バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

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【注目生徒データ⑩】

・Linne=Klein(三年Aクラス)

〈召喚獣〉ディフェンス型

〈武器〉ウィリアム・テルのクロスボウ

〈能力〉Guidad Explosive Kula(ランクアップ)
……消費無し。パワードスーツを身に纏うことで召喚獣のスペックを向上させる。さらにクロスボウがスーツと一体化する他、弾丸の性能も変化しているらしい。

〈成績〉
外国語……661点
国語……521点
数学……598点
理科……571 点
社会……524点
保体……517点

総合……6287点



S・B・F本戦・Bブロック①

Aブロックの一回戦が全て終了し、続いてBブロックに配属された生徒達の戦いとなる。第一試合は二年Aクラスの生徒・時任正浩vs我らがFクラスのリーダー・坂本雄二。

時任はあまり目立つ生徒ではないが、Aクラスに所属する「Bクラスに毛が生えた程度の40人」の中では最上位の成績であり、さらにFクラスとの決戦に備えてここ最近蒼介が実施した特別講義で一皮剥けたのか、二宮や沢渡に匹敵するまで成績を向上させている。普通に考えれば決して油断できるような生徒ではない。

 

 

 

……しかし、

 

 

《数学》

『二年Fクラス 坂本雄二 512点

vs 

 二年Aクラス 時任正浩 106点』

 

 

神童として返り咲こうとしている今の雄二と闘うには、ハッキリ言って力不足と言わざるを得ない。

 

時任「ぐ……くそ……っ!」

雄二「ふむ…中々使い勝手がいいなこの鎖」

 

〈雄二〉は固有武器『幌金縄』という特殊な鎖を操り、前後左右からのトリッキーな攻めで〈時任〉を追い詰めていく。〈時任〉も必死に食らいつくが徐々に逃げ場を無くしていき、やがては利き腕を幌金縄に絡め捕られてしまい、〈雄二〉はそのまま力任せに振り回して〈時任〉を地面に叩きつけた。

 

 

《数学》

『二年Fクラス 坂本雄二 512点

vs 

 二年Aクラス 時任正浩 戦死』

 

 

綾倉「勝者、坂本君!」

雄二(よし、作戦通り俺の腕輪能力は隠し切れたな)

和真(雄二の奴、さては次当たる俺を警戒して腕輪能力を温存しやがったな。ハッ、上等だ。どんな能力だろうと力づくで捩じ伏せてやろうじゃねぇか。

……にしてもアイツ、最初のメリケンサックといい二つ目の鉄パイプといい今回のチェーンといい……なんでこいつの武器はいちいち不良っぽいんだ?)

 

召喚獣の装備や腕輪能力は綾倉先生に一任されているが、彼の仕業かと言われれば首を捻らざるを得ない。彼はお気に入りの生徒にはとんでもない無茶ぶりをしたり、ひたすら手のひらで転がして弄んだりと、人の良さそうな笑顔とは裏腹に割とえげつない男ではあるものの、大して交流の無い生徒に意味もなく嫌がらせをするような教師ではない。確証こそ無いが、まず間違いなく学園長の差し金であろう。何とも大人げない老人である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてBブロック第二試合、Fクラスの紅き修羅・柊和真vsAクラスNo.2へと成長した木下優子。この好カードに会場中がより一層エキサイトする。それもそのはず、Aブロックの四試合も先程の試合も両者の実力者がありすぎて消化試合であることは否めなかったが、この試合は5000点オーバーの優勝候補同士の激突だからである。

 

明久「……でも、大丈夫かな和真」

雄二「あ?何がだよ?」

 

テキパキと戦う準備をする(ちなみに二人が希望した教科は両者ともに総合科目)二人を眺めながら心配そうに呟いた明久に、雄二がどういうことか問いかける。

 

明久「だって最近の和真、ビックリするほど木下さんに弱いでしょ?木下さん相手にちゃんと闘えるのかなぁ……?」

雄二「……お前みたいなカス野郎に心配されるなんざ、和真も可哀想だな」

明久「心配しただけでなんで罵倒されるの!?」

 

