バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

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この章もようやくあと2、3話で終わります。
長かった…ホント長かった……。

【大人達の好きな食べ物】

御門空雅……コンポタ

和真「好物っつうかよ、それ以外食べてんのみたことねぇな」

蒼介「足りない栄養素は全てサプリメントで補っているらしい。食事を栄養補給作業としか思っていないようだ」

和真「ホントこの人生きてて楽しくねぇんだな……」


鳳藍華……だし巻き卵、黒鯛の刺身、栄螺の天麩羅

和真「この人もだし巻きか……」

蒼介「赤羽流を修める者が最初に習う料理だから、皆大なり小なり愛着があるのだろう」


鳳秀介……レチョン、ロモ・サルタード、エマ・ダツィ


和真「何料理だよそれ!?嫁と子二人が和食で統一してんのに空気読まねぇなオイ!」

蒼介「迷子中の食べ歩きで気に入った品々らしい」

和真「散々周り振り回しておいてそんなことやってたのあの人!?」




柊守那、桐生舞……グラッパ、テキーラ、マッコリ、大関、コニャック、泡盛、雪中梅、テネシー、スコッチ、黄桜、バーボン、いいちこ、久保田、杏露酒、キルシュワッサー、十四代、老酒、ふぐヒレ、ラム、ジン、月桂冠、霧島、ウォッカ、八海山、モルト、etc…


和真「テメーらは酒しか頭に無ぇのか!?」

蒼介「こうまで露骨だといっそ清々しいな」






決勝戦③『CLEAR MIND』

激突、激突、激突、激突、激突……。

 

地上で静かに向かい合う和真と蒼介とは対照的に、上空にいる彼らの召喚獣達は通常の数倍もの広々としたフィールド内を高速で縦横無尽に駆け巡りながら、お互いの全てを滅ぼし尽くさんと武器を振るう。神器のぶつかり合いによる衝撃は極めて凄まじく、落雷にも似た轟音は『スカイ・フィールド』内だけでは到底収まり切ることなく、やがては『フリーダムコロッセオ』全体に暴れ狂いながら降り注ぐ。並大抵の召喚獣なら余波のみで消し飛ばされてもおかしくないほどの、この世の地獄とも言うべき光景がフィールド内で形成されていた。

 

和真「ハッ、くだらねぇ。単純な力比べで……この俺に勝てるとでも思ってんのかぁ!

蒼介(っ……やはり明らかに力が上昇している……!いや力だけでなく、速さまでもがさっきまでとは比べ物にならん!)ヒィィィイイイイイン…

 

そして戦況は次第に和真へと傾き始める。いかに蒼介のテクニックとゲームメイクが優れていようが、真っ向勝負ではパワーとスピードで勝る〈和真〉に分があるため、激突の度に余裕が削られていく。

 

蒼介(……ならばここは真っ向勝負ではなく、水嶺流の剣本来の闘い方で勝負を仕掛ける!)ヒィィィイイイイイン…

 

力や速さでは勝ち目がないと判断するや否や、〈蒼介〉は自らの土俵である剣術主体で〈和真〉に挑む。水嶺流の剣は力でねじ伏せるような直線的な闘いではなく、一方的に相手を殺すことに特化した剣術だ。多少身体能力に差があろうがひっくり返すポテンシャルを十分に秘めている。加えて今の蒼介は超集中状態のため水嶺流の技のキレは格段に強化されており、常識で考えれば持ち味である変則性を捨てて、がむしゃらに暴れまわるだけの今の〈和真〉では太刀打ちできるものではない。

 

しかし…

 

和真「うぜぇんだよ!

蒼介「なっ…!?」ヒィイイイン…

 

今の和真はその常識を超越する。

“波浪”による急激な緩急に平然と対応し、必中の刺突である“車軸”を軽々と受け止め、高速の剣撃“怒濤”をそれ以上の連撃で押し返し、助走により威力が倍増した唐竹割り“瀑布”を素手で掴んで投げ飛ばし、遠心力等を上乗せした水平斬り“大渦”を真っ向から撥ね飛ばし、死角からの暗殺剣“狭霧”を放つ前に封じ、あらゆる攻撃を受け流す“夕凪”でも対応できないほどの神速の一撃を浴びせかけた。

 

 

《総合科目》

『二年Fクラス 柊和真 4812点

VS

 二年Aクラス 鳳蒼介 4829点』

 

 

点数差はほぼ互角、しかし戦況は完全に和真に傾いていた。生半可な敵ならば十数回は葬っているであろう〈蒼介〉の凶悪極まり無い技の応酬を、〈和真〉は全て力技で強引で突破してのけた。

 

蒼介(………ならば、姉様の十八番で……!)ヒィイイン…

 

それでも戦意を失うことなく、〈蒼介〉は紫苑の得意とする複合技・豪雷雨(急激な緩急から繰り出される高速刺突連撃)を〈和真〉に放つ。

 

和真「無駄だっつってるだろうが!

