・柊和真(二年Fクラス)
〈召喚獣〉超攻撃型
〈武器〉ロンギヌスの聖槍
〈能力〉一斉砲撃……消費100~(100刻み)。10点につき大砲を一つ展開する。攻撃特化の和真らしくややオーバーキル気味の能力だが、下二つに比べれば比較的まだおとなしい方。
〈オーバークロック〉一斉閃光砲撃……消費400(400ジャストでも1残る)。10点につきレーザー砲を一つ展開する。ランクアップ能力にも届きうる絶大な破壊力を有するが、使用後召喚獣が凄まじく弱体化するという重いデメリットがある。
〈ランクアップ能力〉レーザー・ウィング……チャージすれば無限にレーザーを放てる上に翼自体も使い捨ての攻撃に使える。攻撃特化の極致である一方その殲滅力の代償に翼の耐久力は紙に等しく、また本体が1ダメージでも受ければ全ての翼が連鎖的に空中分解するというデメリットがある。
〈成績〉総合……5714点
・鳳蒼介(二年Aクラス)
〈召喚獣〉万能型
〈武器〉草薙の剣
〈能力〉?
〈オーバークロック〉?
〈ランクアップ能力〉インビンシブル・オーラ……オーラを纏っている限りいかなる攻撃も受け付けなくなる。オーラ自体の耐久値は無限であり、召喚獣本体に300点分のダメージを与えなければ武器にして纏わせようが斬撃として放とうが無尽蔵である。弱点らしい弱点は無いがどちらかと言えば守り重視の能力のため、火力・射程・攻撃範囲は和真の『レーザー・ウィング』に劣る。
〈成績〉総合……7799点
和真「掃射ァ!」
そのキーワードが引き金となり、〈和真〉の背より噴出する六枚の翼が光線を放つ。使用者に似たのか和真のランクアップ能力はただひたすらに攻撃に特化しているようめ、放った光線の威力は一つ一つが姫路の『熱線』を大きく上回っている。
迫りくる殺人光線に〈蒼介〉は迷いなくオーラの一部を草薙の剣に収束させ…
蒼介「ハァァァッ!」
ズドドドドドォォォン!!!
“車軸”と“怒濤”の合わせ技“豪雨”で六連撃を放ち迎え撃った。真っ向勝負ではパワー負けすると蒼介は判断したようで、弾き返そうとはせず光線の側面を正確に突き攻撃方向を反らした。そのため光線は〈蒼介〉に命中することなくフィールドに着弾する。
和真「次はこいつだ!」
しかし和真とてあのような単調な攻撃が蒼介に通用しないことなど理解している。殺人光線を囮にしている内に〈和真〉はすかさず距離を詰め、翼を一枚ロンギヌスに纏わせながら斬りかかる。
蒼介(……仕掛けるか)
草薙の剣を眼前に固定し受け身の構えを取り、“離岸流”によるカウンターを狙う。“離岸流”は相手の力が強ければ強いほど精度が上がるため、攻撃特化の和真に対して非常に有効な手に思える。
が、結果的にそれは紛れもなく悪手であった。草薙の剣とロンギヌスが接触したその瞬間…
ドォォォオオオオオン!!!
