バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

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【おまけ】

御門空雅が持ち歩いている物一覧。

・財布
・GPS
・携帯電話×2
・カロリーメイト(3日分)
・各種サプリメント
・コンポタの缶(1ダース)
・オニオンコンソメの缶(1ダース)
・煙草(2カートン)
・ジッポライター
・USNCコンバットテント
・巻き取り機能付き鈎縄
・サバイバルナイフ
・バーナーブレード
・ガソリン入りペットボトル
・ハンマー
・様々な薬品(危険物取り扱い資格が必要なものもいくつか所持。資格は取得済み)
・ドクウツギ
・テトロドキシン
・チェーンソー
・PPS M9A1バズーカ
・スタングレネード×5
・手榴弾×5
・カーボンナノチューブワイヤー(300m)
・催眠ガススプレー
・ガスマスク
・拳銃(麻酔弾)
・自白薬
・睡眠薬
・盗聴器
・発信器
・金属探知器
その他色々…

源太「国家工作員か」

御門「教師だよ今は」

和真「いや、アンタこれ……職質されたら一発で捕まるだろ……」

御門「公僕なんぞに捕まるほどやわな鍛え方はしてねーよ」

和真「そういう問題か!?……あと、なんで危険物取り扱い資格はきっちり用意してるんだよ?」

御門「在学中にな、綾倉の奴が『1ヶ月以内に何らかの資格を取れなきゃ特製野菜汁飲み放題の刑』とか言い出しやがってな、そんときに取ったんだよ……」

蒼介「綾倉先生……それにしても、これだけの量をいったいどうやって持ち歩いてるのですか……?」

御門「あー?んなもん手品だ手品」

徹「見事な収納性だと感心するがどこもおかしくはないね」

和真「いやだから無理あるだろ!?お前ら二人とも手品って言っときゃまかり通るとでも思ってんの!?」





決勝戦・柊和真VS鳳蒼介

綾倉「……さて会場の皆様方、いよいよ残すところあと一試合となりました。この試合で第一回【サモン・ビースト・フェスティバル】……通称『S・B・F』の優勝者が決まります!

決勝に勝ち進んだ生徒はいずれも第二学園の生徒です。ここまでご覧になった皆様方には、もはや彼らの説明など必要ないでしょう……それではこれより決勝戦、柊和真君VS鳳蒼介君の闘いです!それでは両選手はステージに入場してください!」

 

ワァァァアアアアア!!!

 

控えスペースから二人が入場すると同時に、まるで爆撃でもされたかのような割れんばかりの歓声がコロッセオ全体に響き渡った。並大抵の人間なら萎縮して動けなくなるのではないかという程の大音量を背に浴びつつも、紅き修羅と蒼の英雄は眉ひとつ動かさずにフィールドに向かって歩を進める。そのことを称賛するか異常に思うかは判断が分かれるだろうが、彼らが頂点を争うに値するということに異を唱える者はいないであろう、非常に堂々たる佇まいであった。

フィールドに到着すると、それまでひたすら無言だった和真が口を開く。

 

和真「おいソウスケ、綾倉の嬢ちゃんを追わなくて良かったのか?なんか知らんけど、あの女と何か因縁でもあったんだろ?」

蒼介「その件は先程会場に到着した父様に任せてある。……私がお前との勝負から逃げる訳が無いだろう」

和真「ふーん……何でも良いけどよ、さっきの準決勝みてぇに腑抜けやがったらわかってんだろうな?」

蒼介「肝に銘じておこう」

 

言動こそ刺々しいが、和真の声色から負の感情は感じられない。というより和真の心の内は既に闘争心で満たされており、そのような余計な産物が入り込める余地などハナからありはしない。 

 

綾倉「それではお二方、科目の選択を-」

和真「その必要はねぇよ先生」

蒼介「同感です。我々の闘うフィールドは、総合科目以外有り得ません」

綾倉「……でしょうね」

 

両者ともに各教科のバランスが良く、得意不得意の差が無い。故に最も自身の力を発揮できるのは、二人ともに総合科目である。そのため綾倉先生は特に驚きもせず、総合科目のフィールドを展開した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明久「いよいよ決勝戦か……ねえ雄二、どっちが勝つのかな?」