 

しかし〈和真〉は高速刺突の初手を優れた眼力見抜き、それに合わせて渾身の一撃で迎撃する。結果、助走を込みした筈の〈蒼介〉が力負けし後ろにのけ反り、〈和真〉は追撃を行うべく〈蒼介〉に襲いかかる。

 

蒼介「……かかったな!」ヒィイイン…

和真「あぁ…?

 

突如〈和真〉の視界から〈蒼介〉が消えた。準決勝で紫苑を翻弄した“波浪”と“狭霧“の複合技“蜃気楼”だ。実をいうと“豪雷雨”が通用しないことなど織り込み済みであり、蒼介の狙いは最初から確実に決めることだった。

攻撃対象を失い隙だらけの〈和真〉目掛けて、〈蒼介〉は真後ろから草薙の剣を振り下ろした。

 

和真「-オラァッ!

 

ガキィィイイインッ!

 

しかし〈和真〉は完全に死角をついた筈のその攻撃をも受け止める。そしもの蒼介にもこの事実は受け入れ難いものであった。

 

蒼介「まさかこれほどとは……お前の天性の直感は、痛みを伴う攻撃でなければ察知できない筈だが……ブラフだったのか?」ヒィイン…

和真「あぁん?……あいにくこの状態では攻撃の察知はできねぇよ。絶対的強者に恐れる攻撃なんざあってはならねぇからな。……まあその代わりに敵の弱点と、倒すべき敵の位置は常に把握できるんだよ

蒼介「なるほど…… 

重ね重ね、厄介なものだな……」ヒィイン…

 

その後も〈蒼介〉は間髪入れずに“蜃気楼”を織り混ぜつつ攻撃していくが、その悉くが無情にも防がれていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

秀介「爆発的な感情の昂りによって、およそ科学では説明できない未知の力『感情のエネルギー』を発生させ、それを用いて自らを活性化させ能力を大幅に強化する……“気炎万丈”を強引にでも理知的に説明するならそんなところだけど、アレは完全にオカルトに属するものだからねぇ……とことん常識がまるで通用しない力だよ」

藍華「オカルト……ですか?」

 

秀介の述べたことがいまいちピンとこないのか、首を傾げながら聞き返す藍華。

 

秀介「そ。能力を大幅に強化すると言っても、それは身体能力だけで収まりきるものではないのさ。反射神経や五感、頭の回転や細胞分裂の速度など様々だ。例えば……ねぇ藍華さん、和真君の召喚獣、最初の頃より強くなってると思わない?」

藍華「え…えぇ。彼の性格上手を抜いていたとも思えませんし、いったいどうしてなのでしょう……?」

秀介「今、和真君と彼の召喚獣は視覚がつながっているよね?そのつながりから召喚獣は彼の一部であると解釈することで、感情のエネルギーで召喚獣のスペックを引き上げている……ってところだろうね」

藍華「なっ……そんな無茶苦茶なことが-」

秀介「そんな無茶苦茶がまかり通ってしまうから、アレはオカルトなんだよ。…あっ、これは不味いねぇ……」

藍華「蒼介……」

 

〈蒼介〉の“蜃気楼”からの不意を突く攻撃を〈和真〉が防ぎ続けるという展開がしばらく続いていたが、〈和真〉が“陽炎”を使い逆に〈蒼介〉の不意を突いたことで拮抗状態が崩れてしまった。

 

秀介(………和真君のあれは“蜃気楼”とは似ているようで全くの別物。実際に目の当たりにしないと断定はできないけど、私の分析ではあの技はおそらく感情のエネルギーで動体視力格段に強化し相手の瞬きのタイミングを見切り、相手が瞬きをした瞬間に感情のエネルギーで脚力を限界まで強化し、超人的なスピードで相手の視界から姿を消すという力技だろうね。その性質上使えるタイミングは限られてくるけど、さっきみたいに拮抗状態が続けば使える場面ほいずれ巡ってくる。蒼介もおそらく気づいているだろうから、もう無闇に“蜃気楼”は使えないね。それに…)

 

一旦思考を切り、秀介は()()()()()()()()()()()()()()蒼介に視線を移す。

 

秀介(ここまで手も足もでないと、蒼介と言えど少なからず動揺するだろうね。動揺イコール雑念、それは“明鏡止水”に亀裂を入れる。遅かれ早かれ“明鏡止水”は確実に解けるだろう。

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。和真君に勝ちたいならお前も“明鏡止水の極致”に至ることが必要不可欠だよ、蒼介)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《総合科目》

『二年Fクラス 柊和真 4752点

VS

 二年Aクラス 鳳蒼介 4007点』

 

 

とうとう点数差が逆転しまった。

勝負の流れは以前として和真に傾いており、この状況を打破するには、真っ向から和真にまともなダメージを与えることが必要不可欠だ。

 

蒼介(…………そのためには、こちらも相応のリスクを追わねばなるまい……!)ヒィン…

和真「あん?

