バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

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【注目生徒データ⑥】

・吉井明久(二年Fクラス)

〈召喚獣〉スピード型

〈武器〉木刀

〈能力〉無し

〈成績〉
外国語……112点
国語……115点
数学……110点
理科……106点
社会……378点
保体……108点

総合科目……1750点


・大門徹(二年Aクラス)

〈召喚獣〉ディフェンス型

〈武器〉ガントレット(両腕)

〈能力〉リフレクト・アーマー……消費50。鎧にあらゆる攻撃の一部をソニックブームにして跳ね返す効果を付与する。ダメージは軽減されるが無敵になるわけではない。さらに和真戦で破壊されていることから鎧にもダメージの許容量は存在する。

〈オーバークロック〉不明

〈成績〉
外国語……382点
国語……305点
数学……574点
理科……497点
社会……402点
保体……362点

総合科目……4682点




予選終了

清水「この豚野郎!ちょこまかと逃げてないで、正々堂々死になさい!」

明久「待って清水さん!そこはせめて正々堂々戦えじゃないの!?」

玉野「そう簡単には逃がさないよアキちゃん!」

明久「玉野さんお願いだからその呼び方はやめて!」

 

エンカウント自体は偶然あるもののどちらも明久とは浅からぬ因縁のある相手、対峙すれば刃を交えることは自明の理であった。そして戦況はというと…

 

 

《英語》

『二年Fクラス 吉井明久 74点

VS

 二年Dクラス 清水美春 162点 

 二年Dクラス 玉野美紀 166点』

 

 

意外にも大苦戦を強いられる明久。……いや、意外でもなく順当であるのかもしれない。よくよく考えてみればそれ相応の理由が揃っている。

まず一つ目に対戦科目は英語なのだが、明久の英語の初期点数は精々Eクラスレベル。召喚獣を己の手足のように扱えるほどの操作技術を持つ彼と言えど、この低スペックではそれほど大した動きは期待できない。片や清水と玉野は二人ともガチガチの文系タイプなため、どちらもBクラスレベルの初期点数を保持していた。タイマンで闘うならともかく、二人がかりなら明久相手でもそこそこ立ち回れる点数差だ。

二つ目は共にDクラスでは主力で共闘する機会も多いためか、清水と玉野のコンビネーションが予想以上に秀でていることだろう。片方が相手の注意を引き付けている内にもう片方が相手の意識外から攻め込む……連携の基礎ではあるが、単独での攻略は難しい立ち回りで明久を追い詰めている。

 

明久(まいったなぁ…白金の腕輪を使って2vs2に持ち込めば……ただでさえ少ない点数を分割したらダメだよね。ここは上手いこと逃げるしかないか)

 

意外と余裕のある明久だが、別段特別な理由があるわけではない。彼は不利な勝負なら百戦練磨……というより、大抵は基本的に不利な土俵にしか上がらせてもらえない。清水達の連携は確かに大したものだが、明久を殺し切るにはやや決定力不足と言わざるを得ない。真っ向から勝負はせず、かといって逃げに徹するわけでもなく、攻撃を避けつつさりげなく雄二達のいる狩場に誘導することはできると踏んだ明久はすぐさま行動を開始する。

 

 

 

しかし彼は失念していた。自分自身がこの学園でどれだけ悪目立ちをしてきたか、そしてそんな彼が追い詰めている状況を目撃した生徒がどのような行動を取るのかを。

 

平賀「清水さん、玉野さん、助太刀するよ!」

明久(げっ!?)

 

まず最初にDクラス代表の平賀源二が、クラスメイトの清水達を手助けするために参戦。

 

小山「いよいよ年貢の納め時のようね吉井!」

明久(げげぇっ!?!?)