ロンギヌスに巻きついた翼が砕け散り爆発四散し、もろに爆風を受けた〈蒼介〉は遥か後方に吹き飛ばされた。
蒼介「何……!?」
和真「気ぃつけるんだな……この翼は脆過ぎて、軽く触れただけで破裂するからよぉ!」
和真の腕輪能力『レーザー・ウィング』の耐久面は極めて脆弱であり、召喚獣本体がダメージを負えば連鎖的に自壊する他、Fクラスレベルの召喚獣のデコピン程度の軽い衝撃でも原型を留められず砕け散る。しかしその一方で破壊力は凶悪極まりなく、その威力は崩壊した際の余波だけで〈蒼介〉は吹き飛ばしてしまうほどである。
蒼介「くっ……っ!?」
爆風によるダメージは身に纏った『インビンシブル・オーラ』が肩代わりしたため外傷は無く、さらに“明鏡止水”状態なため〈蒼介〉は吹き飛ばされつつも問題なく着地する。しかし…
和真「オラオラ、こいつは避けなきゃ死んじまうぞ!」
〈和真〉は二枚の翼を刃状に変形させながら距離を詰め、着地の瞬間を狙って刃となった翼を拡大させ左右から斬りかかった。翼の不定形な性質を使いこなした見事な応用技だが、〈蒼介〉は再びオーラの一部を草薙の剣に収束させ、
蒼介「ハァァアアアッ!」
右足を軸に肆の型・大渦を繰り出し、収束したオーラを回転斬りと共に放った。その結果〈蒼介〉を中心に拡がった円状のオーラとレーザーブレードがぶつかり合い、双方共に跡形もなく消し飛んだ。今回は至近距離で爆風を浴びなかったので〈蒼介〉はその場で持ち堪える。
しかし、和真のとってはそれすらも囮だった。
和真「残念だが本命は……こいつだぁぁあああっ!!!」
〈和真〉は残る三枚の翼をロンギヌスに纏わせ、回転斬りをして隙のできた〈蒼介〉に刺突を放った。オーラの耐久値は既に半分以下の上、破壊力は単純計算で先ほどの三倍。
蒼介「……南無三!」
多少のダメージ覚悟でなんとか直撃を避けるため、〈蒼介〉は向かってくる槍の側面を強打しこちらから起爆させ、同時に後方へ大きく跳ぶ。
ドォォォオオオオオン!!!
先程とは比べ物にならない大爆発が発生し、飲み込まれ〈蒼介〉はオーラを跡形もなく剥がされ決して小さくないダメージを負う。
和真「………重ね重ね、お前らしくねぇ荒っぽくて泥臭い戦法だなソウスケ」
蒼介「言ったはずだ……勝つために必要ならば、スマートさなど投げ捨てるとな!」
《総合科目》
『二年Fクラス 柊和真 2321点
VS
二年Aクラス 鳳蒼介 2259点』
しかし〈和真〉はそれ以上のダメージを受けていた。原因は〈和真〉の肩に突き刺さった刃状のオーラ。
種明かしをすれば、〈蒼介〉は草薙の剣でロンギヌスを迎撃する傍ら、もう片方の手にオーラを刃状に収束させ、大爆発の瞬間に〈和真〉に突き刺していたのだ。
和真の言う通り蒼介には似つかわしくない無鉄砲な手段だったが、結果として蒼介は危機的状況を切り抜けられた。
両者の残り点数はここにきて再び拮抗し、そして両者ともにランクアップ能力を消失した。能力は2000点消費すれば使えるものの、それをすれば点数は風前の灯火になってしまう。普通ならば程度の差こそあれ発動を躊躇うこの状況で、
和真「『レーザー・ウィング』!」
蒼介「『インビンシブル・オーラ!』」
《総合科目》
『二年Fクラス 柊和真 321点
VS
二年Aクラス 鳳蒼介 259点』
しかし二人とも僅かな躊躇すら無く背水の陣を選び、ランクアップ腕輪を全く同時に再起動していた。もしどちらかが少しでも躊躇していたら、発動の遅れた方が先に発動した相手に容赦なく消し飛ばされていただろう。
和真・蒼介「「うぉぉおおおぉぉおおおお!!!」」
二体の召喚獣は超高速でフィールドを旋回し、腕輪能力のエネルギーを纏わせた武器で飛ぶ斬撃を撃ちまくる。
和真(闘り合う前からわかっちゃいたが、やっぱ簡単には勝たしてくれねぇな……ったく、澄ました面してどんだけ負けず嫌いなんだよこいつは……)
