バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

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今回はバトル100%です。
一番書いていて楽しかったです。


姫路の決意、和真の意地

雄二「とうとう来たか、Aクラス次席」

 

久保利光。彼は姫路に次ぐ学年四位の実力者で、姫路と翔子がFクラス入りしたため、学年次席の座についている。ちなみに最近明久に危険な意味で興味を抱いてるという噂があるが事実無根であろう……多分恐らく十中八九98パーセント間違いない、と和真は無理矢理言い聞かせるように頷く。

 

高橋「科目はどうしますか?」

姫路「……総合科目でお願いしますっ!」

雄二「な!?待て、姫路!」

 

姫路の発言に雄二は慌てる。久保と姫路の実力はほぼ互角、総合点数ではせいぜい20点程の違いでしかない。絶対に負けられないFクラスとしては、久保の苦手科目を攻めるのがセオリーだろう。

 

姫路「坂本君…お願いします!」

雄二「! ……わかった。

ただし、何があっても負けるなよ」

姫路「はいっ!」

 

以前には無かった強い決意を姫路から感じ取ったのか、危険な賭けであると承知で雄二が了承する。

 

久保「試獣召喚(サモン)」

 

召喚獣が出現する。久保の装備は鎧と袴と二振りのデスサイズだ。

 

『Aクラス 久保 利光 4282点』

 

『な、なにィ!?』

明久「4282点だって!?」

和真「すげぇな、以前より300点弱も上がってんじゃねぇかこの短期間でよくもここまであげたな」

 

予想外の点数に驚くFクラス一同。

 

蒼介(苦手科目をついて来なかったか。だが私達がお前達が攻めて来るまでの間、何もしていなかったわけがないだろう)

 

 

 

 

 

 

FクラスとBクラスの試召戦争が始まる前。

 

蒼介「―というわけだ。そこで木下、相手の代表がそう交渉してきたらこのメモに書かれたルールを提案してくれ」

 

そう言って試召戦争の特別ルールを書いたメモを優子に渡す。

 

優子「わかったわ」

蒼介「頼んだぞ。次に…久保、Fクラスとの試召戦争前までに苦手科目を克服してくれ」

久保「僕の苦手科目というと…物理と数学だね」

 

Aクラス次席の久保と言えど典型的な文系であるため、その二科目はAクラス平均程度でしかない。

 

蒼介「ああ、おそらく相手はお前の弱点を攻めてくる。事前に対策しておくに越したことはない。そこで…大門、久保のサポートを頼めるか?」

徹「了解したよ」

 

徹の物理、数学は蒼介には劣るものの次席の翔子をも上回る。この人選は妥当だろう。

 

蒼介「よし。皆、私達にはクラスの命運がかかっている。必ず勝つぞ!」

木下「勿論よ!」

工藤「任せといて♪」

久保「全力を尽くそう」

徹「情け容赦なく捻り潰すよ」

 

 

 

 

 

 

蒼介(さてどうする?姫路が以前と同じような点数なら、勝ち目は無いぞ、カズマ)

和真(大方ソウスケの入れ知恵だろうな。ほんと何手先まで手を打ってやがんだよ……だがな)

明久「姫路さん!」

美波「瑞希!」

 

姫路「……試獣召喚!」

 

 

 

 

 

 

『Fクラス 姫路 瑞希 4406点』

 

 

和真(姫路だって負けちゃいねぇよ)

 

『な、なにィィィ!?』 

 

今度はAクラスが驚く番だ。姫路の点数は久保以上に上がっていた。

 

久保「くっ……姫路さん、まさかここまでの点数とは……」

 

悔しそうに姫路に尋ねる。自分よりも数歩先を進んでいたことにショックを受けているようだ。

 

姫路「……私、このクラスの皆が好きなんです。人の為に一生懸命な皆のいる、Fクラスが」

久保「Fクラスが好き?」

姫路「はい。だから、頑張れるんです」

 

明久は姫路のために試召戦争を雄二に提案した。そして、Bクラス戦では姫路のために身を削って壁を破壊した。

 

姫路瑞希という女性は、そんなことを知って頑張らないようなつまらない人間ではない。

 

 

『自分のために一生懸命な奴がいる…それを知ってどう行動するのが“姫路 瑞希らしい”んだ?』

『……それは勿論、私も皆の力になれるよう頑張ります!私も、吉井君達の力になりたいです!』

 

 

ここで頑張らないようでは、“姫路 瑞希らしく”ない。

 

和真(まあ、姫路がここまで頑張った理由はもう一つあるだろうがな)

久保「…そうか、君もクラスの皆の想いを背負っているんだね。

だけど、それは僕も同じこと!Aクラス次席として、クラス代表代理として、負けるわけにはいかない!

