傘さしてもズボンの裾とかがっつり濡れるし、関節がやたら痛くなるので……。
二回戦、Aブロック第二試合。『スウェーデンの至宝』リンネ・クラインvs『強面帰国子女』の対決。
下馬評ではリンネ・クライン圧倒的有利であるが、実際の戦況はと言うと…
リンネ「イガラシ、ニげてばっかじゃカてないよ?」
源太「やかましいわこのクソガキ!」
《外国語》
『二年Bクラス 五十嵐源太 524点
vs
交換留学生 Linne Klein 639点』
……下馬評通りリンネが優勢である。
どういうわけか源太に運が回ってきているようで、対戦科目は一回戦と同じく彼の最も得意な教科・外国語。なんと初期の点数はリンネを上回っていた。
しかしそれも微々たる点差でしかなく、リンネの保有するランクアップ能力『Guidad Explosive Kula』に大苦戦を強いられ、あっという間に逆転されてしまった。
源太(ちぃっ!落ち着いて考えろ俺様……。アイツの能力は攻防ともに隙がねぇ。まず全身を覆っているパワードスーツが召喚獣の防御を格段に引き上げてやがる。さっきなんとか爪を当てたが大して喰らっていなかった。おそらく一発一発の威力が弱い『千の刃』は通用しねぇ。そして攻撃は-うおぉっ!?)
分析中だろうが悠々と待ってくれるほど現実は甘くない。パワードスーツと一体化したクロスボウから自分に向けて発射された弾丸を〈源太〉はどうにかかわせたものの、弾丸がフィールドに着弾した直後に破裂し、その爆風によって吹き飛ばされてしまう。
源太(通常弾と炸裂弾を使い分けて翻弄してきやがる……あー!めんどくせぇ相手だなホント!)
急いで体勢を立て直した〈源太〉はお返しとばかりに、すかさず『巨人の爪』を〈リンネ〉目掛けてぶっ放した。
リンネ「こんなのヨけ-」
源太「させねぇよ、鳥籠!」
リンネ「エッ!?」
巨大な腕は〈リンネ〉に届く直前に分裂し、小さな爪が四方八方から取り囲むように軌道を変化させた。源太は翔子と同じくひたすら腕輪能力の工夫を模索したらしく、鳥籠と名付けられたこの攻撃はその成果の一つなのだろう。
〈リンネ〉は周囲を覆う爪を次々と打ち落としていくが、流石に全てほ捌ききれずにいくつか被弾してしまう。
《外国語》
『二年Bクラス 五十嵐源太 474点
vs
交換留学生 Linne Klein 599点』
リンネ「うぅ、まんまとヤラレちゃった……」
源太(けっ、よく言うぜ。今の攻撃で削った点数よりこっちが払った腕輪のコストの方がでけぇじゃねぇかよ……やっぱり反則染みた強さだなランクアップ能力……)
〈リンネ〉を覆うパワードスーツの防御力を考慮すると、威力の分散した小さい爪ではどれだけ当てようと先に〈源太〉の点数が尽きてしまうだろう。一発逆転を狙うならば、せめて最高威力の爪を直撃させる必要がある。
源太(ここはどうにかして接近戦に持ち込んで、近距離から最高威力の爪をぶち当てる。奴のボウガン……特に炸裂弾は巻き添えの危険があるから、接近戦じゃロクに使えねぇだろうしな。怖ぇのは距離を詰める途中だが……敢えて多少の被弾は覚悟して突っ込んでやる)
相手の不意を突くために、〈源太〉は迎撃のリスクを恐れることなく〈リンネ〉に向かって突撃する。しかし〈リンネ〉が〈源太〉の接近に気づいた直後…
〈源太〉は突然上空から飛来した炸裂弾の雨に飲み込まれた。
源太「な……に……?」
あまりに予想外な出来事に、〈源太〉は何が起こったか理解できず呆然とする。
召喚獣と視界がまだ繋がっている以上、まだ戦死したわけではない。そのことを思い出し体勢を立て直そうと思ったたが時既に遅し、いつの間にか急接近していた〈リンネ〉の零距離射撃を喰らい力尽きた。
《外国語》
『二年Bクラス 五十嵐源太 戦死
vs
交換留学生 Linne Klein 599点』
リンネ「ヤッター!」
源太「い、いったい何が……!?」
和真「ったく、注意力が全然足りてねぇなあのバカ」
何故戦死したのかまるでわからずその場で呆然としている源太を、控えスペースの和真はどうしようもない奴を見る目で呆れたように嘆息する。すると、源太と同じく今の出来事についていけなかった愛子が呟きを聞いたのか和真に近づく。
愛子「ねぇねぇ和真クン」
和真「あん?なんだよ腰抜け」
愛子「なんでいきなり罵倒されたのボク!?」
和真「ムッツリーニにビビって保健体育の勝負から逃げた奴なんざ腰抜けで十分だろ?」
愛子「う……それは確かに、そうだけど……」
和真「冗談だよ。確かに個人的にあまり好きじゃねぇ戦法だったが、勝つために悩んで決断したことにケチつけるほど器小さくねぇよ。それに今のムッツリーニに保健体育で挑んでも、お前程度の成績じゃボロクソに瞬殺されるだろうしな♪」
愛子(否定はできないけど、そんなハッキリ言わなくても……)
配慮や気遣いが微塵も感じられない和真の物言い(タチの悪いことに、意図的にそういう言葉を選んで言っている)に、愛子はがっくりと項垂れつつも、和真らしいと諦めすぐに立ち直る。
和真「……それでスポーツ刈り女、結局何のようだ?」
愛子「ベ・リ・ー・シ・ョ・ー・ト!!!
