バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

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蒼介「そういえば前から聞きたかったんだが、お前の『カズマ○○』みたいな雑なネーミングは何とかならんのか?」

和真「バッカお前、自分の名前の付いた技は強力だと相場は決まってるんだよ。アバンストラッシュしかり手塚ゾーンしかり」


S・B・F本戦・Bブロック⑤

和真「オラオラどうしたァッ!そんなもんかテメェは!」 

雄二(くそっ……まったく攻めに転じられねぇ……!)  

 

〈和真〉が次々と繰り出す苛烈かつ変則的な猛攻に防戦一方になる〈雄二〉。直撃こそどうにか避けてはいるもののジワジワと点数が削られているので このままではいずれ〈雄二〉の方が先に力尽きてしまう。

 

雄二(かと言って距離を取ろうとしても……)

和真「逃がすかぁっ!」

雄二(あっさり回り込まれてしまう……わかってるつもりだったがこいつ、反応が早すぎる……!)

 

両者の召喚獣のスピード差はもとより、少しでも下がる素振りを見せるとすかさず反応して回り込んでくるほどの反応速度に差があるため、〈雄二〉は完全に八方塞がりに陥ってしまう。

 

 

《総合科目》

『二年Fクラス 柊和真  5714点

VS

 二年Fクラス 坂本雄二 3652点』

 

 

雄二(…………ダメだ、能力を使う余裕すらねぇ……。かと言って無理矢理使っても木下姉のときのように超反応で対応されるのは目に見えている。……ちくしょう、まったく打つ手がねぇ。ここまでなのかよ……俺とこいつの差は……!)

和真「………………チッ、つまらねぇ」

雄二「……なっ!?」

 

息もつかせぬ攻めを繰り出し続けていた〈和真〉が、突如距離を取って制止した。結果的に雄二の目論見通り戦いを仕切り直すことができたのだが、あのまま攻め続けていれば勝てたであろう和真にとって、この行動にメリットがあるとは思えない。合理主義の雄二にとって、この行動は完全に理解不能であった。

 

雄二「……みすみす勝てる戦法を捨ててまで、何がしたいんだお前は?」

和真「ゴチャゴチャうるせぇよ。俺を倒すために用意してた策とかあるんだろ?お情けで使わせてやるからさっさと出せや」

雄二「なっ……!」

 

驚愕と同時に頭が沸騰しそうになる雄二。まあ無理もない。和真の発言は、真剣勝負の場では決して許されないであろう、闘う相手への侮辱そのものであったのだから。

しかしそんな雄二の心情など知ったことかと言わんばかりにに、和真は不機嫌そうな表情で雄二を睨めつける。

 

和真「……あ?なんだよ、怒ったのか?まあそうだよな、闘ってる敵に情けをかけられたら怒るよな。……だがな雄二、俺にとっちゃお前は敵じゃなく、ただの身の程知らずの馬鹿でしか無いんだぜ?」

雄二「っ、んだとテメェ……!」

和真「いっちょまえにキレてんじゃねぇよボケ。じゃあ聞くがよ……お前こんなもんか?試合前に散々啖呵切っておいてなんだこの体たらくは?ガッカリさせてくれるぜお前にはよぉ……。もうハッキリしたんだよ、お前は指揮官としては一流でも戦士としてはド三流だ。俺に勝つなんて夢見てないで、せこせこ狡い作戦考えてるのがお似合いだぜ」

雄二「っ……!」

 

奥歯が砕けるほど歯を食いしばるが、雄二は言い返すことはできなかった。直接闘ってみて気づいてしまった……点数差こそ大分縮まったが、自分と和真の間にある差はその程度ではまるで埋まっていないことに。

 

和真「つーわけでさっさと来いよ。大して期待してねぇが、頼むから暇潰しくらいにはなってくれよ?」

 

そう言って欠伸を噛み殺す和真からは、つい先程までの皮膚を刺すような覇気が微塵も感じられない。

 

雄二(…………舐めやがって…!お望み通り目にもの見せてやる……テメェの弱点を抉り出して、試合終了前に気を抜いて負けた世界一間抜けな男にしてやるぜ!)