いくぞ姫路さん!」

姫路「望むところです!」

 

そう言って二人は武器を構える。そして両者の腕輪が光り、能力が発動する。

ぶつかり合う熱線と風の刃が教室を震撼させた。

同系統の腕輪で点数差もそこまでないので、二人の力は拮抗してお互い一歩も譲らない。

そのまま二人とも二撃、三撃と腕輪を発動させる。

風と熱のエネルギーはぶつかり合うごとに中心にどんどん溜まり続け、限界に達したエネルギーが両者の召喚獣に襲いかかる。

 

久保「…くっ!」

姫路「きゃあっ!」

 

 

『Fクラス 姫路 瑞希 1625点

VS

Aクラス 久保 利光 1536点』

 

フィールドの両端までぶっ飛ぶお互いの召喚獣。

両者とも凄いダメージを受けたが召喚獣に別状はない。

二人とも武器を構え直す。

 

姫路「えぇいっ!」

 

〈姫路〉が大剣で斬りかかり、それを〈久保〉は避けもせずまともに喰らい、

 

久保「はぁっ!」

 

返す刀でデスサイズで〈姫路〉を切り裂いた。

久保の戦闘スタイルに避けるという選択肢は無い。相手に攻撃を喰らわせることのみを重視している、見た目に反して随分と攻撃的な戦法だ。

 

 

『Fクラス 姫路 瑞希 633点

VS

Aクラス 久保 利光 577点』

 

 

点数的におそらく次の攻撃で決着が着く。

この状況、普通なら二人とも戦死に注意して相手の様子を伺い始めるだろう。

 

姫路「行きます、久保君!」

久保「望むところだ姫路さん!」

 

しかしこの二人は攻撃することを躊躇わない。絶対に勝ってみせるという強い意志があるからだ。

 

お互いの武器が真っ向からぶつかり合う。

こうなってはスピードやテクニックが入り込む余地など無い、純粋な力比べだ。

 

姫路(私は、なんの役にも立てませんでした…)

 

大剣とデスサイズがぶつかり合う中、姫路の脳裏にBクラスが思い浮かぶ。

 

姫路(私の勝手な都合で、皆の思いを踏みにじってしまいました…)

 

ずっと思い悩んでいたのだろう。

根本の脅しに屈してしまったことを。

そのせいで今までのFクラスの頑張りを無駄にしかけてしまったことを。

あのまま負けていれば姫路は決して立ち直れなかっただろう。自分を責め続け、深い海の底に沈んでしまったかのように心が壊れてしまったに違いない。

 

しかしそうはならなかった。

明久が海の底から自分を引っ張り上げてくれた。

 

(私はもう、あんな過ちは侵したくない……今度は私が、皆の勝利の道を切り開くって決めたんです!)

 

激戦の末、とうとう姫路の決意が久保の責任感を上回ったのか、

 

姫路「やぁぁぁぁぁっ!」

久保「な、なんだと!?」

 

〈姫路〉の剣はデスサイズごと〈久保〉を一刀両断した。

 

 

『Fクラス 姫路 瑞希 89点

VS

Aクラス 久保 利光 戦死』

 

 

久保「……完敗だよ姫路さん。いい勝負だった」

姫路「……はいっ!」

 

そう言って二人は握手し、お互いのクラスメイトのもとに戻る。

 

久保「鳳君、皆、すまない。力及ばず負けてしまったよ」 

 

申し訳なさそうに久保はそう謝罪する。

 

蒼介「気にするな久保、素晴らしい闘いだった。お前を非難するような愚か者など、私達のクラスにはおるまいよ」

久保「……ありがとう」

蒼介「だが、この借りはいつか必ず返せ。お前も負けたままではいたくないだろう?」

久保「…ああ、勿論だよ」

高橋「これで二対一です」 

 

さすがの高橋先生もこの展開には流石に驚いたのか、若干表情が変化していた。

 

