バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

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【召喚フィールド発生装置】

綾倉先生が開発した、雄二が持つ白金の腕輪の発展型とも言える代物。一定時間毎に科目が変化する召喚フィールドを展開する。学力強化合宿の覗き騒動では干渉による召喚フィールドの消滅を利用されたが、この装置で発生させたフィールドは他フィールドと重なると結びつく性質を持つため、干渉が起こらないどころか二つのフィールド間を自由に往き来できるようになる。そして召喚フィールドには今回の大会用に、フィールド内に入った人の召喚獣を強制出現させる機能が追加されている。
学園長はこの結合機能の仕組みをと強制召喚機能についと知りたがっているが、綾倉先生は意地悪なので教えようとしない。


綾倉「お値段はお買い得価格の3億9800万!読者の皆も是非ゲットして召喚獣を喚び出そう!」

和真「高過ぎるしそもそも読者の皆召喚獣なんて持ってねぇよ!」



撒き餌

『坂本ォォォ!!どういうことだこれはァァァッ!』

『予選通過に協力する引き換えに一人につき聖典(エロ本)美術品(AV)を10品ずつ贈呈するという男の密約だった筈だろ!?』

『は?何ソレ?身に覚えがありませんな?』

『『『貴様ァァァッ!!!』』』

『脱落者は補習!』

『ひぃっ!?な、なんで鉄人が!?』

『綾倉先生はあえて説明してなかったようだが、ゾンビ行為の防止もかねて召喚獣が戦死した生徒はいつものように補習だ!』

『そ、そんなバカなァァァっ!?』

『……だ、第一今回は900人もいるんだぜ!?いくら化け物のアンタでも手が回りきるわけねぇし、そもそも補習室に収まりきらないだろ!』

『安心しろ。この日のために地下に極秘で建設された特別補習室は、体育館並のサイズがあり900人だろうと余裕で入る。それに補習を担当するのは綾倉先生、御門先生、学園長を除いた文月学園の全教職員だ。召喚フィールド発生装置は実のところこの大規模な補習を実現させるために開発されたからな』

『アンタらの補習にかける熱意は何なんだ!?』

『冗談じゃねぇ、皆逃げるぞ!流石の鉄人でも42人以上を無理矢理連行できるわけねぇ!』

『逃がすか!試獣召喚(サモン)!』

『しょ、召喚獣だと!?きたねぇぞ!』

『えぇい、つべこべ言うな!いい機会だ、お前達を入念に指導してやる!』

『『『嫌だあああぁぁぁぁぁ!!!』』』

 

 

 

 

 

和真(流石7000点第召喚獣……と言いてぇところだが、なんともシュールな光景だな……)

 

モニター越しに大の男42人が三頭身の召喚獣に軽々と担がれている光景を目の当たりした和真は思わず苦笑いする。同時に、“気炎万丈”状態の親父なら生身で同じ芸当ができるんじゃないかという笑えない想像をしてしまったことに軽く眩暈を覚えた。

 

和真「にしてもいい加減学習しろよなアイツらも……翔子の目を盗んで420ものエロ本だのAVだのを用意できるわけねげだろうが……」

蒼介「……まあ報酬のチョイスはともかくとして、坂本らしいルールの裏をついた作戦だったようだな」

和真「ルールの裏?………ああ、ルール⑥か」

 

予選ルールその⑥……金銭取引を介してのチェスピースの譲渡及び譲渡の際に結んだ協定の破棄を禁止する。

 

今回雄二がとった行動は()()()()のブツによる取引でクラスメイトを扇動し、()()()()()()()()()()()()()()()()協定を破棄し、腕輪能力にものを言わせて彼らを全滅させたのだ。

 

蒼介「道徳的に考えればあまり誉められるような内容ではないが、ルールの網を掻い潜った見事な作戦だ。少なくとも私では思いつかないだろう」

和真「お前ああいうキャラじゃねぇし、思いついたところで実行できねぇだろ。……おーい綾倉センセー」

綾倉「和真君?どうかしましたか?」

 

