バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

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【前書きコーナー】

蒼介「とりあえず今回は新コーナーを発表する」

源太「そういや前回まで細々と続けていたあらすじコーナーをテメェが強引に打ち切ったんだったな……」

蒼介「次回からはバカテストをこのスペースでやっていく」

源太「そりゃまた無難なチョイスだな」

蒼介「毎回載せるとなると、オリジナルの問題も作らざるを得ない分すごく面倒だから、ギリギリまで悩んだんだがな」

源太「そういうのは黙っとこうぜ……」


営業妨害

和真「なにやってんだよお前ら……さっさと教室に戻るぞ」

 

特設ステージで殴りあっている明久と雄二を呆れるような目で見ながら声をかけた。

 

雄二「後にしろ!今日という今日はこのバカに上下関係っつうもんをキッチリ叩きこんでやらなきゃならねぇんだよ!」

明久「それはこっちの台詞だよ!雄二みたいなバカが僕と対等だなんて片腹痛いよ!」

和真「どっちもバカだろ……チームワークの欠片も無ぇなお前ら」

 

皆さん御覧ください。呆れるように溜め息を吐きつつチームワークのなんたるかを説いているこの人こそが、前回相棒を無許可で武器にして散々やりたい放題だった柊 和真君です。

 

秀吉「お主ら、殴り合いなぞしておらんで、急いで教室に来てくれんかの?」

 

明久達が不毛な争いをしていると、特設ステージに秀吉がやってきた。少し息が弾んでいるところを見ると、急いでいるみたいだ。

 

明久「あれ?喫茶店で何かあったの?」

秀吉「うむ。少々面倒な客がおっての。すまぬが話は歩きながらで頼む」

明久「あ、うん。了解」

 

そう言って急ぎ足で教室に向かう四人。

 

雄二「……営業妨害か?」

 

歩いている雄二が学園長のところに行ったときと同じ鋭い目つきになる。

 

明久「あはは、まさか。学園祭の出店程度で営業妨害なんて出てこないんじゃない?そんな真似をしたところで何のメリットもないと思うよ」

秀吉「いや、雄二の言ったとおりなんじゃ」

雄二「そうか。相手はどこのどいつだ?」

和真「アタシだよっ!」

雄二「話の腰を折るな。おまけにネタのチョイスも古いしよ」

秀吉「うちの学校の三年じゃな」

明久「よりによって三年生?まったく、生徒の中では一番大人なくせに」

和真「まぁそういうことなら雄二の出番だな」

明久「そうだね、チンピラにはチンピラを充てるのが一番だよ」

雄二「それが人にものを頼む態度か?……まぁいい。喫茶店がうまくいかなければ、“明久の大好きな”姫路が転校してしまうからな。協力してやる」

 

意地悪な顔である部分を露骨に強調する雄二。

 

明久「べっ!別にそんなことは一言も……!」

雄二「あー。わかったわかった」

明久「その態度は全然わかってない!」

雄二「つーか和真、お前まで俺任せかよ?」

和真「直接殴る蹴るといった荒事はあんま好きじゃねぇからな、手加減しなきゃならねぇから」

雄二「なんだその理由……」

 

和真は素手でレンガくらいは軽くぶち破れる。そんな人間が全力で人を殴ったら間違いなく警察沙汰になるだろう。

常に手加減を強要される喧嘩は、何事も全力でやりたい和真にとってあまり歓迎すべきものではないのだ。

教室近くまで来ると、廊下にまで響く大声が聞こえてきた。

 

秀吉「む。あの連中じゃな」

雄二「じゃ、ちょっくら始末してやるか」

和真「悪鬼羅刹(笑)の力(笑)を見せてやれ(笑)」

雄二「あいつらの前にお前を始末してやろうかコノヤロー。ったく……」

 

首をコキコキと鳴らしながら教室の扉に手をかける雄二。

 

「マジできたねぇ机だな!これで食い物扱っていいのかよ!」

 

雄二が扉を開けるなり罵声が聞こえてくる。

どうやらクロスで覆い隠したみかん箱がお気に召さなかったらしく、クロスを剥がして文句を言っていた。

 

『うわ……確かに酷いな……』

『クロスで誤魔化していたみたいね……』

『学園祭とは言っても、一応食べ物のお店なのに……』

 

その様子を見たお客さんが口々に呟く。飲食店で衛生面での悪評は致命的である。

 

明久「雄二、早くなんとかしないと経営に響くよ」

雄二「そうだな……。秀吉、ちょっと来てくれ」

秀吉「?なんじゃ?」

 

雄二が秀吉に耳打ちをする。

秀吉に頼むという事は、おそらく演劇用の小道具関係だろう。

 

秀吉「了解じゃ。すぐに戻る」

 

そう言い残して、教室内のクラスメイト数名に声をかけて秀吉は足早に去っていった。

 

雄二「明久、和真。お前はあの小悪党どもの特徴をよく覚えとけ」

和真「あいよ」

明久「? よくわかんないけど、了解」

 

