バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

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梓さんVSリンネ君の試合、決着です!
これで残すところあと5試合か……思ったより多いな……。


S・B・F本戦・Aブロック⑤

和真「なあソウスケ、いくらお前でも流石にこいつは予想外たったんじゃねぇか?」

蒼介「……ああ。まさか佐伯先輩がこうも一方的に追い詰められるとは、流石は『スウェーデンの至宝』と言うべきか」

 

リンネの策が梓の読みを上回ったあの攻防以降、試合展開は〈リンネ〉の怒濤の攻撃に〈梓〉は防戦一方となっていた。

 

リンネ「やぁっ!」

 

二回戦の闘いを経て習得したのか、〈リンネ〉は源太が使用した鳥籠の要領で四方八方から〈梓〉を取り囲むように矢を散らばらせる。

 

梓(…っ…アカン、防ぎきれん……!)

 

〈梓〉は干将と莫耶を巧みに操り矢を迎撃していくが物量の差で次第に追い詰められ、やがて防ぎきれなくなると弾幕の薄いルートを見抜き鳥籠からの脱出を図る。

 

リンネ「かかったねアズサ!」

梓「っ!?やられた……しゃあない受け止めたらぁ!」

 

しかしその行動はリンネの手のひらの上。

リンネはあらかじめ弾幕がやや薄い箇所を意図的に作りつつ鳥籠を構築しており、〈梓〉が脱出する素振りを見せた瞬間そのルートに追い討ちの矢を射る。避けることは勿論全部打ち落とすことも不可能なタイミングだったので、〈梓〉は干将と莫耶を自分の前で交差させて防御の体勢に入る。後ろへ下がって威力を殺そうとすれば鳥籠の餌食になってしまうので、多少のダメージは軽減できたもののまともに被弾してしまった。

 

 

《総合科目》

『三年Aクラス 佐伯梓 2342点

vs

 交換留学生 Linne Klein  6287点』

 

 

 

和真「オイオイ梓さんよだらしねぇな、完全に動きをコントロールされてるじゃねぇか。……いや、これは相手の方を誉めてやるべきかねぇ。あのガキのゲームメイク、お前顔負けだなソウスケ」

蒼介「そうだな。そして気になる点がもう一つ……明らかに最初の頃より攻めが苛烈だ。試合中にボウガンの使い方が上手くなっている」

和真「ん、そういやそうだな。手を抜いてたって感じでもなかったし……まさか、まだ発展途上ってことかよ?」

蒼介「あり得ない話ではない。6000点オーバーという突出した点数ならば適当にやっても大半の相手には勝ててしまう。そのせいか今までリンネ・クラインは闘いの際に工夫や戦術とは無縁だったのだろう。だが佐伯先輩という生半可な闘い方では倒せない強敵と闘う中で、奴に秘められたセンスが急激に開花しつつあるのかもしれない」

和真(マジかよ…だとしたらいくら梓先輩でも……いやいやふざけんな、勝ち逃げなんざ認めねぇぞ梓先輩!相手が『スウェーデンの至宝』だろうが距離を詰めりゃ勝てるんだ、根性で凌ぎきりやがれ!)

蒼介(……さらにもう一つ、おそらくリンネ・クラインは既に勝利への布石を打っている)

 

 

 

 

 

 

《総合科目》

『三年Aクラス 佐伯梓 997点

vs

 交換留学生 Linne Klein  6287点』

 

 

梓(皮肉なもんやな……今まで散々対戦相手を翻弄してきたけど……まさかウチが翻弄される側になるなんてな……

 

……せやけど!)

リンネ(っ…サエキのウゴきが、どんどんスルドくなってきてル……!)

 

〈梓〉の残り点数は4桁を切り、一方〈リンネ〉はまだ1点たりとも削られていない。誰がどう見ても絶望的な状況だが、それでもリンネは警戒を緩めることができない。ほんの些細なミスで近づかれようものなら一気に勝負をひっくり返されかねないことは勿論だが、〈梓〉が徐々に鳥籠を攻略しつつあるのだ。

 

梓(ウチには和真のようなキチガイ染みた反射神経はあらへんから、矢の動きを見てからじゃ間に合わん……だったら矢の軌道を全て予測しるんや!一つたりとも見逃さへんぞ!)