 

徹底した合理主義者の雄二は煮えたぎる感情を押し殺し、和真が晒した隙を遠慮なく突くことに迷いが無い。この思い切りの良い決断は和真や蒼介のようなプライドの高い者にはそうそう出来ない、一種の才能とも言えるだろう。

 

雄二(変則的な攻撃は、何もお前だけの専売特許じゃねぇんだよ……!)

 

最大限に伸ばしきった幌金縄のリーチは、ロンギヌスをも上回る。〈雄二〉はそのアドバンテージを用いて〈和真〉の射程外から、鎖の変則性を利用したトリッキーな攻撃をしかける。先ほどは和真の変則的な攻めに圧倒された雄二だが彼も武器の特性上、変則的な攻撃を得意としている。この手のタイプは攻撃を重視するあまり、得てして正攻法で闘う者よりもガードが疎かになりやすい。では先ほどの〈雄二〉の同様に〈和真〉が追い詰められるかと言えば…

 

和真「んな小細工、俺に通用するかよ」

雄二「ちぃっ、この化物め……!」

 

残念ながらそうはならない。〈和真〉は並外れた超反応で前後左右からの猛攻を全て弾き飛ばしていく。

とはいえ雄二もそんなことはわざわざ目の当たりにしなくても理解している。彼の狙いはもっと別の所にある。

攻撃し防がれ、攻撃し防がれ……何度ガードされてもお構いなしに〈雄二〉は攻撃し続けた。

 

 

和真「………あ”ぁうざってえぇ!こんな温い攻撃いつまで続けるつもりだテメェッ!」

雄二(……かかった!)

 

懲りずにひたすら攻撃を続ける〈雄二〉に業を煮やした〈和真〉は、渾身の力でロンギヌスを薙ぎ払い、幌金縄を力強く弾き飛ばした。

 

雄二が待ち望んでいたのはまさに、ロンギヌスを手元に引き戻すまでのわずかな隙。そこを的確に狙って…

 

雄二「『シューティングスター』!」

和真「っ!?」

 

腕輪能力を発動させた。

雄二の能力『シューティングスター』は奇しくも和真が一回戦で闘った優子の『ソード・バースト』と同系統の、消費した点数に比例した強さの星の弾丸を打ち出す能力である。『ソード・バースト』との違いは最大消費点数は半分の50点(総合科目では500点)までで、その分打ち出せる弾数は倍の十発までである。

そして今回〈雄二〉の支払った点数は…

 

 

《総合科目》

『二年Fクラス 柊和真  5714点

VS

 二年Fクラス 坂本雄二 3552点』

 

 

まさかの10点×10発と、想定されている最低威力である。腕輪能力と言えど直撃しても軽傷で済んでしまう程のショボさ。牽制用ならまだしもこの絶好のチャンスに使うには明らかに不適格。しかし雄二の判断は間違っていなかった。何故なら、

 

 

 

和真「-ぅおらぁっ!」

 

並外れた反射神経を持つ和真ならばこの状況下でも対応することができる……逆に言えば、こんな軽傷で済むショボい攻撃にもつい反応して防いでしまうのだから。

 

雄二(マジでとんでもねぇ反応速度だな和真……だがそれが命取りだ!)

和真「っ!?足に…!?」

 

流星を叩き落とすことに気を取られている〈和真〉の足元に、いつのまにか幌金縄が巻き付いていた。たとえ並外れた反射神経を持つ和真だろうと、死角からの攻撃には反応ができない。普段は天性の直感で補っているせいか、雄二の奇襲は完全に和真の虚を突くことができた。

 

雄二「せぇええのっ!」

和真「ぅおおっ!?」 

 

〈雄二〉はそのまま巻き付いた足ごと幌金縄を力強く引っ張り、〈和真〉を転倒させた。

 

雄二「これでフィニッシュだ…『アンゴルモア』!」

 

 

