったためろくにガードもできず、槍の柄の部分がクリーンヒットし、〈金田一〉は吹っ飛ばされる。
和真は翔子や姫路を差し置いてFクラス最強との呼び声が高い。その理由は大きく分けて三つある。
一つ目は召喚獣のスペックと武器のコンボだ。
和真の槍は召喚獣よりも遥かに大きい。この武器はリーチと破壊力がある代わりにとても重く、普通は突き技専門の武器である。だが和真はその常識にあてはまらない。和真の召喚獣は防御を犠牲にして、学年でも並ぶものがいないほどの膂力を備えている。その圧倒的な膂力と三年生にも引けを取らない操作技術により、普通なら大きく振りかぶらなければならない大振りの攻撃をノーモーションでくり出す、薙ぎ払いを中断し逆の方向に薙ぐ、といった変幻自在の攻撃を可能とする。そして、攻撃と攻撃の間の間隔が短いために相手は攻撃をしずらくなり、それによって致命的な防御力の低さを補っているのだ。
《現代社会》
『Fクラス 柊 和真 326点
VS
Aクラス 金田一 真之介 178点』
鎧ごしの攻撃にもかかわらず〈金田一〉はかなりのダメージを負ったが、和真の攻めはこの程度では終わらない。
和真「まだまだぁっ!」
吹っ飛ばされた相手の召喚獣に超スピードで突っ込む〈和真〉。
金田一「チィッ!あんま見くびってんじゃねぇぞ!」
すぐさま体勢を立て直し、〈金田一〉はツヴァイハンダーで槍を受け止める。この操作技術と判断力は流石三年生といったところだ。
しかし〈和真〉は即座に槍から手を離し、素手で殴りかかった。
金田一「なっ!?」
予想外の攻撃に〈金田一〉がのけぞっている隙に、〈和真〉は槍を拾い追撃を加える。 〈金田一〉はなんとかかわしていくも、時間がたつにつれどんどん追い詰められていく。
《現代社会》
『Fクラス 柊 和真 326点
VS
Aクラス 金田一 真之介 96点』
金田一(くっ、この読めない攻め方、まるで佐伯と闘ってるみたいだぜ……)
そして二つはそのトリッキーな戦術。
先程も述べたように、三年生は召喚獣の戦闘経験が豊富であるため、相手がどう攻めてこようが大抵の攻め方に対する対処法は熟知している。
しかし和真と闘う場合そんな戦闘マニュアルなどまるで役に立たない。闘い中に獲物から手を離すような相手との戦闘経験などなかなかないだろう。
言うまでもなく和真は天才と言える人間である。
彼の柔軟な思考が相手が予測できない型にはまらないトリッキーな戦法を可能にしているのだ。
金田一(まずい……このままじゃ……)
小暮「金田一君、援護しますわ!」
駆けつけた〈小暮〉が後ろから〈和真〉を攻撃しようとするも、そんなことを和真が許すハズもない。
和真「オラァァァッ!」
即座に後ろを向き、〈和真〉は突きを食らわせようとする。
小暮(っ!?回避は間に合わない!ここはガード……)
その奇襲に冷静に対処し、〈小暮〉は鉄扇でガードしようとする。
だが、
《現代社会》
『Fクラス 柊 和真 326点
VS
Aクラス 小暮 葵 戦死』
小暮「……っ!?」
〈和真〉の破壊力を見誤ったのが運の尽き、巨大な槍は鉄扇ごと〈小暮〉を貫いた。
三つの理由は説明するまでもない。
そのパワーからくり出される圧倒的な攻撃力、腕輪能力にも匹敵しかねない突きである。
金田一(小暮、お前の犠牲は無駄にはしねぇ!)
背を向けている〈和真〉に〈金田一〉は斬りかかる。
和真「甘ぇよ!」
だが〈和真〉は背を向けたまま〈小暮〉が刺さったままの槍を引き戻し、
〈小暮〉が消滅する前に体を引きちぎり、〈金田一〉に向けて投げつけた。
金田一「うぉ!?」
〈金田一〉は〈小暮〉の上半身が肩に当たったことで、そのままバランスを崩して崩して倒れ込んだ。
その隙に〈和真〉は再び必殺の突きを繰りだし、〈金田一〉はガードも回避もできずに槍の餌食になった。
《現代社会》
『Fクラス 柊 和真 326点
Aクラス 大門 徹 戦死
VS
Aクラス 小暮 葵 戦死
Aクラス 金田一 真之介 戦死』
福原「勝者、柊・大門ペア」
小暮「私達の完敗ですわ」
金田一「まさか、戦死した小暮の召喚獣を武器にするとわねぇ……」
和真「戦場にあるものは全て武器っつうスタンスなんで」
一回戦で相棒を武器にした人が言うと説得力がある。
金田一「ま、俺等に勝ったんだ。……次の試合、引き締めて行けよ」
小暮「……梓は私達よりもずっと手強いですわよ」
和真「……言われなくてもわかってますよ」
軽く言葉を交わした後、四人は特設ステージから解散した。
徹「……和真、すまない」
和真「んあ?何が?」
教室へ戻る途中、藪から棒に徹が謝罪する。
徹「全く手も足もでなかったよ……こんなんじゃあパートナー失格だな……」
1ヶ月前、試召戦争で刃を交えた二人。
片方は一切ダメージを与えられず、惨敗。
もう片方は二人を相手取って勝利した。
徹は自分と和真の差が大きく広がってしまったを痛感していているようだ。
和真「なんだそんなことか、あんま気にすんなよ」
徹「気にしないわけがないだろう!僕は―」
和真「あのな、」
徹の言葉を遮って和真は言葉を続ける。
和真「負けて悔しいなら次勝てよ。一回の失敗に悔いが残ってんなら、さっさとそれを精算するよう努力しろ。お前は、『アクティブ』の一員だろ?」
そう言い残し、和真はFクラス教室に向けて去っていった。
徹「…………ふっ、君は相変わらずだね……」
徹のその呟きを聞いた人は誰もいなかった。
というわけで、過去最長のバトルシーンでした。
徹君が惨敗した一番の理由は、致命的に相性が悪かったからです。そこまで実力に差はありません。
今回は半オリジナルキャラの金田一君で。
金田一 真之介
・性質……攻撃特化&防御軽視型
・総合科目……3900点前後 (学年3位)
・400点以上……古典・英語
・ステータス
(総合科目)
攻撃力……S
機動力……B
防御力……C+
・腕輪……まだ不明
和真とほぼ同等の点数を誇る第三学年の主力。
しかし、首席及び次席とは結構差があるらしい。