高橋「では四回戦、Aクラス・大門 徹君vsFクラス・柊 和真君」

和真「じゃ、行ってくるぜ」

 

いつものように不敵な笑みを浮かべながら、和真は意気揚々と戦場に向かう。 

 

徹「この間の借り、この場で返させてもらうよ」

和真「まだ根に持っていたのかよ。相変わらず執念深いんだなお前は」

 

試合前に軽口を叩き合う二人。表面上は友好的であるものの、お互いの眼は闘争心で満ちている。

 

高橋「科目は何にしますか?」

徹「数学でお願いします」

和真「っ……やっぱそう来るかよ。借りを返すとか言ってた割りに一方的に自分に有利な科目で闘うなんざ、セコいことしやがるぜ」

徹「何とでも言いなよ。クラスに後がない以上、百パーセント君を討ち取ることができる科目で挑むのは当たり前さ」

和真「これだから器も身長も小さい奴は…」

徹「オイ今なんつったテメェ、八つ裂きにすんぞコラ」

和真「何とでも言えって言ったのはお前じゃねぇか…」

 

試合前に相手の地雷源を全力で踏み抜く和真に対し、徹は殺意を剥き出しにして臨戦態勢をとる。

 

『試獣召喚!』

 

掛け声と共に召喚獣が出現する。徹の召喚獣は甲冑に鉄のガントレット。見るからに重戦車タイプだ。

 

 

《数学》

『Fクラス 柊 和真 183点

VS

Aクラス 大門 徹 458点』

 

 

和真にしては驚くほど低い点数である。

もともと文系タイプということもあるが、数学や物理は答えだけではなく計算過程もチェックされる。感覚派の和真はその部分がおざなりで大幅に減点されているのだ。

 

徹「じゃあ行くよ。弱いものいじめするようで悪いけど、これは戦争だか」

和真「どりゃあああああ!」

明久「相手の話無視していきなり槍をぶん投げたぁ!?」

 

〈和真〉の武器は見た目通りとても重い。攻撃に特化した〈和真〉でも、この程度の点数では自由自在に操ることができない。自在に扱えない武器なと邪魔なだけ。和真はそう判断し、使い捨ての飛び道具感覚で槍を投擲した。

 

徹「ふん、くだらない」

 

そう言うと同時に、〈徹〉の腕輪が光りだす。

すると、徹の召喚獣に直撃した槍は弾かれ、衝撃の一部が〈和真〉に跳ね返った。

 

和真「あぶねっ!?」

 

なんとか避ける〈和真〉。圧倒的な攻撃力を代償に装甲は異常に薄いため、もし喰らっていたら最悪戦死、そうでなくても致命的なダメージを負っていただろう。

 

 

《数学》

『Fクラス 柊 和真 183点

VS

Aクラス 大門 徹 408点』

 

 

和真「なるほど……それがお前の能力か」

徹「そうだ。僕の『リフレクトアーマー』は防御力を大幅に上げ、さらに装備が相手の攻撃の一部を反射する鎧になる。君の能力とは正反対の防御特化能力だよ」

 

自らの召喚獣に槍をへし折らせながら、徹は得意気に説明する。

 

雄二「くっ……万策尽きたか」

明久「えっ、どういうことさ!?」

雄二「素手で闘う以上、どうしてもあいつの召喚獣に触れなきゃならない…相手に反射効果がある以上、純粋に点数の勝負になる…」

明久「そんな…」

姫路「柊君…」

 

 

 

 

 

和真「関係ねぇ!それがどうしたぁ!」

 

それごどうしたと言わんばかりに、〈和真〉が〈徹〉を殴り倒す。先程とは違って衝撃が拳に直接跳ね返りダメージを受ける。しかし〈和真〉間髪入れず二撃目、三撃目を喰らわせる。殴るたびに拳がボロボロになっていくが一切気にもとめないその様子は、見方によっては気でも狂ったかのように写るだろう。

 

徹「馬鹿が…そんなことをしても無駄だよ!『リフレクトアーマー』が有る限り先に死ぬのは君だとなぜわからない!」

和真「はっ!だったらその『リフレクトアーマー』をぶっ壊すまでよ!」

 

一切構わず追撃する〈和真〉。両拳は既に血にまみれて赤くなっており点数もどんどん削られているが、やはりまるで気にも留めていない。

 