念のため確認しておこうと和真は実行委員長の綾倉先生を呼ぶ。綾倉先生は並外れた並列思考能力で全てのモニターをチェックしつつ和真達のもとにやってきた。

 

和真「さっきの雄二のアレ、反則じゃねぇよな?」

綾倉「えぇ勿論。ちょっと戯れにルールのいくつかに学園長に内緒で抜け穴を用意しておいたのですが流石坂本君、早くも作戦に組み込んだようですね」

蒼介「そのちょっとした戯れに、向こうの方で学園長が頭を抱えているのですが……」

和真「そりゃいきなりあんな、おおよそ進学校の生徒が考えたとは思えないようなえげつねぇ作戦を実行されたらそうなるわな……」

 

今頃学園長は綾倉先生を実行委員長に指名したことを後悔しているに違いない。明久達問題児への警戒は入念にしていたが、まさかイメージダウンになる火種を教師が仕込むとは考えもしなかったのだろう。

 

和真(……おっ、あの7人はちゃんと協力するみてぇだな。見たところ雄二がPDAを操作して戦利品のチェスピースを分配してるようってところか)

蒼介(開始直後にチェスピースを持つアドバンテージはかなりのものだ。それに加えて坂本の作戦が上手く嵌まれば、彼ら7人の予選突破は堅いな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雄二「……よし、チェスピースは均等に行きわたったな。じゃあこれからの立ち回りを指示するぞ。まず翔子と姫路は単騎で行動、好きなように動いて構わない。学園でもトップクラス総合力のお前らに細かい作戦はかえって邪魔だならな。一年生に腕輪能力を使って禁止にならないよう十分注意して……狩れるだけ狩ってこい!」

姫路「わ、わかりましたっ」

翔子「……まかせて」

 

指示を受けたFクラス最高戦力の二人は召喚獣を連れて意気揚々と教室を出ていった。彼女らより明確に強い連中は皆予選を免除されているので、目についた召喚獣を片っ端から潰していくという大雑把な方針がベストだろう。

 

雄二「続いて島田と秀吉のペアは、そうだな……Aクラスレベルの相手とは戦うな」

秀吉「んむ?それはどうしてじゃ?」

美波「優子の学力をトレースした木下はもちろん、ウチの総合科目もドイツ語でパワーアップしてAクラス並の成績よ?」

雄二「だからだよ。Aクラス並の成績かつある程度操作慣れしたお前らならBクラスレベル程度なら確実に勝てる。だがAクラス相手では確実ではないし、力が拮抗しているから消耗は避けられねぇ。キングピース1つとピショップピース2つじゃ後者の方が労せず容易に手に入るってことだ」

秀吉「なるほどのう、確かにワシらでは苦戦は必死じゃろうな」

美波「……そうね。それにウチの成績は教科によってはCクラスレベルでしかないし、無理は禁物ね……」

雄二「だが翔子や姫路なら久保とか木下姉みたいな同格の化け物共以外には容易く勝てるだろう。アイツらが大雑把に動く分、お前らは堅実に動いてくれ」

秀吉・美波「了解!」

 

二人も召喚獣を引き連れて戦場に向かい、B教室に残っているのは雄二と明久、ムッツリーニの三名となった。

 

雄二「さてお前ら……これより『撒き餌作戦』を実行する。囮役の明久、殲滅役のムッツリーニ……俺達の予選通過はお前達の手にかかっているぞ!」

ムッツリーニ「………任せろ」

明久「はいはい…はぁ、こんな役ばっかり……」

 

がっくりと肩を落としながら、明久は召喚獣と共にとぼとぼと教室を出ていった。それを気にも留めず雄二は教卓の中に手を入れてカチャカチャと何かを弄くったかと思えば…

 

