バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

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よく料理で耳にしますけど、コクっていったいなんなんでしょう?


vsAクラス

雄二「和真。ちょっといいか」

和真「どうした?」

雄二「お前が一番Aクラスに詳しいだろ?試召戦争のオーダーを決めるの手伝ってくれ」

和真「そういうことか。了解」

翔子「……私も手伝う」

 

試召戦争の際の大まかな流れは大抵自頭の良いこの三人で決める。その後状況に応じて雄二の奇抜な作戦を臨機応変に組み込んでいく。といっても今回は代表戦のため対戦オーダーを決めるだけで終了しそうだ。

 

和真「しかしお前の策ソウスケには全部バレてたみてぇだな」

雄二「ああ、あんなメモを用意してたんだ、こちらの目論見は全部筒抜けだろう…」 

翔子「……学年主席は伊達じゃなかった」

 

こちらの挑み方、なぜBクラスを攻めたのか、最終的にどういうルールになるよう交渉を進めるのか、それら全てバレていたことになる。雄二にとっては屈辱的この上ないだろう。

 

雄二「だから腑に落ちねぇ……なぜあんな提案をしてきたんだ?確かに連続でメリットの無い試召戦争は面倒かもしれないが、リスキー過ぎるだろ…」

翔子「……確かに相手の意図が読めない」

 

そう。相手がしてきた提案はどう考えても得策とは言えないのだ。いかに面倒だからといって、設備を失うかもしれないリスクがあるルールでの勝負は受けるべきではない。蒼介ほどの男がそんなことにも気づかないわけがない。大して付き合いのない雄二と翔子はそこが疑問であった。

 

和真「残念だがそんな考え方だと永遠に答えは出ねぇよ」

翔子「……?」

雄二「どういうことだ?」

和真「恐らくこの提案をしてきた理由は三つ。一つはお前の言うように面倒事をさっさと終わらせるため。二つ目は授業進行の妨げを嫌ったからだな」

 

試召戦争中は当然授業を進めることはできない。Fクラス辺りは特に気にしないろうがAクラスは学年一の真面目集団、授業の進度が気になって当たり前。連続で行うとしたら尚更だ。おそらく蒼介はこのことを良しとしなかったのだろう。

 

雄二「まあそれはわかるが、まだ附に落ちねぇな…………最後の一つはなんだ?」

和真「最後の一つはあいつと仲良い奴じゃねぇとわかるわけねぇんだがよ、」

 

一度言葉を切って和真は続ける。

 

 

和真「あいつ実は生粋の負けず嫌いなんだよ」

 

 

雄二「…………そんな理由かよ…」

翔子「……最初から真っ向勝負するつもりだったと」

 

つまり、結局のところ蒼介は最初からムッツリーニを真っ向から叩き潰すつもりだったようだ。勝負を五対五のルールにしたのはクラスメイトを納得させる為の保険だろう。

なるほど、他人にあまり興味を示さない翔子や基本的に物事を論理で考える雄二では大して面識の無い蒼介にそんな考えがあったなどわかるはずもない。

 

雄二「……ん?つーことはこのルールを俺達より先に提案してきたのも…」

和真「大方お前の思い通りにことが進むのが癪だったんだろ」

雄二「……案外ガキみたいな性格してんだな…」

翔子「……案外和真と似た者通し」

 

少なくとも学園の大半が抱く蒼介のクールでエレガントなイメージとはかけ離れている。

 

雄二「……まあそれはともかく。和真、相手がオーダーをどう組んでくるかわかるか?一応聞いておく」

和真「科目選択権のある二試合には徹と愛子、後は学力的に優子、久保、ソウスケだろうな」

 

ちなみに和真は同学年の生徒がそれぞれどんな成績かを全て把握している。

 

雄二「そうか…………さて、どう組もうか…」

和真「? なに悩んでんだ?とりあえず科目選択権のある三試合は翔子、姫路、ムッツリーニだろ?」

雄二「…なに?お前は出なくて良いのか」

和真「バカ言うな。残り二試合のどっちかは俺が貰うに決まってんだろ」

翔子「……和真、いいの?」

雄二「ああ、いくらお前でも勝ち目は薄いぞ?