 

覚悟を決め、〈蒼介〉は草薙の剣を鞘に納め抜刀の構えをとる。これまで数々の強者を一刀のもとに斬り伏せてきた正体不明の抜刀術……拾の型“海角天涯”を使うつもりだ。

 

和真「それ、使ったとしてちゃんと成功するんだろうな?………“明鏡止水”が解けかかった状態でよ

蒼介「………気づいていたか」ヒィン…

和真「そりゃ気づくだろうがよ、お前から感じる圧迫感が薄れてきてんだからな

蒼介「そうか……ならば隠していてと仕方がないな。そうだ、私とて人間だ。自らが練り上げた技巧や戦術がこうも通用しなければ、雑念の一つや二つ出てきて当たり前だ。だがその心配は杞憂だ……

 

 

 

 

この一撃に全てを懸ける……その覚悟があれば、再び“明鏡止水”に至ることができる」ヒィィィイイイイイン…

和真(ほぉ……ここ一番で大した集中力だ。……だがその覚悟は諸刃の剣じゃねぇのか?)

 

この一撃に全てを懸ける……その覚悟はまさに背水の陣。つまり裏を返せばもしそれを防がれたら、蒼介は“明鏡止水”が解けてしまうだろう。そうなれば和真に勝てる見込みは完全にゼロになるだろう。ランクアップ能力という隠し玉があれど、それは和真も同じことである。

 

 

この攻防は間違いなく、勝敗に大きく関わるものとなるだろう。

 

 

蒼介「…………」ヒィィィイイイイイン…

和真「…………

 

完全な静寂が訪れる。二人の召喚獣はもとより、審判の綾倉先生や観客達も無言で勝負を見届ける。

並の人間が間に入れば、二人の放つプレッシャーに挟まれノイローゼになってしまいかねないほどの緊張感が漂うなか、とうとう〈蒼介〉が刀身を引き抜こうとし-

 

 

 

 

 

 

 

ガキィィィイイイイインッッッ!!!

 

次の瞬間……草薙の剣とロンギヌスがぶつかり合う衝撃音が、静寂に包まれたコロッセオに響き渡った。

 

蒼介「ッッッ…!(フッ…)」

和真(残念だったな……その技のタネは準決勝で既に見切っていたんだよ!縮地を組み合わせた抜刀術……それがその技の正体だ)

 

縮地とは遠い距離を縮めて移動する武術である。

傍目からはあたかも瞬間移動したように見える性質を持つこの技を抜刀術に組み込むことで、抜刀してから斬りかかるまでを他者に悟らせない必殺の居合いへと昇華させたもの……それが“海角天涯”の正体である。

天性の直感を持ってしても攻撃を見切れない脅威の技であるが、それを前もって看過していれば常に敵の位置を把握できる“気炎万丈”状態の和真にとって防げない技ではない。視界に映らないだけで自身に接近してくるので、近づいてきたと感じた瞬間にロンギヌスで薙ぎ払えば受け止め捉えることができる。

 

和真「これで……終わりだ!

 

そして〈和真〉はすかさず追撃を行う。

“明鏡止水”が解けた状態で〈和真〉の射程に入ってしまった〈蒼介〉には、常識で考えれば対抗手段など残されてはいないだろう。事実、最終奥義を破られた反動で蒼介は“明鏡止水”が解けてしまい、敗北を悟らざるを得なくなっていた。

 

蒼介(……まさか“海角天涯”すら破られるとはな。私に手はもう残されていない……認めたくはないが、敗北を受け入れるしか……………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嫌だ……。

 

やはり私は…………負けたくない……! 

 

私を信じているAクラスの皆のためにも……そしてそれ以上に、私自身の誇りにかけて!

 

この闘い、どうしても勝ちたい!

 

 

 

敗北の運命に抗え……!

 

絶望の中でこそ勝機を見出だせ…!

 

細胞一片たりとも集中を切らすな!

 

今ここに、勝利のビジョンを手繰り寄せる!!

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー!!!)

 

 

しかし彼もまたこの瞬間、常識を覆した。

 

 

蒼介「水嶺流玖の型……百川帰海・絶海!

 

ドガガガガガガガガッ!!!

 

和真「なっ……!?

 

参の型“怒濤”とは比べ物にならない無数の剣激の嵐が一点に集中しロンギヌスを迎撃する。絶対命中の性質を持つ本来の“百川帰海”とは違う、一点集中を極めた超連続攻撃に流石の〈和真〉も押し負け遠くへ弾き出された。

 

和真「この俺が力負けするとは……ソウスケの奴、まさか……っ!

 

“明鏡止水”に至った者が放つ威圧感が、いまだかつて無いほど急激に強まるのを感じ取った和真は、おそらくその出所である蒼介に向き直る。

 

蒼介「カズマ、随分待たせてすまないな……これで条件は互角だ!

和真「…………くはは、そうこなくっちゃな

 

“明鏡止水の極致”に至った蒼介を目の当たりにして、和真の戦意は薄れるどころか核爆発したかのようにはね上がった。

 

和真「やっぱそうこなくっちゃなぁっ!!ソウスケェェェエエエエッッッ!!!

 

 

 




蒼介君が土壇場で“明鏡止水”を完成させられたのは、主人公補正も理由の一つどすがそれだけではなく、あの状況だからこそ完成させられたのです。詳しい解説は次回秀介さんあたりがしてくれるでしょう。

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