 

 

 

 

 

 

 

雄二「よし、これで準備は万端だ。

いくぜ……起動(アウェイクン)!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『いたぞ!吉井だ!』

『科目が数学の内に潰せ!』

明久「嫌ぁぁあああ!?お助けぇええ!」

『あっ!?くそっ、待ちやがれこのバカ!』

 

これも有名税というものだろうか。優れた操作技術や社会科目の点数の高さ、そして社会科以外の教科のショボさを熟知されている明久は、科目が社会科以外の内に始末しようと考えた生徒数名に追われていた。

 

そしてこの状況は明久の、ひいては雄二の筋書き通りである。

 

明久「うわぁああ!と、とりあえず教室の中に逃げ込もう!」

『はっ、バカめ!かえって袋の鼠だろうが!』

『所詮はFクラスだな!』

『おい、お前達はそっちのドアから入れ!絶対に逃がすんじゃないぞ!』

 

そんなことは思いもしない彼らは、明久がB教室に逃げ込んだことで勝利を確信する。あとは入念に逃げ道を塞ぎつつ袋叩きにして終わりだと信じて疑わない。

彼らは寸前まて気づかない。自分達が狩人ではなく、ただの獲物であることに。

 

『ちょこまかするな吉井!』

『いい加減観念するんだな!』

雄二「今だ!」

ムッツリーニ「………了解」

『『『……え?』』』

 

全員が教室に足を踏み入れた瞬間、ドア付近でこっそり待機していた雄二とムッツリーニが扉を閉め、密室空間を作り出した。

 

明久「ふっふっふ、まんまとひっかかったね君達」

雄二「やれムッツリーニ」

ムッツリーニ「………加速」

『え?え?』

 

完全に虚を突かれた獲物達は、圧倒的なスピードの〈ムッツリーニ〉に自分達の召喚獣が蹂躙されるさまを見ていることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蒼介「『撒き餌作戦』……吉井という餌で自らのテリトリーに誘い込み、土屋の召喚獣で殲滅するという戦術か」

和真「雄二の腕輪で保健体育のフィールドを展開、保健体育でムッツリーニが負けるとは思えねぇし、誘き寄せることさえできれば確実にピースが手に入るな。……でも良いのかよ綾倉センセ、雄二の奴召喚フィールド発生装置のスイッチ切っちまったぜ?」

 

どうやら召喚フィールド発生装置は教卓の中に潜り込ませてあったらしく、先ほど雄二が言っていた準備とは装置のスイッチを切ることだったようだ。

 

綾倉「問題ありませんよ柊君。ルール④の内容は校舎内に設置された召喚フィールド発生装置を壊せば失格とありますが……スイッチを切ってはいけないなどとは何処にも記載されていませんからね。あの発生装置はこちら側から遠隔操作で止めない限りスイッチを切っても5分すれば再び召喚フィールドを発生させます。……ですが坂本君が召喚フィールドを展開しているため、科目指定は保健体育が優先されます」

和真「アンタ本当にやりたい放題だな……。スイッチが切れたときの対応を事前に考えてたかのような口振りからして、これもアンタが組み込んだ裏ルールなんだろ?」

綾倉「ご名答。そしてあの装置は3日前に取り付けられました」

蒼介「おそらく坂本はあの装置を事前に発見し、スイッチの有無やフィールドの結合性質、先に出したフィールドの科目に優先権が発生することを解明し……この作戦を立てたのであろう」

和真「ふーん……ソウスケ、雄二のもうひとつの策ってこれのことか?」

蒼介「ああ。私もA教室であの装置と同じ物を見つけたのでな、もし坂本が見つけていれば何らかの形で利用するだろうと予想していた」

 

二人とやけに強いハイタッチをした後、明久は再び囮役として戦場に赴く。

 

 

 

 

 

 

 




若干説明が多くなってる気がする……。
気を付けなきゃ……。

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