バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

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【前書きコーナー】

蒼介「前回のあらすじ……ピッコロの魔貫光殺砲によってラディッツを打倒することに成功するも、その代償として悟空が死んでしまう。さらにピッコロが漏らしたある情報をラディッツの盗聴器ごしに別のサイヤ人、ベジータとナッパに傍受され―」

源太「いや違ぇだろ!なんでドラゴンボール!?」

蒼介「おっと間違えてしまった。中華喫茶『ヨーロピアン』、以上」

源太「適当過ぎるだろオイ!……まあそれはともかく、なんで俺様がここに連れて来られたんだよ?ついでに和真もいねぇし」

蒼介「流石に毎回私達二人で進めるのは読者も飽きるだろうからな。カズマ、五十嵐、大門、飛鳥でローテーションすることになったのだ」

源太「なるほど……ん?ちょっと待て。なんでテメェは代わってねぇんだよ?」

蒼介「私が代わりたくないからだ」

源太「いやおかしいだろ!?そんなわがままが認められるとでも―」

蒼介「何を言っている。このスペースは私が乗っ取ったのだぞ?つまりここは私の所有物であり、私がルールだ」

源太「テメェ本編に影響しねぇからって傍若無人過ぎだろ……」



FULLSWING

帰りのHRも終わって放課後。

 

和真「さーてと、たまには真っ直ぐ家に帰るか」

明久「珍しいね、それじゃあ途中まで一緒に帰ろうよ」

和真「ん、オーケー」

美波「アキ、柊……ちょっといい?」

 

文化祭間近で放課後が暇になった和真は明久を連れて帰ろうとするが、教室を出る前に美波が声をかけてきた。

 

明久「ん?何か用?」

美波「用って言うか、相談なんだけど」

和真「…その様子じゃ割と真面目な話だな」

明久「僕達で良ければ聞かせてもらうけど」

美波「うん。ありがと。多分、アキが言うのが一番だと思うんだけど……その、やっぱり坂本をなんとか学園祭に引っ張り出せないかな?」

 

実行委員を引き受けたものの、Fクラスの喫茶店の成功には雄二の先導が必要だと判断したらしい。

ムキになって自分で何とかしようとしないあたり、そっち方面では意地っ張りではないらしい。

 

和真「無理だと思うぜ?あいつは興味のないことには俺以上にやる気を出さねぇから」

明久「多分クラスの出し物が何に決まったかさえ知らないと思うよ」

美波「でも、アキが頼めばきっと動いてくれるよね?」

 

根拠も何もあったもんじゃないが、何かを期待するような美波の眼差しに二人は不思議に思う。

 

明久「え?別に僕が頼んだからって、アイツの返事は変わらないと思うけど」

和真「あいつ曰く、明久との関係は他人未満宿敵以上らしいからな」

美波「ううん、そんなことない。きっとアキの頼みなら引き受けてくれるはず。だって―」

明久「そりゃ確かに、よくつるんではいるけど、だからと言って別に」

美波「だってアンタたち、愛し合ってるんでしょう?」

和真「ブフォッ!」

明久「もう僕お嫁にいけないっ!それから和真!笑いごとじゃないでしょ!?」

和真「いやいや、笑いごとだろ」ゲラゲラ

 

ツボにはまったのか、腹を抱えて大爆笑する和真。

 

明久「だいたいなんで雄二なんかと!だったら僕は断然秀吉の方がいいよ!」

秀吉「……あ、明久?」

 

偶然近くにいた秀吉の動きが止まる。

 

秀吉「そ、その、お主の気持ちは嬉しいが、そんなことを言われても、ワシらには色々と障害があると思うのじゃ。その、ホラ。年の差とか……」

明久「ひ、秀吉!違うんだ!もの凄い誤解だよ!さっきのはただの言葉のアヤで!それと、僕らの間にある障害は決して年の差じゃないと思う!」

 

一番大きな障害は同性であることだろう。

しかし秀吉は顔を赤らめて俯いてしまっている。

 

明久(ど、どうしよう!秀吉ならいいかも、って思えてきた!)