徹と愛子の得意教科はあの翔子をも上回る。つまりその二試合は事実上捨てゴマのようなものだ。

 

和真「勿論、負けてやるつもりなんかねぇよ」

 

それでも、和真は勝つつもりのようだ。

 

雄二「…お前らしいな。よし、オーダーが決まった」

和真「あん?あと一人はどうすんだよ?お前が出るのか?」

雄二「勿論明久だ」

翔子「……雄二、いくらなんでもそれは…」

和真「……完全に捨てゴマじゃねぇか」

 

やはり雄二はどこまでいっても雄二であった。わざわざフィードバックのある明久を選ぶあたり、底意地の悪さが透けて見える。、

 

和真「あとムッツリーニは大丈夫なのか?Bクラス戦の点数聞いたけど、そんなに点差はねぇぞ」

雄二「大丈夫だ。事前に俺の秘蔵のパワーアップアイテムを渡してある」

和真「それ要はエロ本じゃねぇか……」

翔子「……雄二、覚悟はいい?」

雄二「しょ、翔子!?違う!これには深いわけがmらぶaゃらjげだp!」

翔子「……和真ごめん、少し用事ができた」

 

十万ボルトのスタンガンをまともに食らい、ぶっ倒れる雄二。翔子はそんな雄二を引きずって教室を出ていった。

 

和真「…試召戦争前に味方がどんどん減っていくぞおい」

 

その後雄二はなんとか回復した。すさまじい生命力である。

 

 

 

 

 

高橋「では、両者共準備は良いですか?」

 

立会人を務めるのはAクラスの担任であり二年学年主任の高橋先生。

 

雄二「ああ」

蒼介「はい」

 

クラス代表の二人が向かい合う。

一騎討ちの会場はAクラス。ボルテージ最高潮に盛り上がったラストバトルの場がFクラスのボロ教室では締まらないだろう。

 

高橋「それでは第一試合、Aクラス・木下 優子さんVSFクラス・霧島 翔子さん」

 

呼ばれた二人が前に出る。去年からの友達同士である二人がお互いのクラスの命運を背負って向かい合う。

 

翔子「……優子、負けない」

優子「アタシもそう簡単に負けるわけにはいかないわ」

高橋「霧島さん、科目は何にしますか?」

翔子「……総合科目」

優子「うっ、やっぱり容赦ないわね…」 

 

総合科目は学年順位がそのまま実力差になる。バランス良く高得点をとっている翔子の強さをフルに発揮するにはやはりこの科目だろう。

 

『試獣召喚(サモン)』

 

二人の召喚獣が出現する。優子の召喚獣は西洋鎧にランス、翔子の召喚獣は武者鎧に日本刀だ。

 

《総合科目》

『Fクラス 霧島 翔子 4766点

VS

Aクラス 木下 優子 3862点』

 

点数差が千点近くある。しかし優子が低いわけではなく、むしろあの和真以上の点数をとっているので学年でも指折りの優等生であると言える。その優子を圧倒する翔子の点数が高すぎるのだ。

 

翔子「……アイス・ブロック」

優子「えぇっ!?いきなり腕輪!?」

 

召喚と同時に〈翔子〉の周りに氷の礫が出現し、〈優子〉に襲いかかる。いくつかをランスで弾き返すも多勢に無勢、〈優子〉瞬く間にズタズタになっていき、結局何の抵抗もできずに戦死してしまった。

 

 

《総合科目》

『Fクラス 霧島 翔子 4266点

VS

Aクラス 木下 優子 戦死』

 

 

翔子「……優子、私の勝ち」

優子「うぅ…なにもできず終わっちゃった…」

 

……まあこれは仕方ない、腕輪持ちの召喚獣とそうでない召喚獣には絶対的な壁があるのだ。

これで1対0、Fクラスが一歩リードである。

 

高橋「では二回戦、Aクラス・工藤 愛子さんVSFクラス・吉井 明久君」 

 

高橋先生の指示で二回戦が始まる。

 

明久「え!?僕!?」

 

雄二が取って置きの捨てゴマを出す。内心では爆笑しながらも明久に対しては真剣な表情で激励する。

 

雄二「大丈夫だ。俺はお前を信じている」

和真(なんて白々しい……)

明久「ふぅ……やれやれ、僕に本気を出せってこと?」

和真(…え、なんだこの流れ?)