営業妨害をしているのは二人。いずれも男だ。

片方は中肉中背の一般的な体格と、小さなモヒカンという非一般的な髪形をしている。もう一方も175センチくらいの普通の体格で丸坊主。

なんとも覚えやすい髪型の二人である。

というか、生徒会の常村と夏川だ。

 

夏川「まったく、責任者はいないのか!このクラスの代表ゴペッ!」

雄二「私が代表の坂本雄二です。何かご不満な点でも御座いましたか?」

 

表面上は模範的な責任者を思わせるような物腰で恭しく頭を下げる雄二。

 

常村「不満も何も、今連れが殴り飛ばされたんだが……」

 

殴られていないソフトモヒカン(常村)が面食らったような表情をしている。

 

雄二「それは私のモットーの『パンチから始まる交渉術』に対する冒涜ですか?」

 

それ自体が冒涜の塊のような交渉術だ。

 

夏川「ふ、ふざけんなよこの野郎……!なにが交渉術ふぎゃあっ!」

雄二「そして『キックでつなぐ交渉術』です。最後には『プロレス技で締める交渉術』が待っていますので」

常村「わ、わかった!こちらはこの夏川を交渉に出そう!俺は何もしないから交渉は不要だぞ!」

夏川「ちょ、ちょっと待てや常村!お前、俺を売ろうと言うのか!?」

 

仲間に売られそうになって慌てる夏川と呼ばれた坊主頭。なんと薄っぺらい友情であろうか。

 

雄二「それで常夏コンビとらや。まだ交渉を続けるのか?」

 

もう雄二の仮面が外れたようだ。やはり慇懃な態度はあんまり継続しないらしい。

 

明久(それにしても、常夏コンビとは巧い命名だ。座布団一枚)

常村「い、いや、もう充分だ。退散させてもらう」

 

雄二から剣呑な雰囲気を感じ取った常村(モヒカン)が撤退を選ぶ。賢明な判断だ。

 

雄二「そうか。それなら―」

 

大きく頷いた後、夏川(ボウズ)の腰を抱え込む雄二。

 

夏川「おいっ!俺はもう何にもしてないよな!?どうしてそんな大技をげぶるぁっ!」

雄二「これにて交渉は終了だ」

 

バックドロップを決めて平然と立ち上がる。

その交渉術は決して後世に残らないだろう。

 

常村「お、覚えてろよっ!」

 

倒れた相棒を抱えて去っていく常村。

これで問題は片付いた……

 

『流石にこれじゃ、食っていく気はしないな』

『折角美味しそうだったんだけどね』

『食ったら腹壊しそうだからなぁ』

 

わけではなかった。

クロスの中を目の当たりにし、とうとう音を立てて一人目が席を立つ。

その人物は竹原教頭だった。

 

和真(! ………………)

 

『店、変えるか』

『そうしようか』

 

一人目が立つと、次々と客が席を立ってしまう。集団心理だ。このままでは悪評は間違いなく学校中に広まるだろう。

 

雄二「失礼しました。こちらの手違いでテーブルの到着が遅れたので、暫定的にこのような物を使ってしまいました。ですが、たった今本物のテーブルが到着しましたのでご安心下さい」

 

そんな客達に頭を下げる雄二。その後ろには秀吉や男子数名が立派なテーブルを運んでいる姿がある。

 

和真(あれは……演劇部で使ってる大道具のテーブルか。こうすりゃ客の前で衛生面を改善した姿を見せられるってことか。雄二も風評とかについてちゃんと考えてたようだな)

 

「あれ?テーブルを入れ替えてるの?」

 

そんな時、明久達の後ろから美波が声をかけてきた。

 

明久「あ、おかえり。美波に姫路さん。一回戦はどうだった?」

姫路「はいっ。なんとかか勝てました」

 

Vサインを決める姫路。普段はそこまで勝負にこだわる性格ではないのだが、事情が事情なだけにらしくもなく勝負にこだわってるようだ。 

 

美波「そんなことより、テーブルを入れ替えちゃっていいの?演劇部にあるテーブルなんて、そこまで多くはないはずでしょう?」

 

美波の指摘ももっともだ。秀吉は二つ程度しかないと言っていたし、かといって残りのテーブルをそのままにというわけにもいかない。

 

雄二「ふぅ。こんなところか」

 

雄二が小さく息を吐く。慣れない丁寧語で疲れたのだろうか。

 

明久「お疲れ、雄二」

和真「ご苦労さん」

美波「何があったかわからないけど、お疲れ様」

姫路「お疲れ様です」

雄二「おう。姫路に島田か。その様子だと勝ったみたいだな」

美波「一応ね。それより、喫茶店は大丈夫なの?」

 

さっきの騒動で客は減ったし、悪評も流れるだろう。喫茶店も姫路の転校を阻止するための要素なので、失敗は許されない。

 

雄二「このまま何も妨害がなければ問題ないな」

 

この先の妨害を危篤しているように雄二は言う。

 

