バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

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やっとVSゴライアスが終わった……
次回からはようやく準決勝です。

※御門空雅のプロフィールを更新しました。


Goliath③

『ほらほら、頑張って逃げないと死んじゃうよ?』

御門「ほんっとうにメンドーな……玩具だな……!」

 

間髪いれずに襲い来るミサイルの雨を、御門は再び安全圏が生じるように、ミサイルの着弾を誘導しながらかわしていく。御門の並外れた頭脳があって初めて成立する超高等テクニックだが、それでも状況を好転させるには至らない。

 

『よく全てかわしたね……と言いたいところだけど、しばらく動けないでしょ?なんせ君の周りは再び毒で満たされちゃったからね♪』

 

ゴライアスの放つハザードミサイルは爆発と同時に毒性の粉を撒き散らす。放っておけば一定時間たてば消えるが、召喚獣に付着した粉はその召喚獣が消えるかゴライアスを倒すまで持続し、しかも付着した量に比例して召喚獣の体を蝕んでいく。

 

『そして身動きのとれない敵を放置するほど、ゴライアスは甘くないよ♪』

御門「っ…!」

 

ゴライアスは両手の指先をその場に留まったままの御門に向け、躊躇無くデストロイレーザーを発射した。

なおもその場に留まればレーザーに撃ち抜かれ、レーザーをかわせば毒の侵攻を早めてしまう。そんな追い詰められた状況で御門が選んだ答えは…

 

御門「喰らって……たまるかぁぁあああっ!」

『へぇ……♪』

 

…そのどちらでも無かった。御門は『ラディカル・グッドスピード』を前回にして天井まで大きく飛び上がることで、毒を浴びることなくレーザーを回避した。

 

御門「うぉぉぉおおおおおっ!」

 

そして天井を足場に三角飛びを行い、デストロイミサイルの爆心地から離れて着地した。

 

『ふむ、中々やるね……でもゴライアスは再び君の周囲を爆心で埋め尽くすよ♪』

 

その言葉を裏付けるかのように、ゴライアスは両肩からミサイルを発射していく。

 

『まぁ同じことを繰り返せばまた無傷で逃れられるだろうけど……そんなこと繰り返している内に、君の点数が無くなっちゃうよ?』

 

 

《総合科目》

『学年主任 御門空雅 187-点

VS

 ???  Goliath  18456点』

 

 

そう、御門は一度浴びてしまっている。このまま膠着状態に陥れば最終的に敗北するのは点数が削られていく御門だ。

 

『意地なのかかそれともプライドなのか、無理矢理平静を装っているようだけど……フィードバックで全身が焼けつくように痛むだろう?神経毒のような性質になるように設計したからね。もし君にもう打つ手が無いのなら、足掻けば足掻くだけ苦しむだけだね。あぁ、なんて可哀想で……』

 

文面だけを読み取ればあたかも御門を気遣うような口ぶりだが、元凶であるこいつにそんな優しさなどある筈が無い。かといって彼の声色から読み取れる感情は、呆れや侮蔑といったものでもなかった。

  

 

 

 

 

 

 

『……実に喜劇的じゃないか♪

人が死の淵でもがきながら、それでもどうすることもできず絶望して死に行く様は、このくだらない世界の数少ない娯楽だよ♪』

 

そこにあるのは狂気的なまでの悪意ただ一つ。

御門が苦しみを押し殺しながら衰弱していく様子を、コメディか何かを見ているかのように楽しんでいる。

 

『正直やや期待外れだったけど……これはこれで愉快だね♪のまま君は毒に蝕まれ、自分の無力さを後悔し、君の人生を狂わせた僕らを憎悪しながら死んでいく……そのザマを間近で見物することこそ、まさにお金で買えない価値のあるものだと思わないかい?』

御門「……っ……!」

 

外道と言う言葉すら生易しいファントムのドス黒い本性に、しかし御門は何も答えなかった。……と言うより、既にそんな余力は無くなりつつあるのだろう。無理もない、フィードバックで全身の神経が焼けるように痛むのを堪えながら、ゴライアスの攻撃を凌ぎ続けているのだから。このままではファントムの思惑通りの結末を迎えるだろう。

 