……あの、えっと…なんで源太君が戦死したのか詳しく教えて欲しいなー、なんて」
和真「お前もかよ……ハァ……リンネ・クラインはそう大したことをしてねぇよ。俺の見たところ、アイツの炸裂弾は優子の『ソード・バースト』みてぇにある程度コントロールが効く。しかも操作精度は『ソード・バースト』のそれとは比べ物にならないレベルでな」
愛子「え、そうなの?よく見てるねぇ~……それで、それがどうかしたの?」
和真「あのガキがやったことはたった一つ……源太に遠距離からちまちま攻撃していた序盤に、こっそり天井に何発か撃って待機させておいただけだ。あとは源太が接近戦に持ち込んできたときに…」
愛子「上から集中砲火でドッカン…ってわけだね」
和真(あんなチープな罠、しっかり注意を張り巡らせときゃ事前に回避できた筈だ。戦死したかどうかわからねぇ内に思考停止しやがったし、あの野郎どんだけ爪が甘ぇんだよ……)
スパーリングパートナーである徹やライバル意識している翔子が、どちらとも奇策を練るタイプでないことが災いしたのか、源太はこれでもかと言うぐらい搦め手に弱いようだ。
和真(……それにしても、リンネ・クラインか……スウェーデンの至宝様の実力があの程度のわけがねぇ、まず間違いなくまだ実力を隠してやがる。……源太はモルモットにすらなれなかったわけか。俺としてはある意味笑えるからこんな結果でも全然OKだが、次リンネと当たる梓先輩は内心キレてるだろーなー)
早々に脱落した源太への興味を失ったのか、和真はいずれどちらかと当たることになる二人について考えを巡らしつつ、控えスペースからフィールドに向かう。
和真(さて、どっちが勝ち上がってくるかねぇ?俺としてはリンネ・クラインのランクアップ能力とも闘り合ってみてぇが……やっぱ梓先輩へのリベンジが先だな、うん)
雄二「おい和真、多分Aブロックの二人のこと考えてるんだろうが……お前、自分が勝ち上がる前提で思考してないか?」
フィールド内どは既に雄二がスタンバイしており、敵愾心の籠った目で和真を睨めつけている。どうにかして倒してやろうと画策している相手が、自分自身を眼中にも入れていないのだから当然と言えば当然である。
そんな雄二の心情を察した和真は、にやりと凶悪な笑みを浮かべながら雄二を見据える。
和真「あぁ、わりぃわりぃ。梓先輩達云々はお前と次に当たる奴を……喰らい尽くしてから考えりゃいいよな?」
雄二「ぬかせ。お前がFクラスのエースでいられるのもこれで最後だぜ」
【アクティブ古今東西ランキング(危機察知能力)】
①和真……危険を事前に察知することに関しては最早オカルトの域。もっとも、天性の直感無しでも相当なレベルなのだが。
②蒼介……武道の達人らしく気配を読むことに長けている。また和真以上の洞察力と優れた頭脳のおかげか読心も達人級のため、和真ほどではないが奇襲の類いがほとんど通用しない。
③橘飛鳥……武術家その2。
④工藤愛子、木下優子、大門徹……そこそこ高い
⑦五十嵐源太……清水編でムッツリーニに毒殺されたりと、『アクティブ』の中でぶっちぎりの脇の甘さ。