 

次にCクラス代表の小山優香が、先日の試召戦争にてFクラス教室を押し付けられた恨みを晴らすべく参戦。

 

 

《英語》

『二年Fクラス 吉井明久 44点

VS 

 二年Dクラス 清水美春 151点 

 二年Dクラス 玉野美紀 155点

 二年Dクラス 平賀源二 158点

 二年Cクラス 小山優香 171点』

 

 

結果、残り点数Fクラス平均の半分という虫の息の状態で四体の召喚獣に囲まれるという、哀れなほど地獄画図のような光景が出来上がった。

 

小山「さて、覚悟は良いかしら」

清水「あなたがいる限り、私とお姉さまの薔薇色の未来は実現しないのです……!」

玉野「アキちゃん、ちょっと痛いかもしれないけど後で坂本君に慰めてもらってね!」

平賀(………混ざらなきゃ良かった。ノリに全然ついていけないが、とりあえずなんかスマン吉井)

明久「あ、あの……土下座でもなんでもするんで見逃してもらえないでしょうか?」

「「却下!!!」」

 

清水と小山がにべもなく断ったことを皮切りに、一斉に襲いかかる四体の召喚獣。

 

明久(ば、万事休す…!)

 

フィードバックを覚悟して思わず目を瞑る明久だったが、いつまでたっても痛みが襲ってこない。それどころか何やら清水達が誰かと言い争いをしている。明久が気になって閉じた目を開くと…

 

 

《英語》

『二年Fクラス 吉井明久 44点

 二年Aクラス 大門徹  382点

VS 

 二年Dクラス 清水美春 戦死

 二年Dクラス 玉野美紀 戦死

 二年Dクラス 平賀源二 戦死

 二年Cクラス 小山優香 戦死』

 

 

いつのまにか割り込んでいた徹が清水達に詰め寄られている光景、そして彼の召喚獣が清水達の召喚獣を皆殺しにした光景が明久の目に飛び込んできた。

 

明久「だ、大門君!?」

徹「何度でも言ってあげるよ敗北者諸君。獲物を狩る瞬間の隙だらけだった君達を狩って何が悪い?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明久「あ…ありがとう大門君、助けてくれて」

 

清水達が鉄人に連行されるのを見届けつつ明久は徹に礼を言うが、徹はきょとんとした表情で首を傾げる。

 

徹「なんで君が礼を言うんだい?僕は別に君を助けた訳じゃないんだよ?」

明久「いや、たとえ大門君にそのつもりは無くても結果的に助かったんだし-」

 

言葉を言い切る前に〈徹〉はガントレットを〈明久〉目掛けて降り下ろす。この一年間で培った反応のお陰でどうにか避けられたものの、明久の頭の中はクエスチョンマークで埋め尽くされる。

 

明久「…………ゑ?」

徹「何を呆けた顔をしてるんだい?僕は君を助ける気も無ければ、このまま君を見逃す気も無いんだよ。この前源太に借りた漫画の台詞を借りるなら、『勘違いするなよ吉井、貴様を倒すのはこの俺だ』……ってところかな?」

明久「えぇええぇえぇぇぇ!?そのセリフって普通その場は見逃してくれるんじゃないの!?」

徹「僕は殺れるときには殺っておくタイプなんだよ」

 

文月学園一器の小さい徹に付け狙われまさに絶対絶命……という状況で、ようやく明久にも運が回ってきた。この土壇場でフィールドの科目が英語から社会へ……明久の最も得意とする教科に切り替わったのである。

 

 

《社会》

『二年Fクラス 吉井明久 378点 

VS 

 二年Aクラス 大門徹  402点』

 

 

徹「へぇ……二年を代表するバカとは思えない点数だね。だが果たして腕輪持ちの僕に勝てるか-」

明久「戦略的撤退ィィィィィ!」

徹「はあぁっ!?」

 

何倍も教科された〈明久〉と共に全力で逃走する明久。操作技術に加え〈明久〉はスピードタイプなので、点数で負けているとはいえ防御特化の〈徹〉相手ならおそらく逃げ切れるであろう。だが…

 

徹「ちょっ、待てオイ!その点数で逃げの一手は無いだろう!君にはプライドは無いのか!?」

明久「ふはははは!そんなものご飯にかけて食べてしまったよ!」

徹「君のプライドはふりかけか!?」

 

その後徹は一応追いかけてみたものの、結局明久達を取り逃がしたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、一年生のテリトリーである二階では…

 

 

《保健体育》

『三年Aクラス 常村勇作 118点

 三年Aクラス 夏川俊平 106点

VS

 一年Fクラス 志村泰山 437点 

 一年Dクラス 綾倉詩織 469点』

 

 

夏川「く、くそぉ……!」

常村「俺達が……こうも一方的に……!」

 