姫路「あの、持ってくるテーブルは足りるんですか?」

雄二「ああ、それか。そうだな……明久、和真、二回戦まであとどのくらい時間がある?」

 

それを聞かれて和真と明久は腕時計を見て確認する。

 

明久「僕らは小一時間ってとこかな」

和真「俺らはそれよりちょっと早い」

雄二「そうか。あまり時間がないな……。ちゃっちゃと行くか。二人ともついて来い」

 

雄二が和真と明久に向かってクイクイ、と指を動かす。

 

美波「ウチらは手伝わなくていいの?」

雄二「お前らは喫茶店でウェイトレスをやってくれ。落ちた評判を取り戻す為に、笑顔で愛想よく、な」

姫路「はいっ!頑張ります」

明久(いいなぁ……。僕も客として入って笑顔を振りまいてもらいたいよ)

 

金はどうするんだ、金は。

 

和真「ところでどうするんだ?まさか無断で借りるわけじゃねぇだろうな?」

雄二「ああそうだ」

 

こともなげに雄二は肯定する。

 

雄二「一旦喫茶店に使っちまえばこっちのもんだ。一般客が使用中のテーブルを回収なんて真似は、いくら教師でもできないだろうからな」

 

雄二が思いつきそうな悪どい策である。

しかし、

 

和真「んなリスキーな手段じゃ無くてもテーブル調達する手段なんざいくらでもあるだろうが……」

雄二「ほう?なにかあてがあるのか?」

和真「まあ見てろって」

 

そう言って和真は三人を引き連れて教室を出ていった。

 

 

 

 

 

 

和真「―というわけで、応接室のテーブルを借りてもいいっすか?布施センセ」

布施「そういう事情でしたら構いませんよ。但し、壊さないでくださいね」

和真「了解しやした~」 

 

布施先生に事情を説明した後、和真達は応接室から机を運び出した。

 

明久「すごいね和真。テーブルを貸してくれるように交渉するなんて」

 

テーブルを運びながら和真に話かける和真。

 

和真「こんなの交渉でもなんでもねぇよ。ただ頼んだだけだっつの」

雄二「いや、俺や明久が頼んでも受理されなかったと思うぞ」

和真「んなもん日頃の行いだろ」

雄二「納得できねぇ……」

 

和真は明久や雄二と一緒にバカをやることも少なくないが、天性の勘の良さから一度たりとも捕まっていない。それどころか実行中はほとんどバレてすらいない。

また、授業や宿題などやるべきことはきちんとやっており、時間があるときには教師の手伝い(主に力仕事)などもやったりしているので、基本的に教師達からの評判は良く、こういった頼みごとはだいたい聞き入れてもらえる。

要するに、和真は雄二や明久に比べて世渡りが非常に上手いのである。

鉄人が「ある意味吉井や坂本よりもやっかいな生徒」と日頃ぼやいているのも無理はない。

 

和真「そろそろ時間だな、じゃあ後は任せたぜ」

明久「もう行くの?」

和真「徹は待つの嫌いなくせに予定時間より早く待機してるだろうし。なんのプライドか知らんが待ったとは絶対に言わねぇけどな、」

 

そう言って和真は二人と別れて特設ステージに向かう。

 

 

 

和真「はぁ……気が進まねぇ……」

 

手にしたトーナメント表を見ながら和真はダルそうにぼやく。好戦的な彼にしては意外な態度である。

 

和真「よりによってこいつらが相手かよ……100%勝てるけど闘いたくねぇ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《二回戦・英語》

『Fクラス 柊 和真

Aクラス 大門

VS

Dクラス 清水 美春

Dクラス 玉野 美紀』

 




というわけで次回はVSDクラス問題児コンビです。
結果はわかりきっているけど重要なのはそこじゃない!

大門 徹
・性質……防御特化&機動度外視型
・総合科目……3650点前後 (学年7位)
・400点以上……数学・物理
・ステータス
(総合科目)
攻撃力……B+
機動力……D
防御力……S
・腕輪……リフレクトアーマー

相手の攻撃を受け止め、攻撃を喰らわせる重戦車型。久保と似たような戦闘スタイルだがこちらは防御を重視している。現実では不可能な闘い方だからせめて召喚獣は……と考えるとなんだかやるせない気持ちになる。

『リフレクトアーマー』
コスト50で召喚獣に防御力が増幅し、攻撃の一部を反射する鎧を装備させる。壊された場合、召喚し直さなければ張り替えることはできない。
全身を覆っているため急所がなく、まさに要塞である。
自分が敵を殴った場合、反作用の力まで反射するため実質攻撃も強化されている。
ほぼ無敵の能力だが弱点はいくつかある。
一つ目は、攻撃は全て反射できるわけではなくしっかりダメージは鎧に蓄積していくのでやられ過ぎると壊れる。
二つ目は、スピードは落ちるためこちらからの攻撃は当てにくい。試召戦争で相手の召喚獣に逃げ回られたら時間がものすごくかかってしまうだろう。


では。

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