雄二「明久、和真に勝ってもらわなきゃ困るってさっきも言っただろ。……と言いたいところだが、正直言ってどちらが勝つか検討もつかねぇ」

美波「珍しいわね、アンタがそんなこと言うなんて」

 

頭脳とプライドと高さは文月でも指折りである雄二が、こうもはっきりとお手上げ宣言をするのは初めてかもしれない。Fクラスのメンバー達はもとより、幼馴染みである翔子ですらやや驚いた表情で雄二に視線を向けている。

そんな周りの心情を汲み取ったのか、雄二は肩を竦めつつ説明する。

 

雄二「……仕方ないだろ、アイツらがいろんな意味で未知数過ぎるんだからよ」

秀吉「んむ?雄二、どういうことじゃ?」

雄二「まず和真だが、昼食時に和真がちらつかせた“気炎万丈の境地”とやらがどういうものか、そしてそれが試験召喚戦争でどう役に立つかはわかんねぇ。かといって鳳も……」

ムッツリーニ「………“明鏡止水”に入った状態の鳳を、追い詰めた人がまだいない」

翔子「……だから、彼はまだ強さの底が見せていない」

雄二「そういうことだ。……ま、たとえそれらがわかっていたとしても、あの二人の勝敗を予想することは困難だろうがな」

姫路「え?どうしてですか?」

雄二「意図的かそうでないかに関係無く、あいつら二人とも周囲への影響力が半端じゃねぇ。そんな奴らが直接ぶつかるんだぞ?……試合中に急成長しようが突然覚醒しようが不思議じゃないだろ」

明久「いやいや雄二……いくらあの二人でも一試合でそんな-」

雄二「鳳が“明鏡止水の境地”とやらに至ったのも、多分前回野球大会でアイツらがぶつかったせいだろうからな」

 

実例を言われて明久及びFクラスメンバーは押し黙る。参考までに“明鏡止水”到達者の平均年齢は40前後、歴代鳳家当主の中でもトップクラスの資質を持つと言われる秀介でさえアラサー1歩手前でようやく至ったのだ。明久のような頭を空っぽにする天才、というか頭が空っぽな人間でもない蒼介がここまで早く“明鏡止水”に足を踏み入れられたのは、決して才能だけは片付けられないというのが雄二の見解だ。

 

雄二(……アイツらは完全に『混ぜるな危険』だ。本音を言えば、できればこんな前座みてぇな大会で和真を鳳にぶつけたくはなかった。はっきり言ってリスクが大きすぎるからな。……かといって和真にわざと負けろなんて言っても聞くわけないし、下手したら俺が半殺しにされかねん。それに副賞の腕輪をAクラス、それもよりによって鳳に持ってかれんのもリスキーではある……チッ、ここまで来たら腹くくるしかねぇ!絶対負けんじゃねぇぞ和真!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Fクラスの主力メンバー達が揃って和真の勝利を信じて見守る一方、さっきまでバラバラに散らばって観戦していた意外と団結力の乏しい(特に徹)Aクラスの主力メンバー達も、いつの間にか示し合わせていたかのように一ヶ所に集っていた(ただし徹は除く)。

 

沢渡「さーて、柊君と代表はどっちの方が強いのかな~?実を言うと前々から気になってたんだよね~」

二宮「おい沢渡、そんなフワーっとした発言はおそらく控えるべきだろう。それにお前もAクラスなら、ここは鳳の勝利を信じるべきじゃないのか?……多分」

沢渡「フワーっとしてんのは二宮君でしょうが……。いい加減その歯切れの悪い言い回しやめなって言ってるでしょ、真面目なのかいい加減なのか判断に困るじゃないの」

二宮「む、それもそうかもしれないな……前向きに検討しておこう」

沢渡「ダメだコリャ……」

優子「はいはい二人とも、くだらない言い争いはその辺にしておきなさい」

 

