バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

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今回ストーリーが大きく進みます。


前回、和真君がフラグにしか聞こえないような終わり方でしたが……。


S・B・F本戦・Bブロック⑥

Bブロックの覇者を決める闘い…ご存じFクラスのエースと予選二位通過した期待のルーキーの対決は、意外なことにかなり一方的な展開で幕を閉じた。

 

 

《総合科目》

『二年Fクラス 柊和真 2942点

VS

 一年Fクラス 志村泰山 戦死』

 

 

泰山「あらら、最善は尽くしましたが届きませんでしたか……素でに意識が佐伯先輩に向いているようなので足を掬えるかと思いましたが、やはりお強いですねぇ……」

和真「そいつは悪かったな、試合が始まると対戦相手だけに集中できるもんでよ。ま、リベンジはいつでも受け付けてるぜ。つっても5000点越えてねぇと俺に勝つのは厳しいだろうがな」

泰山「割とハードなことを簡単に言いますねぇ……でもま前向きに検討しておきますぅ」

和真「……なんか、ゆっるゆるだなお前。戦闘中の結構果敢に攻めてきてたお前はどこいっちまったんだ?」

泰山「まぁそれが僕の性分ですからぁ」

 

実を言うとこの二人の間にそこまで明確な差は無い。初期の点数差は精々1000点前後、また操作技術はむしろ僅かに泰山が勝っている。ではなぜここまで一方的な展開になったのかと言うと、ズバリ武器の差である。和真と同様泰山も蛇腹剣という特殊きわまりないな武器を使うだけあって、変則的な攻めが持ち味である。しかし彼の蛇腹剣は特殊な武器であるものの、固有武器ではないため耐久力は並…むしろ変形する性質上一本芯が通っていないので、全ての武器のなかで最も破損しやすい。具体的に言えばガチガチのパワータイプである〈和真〉には素手で千切られかねないほど。一回でも掴まれたりすればその時点でゲームオーバー、となれば必然的に慎重に攻めざるを得ない。

そして泰山は和真の苛烈な攻めをガードすることができない。原因はやはり耐久力の差で、ロンギヌスを蛇腹剣で受け太刀でもしようものなら召喚獣ごと両断されるからだ。

果敢に攻められず、相手の攻撃はガードできない……そんなハンディキャップを背負って立ち向かえるほど和真は甘い相手ではない。そんなわけで、多少の反撃などお構い無しに攻撃してくる〈和真〉にどうすることもできず点数を削りきられたのであった。

 

和真「……ところで一つ聞きてぇんだがよ、お前…というよりお前ら一年生四人は、なんでそんな召喚獣の扱い上手いんだよ?まだ召喚獣手に入れて間も無い筈だろうが」

 

試験召喚戦争の経験が圧倒的に不足している筈にもかかわらず、鉄平と千莉は三年生にもひけをとらないレベル、泰山と詩織に至っては明久や梓と同等という意味不明さに興味を持った和真の質問に、泰山は特に隠す素振りも見せずに答えようとして…

 

 

泰山「えぇ?それはぁ……

 

 

 

…………あれぇ?確かに、なんででしょうねぇ?」

 

突然、腑に落ちないと言わんばかりに首を捻った。

 

和真「……はぁ?しらばっくれてる…って感じでもねぇな。マジでわからねぇのか?」

泰山「そうなります、ねぇ。……言われてみれば、確かに僕達がここまで召喚獣を自在に扱えるのは明らかに不自然-っ!?」

和真「あん?どうした急に頭抱えて…ってオイ大丈夫か志村!?」

泰山「ぐぁ…!あ、頭が……!」

綾倉「ど、どうかしましたか志村君!?」

 

突如頭を抱えてその場にうずくまる志村。彼の苦痛に満ちた表情に流石の和真も驚愕を隠せない。やがて綾倉先生も慌ててかけ寄り肩を貸すが、志村はすぐに何事もなかったかのように顔を上げ、心なしか瞳のハイライトを消しながら笑みを浮かべた。

 

志村「……。大丈夫ですよ、少し目眩がしただけですぅ。では僕は観客席に移動しますねぇ」

和真「いや、少し目眩がしただけってお前……」

綾倉「そうです、明らかにただごとじゃなかったですよ?手配は私がしておきますので、すぐに保健室に向かいなさい」

志村「ふむ、そうですかぁ……それではお言葉に甘えますねぇ」

 

御門先生の指示で大島先生に付き添われながら会場から立ち去る泰山を見送りつつも、和真は先程の出来事に困惑を隠せない。

 

和真(……どうなってんだ?不自然じゃない所しか見当たらねぇが特に気になるのは……あれだけ苦悶の表情を浮かべてたっつうのに、立ち直った後の志村はまるでそんなこと無かったかのように平然としていた。痩せ我慢してたわけでもなく、まるで()()()()()()()()()()()()()()()……どうして召喚獣を上手く動かせるのか自分ですらわかってなかったことと言い、間違いなくアイツには何かとんでもない秘密が隠されているな……。

 

 

……考えてもわからねぇし放っとくか。ソウスケが何とかするだろ多分)

 

しかしすぐに興味を無くし、最終的にはやはり蒼介に丸投げした。頭脳労働は苦手ではないが趣味じゃねぇ、が本人の弁である。

 

和真(んなことより今はトーナメントに集中しなきゃな。何しろ次の俺の相手はあのペテン師女なんだからよ……!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベル(なーにやってんだかダゴンの奴……ε-(ーдー)ハァ)

 

観客席の一角、スポンサーである四大企業のために用意された貴賓席にて、宮阪桃里……に扮したベルゼビュートは心の中で嘆息する。

 

