バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

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若干スランプ気味です……書く内容は決まっているのに何故か筆が進みません……。


準決勝②『見えない刃の檻』

和真「オラオラどうした?そんなもんかよ梓先輩よぉっ!」

梓「調子に乗っ取んなぁこんのガキャあ……!」

 

干将を失い手数を減らした〈梓〉に、好機とばかりに攻めて攻めて攻めまくる〈和真〉。以前フリースペースで闘ったときは梓に槍の猛攻を容易くいなされていた和真だったが、二人の対照的な表情から今回は明らかに和真が梓を追い詰めているのが見てとれる。

以前のように〈梓〉が向かってくる槍の側面を強打して捌こうとしても…

 

和真「しゃらくせぇっ!」

梓「嘘やろ!?」

 

〈和真〉は超反射を駆使して即座に手首を返し干将を真っ向から迎撃する。このように純粋な力比べに持ち込まれれば、地力で劣る〈梓〉は拮抗することなく吹き飛ばされる。激突の瞬間に大きく後ろに飛んでいたためダメージは最小限に留めたものの、大きく隙を晒した〈梓〉に追撃の刺突が迫る。再び〈梓〉は攻撃を受け流そうとするが〈和真〉もすかさず…と、このように徐々にだが〈梓〉は追い込まれている。操作技術はほぼ互角、召喚獣同士の戦闘経験の差は和真のずば抜けたバトルセンスにより無いも同然、というか視界のリンクという新システムでやっているのでむしろ和真に分がある。そして点数は元より召喚獣のスペック差……早さも速さも遅れを取っているようでは、この状況も致し方ない。二人の力関係はここにきて完全に逆転したと言えよう。

 

 

しかし梓は言わずと知れた文月一のトリックスター、劣勢へと追い込まれていく戦況をただ指をくわえて耐えていただけの筈が無い。彼女はさも追い詰められたかのような表情を取り繕いつつ、千載一遇のチャンスを虎視眈々と狙っていたのだ。

 

 

そして…

 

 

 

《総合科目》

『三年Aクラス 佐伯梓 2501点

vs

 二年Fクラス 柊和真 4659点』

 

 

梓(!…ここやな、勝負どころは!)

和真(梓先輩の顔つきが変わった!?何か仕掛けてくるか……!)

梓(さぁ、追ってこいや!)

 

〈梓〉は〈和真〉に背を向け全速力で逃走する。槍使いに対する逃走の手段としては下の下だが、和真はこれまでの梓との闘いの経験から間違いなく罠であると確信する。

 

和真(……ハッハァッ!攻めあるのみぃっ!)

 

……しかし以前ならまだしも“気炎万丈”へと至った今の和真に慎重さなどありはしない。とる戦略は当然の如く正面突破、〈和真〉は罠とわかっていながらもお構いなしに槍を構えながら〈梓〉へ向かって進撃する。

 

 

 

そして〈梓〉が槍の射程内に収まる寸前…

 

 

 

四方向から〈和真〉めがけてヨーヨーブレードが襲いかかる。

 

和真「-んなっ!?」

 

流石の和真も完全に予想外の攻撃に虚を突かれ、4つのヨーヨーブレードは〈和真〉に逃げる暇も避ける余力もそのまま与えず着弾する。

 

『……え?』

『な、何が起こったんだ!?』

『今のは……佐伯先輩の腕輪能力……?』

『いやおかしいだろ!?佐伯の青銅の腕輪の能力封じは、確か自分にも…』

 

 

梓「ふっふっふ、青銅の腕輪つけてんのになんでウチだけが能力使えるのか知りたいやろ?それはなぁ……こういうことや!」

 

パキッ

 

ざわつく観客に種明かしをするように、梓は右腕に嵌められた青銅の腕輪を引きちぎるように取り外した。

……否、引きちぎったにしてはやけにアッサリと腕輪が割れた。梓が和真並の怪力の持ち主だと仮定しても、腕輪が割れたのにほぼ無音だったことは流石に不自然過ぎる。そもそもあの腕輪はそんな簡単に壊れるような物ではない。しかし…

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()話は別である。

 

梓(すまんな和真、性懲りもなくまた二つほど騙さしてもろたわ。……まず一つ目はウチやアンタの腕輪能力はハナから封じられてなかったことや。実を言うとリンネのときに既に、な)

 

梓は二回戦で青銅の腕輪を杏里に投げ渡した。あの行動はいつもの突発的な行動に見えて、事前に打合せもした綿密な布石だったのだ(杏里の困惑した態度も全て梓に指示されてした演技である)。そして杏里は預かっている間に青銅の腕輪を、少し力を込めるだけで割れるぐらいまで破壊する。金属製の腕輪だろうが、和真に比肩するほどの怪力の持ち主である杏里にとってはそう難しいことではない。 

もちろん精密機械にそんなことすれば故障して当然である。しかしリンネも和真も青銅の腕輪の効果を知っているが故に、梓が青銅の腕輪をつけている以上、隙ができるリスクを孕んでまで能力を使ってみるような無駄なことはしなかった。……その合理的な判断がかえって裏目に出てしまったわけだが。

いつでも能力を使えると知っていたのは梓のと杏里だけ。つまり彼女は腕輪能力のぶつかり合いで確実に先手を打てるという、大きなアドバンテージを隠し持っていたのだ。

 

梓(そして二つ目は……ウチのヨーヨーはどこからでも出せることや)

 

さらに梓は一回戦で、体中のどこからでもヨーヨーを出せると高らかに謳い上げたがそれも少し嘘。正確に言えば『ヨーヨー・ブレード』は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()(遠隔操作はできないため、体以外から出した場合は一度きりの使い捨てになってしまうが)。