優子の仲裁を受けた二人は、特に文句を言うこともなく引き下がった。この二人の口喧嘩(弱)は結構な頻度で行われるが、一度たりとも険悪な雰囲気になったことがない。軽薄な性格かと思いきや、実は思慮深く意外と場の空気を読める沢渡晴香と、真面目過ぎる故にあらゆる可能性を考えてしまい、どんな物事も決して断定することができない二宮悠太。何かとセットで扱われることも多いこの二人の相性は意外にも結構良く、その証拠に二人のコンビネーションはAクラスでも飛鳥と優子に次ぐレベルであり、予選でもその高い連携力を活かしてピースをかき集めたらしい(本戦は個人戦、かつ両者とも格上が相手だったのでそれはもう見事に散ったが)。

 

久保「まあ、確かに沢渡さんの言う通り気になるね」

佐藤「常識で考えれば強さが成績に比例する召喚獣の闘いで、鳳君に勝てる生徒がいるとは思えないけど……」

飛鳥「うん、そうね。……対戦相手がいろんな意味で常識とは無縁の和真で無ければね」

愛子「優子としては複雑なんじゃないかな~?クラスの代表である鳳君と大好きな和真君、どっちを応援するか迷ってたりして-」

優子「代表に決まってるでしょうが。優勝商品の腕輪は勿論のこと、近い内にFクラスはアタシ達に宣戦布告してくるでしょうし、ここでFクラス最強の和真を下して向こうの士気を削いでおきたいわね」

愛子「あ、うん…結構シビアなんだね……」

優子「クラスの命運がかかってるからね、勝負ごとには非情に徹するわよ。……それに私の大好きな和真は一回負けたくらいで挫けるほど軟弱じゃないわ」

愛子(そして堂々と惚気られた……)

 

少し前までちょっとからかっただけで慌てふためいていたのに……と、愛子は少し寂しくなったそうな。

ちなみに徹は先程騒ぎを起こした罰として補習室に軟禁されている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

綾倉「……二人とも、準備が整ったようですね。それでは召喚獣を喚び出してください」

和真・蒼介「「試獣召喚(サモン)!」」

 

ゴーグルを装着し視覚リンクを起動させた二人は、綾倉先生の指示に従って召喚獣を喚び出す。展開された幾何学模様から、片やロンギヌスの聖槍を、片や草薙の剣を携えた召喚獣が現れた。

 

 

《総合科目》

『二年Fクラス 柊和真 5714点

VS

 二年Aクラス 鳳蒼介 7799点』

 

 

蒼介(点数差2000点ビハインド……)

和真(重てぇハンデだなオイ……)

 

誰がどう考えも蒼介が圧倒的に有利な初期点数だが、あの和真が相手では常勝を断言できる程ではない。そしてそのことは蒼介が誰よりも理解していることである。

両者は得物を構え試合開始の合図を待ったが…

 

綾倉「二人とも、申し訳ありませんがフィールドの端まで寄ってもらえますか?」

和真・蒼介「「?」」

 

綾倉先生は突然そんなことを言い出した。二人は脳内にクエスチョンマークを浮かべつつ、指示されたとおりにフィールドの端に移動する。既に視覚は召喚獣の視点なため、もしハードラックに溺愛されている明久だったりしたらフィールドの外に転げ落ちる……なんてコントみたいな光景になったかもしれないが、二人は何の支障もなくフィールドの端ギリギリで制止した。

 

綾倉「よし、これで準備完了です。それでは……ラストバトルモード、起動!」

和真・蒼介「!?」

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

 

突如、バトルフィールドは円柱形にくり貫かれ綾倉先生と召喚獣達ごとせり上がっていき、5mほど上昇したところで制止。そしてガシャコンガシャコン…と、やたらとメカメカしい音をたてながら元の5倍ほどの広さの円状に変形、そして召喚フィールドはそれに合わせるかのように拡大した。

 

綾倉「最終決戦の舞台が従来のフィールドではつまらないでしょう。これぞ決勝戦のためだけに“桐谷グループ”が開発した特殊召喚フィールドシステム……その名も『スカイ・フィールド』です!」

(((ま た “桐 谷” か)))

 

毎度毎度、“桐谷”は派手なギミックを披露しなきゃ気が済まないのか。それでいてグループを取り仕切っていた桐谷蓮もその代理に抜擢された宮阪桃里も見るからにユーモアセンスが欠如した人物なのだから世の中わからないものである(まあ今“桐谷”を取り仕切っているのは桃里ではなくベルゼビュートなのだが)。