蒼介(闘う前からわかってはいたが、つくづくお前の相手は骨が折れるな……まったく、お前には昔から手を焼かされてばかりだよ)
従来の試験召喚戦争が児戯に見えるほどに、両者の激突はどんどん激しさを増していく。斬撃のぶつかり合いは轟音を響かせ、大気が断末魔の絶叫をあげる。それにもかかわらず崖っぷちの両者はまるでダメージを負っていない。ここへ来て二人の力は完全に拮抗していた。
和真(……思えばお前とは霜月小からの長い付き合いになるよな。仲良くなった理由は喧嘩してお互いズタボロになって……ハッ、小綺麗な思い出たぁ口が避けても言えねぇな)
蒼介(だがあの諍いが無ければ私達は決してわかり合えなかっただろう。そしてもしお前がいなければ……今の私は無かっただろう)
しかしこの拮抗状態はそう長くは続くまい。
〈蒼介〉の『インビンシブル・オーラ』は自身が300点分のダメージを受けない限り、武器に纏わせようが斬撃にして放とうが無尽蔵に復活する。
それに対して〈和真〉の『レーザー・ウィング』のレーザーは理論上無限に撃てるが、一度撃てばエネルギーをチャージする必要がある。〈和真〉はそのレーザーを全て武器に纏わせて斬撃を放っているので、このハイペースでは先に息切れを起こすのは間違いなく〈和真〉の方だ。
和真(お前という対等の存在がいたからこそ、俺は破壊衝動の呪縛から解き放たれた。んなもんに振り回されてるような半端な奴じゃあ、到底お前には勝てねぇからな。そして感謝するぜソウスケ……お前を越えてぇと心から思えたから、俺は“気炎万丈”を極められた!)
蒼介(お前という対等の存在がいたからこそ、私は姉様の影を追わなくなった。死者を目標にしているようでは、到底お前には勝てないだろうからな。そして感謝するぞカズマ……お前が私にとって脅威足り得たから、私は“明鏡止水”を極められた!)
案の定、ロンギヌスに纏わせたエネルギーが尽きてしまった。しかし和真がエネルギーの補充が終わるまで時間稼ぎ……なんてチマチマした戦術をとるはずもなく、六枚の翼を全てロンギヌスに纏わせた。もう再展開が不可能な翼を使いきったところを見るに、どうやら和真は次の一撃で勝負を決めるらしい。
和真(………だが、いやだからこそ-)
蒼介(負けるわけにはいかない……!)
それに対抗するように、〈蒼介〉もオーラの全てを草薙の剣を収束させる。300点分のダメージを受けない限り無尽蔵に扱えると言っても、オーラ量の絶対値自体は変わらないため一点に集中させたことで、〈蒼介〉の身を守るオーラは綺麗さっぱり無くなった。この崖っぷちの状況下では悪手に思えるが、蒼介は知っていた……敗北を恐れるようでは、和真には決して勝てないだろうことを。
和真「勝つのは俺だ!お前をぶっ倒し倒し、そして俺達Fクラスは革命を起こすのさ!」
蒼介「いいや、勝つのは私だ!お前を倒すことで、私達Aクラスの王座は不動のものになる!」
和真「いくぞソウスケェ!
」
蒼介「来るがいいカズマ!!!
」
両者はお互いの得物を構えて突撃する。満身創痍の二人に小手先の策など自殺行為でしかなく、最後に残った手段は全てを賭けた乾坤一擲の正面衝突だ。しかしだからと言って二人ともただ闇雲に突っ込んでいるわけではない。
和真「オラァァァアアアアアッ!!!」
先に仕掛けたのは当然、先手必勝を好む和真。超スピードで突撃しながらロンギヌスに纏わせた翼をエネルギーに変化させ、聖槍の斬撃と共に〈蒼介〉に向けて放った。受け止めれば確実に爆死、回避は困難、よしんば避けられたとしても今度は突撃してくるロンギヌスそのものの餌食になるという三段構えの戦術だが、後手必殺に重きを置く蒼介は冷静に問題なく対応する。彼には既に翼を攻略する方法を編み出していた。
蒼介(生半可な迎撃では爆発を喰らってしまう……ならばここで用いるのは水嶺流の中でも一点突破力最強の技、百川帰海・絶海。覚悟しろカズマ……無数の斬撃をただ一点に集中するこの技でお前に押し勝ち、爆風ごとお前に叩き返してくれる!)
