・佐伯梓(三年Aクラス)
〈召喚獣〉スピード型
〈武器〉干将・莫耶
〈能力〉ヨーヨーブレード……消費50。武器を巨大なヨーヨー(側面に刃物)に変化させる。余談だが、この手のウェポンチェンジ系の能力は元の武器は消滅してしまうが、成績が5000点オーバーの場合固有武器は消えずに残る。
〈成績〉
外国語……490点
国語……488点
数学……493点
理科……457点
社会……466点
保体……427点
総合……5218点
諸事情により投稿時間を22時から18時に変更しました。
『フリーダム・コロッセオ』内部のステージには観客席にいる予選落ちした生徒達(要は負け犬共)で大盛況だ。
全校生徒、及び教師達、その他四代企業関係者などなど大勢の注目を浴びつつ入場してきたた本戦出場者のうち、闘う二名のみがフィールド内に入りそれ以外の生徒はフィールド外の控えスペースで闘いを観戦、もしくは情報収集にあたる。
綾倉「それでは……記念すべき一回戦第一試合がまもなく始まります!木下君と佐伯さん、希望する科目を選択してください!」
梓「ふふふ、お手柔らかに頼むで木下君♪」
秀吉「こっちの台詞じゃ……」
鋭い洞察力などなくても一発で見抜けるほど白々しい態度の梓に秀吉はげんなりする。この女台詞とは裏腹に、負けるなどとは一ミリたりとも思っていないない。
二人がPDFから科目を選択すると、ステージの上に設置されたオーロラビジョンに3種類の科目が表示された。秀吉の希望した科目は社会、梓の希望した科目は数学、そして決定した科目は保健体育であった。
綾倉「科目が決定したようですね。保健体育のフィールドを展開したので二人とも召喚獣を喚び出してください」
秀吉・梓「「
キーワードに反応しフィールド内に幾何学模様が展開され、その中心から二体の召喚獣が出現する。〈秀吉〉の装備が羽織に日本刀の新撰組スタイル、一方〈梓〉の装備は防刃スーツと両足のソルトレックはこの前と同様だが……肝心の武器がトンファーではなく、亀裂模様の浮かんだ剣と水波模様の浮かんだ剣の二振り……雌雄一対の双剣に変化していた。
秀吉「この前と武器が違うのじゃ!?」
梓「こいつは干将・莫耶、ウチの固有武器や。……トンファーやのうなってちょっと不満やけどな」
《保健体育》
『二年Fクラス 木下秀吉 292点
vs
三年Aクラス 佐伯梓 427点』
和真(また強くなりやがったな梓先輩……もう進学先決まってるからってそんなに暇なのか?)
予想通り点数差は歴然。しかも固有武器を手にしたということは、梓がとうとう5000点の壁を越えたことを意味している。
綾倉「最後の準備です。『召喚獣視覚リンクシステム』を起動しましたので、お二人はこのゴーグルをつけて側面のスイッチを押してください」
綾倉先生に近未来的な形状のゴーグルを手渡された二人は、言われた通りにそれをつけて側面のスイッチを押す。すると二人の目に映った光景は、召喚獣視点の景色と見事に一致していた。
秀吉(こ、これは驚いたのう……まさか召喚獣の目線で動かせるとは)
梓(ふーん…要はTPSからFPSに変わったってことやな。ふむふむ、この視点は動かしやすい反面死角も増えそうやなぁ…色々と悪巧みできそうや)
秀吉が試験召喚システムの目覚ましい進歩を目の当たりにして純粋に感動している一方、梓はこれを使ってどうやって騙してやろうかと早くも考えを巡らせていた。これが文月一純粋無垢な男子(?)と文月一の詐欺女の差である。
綾倉「準備が整いました。それでは……試合開始!」
梓「それじゃあいくで木下君」
両手に持った干将と莫耶の握り方を逆手に変え、〈梓〉は〈秀吉〉に向かっていく。
明久「大丈夫かな秀吉……」
和真「んー……相性は悪くねぇと思うぜ」
明久「え、どういうこと?」
和真「……梓先輩の一番厄介な武器はなんといっても騙しのテクニックだ。口だけでなく行動や仕草、間合いの取り方すらひたすら嘘まみれ。しかもその精度は超一流で、観察眼に自信のある俺でもすぐには見破れねぇほどだ。だが演劇バカの秀吉なら…」
和真の推測は的中し、〈秀吉〉は幾重ものフェイクを織り混ぜた〈梓〉の攻撃を次々と紙一重で避けていく。
秀吉「残念だったのう佐伯先輩、ワシはそう簡単に騙されんぞい!」
佐伯「ほー、噂に聞いてた通り通り大した観察力やな自分。……せやけど、」
