あ、前回ではおっちゃんが追い詰められている状況で終わりましたが、最初からちゃんと描写するのでご安心を。
御門「ラディカル・グッドスピード!」
先に仕掛けたのは御門。白い装甲をその身に纏い、ランクアップ能力で際限無く加速しながらゴライアス目掛けて突撃する。戦術は先手必勝、この鉄巨人がどれほど凶悪な性能だろうと本領を発揮させる前に主導権を握ろうとしているようだ。
『んー……勇ましいけど流石に少し軽率じゃないかな?そんな不用意に近づくと火傷するよ?』
御門「チィッ…!」
接近する御門に反応しゴライアスは立ち上がる。そして両手を御門に向け、その指先一つ一つから凄まじい威力を伴ったレーザーを次々と放つ。御門は一旦ゴライアスへの接近を止め回避に専念するが、レーザーによる段幕攻撃は御門を次第に追い詰めていく。そして…
御門「ぁぎっ!?」
とうとう一発のレーザーが御門の左脛を掠める。明久のそれとは比べようもない100%フィードバックによる信じがたいほどの激痛に御門は苦悶に満ちた表情になりながらも、無限加速を活かしてレーザーの包囲網からなんとか抜け出した。が…
『残念、ゴライアスに死角は無いんだよ♪近づく敵に放つデストロイレーザーに対し、遠ざかる敵には……』
突如ゴライアスの両肩の装甲が開き、そこに仕込まれていたミサイルが距離を取った御門に向かって次々と飛来する。
『ハザードミサイルが牙を剥くのさ♪』
御門「っ……殲滅兵器の名は伊達じゃないってか!だがそうなんどもそんなトロい攻撃に当たってたまるかボケ!」
『ふふふ……』
数多のミサイルには追尾機能があるらしく御門に狙いを定めて降り注ぐが、御門の超スピードには追い縋ることができず地面に着弾し爆発。その結果いくつもの爆心が広がり御門を飲み込もうとするが…
御門「当たらねーつってんだろうが!」
超加速を跳躍力に変換し御門は飛翔する。悠々と爆心の射程から逃れ、そしてそのままゴライアスに接近し回し蹴りを放った。
御門「っ……!?」
『お見事……と言いたいけど残念♪その程度の攻撃ではナイトメアベールに通用しないよ』
存分な加速を伴った筈の御門の蹴りは、突然ゴライアスの体全体を展開したオーラに威力の大半を削られた。当然御門は空中で無防備を晒してしまう。
御門「しまっ-」
『さて、耐えきれるかな?』
ゴライアスの胸部の装甲が開き、コアらしき物体が露出する。そしてそのコアに膨大なエネルギーが収束し…
ドォォォオオオオオッッッ!!!
先ほどのそれとは比べ物にならない極大のレーザーが放たれ、無防備な御門を容赦なく飲み込んだ。
御門「ぐぁぁあああっ!?(ドゴォンッ)カハッ……!!」
『ワオ、飛んだ飛んだ♪』
遥か後方に吹き飛ばされ大広間の壁に背中から激突する。もし御門が身体を召喚獣化していなければ跡形もなく蒸発していたであろう莫大な熱量を浴びたダメージは当然ながら甚大で、御門はそのまま力なく崩れ落ち地面に倒れ込んだ。
『効いただろう?僕がこいつに組み込んだ五つのプログラムの中でも、カタストロフィーは言わば切り札とも言うべきウエポン。その熱量は驚異の3億ジュール、掛け値無しの殺戮兵器さ。召喚獣と一体化して肉体強度が大幅に底上げされている上に、その状態では点数が0にならない限りどうやっても死なないから五体満足でいられるだろうけど、こうもまともに浴びてしまっては意識を保つことすら……おや?』
御門「ゲハッ……ハァ……ハァ……へっ、ちっとも効かねーよ……なんなら煙草の火に丁度良いくらいだ……笑わせるぜ、なーにが殺戮兵器だ……こんなオッサン一人殺しきれねー兵器なんざ、不良品も良いとこだぜ……!」
全身を覆っていた装甲はボロボロになり、口に加えた煙草は熱で消し飛び、生まれたての小鹿のように足を震わせながらも、御門はすぐさま立ち上がり強い意思を秘めた目でゴライアスと『ファントム』を睨みつける。誰が見てもわかるほどの明らかな強がりだが、御門の闘志が欠片も萎えちゃいないことに『ファントム』は満足そうに笑う。
『ふふふふふ、この程度では折れないか……。いいね、それでこそ僕の敵に相応しい。だけど……おやおや、』
《総合科目》
『学年主任 御門空雅 3321点
VS
??? Goliath 19256点』
『随分と削られたねぇ……それで、スクラップはいつ出来るのかな?』
御門「……ッ!……ハァ…ハァ……っ!」
挫けぬ心があろうとも、それだけでは状況は好転しない。ゴライアスは胸部の装甲を閉じ、再び両肩からミサイルを発射する。
御門「!……うぉぉおおおっ!」
再び際限無く加速しミサイルをかわしていく御門。ただし不用意に空中に逃げれば再びカタストロフィーの餌食になりかねないため、御門はミサイルの追尾性能や爆心の範囲などを瞬時に計算し、安全地帯ができるようにミサイルの着弾を誘導するようにかわしていく。