御門(ああ痛ぇ……クソッ、いよいよ意識も朦朧としてきやがった……

 

俺の人生、こんなところで打ち切りか……

 

安月給でもいいから休みが多くて残業しなくていい職場で働いて、ブスでもいいから口喧しくねー女を嫁さんにして、周りには迷惑かけることなくドラマチックな出来事にも出くわさずつまらねー人生を送り、還暦前頃にニコチン過剰接種が原因の肺癌とかでポックリとくたばる……ってのが、ガキの頃俺の描いた理想だったっけ……

それがまさか、残業だらけで一日たりとも休みの無い会社で働いて、美人っちゃ美人だけど何かとキーキー喧しいお節介バカ娘になつかれて、挙げ句の果てに世界の命運を左右する事件と関わってアラサー前にくたばる羽目になるとはな……ほんとままならねーもんだな、人生ってやつはよー……俺だけならまだしも、何故か俺と関わった連中も次から次へと不幸になっていくし……親父にお袋、同じ学科の奴ら……それに、キュウリもだな。はー…だから俺に関わるとロクなことないって散々言ったのに、ようやく断ち切れたと思ったら知らん内に洗脳されてたしなー……もし神がいるなら俺どんだけ嫌われてんだよ……?

 

 

 

はぁ、まった…く……やに……なる……ぜ…………)

 

いよいよ消えゆく意識の中で御門はほんの一瞬、自嘲するかのような笑みを浮かべ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビリィィィイイイイイッ!!!!!

 

「~~~~~ッッッ舐めてんじゃねーぞクソ野郎がぁぁぁああああっっっ!!!」

 

手の生爪を強引に剥がし、朦朧としていた意識を無理矢理覚醒させた。

 

御門(……ふざけんなクソ野郎。

死んでたまるか。

終わってたまるか。

こんな結末絶対認めてたまるかよ。

たとえ俺の命に代えても、お前らだけは地獄に落とすって決めてんだよ。

それにアイツを……キュウリを……親しい奴を不幸にしてばかりの疫病神の俺なんかを慕っちまってるあのバカ女だけは、意地でも取り返さなきゃなんねーんだよ!)

 

滅ぼすべき存在と守るべき存在がこの世にいる以上、何があろうと彼の灯火は決して消えない。失ってきた多くの大切な人達が彼の背を押したかのように、御門空雅の闘志が再び燃え上がる。

 

『ふふふ、この状況で闘志を吹き返したのは実にお見事♪……だが気合いや根性では戦況はひっくり返らないよ?』

御門「安心しな、そんな俺と対極なもんにすがったりしねーよ……たった今、勝利の方程式が完成したからよ!」

 

御門は『ラディカル・グッドスピード』で加速しながらゴライアスに接近する。当然ゴライアスはデストロイレーザーで迎撃するが、御門はいとも容易くかわしながらゴライアスに肉薄し、そのままゴライアスに向かって跳躍する。

 

『血迷ったのかい?不用意に跳べばカタストロフィーの餌食になるよ』

御門「だったら試してみな!」

 

御門は再び回し蹴りを放つが、案の定カラミティベールに威力の大半を削られた、御門は空中で無防備を晒してしまう。

 

『やはり前と同じじゃないか、つまらない。最後の最後でガッカリさせてくれるね……そんなに死にたいなら跡形もなく消し飛ぶがいいさ』

 

ファントムの呆れ声に呼応するかのようにゴライアスの胸部の装甲が開きコアが露出する。そして膨大なエネルギーが収束し…

 

 

ドォォォオオオオオッッッ!!!

 

 

全てを灰塵に帰す極大レーザーが放たれ、無防備な御門に迫り来る。が…

 

御門「かかったなボケが!(ヒュンヒュンヒュン…ガキンッ!)」

 

レーザーが直撃する直前、御門は前もって取り出していた鉤縄をゴライアスの足に引っかけ、ターザンの要領でレーザーを回避した。ゴライアスがどのタイミングでカタストロフィーを撃ってくるか理解していなければ不可能な芸当だ。

 

『……へぇ。よくゴライアスが自発的に行動を行わないないってわかったね』

御門「生憎、こう見えて頭脳派なんだよ」

 