 

その障害も今にも崩れそうだった。

 

和真「……送信、と」カチカチ

明久「? 和真、何やってるの?」

和真「気にすんな。お前と雄二が愛し合ってるっつうニュースを学園の可能な限りの生徒に送信しただけだから」

明久「なんてことしてくれたんだキサマァァァァァァ!」

 

あまりの衝撃発言にフリーズした後、明久は力の限りシャウトした。

和真基準での可能な限り=ほぼ全ての生徒である。

 

和真「まあそう怒るなよ」

明久「怒るに決まってるじゃないか!!!キサマのせいで僕は…僕は…」

和真「ちょっとしたジョークだから」

明久「………………」

和真「…?」

明久「…………良かった…………本当に良かったよう」

 

安心のあまり泣き出す明久。戦地に赴いた恋人が無事帰還してきたかのような号泣ぶりに、さしもの和真も罪悪感が湧く。

 

和真「……すまん、やり過ぎた。だいたい島田も島田だ、雄二は翔子の所有物なんだからそんなことあるわけねぇだろ」

 

この場に雄二がいたら猛然と抗議してきそうな発言である。

 

美波「だって、同性は別腹ってDクラスの玉野さんが言ってたし」

和真「いやデザートじゃねぇんだからよ……それからあいつの言うことは真に受けるな。色々と終わってるから、あいつの思考回路」

 

いつもよりやけに辛辣な物言いである。

玉野と以前何かあったようだ。

 

美波「それじゃ、坂本は動いてくれないってこと?」

明久「え?あ、うん。そういうことになるかな」

美波「なんとかできないの?このままじゃ喫茶店が失敗に終わるような……」

 

目を伏せ、沈んだ面持ちになる美波。

 

秀吉「ところで、お主らは何の話をしておるのじゃ?随分と深刻な話のようじゃが」

明久「深刻って程じゃないんだけど、喫茶店の経営とクラスの設備の話で-」

美波「アキ、そうじゃないの。本当に深刻なのよ……」

明久「え?どういうこと?」

和真「何かあったのか?お前がそこまで設備の悪さに不満があるとは思えねぇし」

美波「本人には誰にも言わないで欲しいって言われてたんだけど、事情が事情だし……けど、一応秘密の話だからね?」

明久「う、うん。わかった」

和真「あいよ」

 

美波の真剣な顔に明久が少し気圧されてるようだった。

和真はいつも通り気楽に返答しているが。

 

美波「実は、瑞希なんだけど」

明久「姫路さん?姫路さんがどうしたの?」

美波「あの子、転校するかもしれないの」

明久「ほぇ?」

和真「……なるほどな。まあ無理もねぇか」

 

明久(姫路さんが転校?そんな馬鹿な。折角同じクラスになって、いよいよこれからって時に転校しちゃうなんて。まだ楽しい思い出も作ってないし、膝枕も耳掃除もしてもらってない。だいたい、彼女が転校しちゃったらこのクラスはどうなる?清涼剤である彼女がいなくなれば、クラスは荒廃し、暴力と略奪が蔓延る地獄になるだろう。そして全員の髪型が某世紀末救世主伝説の脇役のようにモヒカンになること間違い無しだ。それできっと秀吉と霧島さんを巡って血で血を洗うような抗争が続く日々に―)

 

和真「あ、ダメだ。処理落ちしてらぁ」

美波「このバカ!不測の事態に弱いんだから!」

秀吉「明久、目を覚ますのじゃ!」

 

明久の肩を揺すって起こそうとする秀吉。トリップしていた明久はなんとか覚醒する。

 

明久「秀吉……、モヒカンになった僕でも、好きでいてくれるかい……?」

美波「……どういう処理をしたら、瑞希の転校からこういう反応が得られるのかしら」

秀吉「ある意味、稀有な才能かもしれんのう」

和真「多分、

姫路が転校→女子が減る→クラスが荒れる→クラスの男子が皆北斗の拳のザコキャラみたいになる→北斗のザコキャラと言ったらモヒカン、だろうな」

二人「なんでわかったの(じゃ)!?」

和真「感覚派の人間同士は言葉を交わさずともわかり合えるもんなんだよ。まあこいつはバ感覚派だがな」

明久「そんな派閥になった覚えはないよ……ハッ!美波!姫路さんが転校ってどういうこと?」

 

明久は正気に戻り、詳しい事情を聞こうと美波に詰め寄る。

 

美波「どうもこうも、そのままの意味。このままだと瑞希は転校しちゃうかもしれないの」

明久「このままだと……?」

 