徹「バカな……その程度の点数でそんなことが可能だとでも思っているのか!?」

和真「んなもん知ったことか!可能かどうかなんざわからねぇよ!やるっつったらやるんだよ!」

 

途切れることなく次々と攻撃を加えていく。しかし両者の差はまるで縮まらない。

 

 

和真「諦めるわけにはいかねぇんだよ…

意地があんだよ!男の子にはなぁ!」

 

 

徹「っ!このままにしておくと危険だね…さっさと決着を着けさせてもらうよ!」

 

なにか嫌な気配を感じ取ったのか、〈徹〉はガントレットで〈和真〉に殴りかかる。

 

和真「んなもん当たるかよ!」

 

しかし〈和真〉は後ろに跳んでかわす。

徹は召喚獣までも徹底して防御特化であり、機動力はこの科目の和真にも劣る。そして操作技術も和真に軍配が上がる。考えなしに繰り出した攻撃など決して当たりはしない。

 

和真「じゃあ…行くぜぇぇぇ!」

 

既に瀕死になりながらも、相手に向かって特攻する。

点数が0にならない限り、和真は決して諦めない。

それが和真の…

 

 

「これが……俺の意地だぁぁぁぁぁ!」

 

 

全速力で放った〈和真〉の拳は身に付けている甲冑を破壊し、徹の召喚獣を吹っ飛ばした。

 

徹「そんな…まさか…」

 

あまりの出来事に呆然とする徹。

なんとか立ち上がる〈徹〉。しかしかなりのダメージを負ったようで若干ふらついている。甲冑が壊れてしまったのだ、防具を媒介とする『リフレクトアーマー』ももう使えない。

 

明久「やった!あと一息だよ!」

雄二「…………………………いや、」

 

 

しかし力を使い果たしてしまったらしくその場で崩れ落ちる〈和真〉。

 

雄二「限界が来たらしい……」

 

 

『Fクラス 柊 和真 戦死

VS

Aクラス 大門 徹 122点』

 

 

和真「………負けちまったか。いい勝負だったぜ、徹」

徹「……すまない。どうやら君を見くびっていたようだ……いい勝負だった」

 

お互いに握手をしてそれぞれのクラスに戻る二人。

 

和真「……わりぃ、負けちまった。後は頼んだ」

ムッツリーニ「……任せろ」

 

和真はやる気十分なムッツリーニにバトンを託した後、Aクラスのソファーに座り込む。

 

翔子「……和真、落ち込んでる?」 

 

心なしか心配そうな表情で翔子が近寄る。

 

和真「……結構な。やっぱ負けんのは悔しいぜ…」

翔子「……大丈夫。和真なら次は勝てる。元気を出して」

和真「……サンキュ、翔子」

 

 

 

明久「前々から思ってたけど霧島さん和真と仲良いよね」

雄二「まあ一年のとき色々あってな。今でもあいつは暇なとき娯楽を求めて翔子に手を貸すときがたまにあるんだよ……そのときは大概俺が被害を被るがなぁ…!」

明久「雄二、よくわからないけど落ち着いて」

 

高橋「それでは最終戦、Aクラス・鳳 蒼介君VSFクラス・土屋 康太君」

 

高橋先生がそう告げる。いよいよラストだ。

 

雄二「まかせたぞムッツリーニ」

翔子「…土屋、頑張って」

明久「頼んだよムッツリーニ!」

美波「絶対に勝ちなさいよ、土屋!」

姫路「土屋君、頑張ってください!」

和真「ソウスケをぶっ倒せ!」

 

Fクラスの面々がムッツリーニを激励する。

 

ムッツリーニ「……………(グッ)」

 

ガッツポーズをした後、ムッツリーニは既にスタンバイしている蒼介のもとに歩きだした。

 




というわけで主人公初敗北でした。
え?根本?さぁ?

さりげなく久保君が強化され、さらに強化フラグまで建ちました。
今回はそんな久保君を見事打ち倒した姫路さんの召喚獣。

姫路 瑞希
・性質……攻撃重視型
・総合科目……4400点前後 (学年3位)
・400点以上……数学、物理、科学、英語
・ステータス
(総合科目)
攻撃力……S
機動力……B
防御力……B+
・腕輪……熱線
攻撃を重視したステータスだが、和真のような紙装甲ではない。

『熱線』
消費50でビームを放つ。シンプルイズベスト。

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