バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

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佐伯VS和真戦の展開が少し行き詰まったので、今回は全て『おっちゃんの奇妙な冒険』です。
重要な情報が湯水のごとく出てきます。


Goliath①

御門「なん、だ……?こいつは……」

 

大広間に出た御門が目に飛び込んできたのは、全長5mを越えようかと言うほどの巨人であった。ざっと観察しただけでも体のあちらこちらに殺傷力の高そうな武装が確認できる上、生半可な重火器ではおそらく傷一つつけられないであろうとてつもなく頑丈そうな装甲を身に纏っている……と、明らかに平和的な用途では使われないであろう外見である。

その重厚な巨体から感じ取れる威圧感と謎の圧迫感にしばらく呆気にとられる御門だったが、ふと大広間の四隅には召喚フィールド発生装置が設置されていること、それにより全体に召喚フィールドらしきものが展開されていること、そして大広間の先にまた廊下が広がっていることに気付いた。先ほどまで行く手を阻むように次々と自律型召喚獣が行く手を阻んだことから、この建物の持ち主はこの先へ進まれることを忌避していると推測できる。にもかかわらず先ほどまでうざったいほど沸いて出てきていた自律型召喚獣がピタリと出現しなくなったこと、そして謎の巨人は行く手を阻むかのように鎮座していることから、巨人の正体を導きだすことはそう難しい話ではない。

 

御門「まさかこいつ……召喚獣、なのか……?」 

 

パチパチパチ…

 

『御名答♪いやはや、流石だね御門空雅君』

御門「っ!?」

 

拍手と声のした方向に御門が振り向くと、邪悪な笑みを浮かべた仮面を装着し、黒いロングコートを着た『ファントム』がいつの間にかそこにいた。

 

御門「……。……んだよ、誰かと思えば下っ端ヤローか。今更てめーなんざに用はねーよ、失せな」

『つれないねぇ……せっかくこの召喚獣を解説しに来てやったのに、もう少し歓迎してくれてもいいじゃないか』

御門「ほざきやがれ。てめーが解説しようがしまいが、こいつこ未来はは既にスクラップ決定なんだよ。……ただまあ、情報をベラベラ漏洩してくれるに越したことはねーし、さっさと洗いざらいぶちまけてから消えな」

『ふふふ、これはまたなんとも横暴な勇者様だね。……まあ良いけどね。せっかくここまで来たんだ、お土産に語ってしんぜよう♪』

 

薄気味悪い笑い声とともに胡散臭さ全快の口調で、『ファントム』は鉄巨人に近づき手で触れながら語り始めた。

 

『こいつの名は殲滅兵器ゴライアス。

自律型召喚獣の、一つの完成形だ』

御門「完成形、だと……?」

『そうだよ。少し前に僕が文月学園に送り込んだ七体の自立型召喚獣達が、生徒達にことごとく敗北したことがあったよね?アドラメレクやベル君やダゴン君は別格だけど、基本的に自律型召喚獣の知能はとても低い。だから使役型召喚獣の緻密な動きにどうしても遅れを取ってしまうと僕達は結論づけた。ならばどうやってその差を埋めようか?……その答えがこいつさ』

 

そこで一旦言葉を切り、『ファントム』は御門に向かって邪悪な笑顔を向ける(といっても仮面だが……)。

 

『いっそのこと機動力と精密性を犠牲に、最高峰の火力と耐久力を与えてみればどうなるか?……その理論から生まれた自律型召喚獣が、このゴライアスだよ』

御門「そいつはまた、随分とぶっ飛んだ発想だな。……しかしそんなことベラベラ話して良かったのか?てめーらと敵対してる俺がそんなもんと鉢合わせたら、ぶっ壊さないって選択はしねーだろ普通はよ」

『だからお土産だって言った筈だよ。もっとも、全ては君次第なんだけどね。ゴライアスの情報を仲間への手土産にするか……

 

 

 

冥土の土産にするのかはさ♪』

御門「っ!?」

 

突如『ファントム』から放たれたあまりに異質な気配に、御門は身震いし警戒を最大限まで高める。凄まじい緊張から全身から嫌な汗が吹き出てくるのもお構いなしに、御門は頭を巡らせ熟考する。

 

御門(この気配は…殺気……?いや違う!以前アドラメレクに叩きつけられたようなものとは完全に別物だ……!)