 

和真「ハッ、重ね重ね派手好きなこった。……個人的には嫌いじゃねぇがな」

蒼介「そうだな、賑やか過ぎるくらいが丁度良いだろう。……思えば振り分け直後にお前に宣戦布告されてから、こうしてお前と雌雄を決するまで、随分と待たされたものだ」

和真「そいつは悪かったな、待たせた分はしっかり楽しませてやるよ……対価は黒星で支払ってもらうがなぁ!」

蒼介「それはできない相談だ。私のプライドにかけてお前には……お前にだけは、負けるわけにはいかない!」

綾倉「両選手共やる気十分なようです!それでは……試合開始!」

 

決戦の火蓋が今、切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学園長「あの金ヅル共いったいどういうつもりさね!?」

 

コロッセオ全体がエキサイトする中、学園長は全く違う理由でエキサイトしていた。怒りのあまり大事なスポンサーを金ヅル扱いする始末である……いや、これが本音だろうか。

そろそろトーナメントが終了するので表彰式の段取りをスポンサーに伝えるべく貴賓席まで足を運んだのだが、鳳藍華・桐生舞・橘大悟・宮阪桃里の四人が姿を消していた。つまり四代企業の代表者が揃って雲隠れ、このままでは締め括りである表彰式がグッダグダになること請け合いである。

 

学園長「“橘”のバカはいつものことだけど、まさか残りの三人までボイコットとは……」

藍華「他の二人はともかく、私は少し席を外していただけですよ学園長」

学園長「っ、戻ってきたかい!いったいどこにいって………………」

 

学園長声のした方を振り向くと、藍華が秀介を引き連れてこちらに歩いてきていた。これだけ盛大に遅刻したにもかかわらず、秀介の表情からは罪悪感だの後ろめたさはまるで読み取れない。いつものように無駄にカリスマオーラを振り撒きながらムカつく程余裕のある微笑を浮かべている。

 

秀介「やぁ学園長、御壮健で何よりです」

学園長「よくおめおめと顔を出せたものだねこのバカタレが!……聞くだけ無駄だとは思たうが、この度を越した重役出勤に何か申し開きはあるかい?」

秀介「いやぁ……少々人生という道に迷ってしまって」

学園長「ほぅ、そうかい。……で、実際はどうさね?」

藍華「いつも通り迷子です」

学園長「またかい!いい加減秘書の一人でもつけろと何度も言ってるだろう!」

秀介「いや秘書ならいるんだが、最近は蒼介の身辺警護に割り振っていましてねぇ。それに彼を差し置いて秘書を雇うのは不誠実ですし」

学園長「ことあるごとに遅刻するのは不誠実じゃないのかい!?そもそもアンタは-」

 

持ち前の面の皮の厚さで学園長の説教を話し半分に聞き流しながら、秀介は重役が三人同時に姿を消したことに思考を巡らせる。

 

秀介(彼らが行動し始めたということは、アドラメレク一派が表立って行動するのも時間の問題だろうね………至急『鳳翼の七雄』を召集しよう)

 

『鳳翼の七雄』……鳳家当主直属の七人。

彼らに命を下せるのは鳳家でも“鳳財閥”でもなく、鳳家当主ただ一人。当主が入れ替わるたびに選別され、仕えた人物が当主の座を降りると同時に解体される。

その存在を知るものは極少数、構成員全てを網羅する者は当主ただ一人。

 

秀介(やれやれ……本来彼らは表立って活動すべきではないんだがね。『鳳翼の七雄』は…………鳳の闇そのものと言っても過言ではないからね)

 

 

 




さて、本格的な対決は次回からです。
フィールドのテコ入れをした理由はあの二人が闘う舞台にしては狭すぎると思ったからです。
二宮、沢渡のキャラを今さら肉付けしたのは、せっかくのオリキャラなのにモブ同然の扱いではあんまりじゃないかさと思い直したからです。

え?時任君?もう二度と出ないかもしれませんね。



『鳳翼の七雄』。
「また新キャラかよ、しかも七人も……」と思う人がいるかもしれませんが……安心してください、5/7が既存キャラないし既存キャラの身内です。



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