リンネ(このままだとトリカゴはおろか、ボクのコウゲキのパターンをスベてハアクされちゃうかも……それならここでショウブにデる!)

 

すみやかに決着を着けなければ危険であると判断し、〈リンネ〉は鳥籠で勝負をしかける。ウィリアムのクロスボウから放たれた矢が即座に散らばり、四方八方から〈梓〉に向かって飛来する。

 

梓「あくまで鳥籠で勝負する気か……上等や、叩き潰したる!」

 

並列思考をフルに使い、全ての矢の動きを把握して迎撃体勢に入る〈梓〉。このまま鳥籠に移行すれば全ての矢を叩き落とせるだろう。そう確信できるほど梓の対応は完璧であった。

 

 

 

リンネ(……ここでキめる!)

梓「っ!?この軌道は……鳥籠やない!?」

 

しかし四方八方から飛来する矢は弾幕を形成することなく再び集束し、真正面から〈梓〉に襲い掛かる。

 

蒼介(やはり全方位からの弾幕攻撃を繰り返していたのは、この一点集中攻撃のための布石か……)

和真(俺ならともかく、事前に予測してなきゃここから回避は無理だな。かといって受け止めようにも梓先輩の残り点数じゃ持ちこたえられねぇ……ここまでか?)

梓「ぐ……アカン、万事休すや……

 

 

 

 

 

 

なんて言うと思ったか!?

佐伯梓を舐めんなや!」

リンネ「っ、ヨまれてた!?」

 

〈梓〉はすかさず干将と莫耶を逆手持ちから通常の持ち方にチェンジし、

 

梓「そう簡単に騙されてたまるかい!

そこはウチの縄張りや!」

 

高速で円の軌道を描くように振り回した。円の動きは矢の威力を受け流し、その結果全ての矢を最小限のダメージで受け止めた。

 

 

《総合科目》

『三年Aクラス 佐伯梓 496点

vs

 交換留学生 Linne Klein  6287点』

 

 

点数差はとうとう十倍以上にまで広がったが、ここに来てようやく梓にチャンスが巡ってくる。

 

リンネ「……リロード!」

梓「っ!」

 

矢を装填すべく〈リンネ〉はクロスボウの弦に手をかける。その瞬間…

 

梓「隙ありや!」

 

好機と見るや〈梓〉はすかさず全速力で奪取し跳躍、〈リンネ〉に向かって飛びかかった。おそらく距離を詰める機会は最初で最後、リロードを許してしまえばもう〈梓〉に耐えきる余力は残されていない。

 

 

 

……そして死にもの狂いで向かってくるとわかっている相手に、策士リンネが罠を仕掛けない筈がない。

 

リンネ「ジ・エンドだよサエキ!」

 

弦を外すことなく、〈リンネ〉は空中にいる〈梓〉にクロスボウを向ける。この行動が指し示す真実はただ一つ。

 

蒼介(弾切れはブラフ……奴の狙いは佐伯先輩が突撃するタイミングを見計らってのカウンター射撃)

和真(さっきフェイクを看破されたばかりだってのに、心臓に毛でも生えてんじゃねぇかあのガキ……だが、)

 

〈リンネ〉はそのまま〈梓〉にもう一度鳥籠を仕掛けようと弾道を設定する。空中で全方位射撃など受ければ対処することなど不可能。しかし〈リンネ〉な矢を発射しようとしたその時…

 

 

 

 

 

突如真正面から飛来した莫耶が〈リンネ〉のクロスボウを弾き飛ばした。

 

リンネ「エッ!?…し、しまった!?」

梓「もう一度言うで……そこはウチの縄張りや!」

和真(この騙し合い……梓先輩の勝ちだ)