妙な言い回しだ。この言い方だと転校はまだ確定したわけではないようである。

 

秀吉「島田よ。その姫路の転校と、さっきの話が全然繋がらんのじゃが」

美波「そうでもないのよ。瑞季の転校の理由が『Fクラスの環境』なんだから」

和真「身体が弱い姫路なら下手したら病気になりそうなひでぇ設備に、周囲の人間は悪影響しかないバカばっか。娘が大切ならそりゃ転校させるよな」

明久「な、なるほど」

秀吉「言われてみればそうじゃのう…」

 

和真の説明に納得した様子の二人。そういう事情を知っていたとするなら、美波がやけに清涼祭の行事に精力的に取り組んでいるのも頷ける。

 

秀吉「なるほどのう。じゃから喫茶店を成功させ、設備を向上させたいのじゃな」

美波「うん。瑞希も抵抗して『召喚大会で優勝して両親にFクラスを見直してもらおう』とか考えているみたいなんだけど、やっぱり設備をどうにかしないと」

 

Fクラスはバカの集まりだからというのが転校を勧められる一因の一つだから、姫路の行動も無駄ではない。

だが、やはりそれ以上に姫路の健康の方が問題になる。

それをなんとかしない限り両親の考えは変わらないだろう。

 

美波「……アキはその……瑞希が転校したりとか嫌だよね……?」

 

不安そうな目で明久を見るが、その心配は杞憂であると言わざるを得ない。

 

明久「もちろん嫌に決まってる!姫路さんに限らず、それが美波や秀吉や和真であっても!家庭の事情でどうしようもないならともかく、そんな理由で仲間が離れていくなんて絶対に嫌だ!」

 

美波「そっか……うん、アンタはそうだよね!」

 

嬉しそうに頷く美波。

 

 

 

明久(雄二だったらどうでもいいけど)

 

台無しだよ。色々と。

 

明久「そういうことなら、なんとしても雄二を焚き付けてやるさ!」

秀吉「そうじゃな。ワシもクラスメイトの転校と聞いては黙っておれん」

和真「学園祭は正直あまり好きじゃねぇが、そういう理由なら力を貸してやるよ」

明久「それじゃ、まずは雄二に連絡を取らないとね」

 

そう言って雄二に携帯をかける。

呼び出し音が受信器から響く。

 

『―もしもし』

明久「あ、雄二。ちょっと話が―」

『明久か。丁度良かった悪いが俺の鞄を後に届けに―げっ!翔子!』

明久「え?雄二。今何をしてるの?」

『くそっ!見つかっちまった!とにかく、鞄を頼んだぞ!』

明久「雄二!?もしもし!もしもーし!」

 

どうやら翔子の射程範囲に入ったらしく、こちらの話を伝える前に切られてしまった。

 

美波「坂本はなんて言ってた?」

明久「えっと『見つかっちまった』とか『鞄を頼む』とか言ってた」

美波「……また翔子絡み?」

和真「十中八九そうだろうな」

秀吉「雄二はああ見えて異性には滅法弱いからの」

 

Fクラスでは特に珍しいことでは無いので三人とも理解が早く欠片も驚かない。

 

美波「そうすると、坂本と連絡取るのは難しいわね」

明久「いや、これはチャンスだ」

美波「え?どういうこと?」

和真「おっ、何か思いついたか?」

明久「雄二を喫茶店に引っ張り出すには丁度いい状況なんだよ。うん。ちょっと三人とも聞いてくれるかな?」

美波「それはいいけど……坂本の居場所はわかっているの?」

明久「大丈夫。相手の考えが読めるのは、なにも雄二だけじゃない」

秀吉「何か考えがあるようじゃな」

明久「まぁね」

 

三人は明久に連れられて教室をあとにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

和真「よぉ雄二」

明久「奇遇だね」

 

二人は部屋の物陰で大きな身体を小さくしている雄二に話しかける。雄二は死んだ魚のような目ど二人に問いかける。

 

雄二「……どういう偶然があれば女子更衣室で鉢合わせするのか教えてくれ」

 

そう。ここは体育館にある女子更衣室。男子生徒がどこにいるか探すとき、まず訪れないであろう場所である。

 

明久「やだな。ただの偶然だよ」

雄二「嘘をつけ。こんな場所で偶然会うわけが―」

 

ガチャッ

 