和真(………明久、技借りるぞ)
蒼介(っ、さらに加速し-これは……!?)
感情のエネルギーを限界まで脚力の強化につぎ込み、凄まじいスピードで放った斬撃が〈蒼介〉に届く直前に追いついた。
和真(最初に放った斬撃を中心にぶつかり合うい、ここで押し負けた方が爆死する!……ハッ、この俺に真っ向からぶつかったことを後悔させてやらぁ!)
そして〈和真〉は斬撃と垂直になるようにロンギヌスを振り下ろし十字を描き威力を倍増させる。明久が飛鳥との闘いを制す決め手となった技『クロス・ディバイド』に、副獣を和真なりのアレンジを加えたものである。
蒼介(なんとも私達らしい決着の決め方だな……よかろう、望むところだ!私は真っ向からお前を打ち倒す!)
そして〈蒼介〉も負けじと“百川帰海・絶海”を放った。“怒濤”を凌駕するほどの超高速剣撃……それをただ一点に集中して放つことで、火力と突破力を何倍にも高める絶技。その破壊力は拾の型・海角天涯さえ上回る、水嶺流最強の技だ。
和真・蒼介「「うぉぉぉおおおぉおおぉぉおおおおっっっ!!!」」
しかし、どちらの望む結末も訪れることはなかった。
彼等は正真正銘対等だった。
故に両者の激突は完全に拮抗してしまい…
ドォォォオオオオオォォオオオオオオオォォォォオオオオオオオォォオオオオオオォオオオン!!!
和真「んなっ!?」
蒼介「ぐっ……!?」
彼等の召喚獣……どころか広大な『スカイ・フィールド』全体を覆い尽くすほどの大爆発を引き起こした。拮抗した二つの膨大なエネルギーが激突した衝撃でその場に留まりきれず瞬時に膨張し、フィールド内の全てを飲み込み蹂躙したようだ。これは一学期の試召戦争で久保と姫路の闘いで、腕輪能力のぶつかり合いによって生じた現象と同様のものだろう。
既に満身創痍だった彼らがそんな超オーバーキルな衝撃に飲み込まれて無事でいられる筈もなく……
《総合科目》
『二年Fクラス 柊和真 戦死
VS
二年Aクラス 鳳蒼介 戦死』
和真「…………」
蒼介「…………」
両者共倒れという幕切れとなった。反動で素に戻ってしまうのも仕方ない結末だが、この場合どちらの勝ちになるのだろうか?
二人はゴーグルを外し審判である綾倉先生に判断を仰ぐと、清涼祭のときのようにどちらが先に戦死したかコンピューターを使って確認するとのこと。
しかし先述した通り二人のぶつかり合いは完全に拮抗していたため、コンマ一秒違わず同時に爆発で戦死したとコンピューターが結論付けた。最後に喰らったダメージは召喚獣の防御力の関係上〈和真〉の方が大きいだろうが、試験召喚戦争の決着は相手の点数を0にすることで、どれだけオーバーキルしたかは関係がない。故にそんな決め方では和真は勿論、蒼介さえも納得しないであろう。
よって綾倉先生はやむを得ず…
綾倉「この勝負……引き分け!第一回『サモン・ビースト・フェスティバル』の優勝者は、柊君と鳳君の同時優勝で幕を降ろしました!」
割と本気で決着の付け方に悩みましたが、こういう形で落ち着けました。そこ、先送りとか言わない。
ちなみに和真君の最後に放った技のモデルはアバンストラッシュXです。
次回でやっとこの章が終了致します。