といってもシリアス度0%ですが。
明久「ん? あれは…和真と…誰だろう?」
めずらしく早めに登校した明久は、和真が見知らぬ女子生徒といるのを見かけた。
明久(まさか告白!?だとしたら和真といえど生かして帰さな-)
「別れましょう!もう先輩にはついていけませんっ!」
明久(真逆だったーーーー!?)
告白現場かと思ったら破局現場だった。
和真「ん、オーケー。じゃあさいなら」
和真は特に驚きもせず、つまらなそうなガッカリしたような、それでいて予想通りといった表情でそれを受理した。
明久「和真、元気出しなよ」
和真「いきなりなんだよ明久?」
Fクラス教室にて、明久は今朝のことを励まそうとするが、いかんせん脈絡がなさ過ぎたのか、和真は何のことだかわからないようだ。
明久「だって、今朝後輩の女の子に別れてって言われてたでしょ。それで落ち込んでるだろうと思って」
和真「ああ、それか」
和真はどうでもやさそうな反応をする。
もし読者の皆さんが友達そういう場面を目撃してしまったら、しばらくそっとしておいてあげましょう。間違っても他の人が大勢いる場所で励ましたりしてはいけません。
美波「え、柊フラれちゃったの?」
秀吉「それは気の毒じゃのう…」
雄二「ははは!ザマァ!」
高校生とは基本的に下世話な生き物である。友達がこういう話をしていたらそりゃ集まる。気の毒そうに励ます者ややこりゃ愉快言わんばかりのいやらしい笑みを浮かべた者に囲まれても、和真はさして気にすることなく告げる。
和真「別に気にすることでもねぇよ。もう53回目だからな」
『53回!?』
和真「そ。ちなみに別れを切り出すのはいつも向こうからで、理由はおそらく53人とも一緒」
明久「そ……その理由は?」
翔子「……和真のスポーツ趣味についていけなくなった」
和真「正解。というかごく自然に混ざったなお前、さっきまでいなかったのに」
翔子「……雄二の携帯をチェックしていたから」
雄二「!?……アドレス帳の連絡先が翔子以外消えてるじゃねぇか!」
和真&明久「ザマァ」
雄二「お前らぶち殺すぞ!特に明久!」
気にしてはなくてもチャンスがあればしっかりとやり返すのが和真流。ここぞとばかりに明久も便乗する。
明久「それにしてもやっぱりその理由か…」
和真は基本的に放課後、休日ともにだいたいスポーツに明け暮れている。恋人らしいことなどほとんど期待できそうにない。美波が呆れたように忠告する。
美波「あんた付き合ってるんだったらスポーツはほどほどに 「却下」 して彼女の…って、まだ言い終わってないわよ!」
和真「スポーツをほどほどにって時点で悩む余地は無ぇ。そんなことしなけりゃならないならこっちから願い下げだ」
和真にとっては恋愛<スポーツである。
雄二「だったら断りゃいいじゃねぇか」
和真「そうだけどよ、全員最初はそれでも構わないって言うんだぜ?蓋開けたらこの体たらくだがよー」
美波「そうはいってもやっぱり構ってほしいに決まってるじゃない」
和真「知るか。だいたい女は不合理な部分が多過ぎる。例えばそうだな、女子は皆痩せたいだのカロリーだのダイエットだの常々ほざいてるが、本当に痩せたいと思ってんのかねぇ?」
姫路「勿論痩せたいに決まってるじゃないですか!」
ちょうど登校してきた姫路の、おそらく人生で1,2を争う心からの切実な叫び。よほど体重に関して神経質になっているのだろう。
和真「じゃあ聞くがよ姫路、なんでお前等はダイエット食品やらダイエット法やらを次から次へと変えているんだ?」
姫路「そっ、それは効果が出なかったから…」
和真「それだよ、俺の気になるのは」
姫路に指を突きつける。人差し指だけだと失礼なので中指を重ねて。
和真「なんでそんな確実性のかけるやつをしたがるんだ?絶対に痩せられる方法は誰もが知っているはずなのによ。自分の中にある答えから目を背けてんじゃねぇよ」
姫路「絶対に痩せられる方法…ですか?」
和真「痩せたいなら動け!運動しろ!」
段々と和真の声に力が入ってきた。
姫路「で、でも…運動は苦手なので…」
和真「それだよそれ!痩せたいと言ってる割に運動しない奴が決まって言うセリフ!」
さらに指を突きつける。今度は薬指も重ねて。
和真「要はそういうことだろ!だるいからしないんだろ!できるだけ楽がしたいんだろ!つまり、お前達にとって痩せたいという願望はその程度のもんなんだろ!」
姫路「ち、違-」
和真「違わねぇだろ!心の底からの渇望ならどんなに辛かろうが苦しかろうが気にならねぇはずだろ!
それは無理だ?自分には向いていない?もっと楽な方法がある?この方が効率がいい筈だ?次頑張ればいい?
ハッ、そんな中途半端な心構えで痩せられるわけねぇだろうが!」
姫路は衝撃を受けたような表情になり、そのまま膝から崩れ落ちた。
和真「以上、柊 和真のダイエットセミナーだ」
『ちょっと待て!』
最初の破局の話から随分と脱線したものだ。
和真「まあとにかく、スポーツの時間は絶対減らさねぇ。一緒にいる時間を多くしてほしいならそれにに混ざってもらうしかねぇな」
明久「そんなこと言ってもさ、和真についていける女の子なんて…」
ガラガラ
優子「和真ー。アンタ昨日グラウンドにタオル忘れていったでしょ?はい」
和真「あ、しまった。わざわざサンキューな、ご丁寧に洗濯までしてくれて」
優子「どういたしまして……って、アンタ手怪我してるじゃない!?」
和真「ああこれか、今朝陸上部の朝練に混じったときに何かで切ったんだろ。まあこの程度なら放っておいても-」
優子「いいわけないでしょ!ほら手貸して!消毒液と絆創膏あるから」
和真「いやなんであるんだよ!?百歩譲って絆創膏はともかく消毒液なんざ普通持ち歩かねぇだろ!?」
優子「アンタがしょっちゅう生傷作るからでしょうが!いいから、ほら!」
和真「いたたたっ!かけすぎだバカ!やるならもっと丁寧にやれ!繊細さの欠片もねぇなお前!」
優子「う、うるさいわね!ちょっとは我慢しなさい、男でしょ!」
和真「我慢できるタイプの痛みじゃねぇよこれは!」
優子「そもそも繊細さとかアンタにだけは言われたくないわよ!」
和真「細かい作業は嫌いなだけでできねぇわけじゃないしー、トランプタワーも7段までできるしー」
優子「アタシだってできるわよ!……5段までだけど」
和真「ふははははは!5段ごときでなにいきがってやがんだ雑魚が!」
優子「アンタだってアタシより一段多いだけでしょうが!」
和真「7段と5段じゃ天と地ほど差があるんだよ、このガサツ女が」
優子「誰がガサツ女よ!ガキみたいな性格してるくせに!」
和真「お前と徹にだけは言われたかねぇよ!」
『……………………………………』
痴話喧嘩まがいの非常にレベルの低い争いをただ黙って見ている明久達。とても学年トップレベルの学力を持つ人達の争いには見えない。
明久「………なんか、別れた原因が他にあるような気がするんだけど」
『同感』
以上です。
和真君のヒロインは優子さんですが、和真の性格があんな感じなので今後進展するかどうかは未定です。
では。