 

例えば〈梓〉が跳躍後の投擲であれば〈リンネ〉はどうとでも対処することができただろう。だからこそ〈梓〉は跳躍の直前に莫耶を下手投げで投擲していた。〈リンネ〉は空へ跳んだ〈梓〉に気を取られ上方向に視線を移したために、地を這う弾道の莫耶を見落としてしまったのだ。

 

リンネ「ま、マズい……!」

 

〈リンネ〉は慌ててクロスボウを拾おうとするも、

 

梓「させるかい!」

 

上空から〈梓〉は干将をブーメランのように投擲した。干将は弧を描きながら〈リンネ〉の脳天に命中し、バランスを崩したリンネはその場に仰向けで倒れ込んだ。

 

梓「そしてこれでしまいや……

いくでぇ~!バク宙踵落とし!」

 

〈梓〉は空中で一回転し、足甲が砕けていない方の足で〈リンネ〉に踵落としを決めた。ダッシュ力と重力と遠心力が加算された〈梓〉の蹴りの威力たるや、その反動だけで砕け散った足甲が物語っている。

 

 

《総合科目》

『三年Aクラス 佐伯梓 496点

vs

 交換留学生 Linne Klein  4667点』

 

 

以前として得点差は4000点以上。しかしリンネにとって致命的なことは、梓に接近を許してしまったことだ。

 

リンネ「くっ…ハヤくブキを……!」

 

反撃すべく〈リンネ〉がクロスボウを拾おうとしても、

 

梓「散々苦労させられたからなぁ……もうアンタにそれは使わせたらん!」

 

〈梓〉がいち早く回収し終えた干将を駆使してそれを妨害しつつ、クロスボウを蹴り飛ばして遠ざける。

 

リンネ(だ…ダメだ……マルゴシでキンキョリセンにモちコまれたら、もうどうしようも……!)

 

 

 

 

 

蒼介「終わったな……」

和真「そだな。遠距離主体の奴が、よりによって梓先輩にあそこまで寄られちゃあな……リンネの最大の敗因は、梓先輩に化かし合いで挑んだことだ」

 

和真達の言う通り、そこからは一方的な展開となった。途中、武器を取り戻すことが不可能だと判断したリンネは格闘戦を持ちかけるが、佐伯梓に慣れない戦法で挑むなど無謀でしかない。数々のフェイントを織り混ぜた予測不能の攻めに翻弄され、見る見る内に両者の点数差が縮まっていく。しかしリンネにはもう逆転の手立てなど残されておらず…

 

 

 

そして……

 

 

 

《総合科目》

『三年Aクラス 佐伯梓 496点

vs

 交換留学生 Linne Klein  戦死』

 

 

綾倉「勝者、佐伯さん!」

 

その後も一撃すらいれることなく点数を削りきられた。

 

リンネ「うぅ…マけちゃった……」

梓「落ち込む必要あらへんよ、アンタは十分強かったで。……ウチはもっと強いけどな♪」

リンネ「ジマンしたいだけだよねソレ……」

梓(せやけどこいつの進化は凄まじかった……まだまだ発展途上ってわけかい末恐ろしいわぁ……

 

 

 

危うく奥の手切りそうになってもうたわ。超一流には一回きりしか通用せんやろから、できれば決勝まで取っときたいってのにかなわんわぁ……まあ、次当たる奴を考えれば決勝まで温存は厳しいかもな……)

 

心の中で嘆息しつつ見据える相手は、ちょうどフィールドに上がる途中の和真であった。

 

和真(さて、準決勝で梓先輩をぶっ倒してこの間の雪辱を晴らすためにも……とっとと一年坊主を蹴散らすとするか)

泰山(ふふふ……柊先輩、既に意識が佐伯先輩に向いているようですが、油断は禁物ですねぇ)

 




寸前の寸前までどちらを勝たすか悩みましたが、最大の決め手はリンネ君の口調の常軌を逸した面倒臭さですね……。

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