そう、ゴライアスは今まで敵と定めた御門の行動に合わせて動いていただけに過ぎない。近づいてきたり動きが止まればデストロイレーザー、遠ざかればハザードミサイル、攻撃されればナイトメアベール、それによって隙ができればカタストロフィーといった具合に、敵の各動作に反応するだけの非常に単純なメカニズムで動いていたのだ。

 

御門「さらに……ここだ!『ソウルキャノン』!」

 

御門の利き脚にバチバチと火花を散らしながら高密度のエネルギーが集まり、御門はそれをゴライアスの胸元のコアに向かって蹴り放った。

ランクアップ能力『ラディカル・グッドスピード』にはフィールド内を移動するごとに、ほんの少しずつエネルギーを蓄積する隠れた特性がある。『ソウルキャノン』とは溜まったエネルギーを足に集中して放つ一日一度きりの奥の手である。

機動力を犠牲にしたゴライアスにそれを避ける術はなく、またコアはナイトメアベールの恩恵を受けないらしく、エネルギー弾は直撃しコアは跡形も無く砕け散った。

 

 

《総合科目》

『学年主任 御門空雅 110-点

VS

 ???  Goliath  13456点』

 

 

コアを狙った御門の判断は間違っていなかったようだ。これまでとは比較にならない大ダメージは勿論のこと、ゴライアスを覆っていた厄介なベールが影も形も無く消え去った。

 

『ふむ……ゴライアスのコアは脆いかわりにある程度のダメージは自己修復できるけど、ここまでの損傷を受けちゃそれも無理そうだし……これは終わったかな?』

御門「ああ、これでシメーだ」

 

放たれるレーザーを回避しながら、御門はゴライアスの周りを加速しながら駆け抜ける。

 

御門「……『六根・六入』色・声・香・味・触・法」

 

さらに加速ながら駆け抜ける。迎撃のレーザーなど当然かすりもしない。

 

御門「……『三不同』好・平・悪」

 

さらに加速する。あまりの速さにゴライアスは対象を見失い、迎撃体勢に入れない。

 

御門「『太極』浄と染!

 

『三世』過去・現在・未来

 

計108煩悩!」

 

 

そして御門の姿が完全に消えたかと思えば、次の瞬間にはゴライアスの真正面に現れ…

 

 

 

御門「108(ワンオーエイト)マシンガン!!!」

 

 

ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドォォオオオンッッッ!!!!!

 

 

百八発もの蹴りを浴びせゴライアスを吹き飛ばし、そのまま大広間の壁に叩きつけた。超加速による補正が加わった御門の蹴りの威力は凄まじく、ベールを失った装甲は無惨にも砕け散り…

 

 

 

《総合科目》

『学年主任 御門空雅 614点

VS

 ???  Goliath  戦死』

 

 

点数を削り勝負を決めた。ゴライアスはその場に力無く倒れ、そして瞬く間に消滅してしまった。

 

『あーあ……せっかく苦労して作ったのに、よりにもよってテストプレイで壊れてしまったか。景気よくぶっ壊してくれちゃってまぁ……』

御門「そりゃ残念だったな。覚えとくんだな……人生ってのはままならねーもんなんだよ」

 

 

 

 

 




技名の元ネタは『コロッケ!』のリゾットの技から取りました。煩悩は108から連想して結びつけただけですが。


ソウルキャノン……加速するために少しずつ溜まるエネルギーを足に集中して放つ技。一度使うとその日はエネルギーが収縮しなくなるため一度きりの切り札である。

108マシンガン……コントロールできる最大限まで加速してから相手に肉薄し、超高速の蹴りを浴びせる。口上は筆者のちょっとした悪ノリなため今回限り。


ゴライアス・コア……中心部分に取り付けられたエネルギーの供給源。5000点もの体力を持ちさらに事故修復機能までついているが、デリケートなパーツのため耐久力は脆弱の一言。ゴライアスに武装には物凄いエネルギーを必要とするが、このコアを通じてアドラメレクから無尽蔵にエネルギーを補給できるため、このコアが生きている限りエネルギー切れになることはない。反面このコアを破壊されればエネルギーは有限になる上に、ナイトメアオーラとカタストロフィーが使えなくなる。






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