常夏コンビが一年最強ペアに追い詰められていた。本人達のそこはかとない小物臭と微妙な戦績から誤解されがちだが、彼らは高い成績と優れた操作技術を兼ね備えた三年屈指の実力者達である。秀吉達を追い詰めた千莉と鉄平も恐るべき実力者であったが、この二人の強さは明らかに常軌を逸している。

 

詩織「………」

泰山「さてと、申し訳ありませんがそろそろ決着を付けさせてもらいますぅ」

夏川「……もう勝った気でいるのかよ一年坊主ども」

常村「できればこの手は使いたくなかったが、このまま舐められっぱなしじゃ終われないよな……」

常村・夏川「「『ガン・スミス』!」」

 

 

《保健体育》

『三年Aクラス 常村勇作 18点

 三年Aクラス 夏川俊平 6点

VS

 一年Fクラス 志村泰山 437点 

 一年Dクラス 綾倉詩織 469点』

 

その言葉をトリガーに二人の召喚獣は点数を消費し瀕死になり、それと引き換えに〈夏川〉の武器は2丁のショットガンに、〈常村〉の武器はアサルトライフルに変化した。

 

泰山「へぇ~、それが腕輪能力ですかぁ。でも先輩方、一年生の俺達にそれ撃っちゃったら失格になっちゃいますよぉ?」

常村「この際勝ち抜くのは度外視した。どっちにしろ俺達の勝機はもうゼロだろうしな」

夏川「だがせめて一矢報いさせてもらうぜ。あわよくば相討ちに持ち込んでやる」

 

そして二人の召喚獣は装填された弾丸を躊躇いなく一斉に放った。しかし弾丸が放たれる直前に〈詩織〉が固有武器『七支刀』を構えて〈泰山〉を庇うように前に立ち、

 

 

 

 

 

 

常村「は……?」

夏川「う、嘘だろ……」

 

次の瞬間には〈詩織〉が高速で放った刺突の連撃にほとんどの弾が弾き飛ばされた。

 

 

《保健体育》

『三年Aクラス 常村勇作 失格

 三年Aクラス 夏川俊平 失格

VS

 一年Fクラス 志村泰山 437点 

 一年Dクラス 綾倉詩織 418点』

 

 

ビーーー

 

『常村君、夏川君。一年生の召喚獣に対して腕輪を行使したので失格です』

 

どこからか聴こえてきた綾倉先生のアナウンスを耳にしても、二人は状況を飲み込むのに時間がかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして体育館でも詩織の行動に驚愕した者がやく二名。和真と蒼介、大抵のことには動じることのないこの二人が信じられないものを見る目でモニターを凝視している。というのも、〈詩織〉の繰り出した刺突は……

 

和真「おいソウスケ、あの技ってお前ん家の……」

蒼介「…………ああ、間違いない。あれは紛れもなく水嶺流弐の型、そして参の型の複合技……車軸・豪雨」

 

鳳家に代々伝わる『水嶺流』の技だったのだから。

 

蒼介(『水嶺流』は鳳家の者だけが継承を許された門外不出の剣術……それを何故部外者である奴が使える!?綾倉詩織、貴様はいったい何者なんだ……?)

 

 

ピンポーン

 

『生き残っている参加者が28名となりましたので、今を持って予選を終了いたします。勝ち残った生徒諸君、予選通過おめでとうございます!』

 

決して小さくない禍根を残しつつ、『S・B・F』予選は幕を閉じたのであった。

 

 

 

 




嗚呼、常夏コンビ……。せっかく改心したのにかませ街道まっしぐら……正直すまないと思っている。

 

【注目生徒データ⑦】

・常村勇作(三年Aクラス)

〈召喚獣〉バランス型

〈武器〉バトルアックス

〈能力〉ガン・スミス……消費10×弾数。武器をアサルトライフルにチェンジする。

〈成績〉
外国語……302点
国語……274点
数学……405点
理科……412点
社会……277点
保体……245点

総合科目……3585点


・夏川俊平(三年Aクラス)

〈召喚獣〉バランス型

〈武器〉ハンマー

〈能力〉ガン・スミス……消費10×弾数。武器を2丁拳銃にチェンジする。

〈成績〉
外国語……294点
国語……273点
数学……405点
理科……407点
社会……281点
保体……221点

総合科目……3481点



次回から本戦どすが、プロットを再チェックするので1週間ほどお待ちください。


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