音を立ててドアが開くと、体操服姿の木下 優子が入って来た。

 

優子「えーっと……あれ?和真と…Fクラスの問題児コンビ?ここ、女子更衣室だよね?」

和真「なんだ優子か。奇遇だな」

明久「やぁ木下 優子さん。奇遇だね」

雄二「秀吉の姉さんか。奇遇じゃないか」

優子「あ、うん。奇遇ね」

 

 

アッハッハッハッハッハッハッハ

 

 

優子「先生!覗きです!変態です!」

雄二「逃げるぞお前等!」

明久「了解っ!」

和真「あいよっ!」

 

三人は更衣室の窓から表に飛び出していった。

笑って誤魔化せるほど世の中は甘くないのである。

 

鉄人「大丈夫か木下!」

 

鬼の形相でFクラスの怪物教師、西村宗一こと鉄人が飛び込んで来た。

 

優子「Fクラスの吉井君と坂本君です!そこの窓から逃げて行きました!」

鉄人「またアイツらかっ!」

 

そのまま鉄人は窓から飛び出していった。それを確認した優子は疲れたようにように溜め息を吐いてから口を開く。

 

 

優子「…………いるんでしょ?出てきなさい和真」

 

窓に近づいて優子は呆れるような声でそう呟く。

すると……

 

和真「よく気づいたな優子」

 

窓から和真が顔を覗かせた。

どうやら窓の上の壁に気配を消して張り付いていたようだ。忍者顔負けである。

 

優子「アンタ以前も同じような手段でやり過ごしてたじゃない」

和真「そういや、そんなこともあったなぁ」

 

そのまま女子更衣室内に戻り、いつも通りの笑みを浮かべながらなぜか諭すように優子に注意する和真。

 

和真「だけどなんでアイツ等だけチクったんだよ?差別は良くねぇぜ、閣下」

優子「誰が閣下よ……アンタは要領が良いからあまり教師に目をつけられてないからね。あの二人ならともかく、アンタの名前を出したら西村先生は確認をとるでしょ。その間に逃げられちゃうじゃない」

和真「そいつはなかなか良い判断だな。……それにしても、折角雄二を捕獲できたのに逃げられちまったぜ」

優子「ああ、アンタ達は代表の坂本君を探してたの…いやおかしいわよ。なんで坂本君はこんなところにいたのよ?」

和真「そりゃ、翔子から逃げるためだろ」

 

なにを当たり前のことを、と言わんばかりに和真は質問に応答する。その返答にこめかみを手を当て再び嘆息する優子。

 

優子「そうだとしても、やっていいことと悪いことがあるでしょ……」

和真「甘いぜ優子。あいつは翔子から逃げるためなら手段を選ばない。翔子も翔子で男子トイレ程度なら躊躇いなく入って行くだろうしな」

優子「やっぱりおかしいわよ…どっちも……」

和真「まあ、アイツらならうまく逃げ切るだろ。そうなると明久は雄二を教室に連れて来てくれるだろうし、俺もさっさと戻るか。じゃあな、優子」

優子「ちょっと待ちなさい」

 

女子更衣室から出ていこうとする和真の手を優子が掴む。

決して逃がさないように固く、強く。

 

和真「? なんだよ?」

優子「女子更衣室に入っておいて何のお咎めも無しとはいかないわよ。このままアタシが職員室まで連行します」

 

問題児コンビは鉄人に任せ、和真は自分が捕獲する。Aクラス生徒らしい合理的な作戦だ。

これに対して和真は、

 

和真「見逃して」

 

『そこの醤油取って』ぐらいのノリで頼んだ。第三者から見れば、女子更衣室に忍び込んだけど急いでいるから見なかったことにしろ、と無茶苦茶なお願いである。

しかし和真はこの要求が通ると確信していた。

なぜなら、優子が問答無用で職員室まで連行する女子なら、彼女が入って来る前に和真の直感で察知できたはずである。

 

優子「ふ~ん……なら、一つ提案があるんだけど」

和真「ほう?どんな提案だ?」

 

何かを期待するような顔つきになる和真。

 