ベル(どうにか洗脳し直せたみてーだが、かなりギリギリだったぞ今。危うく全部バレちまうところだぜまったくよぉ……┐(´ー`)┌)

 

既に準備は整え終えているためバレたところでどうとでもなるが、あの酔狂なボスは自分でネタばらしをしたがるだろうことを、ベルは嫌と言うほど理解していた。

もしそれをおじゃんにしてしまったとしたら、あの人格破綻者にダゴンがどんな目にあわされるのか、想像したくもない。最悪ダゴンがどうなろうと他人事で済むが、一部始終を見ていた自分が巻き込まれないという保証は全く無い、というか面白がって連帯責任にしてきてもなんら不思議ではない。そのことを危惧してベル内心でダゴンを詰っていたが、ふと考えを改める。

 

ベル(………ちょっと待てよ?ダゴンがかけた洗脳が解けかかった、だと?……こいつはもしかすると、もしかするかもな。このこと一応ラプラス……にはしばらく手が離せそうにないから後で良いとして、とりあえずダゴンには伝えとこうか。うん、そうだな……

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()( ̄Λ ̄)ゞ )

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

泰山「いやぁ、余計な手間増やしちゃってすみませんねぇ御門先生」

御門「気にすんな。いくら仕事嫌いの俺でも今は一応教師だからな、体調悪い生徒放っておくほど外道じゃねーよ」

泰山「うーん…今は特に異常無いんですけどねぇ」

御門「そういう油断が一番危なかったりするんだよ、いいから安静にしてろ。だいたい綾倉の野郎が人の心配するなんて天変地異ものだぞ」

泰山「綾倉先生をなんだと思ってるんですか……」

御門「そうは言うがなオメー、学生時代主に俺やキュウリがどんだけ振り回されたことか……」

 

保健室へ向かう道すがら、御門は泰山と話を弾ませながらも心の中である葛藤をしていた。その内容はズバリ、泰山の洗脳を解くことである。

 

御門(こいつはまず間違いなく何らかの方法で誰かに洗脳された。そしてこれはただの憶測だが、おそらくキュウリも同じ奴から同じ方法で洗脳されていると見た。こんな芸当ができる奴は、まず間違いなくアドラメレクの手の者だ。もし俺の能力でこいつの洗脳を解けたとすればキュウリを元に戻せることは勿論、一連の事件の黒幕も暴けるかもしれねー……だが、チャンスはおそらく一度きりだ)

 

洗脳を行った人物が近くにいる以上この場を監視されていたとしてもおかしくはない。もし失敗すれば口封じとして自分は勿論、泰山が始末されてもおかしくはない。御門は今さら死を怖れるようなことはないし、必要とあらば文月の学生を戦力にカウントすることに躊躇いが無い程度には甘さは捨てているが、流石に他人の死を必要な犠牲と割り切れるほど非情に徹しきることはできてない。 

葛藤の内容とかつて原因不明の症状に侵された翔子の命を救ったことから、どうやら御門は洗脳を解除する手段を持っているようだ。しかしだからと言って、洗脳を確実に解除できる保証はどこにもない。そんな不確定な試みで生徒を危険に晒してようものか……御門の葛藤の原因はそれである。

 

御門(………チッ。せっかく見つけた手がかりだが、こいつがただ操られてるだけの一般人の可能性がある以上、危険を犯して踏み込むわけにはいかねーよな。……こうなったらこのままこいつを張り込んで、接触してくるであろうこいつを洗脳した犯人を-)

泰山「おや?あれは……」

御門「あん?……ありゃケータイ、か?」

 

前方の廊下の端に、折り畳み式の白い携帯電話らしきものが無造作に落ちていた。

 

御門「やれやれ、ケータイ落とすなんて現代っ子失格じゃねーのか?」

泰山「まぁそう言わずに……見つけた僕達で持ち主に届けてあげましょう(タッタッタッ……)」

御門「あ、オイ……もしもーし、お前病人(仮)だってことわかってんのかー?」

 

小走りで携帯電話らしき物体に近づいていく泰山に、御門はしょうがないと言わんばかりに嘆息する。

 

御門「行動は立派だが病人なんだから不用意に走るんじゃねーよ」

泰山「(タッタッタ…)あ、そう言えばそうでしたね-」

 

 

 

ピカッ!!!

 

 

 

突如、携帯電話らしき物体から閃光が走る。

 

御門「ぅおっ!?」

 

あまりの眩しさに御門は思わず目を閉じる。やがて光が収まったのを感じとり、御門がうっすらと目を見開くと…

 

 

 

御門「……っ……志村が……消えた……!?」

 

 

志村泰山がいなくなっていた。まるで神隠しにでもあったかのように、音も立てずに忽然と。

 

 

 

 

 




新ジャンル:実はフラグでも何でも無かった。
理由は本文で述べた通り、最早5000点未満ではどうしようもないほど和真君が強くなってしまったせいです。
誤解しないでください、志村君は原作明久並の操作技術と原作翔子さん並の点数を併せ持った強者です。
逆に言えば、その程度では最強クラスには歯が立たないほどインフレが進んでいるということですが。
まあろくな戦闘ジーンも無くこのまはまフェードアウトさせるつもりはないので、彼の活躍は次の章辺りまでお待ちください。


しかし怪談みたいな引きで終わりましたね……夏だから良いか……。

というわけで、アドラメレク一派の一人・ダゴンが文月学園の生徒に紛れ込んでいるようです。いったい誰なんだ……?

あと、アドラメレク一派のボスの通称名がやっと決まりました。中々ピンとくるのがなくて苦しいとは思いつつ“ボス”で通す日々もこれでおさらばだぜ!
元ネタは勿論ポケモン……ではなく『ラプラスの悪魔』からです。

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