明久「なるほど!和真以上の観察力を持っている秀吉なら、佐伯先輩の嘘も見抜けるってことか!いける、いけるよ秀吉!」
和真「………ああ、秀吉は嘘じゃ騙されねぇだろうな。だがな明久、世の中そう甘くねぇんだよ」
明久「……え?どういうことさ?」
いまいち理解できず、明久は和真の方を振り向いて具体的な説明を求める。和真がそれに答える前に観客席から割れんばかりの歓声が響き渡る。
明久「わっ!?な、何が起こった……の……?」
慌ててフィールドに戻された明久の視界には、〈秀吉〉が〈梓〉に斬り伏せられて横たわっている光景が映った。
《保健体育》
『二年Fクラス 木下秀吉 戦死
vs
三年Aクラス 佐伯梓 427点』
綾倉「勝者、佐伯さん!」
梓「ウチのフェイクを見破れるのは凄いけど、ウチと闘うにはまだまだ未熟やな」
秀吉「うむむ…手も足も出んかったぞい……」
綾倉先生が試合終了を告げる。勝利した梓はフィールド外に戻り、敗北した秀吉は観客席に移動にした。
明久「か、和真……僕が目を離している間に何が起こったの……?」
和真「いや、何がって聞かれても……梓先輩の連続攻撃に秀吉がついていけずに瞬殺されただけだが?」
明久「なんでさ!?さっき秀吉ならフェイクを見破れるって-」
和真「フェイクが通用しなくても正攻法は通用するんだよ。成績にしろ操作技術にしろ、秀吉と梓先輩じゃあ彼我の実力差がデカ過ぎる。相性は確かに悪くねぇが、秀吉の勝ち目なんざそもそも無かったんだよ」
明久「そ、それにしたってこんな一瞬で…」
和真「秀吉はまんまと騙されたんだよ」
明久「………は?あの和真、秀吉は騙されないって-」
和真「俺が言ったのは“嘘”には騙されない…だぞ。それはつまり、“事実”なら秀吉を騙せるってことだ」
明久「?????」
あまりに理解不能な和真の説明に、明久は頭の中がクエスチョンマークで埋め尽くされたが、そうなることは折り込み済みだったため和真は根気よく説明を続ける。
和真「明久、梓先輩の一番厄介な武器は騙しのテクニックだって試合前に言ったよな」
明久「う、うん…」
和真は「あれは何もフェイクの上手さだけを指すんじゃねぇんだ。確かにそれも厄介極まりないんだが、お前に匹敵するレベルの操作技術もまた厄介極まりないだろ?フェイクを警戒し過ぎた秀吉は無意識に正攻法への警戒が緩んでしまい、まんまと嵌められて正攻法で敗北したってわけだ。梓先輩はな、嘘なんざつかなくても真実だけで人を騙せるんだよ。いやそれどころじゃねぇ……三回闘った俺にはわかる。下手したら梓先輩にとっては、森羅万象全てが人を騙す武器になりかねない」
その後も本戦は続いていくのであった。
第二試合の佐藤美穂vs霧島翔子戦は…
綾倉「勝者、霧島さん!」
翔子「……私の勝ち」
佐藤「うー…やっぱり腕輪無しじゃ無理かぁ……」
ランダムで決定した教科が国語であったため、腕輪能力を使えない佐藤を翔子が『アイスブロック』で一方的に蹂躙し圧勝、学年三位の貫禄を存分に見せつけた。
第三試合の沢渡晴香vs五十嵐源太戦は…
綾倉「勝者、五十嵐君!」
沢渡「オーバーキル過ぎっしょー……」
源太「その、なんだ…ドンマイ……」
希望教科は食い違ったものの天が源太に味方したのか、選ばれた教科は源太の希望した英語。前二試合と同じくワンサイドゲームが繰り広げられた。自分で希望していながら源太はなんとなく申し訳ない気持ちになったそうな。
第四試合のリンネ=クラインvs宮阪杏里戦は…
綾倉「Vinnaren är Mr.Klein !」
リンネ「ヤッター!」
杏里「うん、まあ予想通り……」
教科は総合科目。パワードスーツを装着し召喚獣とクロスボウが一体化するランクアップ腕輪能力『“Guidad Explosiv Kula”』の前に、総合科目では腕輪能力の使えない杏里は為す術もなく敗北する。仮に青銅の腕輪の支援を使用できたとしても、ランクアップ腕輪が相手では勝ち目が薄かっただろうとは本人の弁。
Aブロックはそれぞれ本命の生徒が番狂わせもなく順当に勝ち抜く結果に終わった。続いてトーナメントはBブロックに移る。
操作技術に警戒を向ける→フェイクへの警戒が無意識に緩んでしまう→フェイクで翻弄される
フェイクに警戒を向ける→操作技術への警戒が無意識に緩んでしまう→正攻法でやられる
梓さんに勝つためには彼女の行動全てに警戒を張り巡らすか、自力で圧倒するしか方法がありません。