雄二「ああ。もう隠さなくていいだろう。この場に全員に、お前の本気を見せてやれ」 

 

『おい、吉井って実は凄いのか?』

『いや、そんな話は聞いたことないが』

『いつものジョークだろ?』

 

明久「しょうがないなぁ…じゃあ行ってくるよ」

 

自信たっぷりに死地に向かう明久。その顔に恐れは一切ない。Aクラスからは工藤愛子だ。

 

高橋「工藤さん、科目は何にしますか?」

愛子「保険体育で!」

明久「なんだって!?」

 

選択した科目は我らがムッツリーニのムッツリーニによるムッツリーニのための科目……保険体育。

 

愛子「驚いてるね。ボクもこの科目かなり得意なんだよ?そっちのクラスの土屋くんと違って、実技で、ね♪」

明久(なんだかとっても問題発言!?でもなんでだろう?今僕は凄くときめいている!)

和真「確かに愛子の運動神経はかなりのもんだが、俺達『アクティブ』の中では残念だが下の方だな」

 

和真にとって実技=スポーツ一択である。学生としては健全だが思春期の男子としてはある意味すごく不健全だが、和真は良くも悪くも感性がお子様なのど仕方ないだろう。

 

愛子「吉井君だっけ?勉強苦手そうだし保健体育で良かったらボクが教えてあげようか?もちろん実技で」

明久「フッ。望むところ-」

美波「アキには永遠にそんな機会なんて来ないから、保健体育なんて要らないわよ!」

姫路「そうです!永遠に必要ありません!」

明久「……」

雄二「島田に姫路。明久が死ぬほど哀しそうな顔をしているんだが」

和真(言い方ってもんがあるだろお前ら……)

 

明久に対して含みを持たせた発言は悪手でしかない。もはやギャグの域なほど鈍感な彼は額縁通りにしか言葉を受け取れない。

 

高橋「そろそろ召喚してください」

和真(……ちょっと遊ぶか♪)「おい明久!散々こけにされたんだ、お前の真の力でねじ伏せてやれ!」

明久「和真…わかったよ。工藤さんって言ったっけ?残念だけど今までの僕はぜんぜん本気なんか出しちゃいない」

愛子「なんだって!?それじゃ、君は…」

明久「そうさ。君の想像通りだよ。今まで隠してたけど、実は僕……」

   

 

 

 

 

明久「左利きなんだ」

 

 

《保険体育》

『Fクラス 吉井 明久 66点

VS

Aクラス 工藤 愛子 446点』

 

 

明久「いだぁぁぁぁぁっ!身体が焼けるように痛ぁぁぁぁぁい!」

 

〈愛子〉が電撃を纏った斧で〈明久〉を一閃、まさに瞬殺だ。結果何のドラマもなく下馬評通り愛子の勝利で二回戦は幕を閉じた。

 

美波「この大バカ!テストの点数に!利き腕は関係にでしょーが!」

明久「み、美波!フィードバックで痛んでるのに、更に殴るのは勘弁して!」

 

ここまで点数差があれば操作技術だけではどうにもならないだろう。Bクラス戦では最高に輝いていた明久だが、今はもう面影すらなくなっている。

 

雄二「よし。本当の勝負はここからだ」

明久「ちょっと雄二!アンタ僕をぜんぜん信頼してなかったでしょう!」

雄二「信頼?何ソレ?食えんの?」

和真「ちなみに俺はちょっとお前で遊んでみた。

まあまあ面白かったぜ」

明久「貴様等を本気を出した左で殴りたい!」

 

これで1対1となった。さて、ここからの試合は片方の一方的な蹂躙という無粋きわまりない消化試合ではなく…

 

高橋「では三回戦、Aクラス・久保 利光君VSFクラス・姫路 瑞希さん」

 

強者同士のガチンコバトルだ。

 




というわけで今日は翔子さん圧勝&明久君惨敗でした。さすがに七倍以上の点数の上腕輪もある相手じゃ勝てないよね…
今日は明久君を瞬殺した工藤さんの召喚獣。

工藤 愛子
・性質……攻撃重視&防御軽視型
・総合科目……3250点前後 (学年9位)
・400点以上……保険体育
・ステータス
(総合科目)
攻撃力……A
機動力……B
防御力……C
・腕輪……雷撃

攻撃力を重視して防御を削っている。『アクティブ』のメンバーは攻撃力を重視する生徒が多いが、十中八九和真の影響である。

『雷撃』
消費50で召喚獣と武器に電気を纏わせる。攻撃力が増加しスピードもアップする。ただし加速力はムッツリーニの『加速』に大きく劣る。万能型の腕輪は応用力がある反面、能力の質は一点特化型に劣る。

ちなみに総合科目では腕輪は4000点以上で装備され、単科目の十倍コストがかかる。あまりにコストパフォーマンスが悪いため普通は使わない。

では。

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