『ほほう、ハザードミサイルの追尾性能を逆手に取ったか……ではゴライアスの点数をどうやって削りきるつもりだい?先に教えておくけど、ゴライアスを覆うナイトメアベールは生半可な威力じゃ消し去れないよ』
御門「……なら、消し去るのはやめだ」
御門はさらに加速しながらゴライアスに接近する。当然ゴライアスの指先からデストロイレーザーが御門に向かって放たれるが先ほどのように不意をついたのならともかく、レーザーだろうと来るとバレている攻撃では今の御門は捉えきれない。御門はレーザー弾幕を掻い潜ってゴライアスに肉薄し…
御門「おらぁっ!」
足に蹴りを入れてすぐさま離脱し、再び近づき蹴りを入れて離脱し……それを延々と繰り返すヒットアンドアウェイ戦法に持ち込んだ。
『何をするかと思えば……そんな軽い蹴りじゃあナイトメアベールは-』
御門「破れるかどうかと本体が無傷かどうかは、また別の問題だろーが」
『! へぇ……』
御門「そのオーラ、攻撃を完全に遮断することはできねーんだろ?」
《総合科目》
『学年主任 御門空雅 3321点
VS
??? Goliath 18956点』
御門の仮説を裏付けるかのように、ほんの僅かにだがゴライアスの点数は削られていた。
『少々驚かされたねぇ……どうやって見抜いたのさ?ヒントらしいヒントは無かったと思うけど』
御門「別に根拠なんざねーよ。さっきの回し蹴り、大半の威力を殺されたがそれでも効いたには効いた。俺の教え子が使ってたバリア系能力は威力を殺しきれなかったら消えたってのに、そのなんちゃらベールは以前として展開されてやがったのにそのデカブツにダメージが入ったっつーことは……そのベールは一定量の威力を削るんじゃなく、ダメージの何割かをカットする効果なんじゃねーかって思っただけだ」
『なるほど、大胆な仮説だね。でも一つ聞いていいかい?確かにナイトメアベールは君の仮説通りダメージを1/3にするという性能だけど……もし違ってたらまた無防備を晒す羽目になってたよねぇ?そのときはどうするつもりだったんだい?』
御門「……んなこと知ったこっちゃねーよ。思いついたら即実行、もし違ってたらそんとき考えりゃいいだろうが」
『……くくく、清々しいほど行き当たりばったりだねぇ』
御門「呑気なもんだな、何か手を打たねーと自慢の兵器がスクラップになっちまうってのに」
こうして会話している間も、御門はヒットアンドアウェイを繰り返し確実にゴライアスを削っていく。
『手を打つも何もゴライアスは自律型召喚獣、僕が操作しているわけじゃないんだよ?』
御門「そうかい、だったらそこで指を加えて-
-ガハ…ッ!?」
『それに……そんな単純な戦術でゴライアスを攻略しようなんて、浅はかとしか言いようがないねぇ♪』
《総合科目》
『学年主任 御門空雅 519-点
VS
??? Goliath 18456点』
突如として御門の全身に激痛が走り、それに連動するように御門の点数が削られていく。激痛に苛まれながらも御門は自身に起きた原因を探る。
ふと、爆心地帯周辺に透明の粉が舞っていること、そして高速で動き回っていたからか自身にその粉がまとわりついていることに気がつく。これだけ情報が揃えば聡明な御門は嫌が応にもこの物質の招待に気づいてしまう。
御門「…………毒、か…!?」
『ご名答♪ハザードミサイルには実に愉快な落とし穴があってねぇ……爆発と同時に撒き散らすのさ♪それも注意深く凝視しなければ視認できないような毒性の粉をね。召喚獣にしか効かない上に、少量ならばなんの効果も無い微毒だけど、経皮感染だから君のようにむやみに動き回っていれば十二分に効果を発揮する。……さて御門君、今の君の点数でゴライアス相手に耐久戦を仕掛ける余力があるのかなぁ?』
ゴライアス
・総合科目……20000点
・能力(ゴライアス・プログラム)……デストロイレーザー、ハザードミサイル、カラミティナックル、ナイトメアベール、カタストロフィー
・ステータス
(総合科目)
攻撃力……MAX(最大)
機動力……min(最小)
防御力……MAX(最大)
機動力を犠牲に圧倒的な火力と耐久力を突き詰めた超重量級召喚獣。最後の能力カラミティナックルは所謂ロケットパンチだが、超スピードで動く御門相手に使用されることは多分無い。
ちなみに比較として、雷が約1.5億ジュールです。
雷の二倍の熱量のビームを撃てるゴライアスがすごいのか、それに絶えたおっちゃんがすごいのか……。
あ、「点数が0にならない=死なない」であって「点数が0になる=即死」ではありません。