 

梓(さしもの和真も完全に不意を突かれたやろ。……さて、この奇襲で削り切れてたら楽やったんやけど……人生そう上手くいかんなぁ……)

 

瞬間、〈和真〉を覆い尽くしていたヨーヨーが音もなく全て砕け散り、ボロボロになった〈和真〉が姿を表す。相当なダメージを負ったようだが、戦死に至るほどではないようだ。背には三対の光が生えているが、既に空中分解を始めている。

 

梓「咄嗟に腕輪能力を発動させて相殺したんか……いくらアンタでも絶対間に合わん思たんやけ-っ!?」

和真「以前までの俺ならやられてたかもな。だけどごめんな……

 

 

 

今の俺に、そんなチンケな小細工なんざ通用しねぇんだよ」ゴォォォオオオオオッ!!!

梓(……何や……この威圧感は……!?)

蒼介(……なるほど、()()がこの一週間でお前が得たものか)

 

まだ全開ではない今の状態でさえ、“気炎万丈”状態の和真から漏れ出ている闘気の絶対値は、“明鏡止水”状態の蒼介のソレにもひけをとらないものであった。

 

梓「……これは流石に万事休す、やな……」

和真「(フッ…)………おい待て先輩。アンタ、まだ何か仕込んでるだろ」

 

燃え盛る炎のような威圧を消しつつ、和真はお互いの召喚獣の点数を一瞥しながら問いかける。

 

 

《総合科目》

『三年Aクラス 佐伯梓 1点

vs

 二年Fクラス 柊和真 2042点』

 

 

梓「……いくらなんでもビビり過ぎとちゃうか?もうウチやは風前の灯火やで」

和真「とぼけてんじゃねぇよ。アンタの能力『ヨーヨーブレード』の消費点数は一つにつき50点、総合科目なら500点だろうが。なんで四つしか使ってねぇのに2500点も減ってるんだよ?」

梓「………チッ、ひっかからんかったか。そうや、これがウチの切り札……」

 

そこで一旦言葉を切り、〈梓〉は右足の足甲(和真の攻撃により壊れかけ)をはずして投げつける。〈和真〉は迎撃体勢に入るが、足甲は〈和真〉に当たる直前に突然真っ二つに切り裂かれた。

 

梓「オーバークロック『ステルスカッタープリズン』や。これ使うと点数が一点になってしまうけど、その分リターンは絶大や。……たった今、アンタの周りには全てを切り裂く透明の刃が檻のように囲っとる。下手に動くと細切れになるで」

和真「………」

 

自身の最後の切り札を不自然過ぎるほど詳細に説明する梓。よっぽど鈍い人以外なら察せられると思うが、これも梓の嘘である。

 

梓(…………なんてな。ウチのオーバークロックは『アサシンブレード』。全てを切り裂く透明の刃を、50/500点につき一つ設置する能力や。9割方ハッタリやとわかっとっても迂闊には動けんやろうし……既にランクアップ能力を使いきった今、闇雲に腕輪能力は使えんやろ)

 

しかしフィールド内に見えない何かが存在していることは紛れもない事実。直接闘うにしろ腕輪で攻めるにしろ、普通は慎重にならざるを得なくなるだろう。

 

 

梓(さて、今のウチに干将を回収して-)

和真「勝敗の分かれ目は情報力の差、か」

梓「……は?」

 

 

そして和真は周知の通り、精神も資質もおおよそ普通からはかけ離れている。

 

和真「まず一つ目、ランクアップ能力は点数を支払えば復活させられること」

 

 

《総合科目》

『三年Aクラス 佐伯梓 1点

vs

 二年Fクラス 柊和真 42点』

 

 

満身創痍になることを引き換えに、〈和真〉の背から再び三対の閃光の翼が大きく広がる。

 

梓「なっ…!?まずい…とりあえず今は回避に専念-」

 

 

 

 

 

和真「そして二つ目、俺のレーザーはこんな芸当もできるってことだ……レーザーバースト!」

 

瞬間、6枚の翼それぞれから閃光が弾け、召喚フィールド全体を覆い尽くした。通常時を一点集中の収束型レーザーとするなら、この攻撃は言わば全体攻撃の拡散型レーザー。逃げ場が一切存在しない、絶対命中の必殺技である。拡散する以上威力は著しく低下するという欠点はあるが……

 

 

《総合科目》

『三年Aクラス 佐伯梓 戦死

vs

 二年Fクラス 柊和真 42点』

 

 

梓「……あーあ、完敗や。何重にも罠を張り巡らせたのに、全部強引に突破されたらどうしようもないわな」

和真「そりゃ残念だったな梓先輩。騙し合いならアンタに勝てるわけねぇけどよ……どうやら隠し事は俺の方が上手のようだぜ」

 

既に満身創痍の〈梓〉を仕留めることに支障は無い。

あらゆる戦略、あらゆる工夫、あらゆる技術……それら全てを嘲笑うかのように、和真は真正面から全てを蹂躙した。

かくして、準決勝第一試合は和真のリベンジ成功により幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

梓(……さてと、ノビノビとした学生生活はこれで終いやな。そろそろウチも忙しくなりそうや)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《総合科目》

『学年主任 御門空雅 3321点

VS

 ???  Goliath  19256点』

 

 

『おやおや、随分と削られたねぇ……それで、スクラップはいつ出来るのかな?』

御門「……ッ!……ハァ…ハァ……っ!」

 

 

 

 




次回はまたおっちゃん編になります。

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