あまりに理不尽な雄二の物言いに鼻白む明久だが、雄二はなおのこと呆れるように嘆息する。

 

雄二「あのな明久……アイツは誰だ?確かにアイツは箱入り娘かってぐらいウブで一途だし、普段のあの二人の力関係を見るとそんな心配するのも仕方ないのかもしれん。……だがな、それ以前にアイツは柊和真なんだよ。戦闘中のアイツにそんな甘っちょろい考えは、心配するだけ無駄だ」

 

 

 

和真「オラァッ!」

優子「っ!?いきなりね…!」

 

雄二の言い分を裏付けるかのように、〈和真〉は仮にも恋人の眼球(あくまで召喚獣だが)目掛けて躊躇なくロンギヌスを叩き込んだ。〈優子〉も咄嗟にエクスカリバーで受け止めたものの、圧倒的なパワー差の前に吹っ飛ばされて地面に叩きつけられる。

 

 

《総合科目》

『二年Fクラス 柊和真  5714点

vs

 二年Aクラス 木下優子 4783点』

 

 

和真「……咄嗟に受け身を取ってダメージを軽減したかのか。しばらく会わねぇ内に随分とできるようになったじゃねぇか」

優子「成績だけじゃなく操作でもアンタに勝つもりで鍛練したからね。それにしても、予想通りとはいえホント容赦しないわねアンタ……」

和真「わかってんならさっさと立てよ。

体勢立て直すのをチンタラ待ってやれるほど……俺の気は長くねぇんだよっ!」

優子「くぅっ……!」

 

〈和真〉はすかさず間合いをつめて追撃を行う。〈優子〉は体勢を立て直しつつどうにか応戦するも、圧倒的なパワー差と執拗なまでの眼球攻めに防戦一方となる。

 

 

 

明久「ねぇ雄二……なんか和真の攻撃、やたら顔狙いに偏ってない?」

雄二「多分視点の変化を利用してるんだろ」

明久「へ?それってどういう-ぬわぁぁあああっ!?(ガバァッ!)」

 

雄二の言っていることがいまいち理解できない明久に、雄二は何故か目潰しを仕掛ける。すんでのところで避けた明久は猛然と雄二に抗議する。

 

明久「いきなり何するキサマ!?」

雄二「怖かったか?」

明久「いきなり目潰されかけたらそりゃあねぇ!?」

雄二「おそらく木下姉も同じ気持ちだろうな」

明久「………え?」

雄二「視覚リンクシステムは自分の視界が召喚獣から見た視界になる。木下姉の召喚獣はお前みたいに痛みがフィードバックしないから目潰しされたところでどうにもならないだろうが、人間そう簡単に割り切れるもんじゃないだろうしな」

 

人は思っている以上に視覚から得た情報に依存している。目を閉じれば恐怖感が増してロクに身動きも取れなくなるほどだ。加えて眼球には神経系が集中しているため軽く触れられただけで激痛が走る。そんなデリケートな部分を執拗に狙われたらいくら気の強い優子と言えど防戦一方にならざるを得ない。召喚獣の眼が抉りとられようご本人に実害が無いことなど何の意味もない、染み付いた感性は嫌が応にも警戒を抱かせるのだ。

 

明久「え、えげつないね和真……木下さんのこと大好きな筈なのに、なんでそこまで情け容赦なくできるの?」

雄二「以前和真が言っていたが……自分は筋金入りの戦闘狂で、親だろうが親友だろうが恋人だろうがひとたび勝負が成立してしまえば、あらゆる感情を一切無視して勝つことだけを考えられるんだとよ」

 

まさに生まれついての狂戦士(ナチュラル・ボーン・ベルセルク)

普段は強靭な理性に抑えつけられているが、和真の真価はその奥に潜む暴力的なまでの闘争本能、そしてそれこそが和真の本質にして、“気炎万丈”の中核なのだ。

 