《総合科目》

『二年Fクラス 柊和真  5714点

VS

 二年Fクラス 坂本雄二 552点』

 

 

最後にとっておきの切り札、オーバークロック『アンゴルモア』を使用し超巨大隕石を〈和真〉目掛けて降り下ろす。

これが雄二が練った戦術の全て。幌金縄のチマチマとした攻撃で和真を苛つかせ大振りを引き出し、並外れた反射神経を逆に利用して威力の弱い『シューティングスター』に()()()()()。その隙に幌金縄が和真の死角から回り込んませ足に巻き付ける。そして決定的な隙を作り『アンゴルモア』の巨大隕石でとどめを差す。

ランクアップ能力は試合前の取り決めで使えない。オーバークロックならば消し飛ばせるだろうが、大幅に弱体化していまい結局負ける(よしんば勝てたとしてもその後トーナメントを勝ち上がることなどできない)。

よって和真に残された選択肢は一つ。

  

和真「『ガトリング・カノン』!」

 

 

《総合科目》

『二年Fクラス 柊和真  4714点

VS

 二年Fクラス 坂本雄二 552点』

 

 

ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ

 

 

通常の腕輪能力で迎撃するしかない。10の砲身が〈和真〉の周囲に展開する。しかし、いくら『ガトリング・カノン』がパワー系の能力でも、オーバークロックに対抗することは不可能である。

 

雄二「無駄だ!『アンゴルモア』は特殊な能力を持たないが、その分威力は絶大!いくらお前でも通常の腕輪能力では-」

和真「中々の戦略だったがまだ頭が固ぇな……能力にはこういう使い方もあるんだよ」

 

クルリ…

 

雄二「なっ……!」

 

十の砲身の内三つが〈和真〉の方へ方向転換し、発射された三発の弾丸が〈和真〉を遥か後方へと吹き飛ばす。

 

 

《総合科目》

『二年Fクラス 柊和真  1862点

VS

 二年Fクラス 坂本雄二 552点』

 

 

点数は半分以下まで削られたものの、隕石は〈和真〉に触れることなくその場に衝突、耳をつんざく豪音とともに消滅した。

 

雄二「…………強引通り越して滅茶苦茶過ぎるだろ……」

和真「ま、そこそこ楽しめたぜ」

 

〈和真〉はそのまま打つ手の無くなった〈雄二〉を討ち取った。

 

 

《総合科目》

『二年Fクラス 柊和真  1862点

VS

 二年Fクラス 坂本雄二 戦死』

 

 

雄二「……俺の完敗だ。約束通り、鳳を倒す役目はお前に任せる」

和真「一週間の付け焼き刃でそう簡単に実力差がひっくり返ったりしねぇよ。それにお前には覇気が足らなさ過ぎる。『ランクアップ能力』には勝てないからどうにかして使わせてない方法を…なんて考える奴が俺を倒せるわけねぇだろ。薄々思っちゃいたが雄二、お前もかつてのハングリー精神が無くなってんじゃねぇのか?神童復帰は結構だがよ、丸くなってちゃ世話無ぇぞ」

 

そう言い残し控えスペースへ戻っていく和真を見据えながら、雄二は一人自嘲めいた笑いを浮かべる。

 

雄二(戦士としてはド三流、か……ちくしょう)

 

 

 




翔子さんに続き雄二も大きな挫折を味わいました。神童に返り咲いたからって、トントン拍子にことを進められるほど世の中甘くないということですね。


【注目生徒データ⑨】

・坂本雄二(二年Fクラス)

〈召喚獣〉バランス型

〈武器〉幌金縄

〈能力〉シューティングスター……消費:1~50点。点数に比例した威力を持つ星の弾を飛ばす。

〈オーバークロック〉アンゴルモア……消費300。巨大隕石を召喚し叩きつける。リスクも無いが直線的にしか落とせないので、当てるには工夫が必要。


〈成績〉
外国語……466点
国語……429点
数学……535点
理科……507点
社会……487点
保体……483点

総合……5331点




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