 

得てして常識を超越した者は、それぞれ独特の気配を放つものである。

“気炎万丈”の体得者である柊親子は、万物全てを焼き尽くすような威圧感を。

“明鏡止水”の体得者である鳳親子は、海底に引きずり込むが如き圧迫感を。

そして召喚獣の王アドラメレクは、首筋に刃物を押し当てるような、混じり気の無い純粋な死の恐怖を。

 

だが、たった今『ファントム』が放った気配は、それらのどれとも異なるものであった。

 

御門(この言いも知れぬ忌避感……こいつ、やはり……)

『さて、それじゃあ……はい』

御門「あ?なんだこのゴーグ……こいつは……!?」

 

おもむろに『ファントム』から手渡されたものは、“桐谷”が極秘に開発した筈の『召喚獣視覚リンクシステム』専用ゴーグルであった。

 

御門「……こいつをテメーが持ってるっつーことは、テメーらはやはり“桐谷”の関係者か」

『んー…それはどうかなー?君、アドラメレクがコンピューターウイルスでもあるってこと忘れてない?バレずにアイデアを掠め取る方法なんて、それこそ無限にあるとは思わないかい?』

御門「……それで?突然こんなもの俺に渡して、いったい何のつもりだ?」

『君には今からゴライアスと闘ってもらうつもりなんだけど……困ったことにゴライアス本体も武器も物理干渉するんだ。壁や床やある理由で大丈夫だし、僕には絶対当たらないようプログラムしてるけど、君はまず間違いなく巻き添えで死んじゃうだろうからね。せっかくの実験材料候補を犬死にされるのもなんだし、死なないようそれつけて君はこの大広間から出ていなよ』

御門「……お気遣いどーも。

 

 

 

……だが余計なお世話だボケ」

 

バキィッ!

 

凶悪な笑みを浮かべながら、御門はゴーグルを力任せに握り潰した。

 

『……それは新手の自殺志願かな?』

御門「ほざけ。わざわざてめーにこんな施しを受けなくてもな……」

 

砕けたゴーグルを無造作に投げ捨てる御門の両の眼に、幾何学模様が発光しながら浮かび上がる。

 

『へぇ……♪』

御門「俺にはこの力があるんだよ……頼みもしねーのに、てめーらが押し付けてくれたこのクソ能力がな!בהמה(獣化)

 

そのキーワードを呟いた直後、御門の全身に古代文字のようなものが浮かび上がり、さらに服装がくたびれたスーツから白と青紫を基調としたロングコートに、くたびれた革靴からフェンリルを滅ぼしたとされるヴィーザルの靴に変わり、利き腕の手首には金色に光る腕輪が出現した。

アドラメレクのバグに汚染された人間のうち、彼のようにバグを完全に掌握することに成功した者は、いくつか超常的な力が発現する。これはその力の内のひとつ、召喚獣と一体化する『獣化(ビーストアウト)』だ。

 

『少しばかり驚かされたよ御門君。まさかそいつを躊躇なく使えるとはねぇ……それとも、もしかしてその力のリスクを知らないのかい?』

御門「あー?リスクだ?」

『自身の肉体を召喚獣と同化させる獣化は、アドラメレクのバグの汚染を急激に早めてしまうんだよ。その様子だと知らなかっ-』

御門「なんだそんなことかよ。とっくに気づいてるに決まってんだろーが」

『……ほう?なら何故だい?アドラメレクのバグに汚染され尽くした者の末路が何か……君はその目で見てきたばずだろうに』 

 

『ファントム』のもっともな疑問に御門はため息をつき、おもむろにタバコを口にくわえ火をつける。

 

御門「フー……んなもん決まってるだろ、てめーを逃がさねーためだよ。俺が安全圏に避難して、てめーがこの場にとどまる保証はどこにもねーだろうが。たとえ凄惨な末路に近づこうとも……生かしておくわけにはいかねーんだよてめーは」

『おやおや、それはおかしな話だね。今更僕に用は無いんじゃなかったかい?』

御門「……てめーがホントにあの下っ端ヤローなら、用は無かったんだがな」

『……ふふふ、きづいたんだ?まあ当然のことか……そうでなくてはとても僕の敵にはなりえないからね。よろしい、ならば生き延びてみなよ……ゴライアス、起動!』

 

ウォォォオオオオオン…

 

『ファントム』の呼び掛けに呼応するように、鎮座していたゴライアスが緩慢な動きで立ち上がり、御門と対峙する。

 

《総合科目》

『学年主任 御門空雅 10255点

VS

 ???  Goliath  20000点』

 

 

御門「……けっ、くだらねー。こんな不良品、スクラップにしてクーリングオフしてやるよ!」

 

 

 

 




ゴライアスの設定の元ネタはカスタムロボV2のジェイムスンです(ゴライアスだけに)。

獣化……アドラメレクのバグをかなり使いこなせるようになると習得できるスキル。召喚獣と一体化し、人知を越えた戦闘力とそれを御するだけの超感覚を手に入れる。反面、この力を使えば使うほどバグによる汚染が進行するという諸刃の剣でもある。さらに強制的に明久と同じフィードバック仕様になるという欠点がある。

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