和真「ほらほらどうした優子、反撃しなきゃ勝てねぇぞ!」

優子「うるさいわねっ!ここから怒濤の反撃が始まるから見てなさ-きゃあっ!?」

 

目に迫り来るロンギヌスに気を取られ過ぎた〈優子〉は、いつの間にか間合いをつめていた〈和真〉の蹴りをモロに喰らってしまう。パワー特化とはいえただの蹴りなのでそこまでのダメージでは無いが、体勢が崩れて致命的な隙をさらしてしまう。

 

和真「怒濤の反撃が何だって!?始められるもんなら始めてみろや!」

 

その隙を〈和真〉が見逃す筈もなく、渾身の一撃を放つべくロンギヌスを振りかぶる。

 

優子(………かかった!)

 

それこそが待ち望んでいた反撃の糸口。

〈優子〉は『ソードバースト』を発動させる。実はこの腕輪能力は消費点数の大きさに比例して威力が上がるだけでなく、放った斬撃の軌道をある程度コントロールできる隠れた特性がある。〈優子〉はその特性を巧みに駆使し、回避不能な斬激の弾幕で〈和真〉を取り囲んだ。

 

 

優子(よし、うまくいった-)

和真「-とでも思ったか!」

優子「っ!?嘘ぉっ!?」

 

 

驚異的な反応速度でロンギヌスを構え直し、〈和真〉は向かってくる斬撃を1つ残らず弾き飛ばした。通常の武器なら威力に耐えきれず破損してしまうが、桁違いの耐久力を誇る固有武器はうまく扱えば腕輪能力とも渡り合えるのだ。まあ今回の場合驚異的なのは固有武器よりも、優子のしかけた起死回生の策に即座に対応した凄まじいまでの反射神経だろう。

 

雄二(対応力が遠隔操作時とは段違いだ。視覚リンクシステムの恩恵を一番受けたのは間違いなくアイツだな……)

 

 

《総合科目》

『二年Fクラス 柊和真  5714点

vs

 二年Aクラス 木下優子 3228点』

 

 

そして両者の点数差はさらに広がる。金の腕輪は確かに強力な武器だが、上手く扱えなければ無意味に点数を消費してしまう諸刃の剣なのだ。

 

……ランクアップ能力を除けば、だが。

 

優子「……どういうつもり?」

和真「あん?急にどうした?」

優子「どうして能力を使わないのよ?アタシと違ってアンタはランクアップしているのだから、点数消費は無いんでしょ?」

和真「まあ確かにそうだが……安心しろ、お前に対して使う気は無ぇからよ」

優子「………何それ?情けでもかけてるつもり?だとしたら不愉快なんだけど」

和真「おっと怖ぇ怖ぇ。そうだな、お前を怒らせたくはねぇから正直に言うか……」

 

両手を上げて降参のポーズを取ってから和真は一旦目を閉じ少し勿体ぶってから目を開け…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やたらと挑発的な笑みを浮かべながら優子を指差しつつ、見下しきったような声色で告げる。

 

和真「テメェみてぇな雑魚キャラに能力なんざ使う必要無ぇんだよバーカ。悔しかったら力づくで使わせてみろやウケケケケケケケ!」

(((全力で怒らせにかかってるーーー!?!?!?)))

優子「…………ふーん?

 

 

 

 

ふーーーーーん???」

(((滅茶苦茶怒ってらっしゃるーーー!!!)))

 

顔全体に怒りマークを浮かべながら何故か満面の笑みを浮かべる優子は、ハッキリ言って滅茶苦茶怖い。

和真も普段なら即座に許しを請うレベルだが生憎今は戦闘中のため、和真は臆することなく不適な笑みを浮かべたままである。

 

優子(有り得ないほどムカつく挑発でうまく誤魔化したつもりでしょうけど、アンタの考えはわかっているわよ。そんなに隠したいならいっそのこと出し惜しみしたまま仕留めてあげるわ…………アタシの“オーバークロック”でね)

 




思ったより長引いたので決着は次回に持ち越します。



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