優子「アタシと召喚獣で勝負しなさい。アンタが勝ったらこの件は見逃してあげる。ただし、アタシが勝ったらおとなしくお縄につく。どう?この提案受け―」

和真「受けるぜ」

優子「…早いわね。まだ言い終わってないわよ」

和真「俺も丁度試したいことがあったし…何より挑戦状叩きつけられたんだ、受けない手は無ぇよ」

そう言って和真は心底楽しそうに笑う。

優子「アンタらしいわね、でも負けないわよ。今回はちゃんと反省してもらいます」

 

 

 

 

 

 

 

二人は職員室に行き、先生の許可を取ってフリスペを利用する。

 

和真「科目はどうする?選ばせてやるよ」

優子「じゃあ、総合科目で。今のアンタの成績がどのくらいか確認しておきたいし」

 

和真はそれを聞くと隣に設置されたパソコンに総合科目と打ち込む。

すると、召喚フィールドが現れた。

 

『試獣召喚(サモン)!』

 

掛け声とともに、西洋鎧とランスを身に付けた優子の召喚獣と、黒ジャケットに赤いシャツに巨大な槍を身に付けた和真の召喚獣がそれぞれ出現する。

 

 

《総合科目》

『Fクラス 柊 和真 3869点

VS

Aクラス 木下 優子 3883点』

 

 

優子「う……点差が大分縮まってる」

和真「いつまでも苦手科目をそのままにはしねぇよ。ましてや、その科目で負けちまったからにはな」

 

Aクラス戦で何か思うところがあったのか、あれ以来和真は真剣に物理と数学をとある先生に教えてもらっている。

 

和真「さて優子、特別にこの槍に隠された特殊能力を見せてやるよ」

優子「……特殊能力?」

和真「実はな、この槍は長さを変えられるんだよ」

優子「なんですって!?」(腕輪能力でもないのにそんな機能がついているなんて……ちょっとズルくない?)

 

 

 

 

 

和真「ていっ!」

 

おもむろに膝で槍の柄の部分を真っ二つに折る〈和真〉。

 

優子「…って、それただの力技じゃない!?」

 

強引にもほどがある。まさに『槍を短くしたければ折れば良いじゃない』理論だ。

 

和真「喰らえ!棒キャノン!」

優子「…って、えぇっ!?」

 

折った棒を〈和真〉はおもいっきりぶん投げた。

放物線を描きながら、軽くスピンがかかった棒は弧を描きながら〈優子〉に向かって飛んで行く。

 

優子「そんなものっ…」

 

降ってきた棒を〈優子〉はランスで弾く。スピードが合わさった棒はかなりの重量であったがダメージは特に受けていない。

 

和真「かかったな!」

優子「!? しまっ―」

 

優子が棒に気を取られている間に、いつの間にか目と鼻の先まで接近していた〈和真〉。相変わらず凄まじい機動力だ。そして〈優子〉は上から降ってきた棒をランスで弾くために両腕を上げており、脇腹ががら空きになっている。

 

和真(見せてやるぜ!さっき野球しているときに思いついた新必殺技…)

 

〈和真〉はおもむろにバッティングフォームを構えた。〈優子〉は慌ててガードしようとするも間に合わない。

 

和真「カズマホームラァァァン!」

 

カッキィィィィィィィィン!

 

まさにジャストミート。

〈優子〉はスーパボールのように飛んで行き、フィールドの壁に激突し、辺りに血飛沫が舞う。

バーチャルみたいなものとはいえ、実にグロテスクな光景である。

 

《総合科目》

『Fクラス 柊 和真 3869点

VS

Aクラス 木下 優子 戦死』

 

 

優子「ふぅ……負けちゃったか」

和真「つーわけで、賭けは俺の勝ちな。リターンマッチは試験召喚大会で受け付けるぜ」

優子「翔子もやる気満々だし、大会では負けないわよ!」

和真「やっぱり折れてねぇな。それでこそ『アクティブ』の一員だぜ。じゃあ俺は教室に戻るわ」

優子「うん。じゃあね」

 

 

 




和真君は新技『カズマホームラン』を習得した!
ちなみにこの作品では召喚フィールドの端は召喚獣のみを弾く壁になっています。
もともとはフィールド外に出ると召喚獣が消滅し、戦死扱いだったんですが、去年H.Kという男子生徒が槍で相手の召喚獣をフィールド外へガンガン撥ね飛ばしまくったおかげでこういう仕様になりました。

優子さんは和真君が悪ノリしたときのストッパー役ですが、止められるかどうかは五分五分です。
では。

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